ジュイネ
「(うー、マモノが出るからって村から出してもらえない⋯⋯。おじいちゃんに本で教えてもらったデルカダール王国ってところに行ってみたいな⋯⋯)」
ジュイネ
「(あ、村の入り口に荷物運びのウマがいる⋯⋯。そういえば他のとこからギョウショウニンってひとが時々来るんだっけ。またどこか遠くに出かけるのかも。今誰もいないし見てない⋯⋯のっちゃおうっ)」
荷馬車の中の隅にイソイソと隠れるジュイネ。
行商人の声
「ふぅ、ここの村長は秘蔵のムフフ本に羽振りがよくて助かるぜぇ⋯⋯。さてお次は、デルカダール王国に需要の高い身も心もとろける厳選スイーツ本を届けにゃ⋯⋯。噂じゃ国王自ら愛読してるらしいからな⋯⋯!」
ジュイネ
「(村長さんムフフぼん?っていうの買ったのかな。あ、それよりデルカダール王国って聞こえたからきっとそこに行くんだ!)」
───行商人が操る荷馬車に揺られる事長時間、ジュイネはいつの間にか眠っていた。
行商人
「⋯⋯おぉ?! 知らねぇ間に小せぇガキが乗ってやがった。おい⋯⋯起きろクソガキ! 金も寄越さねぇで勝手に人の荷馬車に乗り込んでんじゃねぇッ!」
ジュイネ
「ふぁっ⋯⋯!? 大きな声、こわいよ⋯⋯。デルカダール王国に、着いたの⋯⋯??」
行商人
「確かにここはデルカダール王国だがな⋯⋯最下層の吹き溜まりだ。オレみてぇな闇商人は煌びやかな上層の方からは入らねぇのさ」
ジュイネ
「ヤミしょーにん??」
闇商人
「普通じゃ手に入らない物を売るんだぜ、お前みたいな⋯⋯生身のガキとかもな」
ジュイネ
「ぼ、ぼく⋯⋯うられちゃうのっ?」
闇商人
「そうさなぁ⋯⋯ガキが趣味の貴族様なんざ珍しくないからな。───お前、よく見りゃ高値で売れそうな顔してるな。オレはこれでも目利きは優れてるんだ、お前みたいなガキを御所望の貴族様んとこに売り払ってやるか⋯⋯!」
腕をグッと掴み引き寄せる。
ジュイネ
「や、やだぁ⋯⋯! おうちかえる⋯⋯っ」
闇商人
「クへへ⋯⋯興味本位で荷馬車に忍び込んだクチだろうが、それが運の尽きだったな。心配すんなよ⋯⋯これから新しい御主人様の元では、存分にコキ使って貰えるだろうさ」
ジュイネ
「ふえぇっ⋯⋯!」
低い声
「おい、そこで⋯⋯何をしている」
闇商人が振り返ると、いつの間にか大柄な男がそこに居た。
闇商人
「何だアンタ⋯⋯早速買い付けか? 残念だが貴族じゃなさげなアンタには売れるモンはねぇなぁ⋯⋯」
大柄な男
「幼児の人身売買を平然と行う闇商人から買う物などありはしないな。───おいお前達、こいつを城の地下に連れて行き取り調べをしろ。どうやらかなりの悪事を働いている闇商人のようだ」
大柄な男が呼び掛けると、何処からともなく兵士達が現れ荷馬車と闇商人の男を取り囲む。
闇商人
「なッ⋯⋯?! どうなってやがるッ」
幼児を人質に取りその首を片腕に絞めつける闇商人。
グレイグ
「鎧で巡回するより私服の方が都合の良い時もあるという事だ。⋯⋯その子を離した方が身の為だぞ」
闇商人
