船内にて。
グレイグ
「⋯⋯⋯女性陣と共に何をしているのだ、ジュイネ」
ジュイネ
「え? あ、そっか。“こっち”ではグレイグにとってメダル女学園は初めてなんだっけ」
セーニャ
「ジュイネ様は、メダル女学園の客員生徒なのですよ! 私達もそれにあやかって、制服を頂いたのですっ」
ベロニカ
「メダル女学園に行く用があるそうだから、せっかくだし女子組で制服着て向かうのよ」
マルティナ
「あのメダル校長、気前がいいものね。ジュイネと私達を見るや否や制服をタダでくれるんだもの」
グレイグ
「ベロニカやセーニャ、姫様ならいざ知らず⋯⋯何故ジュイネまで“それ”を」
ジュイネ
「あ⋯⋯やっぱりグレイグから見ると似合わない⋯⋯よね」
グレイグ
「いや、似合う似合わない以前の問題なのだが⋯⋯」
セーニャ
「メダル校長様は、ジュイネ様を初めてお目に掛けた時入学希望の女子だと思われたらしく、制服を即日譲って下さったのですよ! 本当は男子ですとジュイネ様が仰ると、客員生徒として主に学園外で活動し小さなメダルを見つけて来る事を許して下さったり、色んなアイテムと交換して下さる太っ腹な校長様なのですっ」
ベロニカ
「あたし達はジュイネのおまけみたいなものだけど、ジュイネがメダル女学園に来る時は制服を着て来るようにって言われてるのよね」
マルティナ
「ふふ、思った以上に似合い過ぎてて可愛いのよね」
グレイグ
「⋯⋯───」
ジュイネ
「ぐ、グレイグからしたら変⋯⋯だよねやっぱり(視線が痛い)」
グレイグ
「いや⋯⋯似合っていないわけではないし、悪くはない」
ジュイネ
「ほ、ほんと? それならいいんだけど⋯⋯」
セーニャ
「では早速、私達女子組四人でメダル女学園へ向かいましょうか!」
ベロニカ
「あとメダル何個渡したら何のアイテムもらえるんだったっけ?」
マルティナ
「えーっと、確か───」
ジュイネ
「三人共、ちょっと待って。⋯⋯グレイグも、一緒に来ない?」
グレイグ
「な、何を言っているのだ。女学園なのだから男子禁制だろう。ジュイネは⋯⋯特別枠のようだが」
ジュイネ
「僕からメダル校長に掛け合ってみるから、男性のグレイグを特別に見学させてあげて下さいって」
グレイグ
「ま、まさかその制服を着せられるのではあるまいな⋯⋯?」
マルティナ
「それは無いんじゃないかしら、グレイグはどう見てもガタイの良い男だものね。⋯⋯ジュイネは線が細くて髪がサラサラだし母方のエレノア様のように柔らかな面差しをしているから、女学園の制服が違和感無く似合うのよ」
ジュイネ
「ま、マルティナ⋯⋯そこまで言わなくても」
マルティナ
「あら、私は本当の事を言っているだけよ?」
ジュイネ
「と、とにかく学園に入ろうか。屋外にも女生徒は多いから、グレイグのことは僕が説明するよ」
セーニャ
「ジュイネ様、学園内に入ったら一人称は“私”、ですよ⋯⋯!」
ジュイネ
「わ、分かってるよセーニャ⋯⋯」
ベロニカ
「別に僕でもいいんじゃない? ボクっ娘だっているくらいだし」
マルティナ
「そこはやっぱり言葉使いからも入るべきよ、女学園に居る時くらいは⋯⋯ね?」
ジュイネ
「はは、そうだね⋯⋯」
グレイグ
「色々と気苦労が絶えないようだな、ジュイネ⋯⋯」
ジュイネ
「うん⋯⋯まぁ、慣れるしかないよね⋯⋯。あ、グレイグ、前もって言っておくけど女学園の生徒には魔物もいるから、間違っても斬りかかったりしないでね。その子達には全く危険性はなくて、人間の女生徒と同じくステキなレディを目指してるだけだから」
グレイグ
「な、なんと⋯⋯事前に言われてなければ魔物に女学園が襲われていると勘違いして斬り掛かっていたかもしれん。ひとえに魔物と言っても悪いものだけではないのだな」
校門を警備する男性にはジュイネが説明し校庭まで行くと、女生徒が物珍しさにグレイグの周りに集まってくる。
ジュイネ
「み、みんな! えーと⋯⋯この人、この方は⋯⋯ぼっ、じゃない⋯⋯私の、仲間⋯⋯と、友達だから! 真面目な男の人だし、やましいことはないから見学させてあげてほしいんだ」
グレイグ
「(やましいとは何だ。まぁ俺のような無骨な男には無縁の場所だからな⋯⋯)」
そこに一人の女生徒がジュイネに向けて、その方はジュイネさんの殿方ですか!?と声を掛けたのをきっかけに周囲がキャッキャとざわめく。
ジュイネ
「僕の、殿方⋯⋯?」
セーニャ
「つまりグレイグ様はジュイネ様の彼氏か、と言われているのですね⋯⋯!」
ジュイネ
「えっ、違うよ⋯⋯! 僕の⋯⋯じゃなくて、私の盾にはなってくれてるけど」
それって殿方から告白されたんですか?!と、余計に盛り上がる。
グレイグ
「⋯⋯確かに俺からジュイネを剣たる主とし、彼に命を預け盾になり守ると誓いを立てたが」
そこでキャーっと黄色い歓声が上がる。
マルティナ
「ほらみんな、集るのはおよしなさい。見世物じゃないのよ」
人払いをするように手を振るマルティナ。
ベロニカ
「女子ってほんと、こういう話好きよねぇ⋯⋯まぁ分かるけど」
ジュイネ
「な、何だかごめんね、グレイグ⋯⋯」
グレイグ
「何故お前が謝るのだ、俺がジュイネの盾である事には変わりないのだからな」
ジュイネ
「うん⋯⋯ありがとう」
学園内に入ると、ジュイネが来たと見るやいなや多くの女生徒がジュイネにラブレターを渡して来ようとする。
ジュイネ
「あーごめん、今急いでるから⋯⋯」
それでも前を通そうとしない為、グレイグが前に出て軽く人払いをする。
グレイグ
「ジュイネが困っている⋯⋯申し訳ないが前方を開けて頂きたい」
大柄のグレイグの出現に大半がポカーンとしたが、その直後ヒソヒソ話と共にサッとジュイネの前方が開く。
グレイグ
「⋯⋯まさかとは思うが、いつもこうなのか?」
ジュイネ
「うん、まぁ⋯⋯よく分からないんだけど」
セーニャ
「秘密の花園ですもの⋯⋯ジュイネ様を女性と見ていようと男性と見ていようとどちらでも魅了してしまうのですよきっと⋯⋯」
うっとりと述べるセーニャ。
ジュイネ
「な、何だか複雑な気持ちだよ⋯⋯」
マルティナ
「どちらの視点でも女子にモテるのは誇っていい事だと思うわよ? 私も同性にラブレターを貰ったことはあるけれど⋯⋯まぁその事はいいわ」
ベロニカ
「マルティナさんは男性は元より女性にも人気あるもんねぇ⋯⋯綺麗な上にカッコいいし」
マルティナ
「あらベロニカ⋯⋯私に気があるの?」
危うげな笑みを向けられたベロニカは赤面する。
ベロニカ
「そういうんじゃないからっ!」
グレイグ
「ふむ⋯⋯相手は女性とはいえ集団で囲まれると危険だな。これからは女学園に来る時は必ず俺を連れてゆけ。お前を護るのが俺の使命だからな」
ジュイネ
「お、大袈裟だよ⋯⋯けど護衛ってことでなら、毎回連れて来るのも校長も許してくれるかもね」
メダル校長に集めた小さなメダルを渡し珍しいアイテムと交換してもらい、グレイグの事を話すと校長は快く受け入れてくれると共に今晩は学園に泊まる事を勧めてくれたのだった。
そして一通り女学園内を見て回ると⋯⋯
グレイグ
「うーむ⋯⋯しかし魔物まで女学園の生徒にしてしまうとは、メダル校長には恐れ入るな」
セーニャ
「素敵なレディを目指すものに、人も魔物も関係なく受け入れるのは懐の広さを感じますわね⋯⋯!」
ベロニカ
「うーん、けど女学園があるなら男子学園があってもいいんじゃない? 紳士を育てる学園ならジュイネも安心して通えると思うわよ」