「チッ、よく見りゃグレイグ将軍様ときたもんだ⋯⋯。確かに遠目に将軍の鎧姿は目立つからな⋯⋯私服で気付くのが遅れちまったか。それにしても、ダサいな」
グレイグ
「私服をダサいと言うな! 友人にも言われたが⋯⋯」
闇商人
「ちょいと浮かれ過ぎたかぁ⋯⋯、手放すのは惜しいがしょうがねぇ、だが捕まるのはゴメンだッ!」
素顔の見えない黒頭巾を被っている闇商人は、幼児を将軍へ向け荒々しく突き放すと煙玉を使って目くらまし、その場から荷馬車を置いて素早く逃げた。
グレイグ
「追え、逃がすな! あの手の者は何度も同じ手を繰り返す⋯⋯この幼児のように被害者を増やしてはならんッ」
兵士達
「ハッ!!」
城外へ闇商人を追って出て行く兵士達。
ジュイネ
「えぐ、えぐ⋯⋯」
グレイグ
「大丈夫か、どこも怪我をしてないか?」
身体を低めてなるべく目線を合わせる将軍。
ジュイネ
「腕と首、ちょっといたい⋯⋯」
グレイグ
「掴まれたり締められたりしたのだな⋯⋯全く、このような幼児相手に下劣な。どこから、連れて来られたのだ?」
ジュイネ
「イシの村⋯⋯」
グレイグ
「イシの村⋯⋯? 聞いた事のない場所だな。何処にある? 連れて帰ってやりたいが」
ジュイネ
「せっかく、デルカダール王国に来たのに⋯⋯ヤミしょーにんの人いないなら、まだ帰りたくない」
グレイグ
「ここに来たかったのか? なら下層ではなく上層に行くべきだな⋯⋯下層は健全ではない」
ジュイネ
「おじさん⋯⋯だれなの?」
グレイグ
「(お、おじさんか⋯⋯。まだ二十代だからお兄さんと呼んで欲しい所だが、まぁいいか)⋯⋯俺はグレイグ、デルカダール王国の将軍だ」
ジュイネ
「グレーグ⋯⋯しょーぐん?」
グレイグ
「ん、その左手の甲のアザは───」
ジュイネ
「これ? これね、ぼくがうまれた時からあったんだって!」
グレイグ
「⋯⋯⋯⋯」
左手の甲のアザをじっと見つめる。
ジュイネ
「どうしたの、おじさん?」
グレイグ
「お前、名は⋯⋯名前は、何という?」
ジュイネ
「ジュイネだよ」
グレイグ
「(! やはり───)」
ジュイネ
「ぼくね、お城行ってみたいんだ! とってもおっきいんでしょ?」
グレイグ
「あぁ⋯⋯連れて行ってやってもいいが、その前に───」
グレイグ将軍は白い布を取り出し、ジュイネの左手の甲に巻き付ける。
グレイグ
「約束してくれ、ジュイネ。それを外さない事⋯⋯、名前を俺以外に教えない事を。そうしたら、城を案内してあげよう」
ジュイネ
「⋯⋯うん、わかった!」
グレイグ
「よし⋯⋯上層は人通りが多いからな、抱き上げて行くか」
ジュイネ
「だっこ?」
グレイグ
「抱っこというか、まぁ⋯⋯お前は俺の片腕に乗る形か。───そらッ」
一旦両手でジュイネの脇の下を持ち上げ、左腕の方に座らせる形で抱えるグレイグ。
ジュイネ
「わぁい、たかーい!」
グレイグ
「(無邪気なものだな⋯⋯こんな幼児が災いを呼ぶ悪魔の子かもしれんとは、考えたくないものだ)」
グレイグ
「───ほら、ここがデルカダール王国上層の城下町だ」
ジュイネ
「おっきなおうち、いっぱい⋯⋯ヒトもいっぱい⋯⋯??」
グレイグ
「かなり広くて人も多いし、迷いやすいからな⋯⋯俺も慣れるまでは、よく迷子になったものだよ」
ジュイネ
「なんかこわい⋯⋯っ」
将軍の首周りにぎゅっと縋りつく。
グレイグ
「大きな城下町に来た事のない小さな子供からしたら、そうかもしれんな。俺の生まれ故郷のバンデルフォン王国は花々に溢れて美しく、豊かで活気があったと記憶しているが⋯⋯」
ジュイネ
「うー⋯⋯」
グレイグ
「怖いなら、帰るか? 俺の愛馬で送ってやるぞ」
ジュイネ
「お城行くんだもん! 連れてってっ」
グレイグ
「(うーむ、招き入れていいのだろうか⋯⋯俺以外にアザや名前は明かさないと約束させているが)」
ジュイネ
「⋯⋯あれなに? お水、いっぱい出てる!」
グレイグ
「噴水の事だな、水が四方に沢山出る仕組みだ」
ジュイネ
「おもしろそう⋯⋯入っていーいっ?」
グレイグ
「いや⋯⋯やめておいた方がいい、深くはないが目立つ行為は良くない」
ジュイネ
「うーん、よくわかんないけどやめとく⋯⋯。あ、あのキラキラなにっ?」
グレイグ
「城への階段下にある、双頭の鷲の金色の像だな。デルカダール王国のシンボルだ」
ジュイネ
「しんぼるー?」
グレイグ
「城の中にもあるぞ。俺が普段身に付けている鎧にも刻まれているな」
ジュイネ
「ソートーのワシ⋯⋯つよいのっ?」
グレイグ
「あぁ、勿論だ。⋯⋯俺もその片翼だからな」
ジュイネ
「へー、よくわかんないけどすごーい!」
グレイグ
「さぁ、ここから城の入り口───」
門番兵士
「グレイグ将軍、お疲れ様です! その、子供は⋯⋯? もしや将軍の隠し子──」
グレイグ
「そんな訳あるかッ。⋯⋯下層で闇商人に人身売買される所を保護したのだ。元の場所に帰らせる前に、子供が城を見たいと言ったものだから、見学させてやろうと思ってな」
門番兵士
「なるほど⋯⋯グレイグ将軍に感謝するんだぞ、それと城の中ではなるべく静かにする事だ」
ジュイネ
「はーいっ」
グレイグ
「さて、城の中に入るとするか」
ジュイネ
「階段、ずーっと上に長いねぇ」
グレイグ
「うむ、毎日上り下りしているだけで足腰が鍛えられるぞ」
ジュイネ
「ぼく、自分でのぼるー!」
グレイグ
「いや、小さい子供にはかなりきついだろう。それにお前は闇商人に人身売買されそうになっていたのだ、大人しく俺の片腕に乗っていてくれ」
ジュイネ
「んー、わかったー」
デルカダール城内。
ジュイネ
「ふわぁー⋯⋯! ひろーい、どこ見てもキンキラー!」
グレイグ
「こ、こら、余り声を上げるんじゃない」
ジュイネ
「あっ、ほんとだー、お城の中にもソートーのワシあるー!」
グレイグ
「あのな、静かにしないと───」
???
「何だ、騒々しい⋯⋯何故貴族でもない平民の子供が城の中に居る」
グレイグ
「⋯⋯!」
ジュイネ
「わー、かっこいいヨロイ着てるお兄ちゃん!」
???
「⋯⋯───」
グレイグ
「(俺の時はおじさんと呼んでいたのに⋯⋯やはり鎧姿ではない私服だからか??)」
???