マルティナ
「そうかしら⋯⋯? 寧ろ別の心配事が増えると思うのだけど」
グレイグ
「姫様、それはどういう⋯⋯?」
マルティナ
「あらグレイグ、判らないのかしら。ジュイネは男子だけど線が細くて髪はサラサラ、母方のエレノア様のように柔らかな面差しをしていると言ったでしょう? 紳士を育てる学園があるとしてもそこは隠れた野獣達の住まう場所⋯⋯不意をつかれて襲われる可能性もあるのよ」
ジュイネ
「え、そうなの??」
マルティナ
「ほら、当人も判ってないんだから⋯⋯危険よ。女学園に女生徒として入っていた方がまだマシというものよ」
セーニャ
「それは確かに危険ですわ⋯⋯ジュイネ様が、その⋯⋯飢えた野獣に襲われ兼ねないのは」
ベロニカ
「⋯⋯紳士も何もあったもんじゃないわね」
グレイグ
「そういう、事か⋯⋯。盾である俺が、全身全霊をもってジュイネを護る。飢えた野獣共には指一本触れさせん⋯⋯ッ!!」
ジュイネ
「えーっと⋯⋯結局何の話だっけ」
ベロニカ
「食堂に行きましょ、あたしお腹空いちゃったわ」
セーニャ
「女学園で出される食事はボリューミーで美味しいですものね!」
グレイグ
「女生徒はそんなに食べるのか⋯⋯? ヘルシーな食事をしているイメージだが」
マルティナ
「あら、ここの女生徒を舐めちゃダメよグレイグ。ギガンテス級の胃袋でお肉だってしっかり食べるし、パン屑も残さないんだから」
グレイグ
「そうなのですか⋯⋯。ジュイネは肉が不得意だったな、キャンプの際のシチューの肉も余り食べないほどに」
ベロニカ
「まぁ何ていうか、野菜や果物ばっかり食べてるからジュイネはいつまで経っても線が細いままなんでしょうけど?」
ジュイネ
「小さい頃から体質的に合わないんだもん、しょうがないじゃないか⋯⋯魚は食べれるけど」
セーニャ
「獣のお肉を食べると、お腹に来てしまいやすいそうですものね⋯⋯」
グレイグ
「まぁ、肉を食わずともジュイネは十分勇者として強いのだから問題は無いだろう」
ジュイネ
「(⋯⋯意識してなくても勇者の紋章が勝手に助けてくれるから、別に僕が本当に勇者として強いわけじゃないよ)」
グレイグ
「む⋯⋯?」
ジュイネ
「うぅん、何でもない」
ベロニカ
「───さーてと、夕食も済ませたし用意してもらった部屋でそろそろ休もうかしらねぇ」
セーニャ
「私とお姉様、マルティナ様は同室で⋯⋯ジュイネ様とグレイグ様は別室なのですよね?」
マルティナ
「グレイグがまだ仲間になっていない時はジュイネは私達と同室だったのだけど、グレイグが仲間にいる今となっては、安心してジュイネをグレイグに任せられるものね?」
ジュイネ
「僕は別に一人部屋でも平気だけど⋯⋯」
ベロニカ
「なーに言ってるのよ、初めてこの女学園に泊まってジュイネが一人部屋の時、何があったか忘れたのっ? あんな事あったからここで休む時はあたし達と同室で休む事になったんじゃないの」
グレイグ
「あんな事、とは⋯⋯何があったのだッ?」
セーニャ
「学園在籍のリップスのブリジットさんが⋯⋯ジュイネ様の寝込みを襲おうとして───」
ジュイネ
「⋯⋯⋯⋯あれはさすがにキツかった」
グレイグ
「な⋯⋯ッ」
マルティナ
「ジュイネの叫ぶ声がして私が真っ先に槍を持って駆け付けたのだけど、危うく倒しそうになったとはいえ、ジュイネがリップスのブリジットの罪を咎めなかった事で厳重注意になったのよね」
グレイグ
「寝込みを襲われたというのに、咎めなかったのかッ?」
ジュイネ
「まぁその⋯⋯一応未遂で済んだから許そうかなって」
グレイグ
「お前は甘い⋯⋯というか優しいが過ぎる」
ベロニカ
「あの子相当ジュイネに熱上げてたものねぇ⋯⋯」