「グレイグ、お前⋯⋯いつの間に隠し子を」
グレイグ
「お前までそれを言うか、ホメロスッ」
ホメロス
「ふん、冗談に決まっているだろう。そもそもお前は女とは長続きしないからな⋯⋯とはいえ過ちは犯しそうだが」
グレイグ
「断じて違うぞ、この子は───」
ジュイネ
「ヤミしょーにんって悪い人にうられちゃうとこを、グレーグしょーぐんに助けてもらったの!」
ホメロス
「ほう⋯⋯? それで、お前の名⋯⋯名前は何と言う」
ジュイネ
「ぼくはね、ジュ──」
グレイグ
「ジュラルミンというのだ! 中々良い名前だろうッ」
ホメロス
「良い名前も何も、合金の一種ではないか。まぁそういう金属に因んだ名を付けるのは珍しくもないが⋯⋯その左手の甲はどうした、怪我でもしたのか?」
ジュイネ
「んっとねー⋯⋯」
グレイグ
「巻き付けた布を解くな⋯⋯!! あ、いや⋯⋯俺が駆け付けた時には既に闇商人に怪我をさせられていてな⋯⋯大した傷ではないが、応急処置として覆っているのだ」
ホメロス
「⋯⋯そうか、けしからん闇商人だな」
ジュイネ
「そいつ逃げたんだよー、他の兵士さんたちが追っかけてった!」
ホメロス
「人身売買されそうになっていた割には、元気そうで何よりだ。───我らが王にも、会ってゆくかジュラルミン」
ジュイネ
「ちがうよ、ぼくはジュ」
グレイグ
「ラルミン! 腹が減ってないかッ? 食堂に行こう、なッ」
ジュイネ
「え? うん、そういえばおなかすいた⋯⋯」
ホメロス
「デルカダール王に会ってゆかなくていいのか?」
グレイグ
「城を見学しに来た子供に会っていられる程、王は暇ではあるまい⋯⋯」
ホメロス
「そうでもないぞ、ちょうど数々の謁見が終わった頃合いではあるし⋯⋯」
グレイグ
「ならば疲れておられるはずだ、ホメロス⋯⋯お前の自慢のお取り寄せスイーツで王の疲れを甘い物で癒してやってくれッ」
ホメロス
「⋯⋯⋯⋯⋯」
ジュイネ
「ぼく、王さまにも会ってみ」
グレイグ
「さぁ食堂に向かうぞジュラルミンッ!」
言葉を遮り急ぎ足で幼いジュイネを伴いその場を後にする。
ホメロス
「ジュラルミン⋯⋯クク、まぁいい。今はまだ、な」
デルカダール城の食堂にて。
ジュイネ
「もぐもぐ⋯⋯お城のシチューもおいしいけど、やっぱりお母さんの作るシチューがいちばんだなー!」
グレイグ
「そうか⋯⋯。所で先程から、肉類に余り手が付いていないようだが」
ジュイネ
「んー⋯⋯ぼくね、お野菜とか果物の方が好きなんだー」
グレイグ
「ほう⋯⋯果物はともかくその年で野菜が好きとは。俺の子供時代とは真逆だな」
ジュイネ
「ふー、おなかいっぱーい⋯⋯むにゃむにゃ、ねむくなってきた⋯⋯」
グレイグ
「ふむ、ならば俺の私室で寝るか?」
ジュイネ
「ししつ??」
グレイグ
「俺の部屋で寝るか、という意味だ」
ジュイネ
「うん⋯⋯ねるぅ⋯⋯くぅ」
グレイグ
「(おっと危ない、椅子から転げ落ちる所だった。⋯⋯闇商人に人身売買されそうになったショックもあるだろうし、ゆっくり俺の部屋で休ませてやるか)」
グレイグの私室の大きなベッドにジュイネは寝かされた。
ジュイネ
「すぅ、すぅ⋯⋯」
グレイグ
「(起きている時はヤンチャだったが⋯⋯大人しく眠っている所を見ると、可愛らしいものだ。俺にもこんな子供がいつか出来るのだろうか⋯⋯想像つかんな)」
ジュイネ
「んー⋯⋯おじいちゃん、お母さん⋯⋯」
グレイグ
「(家族、か⋯⋯。俺の家族が健在だったなら───いや、よそう)」
ジュイネ
「ふにゃ⋯⋯」
グレイグ
「(俺の故郷バンデルフォン王国と同じく多くの魔物によって滅びたユグノア王国⋯⋯その王子であり、紋章を携えし伝説の勇者の生まれ変わりとされながら我がデルカダール王に、災いを呼ぶ悪魔の子と称されるジュイネ)」
ジュイネ
「⋯⋯⋯⋯」
グレイグ