グレイグ
「やはり女学園でも安心は出来ん⋯⋯鉄壁の仁王立ちでジュイネを守らねばッ⋯⋯!」
ジュイネ
「大袈裟だよグレイグ⋯⋯」
ベロニカ
「グレイグくらい大袈裟じゃないとジュイネは守れないわね⋯⋯大体いつもぼーっとしてるし、すぐ相手を許しちゃうんだもの」
ジュイネ
「育ての親のテオおじいちゃんから、『人を恨んじゃいけないよ』って、教わってるからね」
グレイグ
「そもそも相手が人ではない魔物であるならば、それは通用しないのでは」
ジュイネ
「話の通じる魔物なら、同じことだよ」
セーニャ
「ふふ⋯⋯やはりジュイネ様だからこそ、なのでしょうね」
マルティナ
「そうね⋯⋯だからこそ、私達で守ってあげないと」
ジュイネ
「守られてばかりは嫌だし、僕だってみんなを守りたいんだからね」
ベロニカ
「⋯⋯あんたは十分、みんなを助けてるし守ってるわよ。あたし達は、それを返してあげたいだけ。互いに守って守られて⋯⋯そうやってあたし達は、これからも生きてくのよ」
ジュイネ
「(⋯⋯ベロニカ)」
ベロニカ
「とにかく、みんなもう休みましょ。グレイグ、今晩ジュイネの事は頼んだわよっ?」
グレイグ
「言われずとも、承知しているさ」
ルージュ先生
「───あらジュイネ君、来ていたのね」
ジュイネ
「あ、ルージュ先生⋯⋯」
ルージュ先生
「ちょっと私用で出掛けていたから、今戻ったところなのよ。今夜は、学園に泊まって行くのかしら?」
ジュイネ
「はい、そうさせて頂きます⋯⋯」
グレイグ
「⋯⋯⋯⋯」
ルージュ先生
「あら? ⋯⋯随分体格の良い殿方が居るわね、もしかしてジュイネ君の彼氏?」
ジュイネ
「か、彼氏じゃないです。仲間の一人で、護衛をしてくれているというか⋯⋯」
ルージュ先生
「そうなのね。⋯⋯貴方、お名前は? 私は、この女学園の保健医でお悩み相談室を設けているルージュというの」
グレイグ
「自分は⋯⋯グレイグと申します」
ルージュ先生
「⋯⋯あぁ、まさかあのデルカダールの猛将、グレイグ将軍? お目に掛けた事はないけれど、噂はかねがね聞いていますわ。まさかこんな所でお逢い出来るなんて。想像していた通り⋯⋯逞しい身体をしてらっしゃるわ」
グレイグの大胸筋を人差し指で撫ぜるように触れるルージュ先生。
グレイグ
「⋯⋯⋯⋯!!」
ジュイネ
「る、ルージュ先生⋯⋯許可なく相手に触れるのは厳禁ですよ」
ルージュ先生
「あら、焼きもち妬いちゃって⋯⋯可愛いわねジュイネ君」
ジュイネ
「からかわないで下さい」
ルージュ先生
「ふふ、ごめんなさい。⋯⋯男性の悩みも気になるから、貴方もいつでも保健室にいらしてね?」
グレイグ
「え、えぇ⋯⋯いずれ」
ルージュ先生
「いずれと言わず⋯⋯そうね、一つ質問させて頂きますわ。貴方にとってジュイネ君は、どんな存在なのです?」
グレイグ
「自分にとってジュイネは⋯⋯かけがえのない希望の存在です」
ジュイネ
「⋯⋯!」
ルージュ先生
「あらあら⋯⋯私の方が妬けちゃう発言ね。邪魔しちゃったわ、それじゃあ失礼しますわね」
グレイグ
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ジュイネ
「グレイグ、いつまで鼻の下伸ばしてるの」
グレイグ
「の、伸ばしてなどいない⋯⋯!」
ジュイネ
「まぁルージュ先生はグレイグ好みのグラマーな先生だもんね」
グレイグ
「確かにあの抜群なスタイルは⋯⋯いやいや、そういう問題ではなくてな」
ジュイネ
「僕も初めて先生に会った時、いきなり触れられたから困っちゃったよ」
グレイグ
「ど、どこをだ⋯⋯?」
ジュイネ
「胸元? ⋯⋯あのぞわっと来る感じ、何とも言えないよね」
グレイグ
「あぁ⋯⋯確かに」
ジュイネ
「ほらやっぱり、ルージュ先生にすっかり魅了されちゃってさ」
グレイグ
「お、お前はどうなのだ⋯⋯!? 彼女が俺に触れた時、焼きもちを妬いていたじゃないか」
ジュイネ
「⋯⋯どっちに焼きもちを妬いたと思ってるの?」
グレイグ
「ルージュ殿に触れられた俺、か?」
ジュイネ
「違う、逆だよ」
グレイグ
「ルージュ殿に嫉妬した、と⋯⋯?」
ジュイネ
「何か⋯⋯ルージュ先生にグレイグを取られた気がして嫌だった」
グレイグ
「そ、そうだったのか⋯⋯てっきりお前もルージュ殿に熱を上げているのかと」
ジュイネ
「先生は異性へのボディタッチが好きみたいで、甘い言葉で言い寄られたこととかあるけど⋯⋯避けたから」
グレイグ
「あの美魔女を避けたのか⋯⋯?!」
ジュイネ
「美魔女かぁ⋯⋯確かに美人先生だけどね、僕は特にそれ以上は思わないよ」
グレイグ
「さ、流石は勇者⋯⋯欲が無い」
ジュイネ
「そういうの勇者とか関係無いから。⋯⋯もう部屋に行って休もう、何だか気疲れしちゃった」
グレイグ
「そ、そうだな⋯⋯」
ジュイネ
「───僕の事をかけがえのない、希望の存在って言ってくれたのは、素直に嬉しかったよ」
グレイグ
「あぁ⋯⋯それは嘘偽りの無い俺の言葉だ」
ジュイネ
「うん、ありがとうグレイグ。⋯⋯けどルージュ先生に魅了されたのは許してないから」
グレイグ
「ま、待ってくれジュイネ、今度から気を付けるから許せ⋯⋯!?」
二人部屋にて。
ジュイネ
「あー⋯⋯、メダル女学園ではこの寝巻きを着なきゃいけないんだった」
グレイグ
「女学園専用の寝巻きがあるのか」
ジュイネ
「うん、ネグリジェ。⋯⋯ほらこれ」
グレイグ
「おぉ⋯⋯何と艶やかな」
ジュイネ
「何その言い方。⋯⋯グレイグも着てみる?」
グレイグ
「着れるわけないだろう⋯⋯! そもそも身の丈に合わん」
ジュイネ
「ふふ、それもそうだね。⋯⋯この女学園に居ると男じゃなくなりそうで怖いや」
グレイグ
「別に男に拘る必要も無いのでは」
ジュイネ
「じゃあグレイグは、女性としてこの学院に入学してみたい?」
グレイグ
「⋯⋯それは無理がある」
ジュイネ
「でしょう? ⋯⋯僕だって好きでこんな格好してるんじゃないよ、周りに合わせてるだけで。そもそも初めて来た時校門前の男性職員に、新入生と間違われるくらいだったからね」
グレイグ
「(それも仕方ない気がするが)」
ジュイネ
「みんな僕を一体“どっち”に見たいんだろ」
グレイグ
「ジュイネはジュイネだろう、それ以上でもそれ以下でもない」
ジュイネ
「⋯⋯男でも女でなくてもいいってこと?」
グレイグ
「それでは不満か?」
ジュイネ
「そうじゃないけど⋯⋯まぁ、それでいいのかもね。だけどもし僕が本当に○○だったら───」
グレイグ
「む⋯⋯?」
ジュイネ
「何でもない、おやすみっ」
そっぽを向きベッドの掛け布団を被るジュイネ。
グレイグ
「───言っただろう、お前は俺にとって希望の存在だと。そこに性別など関係ない」
ジュイネ
「それじゃあ⋯⋯試してみる?」
グレイグ
「何をだ?」
ジュイネ
「うーん⋯⋯やっぱりそういうあれじゃないよね。ごめん、忘れて」
グレイグ
「⋯⋯こういう事か?」
不意にグレイグはジュイネのベッドに上がり込む。
ジュイネ
「わっ、ちょ、ごめん! 今はまだ無理!!《アストロン》!!」
グレイグ
「ぐはあッ、すまん⋯⋯性急は、いかんな⋯⋯⋯」
ジュイネに覆い被さる姿勢のまま全身硬化するグレイグ。
ジュイネ
「(はぁ、何やってるんだろう僕は。自分から言い出しといて⋯⋯。ちょっと強めに掛けておいたから、朝には元に戻ってるかな⋯⋯このまま寝よ)」
end