「(行方不明であったが、生きていた───。ほぼ、間違いない。だが俺には、この子を城に案内は出来ても、売り渡すような事は⋯⋯出来ん)」
ジュイネ
「くぅ⋯⋯」
グレイグ
「(どうしても⋯⋯災いを呼ぶ悪魔の子には見えんのだ、決して。普通の幼児と変わらぬ、無邪気な───こんなにも頬がフニフニしているというのに)」
ジュイネのほっぺを人差し指で優しめに何度も触れるグレイグ。
ジュイネ
「ふみゅ⋯⋯っ」
グレイグ
「(ぬ、いかんいかん⋯⋯つい触れてしまう。この子が目覚めるまで、瞑想でもしているか」
グレイグは深く瞑想を始めた。
──────────
───────
ジュイネ
「⋯⋯おじさん、グレーグおじさん、おきてってば!」
グレイグ
「ぬはッ、何だ⋯⋯(しまった、瞑想していたはずが居眠りを───俺もまだまだだな)」
ジュイネ
「ぼく、そろそろおうちに帰りたい⋯⋯」
グレイグ
「そ、そうか⋯⋯判った、俺の愛馬のリタリフォンで送ってやろう。俺以外乗せぬのだが、共に乗れば問題ない」
ジュイネ
「あいば、リタホン?」
グレイグ
「いや、リタリ⋯⋯まぁいい。駿馬だからな、暗くなる前に送ってやれるはずだが⋯⋯帰る道筋は、判っているのか?」
ジュイネ
「んー⋯⋯おじいちゃんが言ってたけど、デルカダール王国はイシの村の深いケーコクから、ほとんどまっすぐキタにあるって」
グレイグ
「渓谷か⋯⋯なる程。村からは北となると、王国側からは南に真っ直ぐ下って行けばなんとかなるはずだ。よし、長居は無用だ、すぐ出発しよう。同僚に何か勘づかれる前にな⋯⋯」
小さなジュイネを片腕に抱き上げ、グレイグは颯爽と自分の愛馬の居る馬小屋に向かい、ジュイネを前に乗せて自分はその後ろに乗り、デルカダール王国から素早く駆け出し南側の渓谷を目指す。
グレイグ
「ふむ⋯⋯大分南に下ったが、狭い洞窟があるくらいで他に道は───あの洞窟を抜ければ村に行き着くだろうか⋯⋯」
???
「もし⋯⋯そこの黒馬に乗るお兄さんとお子さんや」
グレイグ
「む⋯⋯?(ちょうど、洞窟から御老人が)」
ジュイネ
「テオおじいちゃんっ!」
グレイグ
「なぬ、もしやジュラルミン⋯⋯ではなく、ジュイネの祖父殿かッ?」
ジュイネ
「そうだよっ、グレーグおじさん下ろして!」
グレイグ
「あ、あぁ⋯⋯」
テオ
「おぉ⋯⋯ジュイネや、良かった。お前が急に居なくなるもんだから村の皆心配しておったんじゃよ」
ジュイネ
「ごめんね、おじいちゃん⋯⋯ぼく、どうしてもデルカダール王国に行ってみたくて」
テオ
「なるほど⋯⋯村長が贔屓にしておる商人の荷馬車が来ておったはずじゃから、それに忍び込んだのか⋯⋯。その勇気は大したもんじゃが、お前はまだ小さいのだし無茶な事はせんといておくれ。寿命が縮んでしまうわい⋯⋯」
ジュイネ
「ほ、ほんとにごめんなさい⋯⋯今度から、だまっていなくならないから⋯⋯!」
グレイグ
「(寿命が縮むほど心配していたのなら、闇商人に人身売買されそうになっていた事は言わないでおいた方がよさそうだ⋯⋯)」
テオ
「時に⋯⋯黒馬を駆るお兄さんや」
グレイグ
「な、何だろうか」
テオ
「───噂に聞くデルカダール王国のグレイグ将軍殿と見受けるが、この子とこの先の渓谷の事は、城の方々に話してしまわれただろうか」
グレイグ
「いや⋯⋯特には」
テオ
「そうか、そうか⋯⋯貴方は信用に足る方のようじゃ。───この子はあと十年もすれば再びそちらに向かう事になるじゃろう。どうか、それまでは」
グレイグ
「───承知した」
ジュイネ
「おじいちゃん、なんのこと言ってるの??」
テオ
「いずれ、判るようになるじゃろう。⋯⋯ジュイネや、グレイグ将軍にお別れを言わねばの」
ジュイネ
「グレーグおじさん⋯⋯また、あえるよねっ?」
グレイグ
「あぁ、暫くは逢えないだろうが⋯⋯いずれまた、必ず逢おうジュイネ」
ジュイネ
「⋯⋯うん!」
end