DQ11短編集   作:風亜

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 異変後のグロッタ。主マル、マル主


狂乱のモンスターカジノ

「ウフフ⋯⋯アタシと一緒に、遊びましょ? たーっぷりサービスしてあげるわよ♡」

 

「ぐ、グロッタに出来たモンスターカジノにマルティナが居るかもしれないって、こういうことだったの⋯⋯??」

 

「ひッ、姫様、なんとはしたない⋯⋯!!」

 

「うむぅ⋯⋯カジノでコイン集めなどしている場合ではなかったがマルティナ姫が居るかもしれぬというVIPルームの入り口を通せんぼしていた魔物にコイン一万枚で交換したラブリーエキスなる物を渡してここまで来てみれば、姫がバニースーツ姿で出て来るとはわしは夢でも見ておるのか??」

 

「もう、ロウちゃんったら夢じゃないわよ! マルティナちゃんったらどうしちゃったのかしら、いつもなら誇り高い子なのにあんな姿しちゃって⋯⋯しかもお肌の色と目の色がおかしいわよっ?」

 

 散り散りになっていた仲間の一人、マルティナの危うい変貌ぶりに驚きを隠せないジュイネ、グレイグ、ロウ、シルビア。

 

 

「なぁに? アンタ達、アタシの事をそんなに見つめて⋯⋯ダメよ、アタシはこのモンスターカジノを仕切る妖魔軍王ブギー様の物なんだから!」

 

「マルティナはもしや、その妖魔軍王とやらに操られておるのでは⋯⋯?」

 

 勘づくロウだが、グレイグはマルティナの際どい姿を見ていられず物申す。

 

 

「姫様、誇り高きデルカダールの王女がそのような破廉恥な姿をするものではありませんぞッ!」

 

「あら⋯⋯? アンタもしかして、グレイグ将軍? やだわぁ頭のカタい将軍がこんな所に居るなんて。誇り高いとかどうでもいいじゃない、アタシの身と心はもうブギー様の物なのよ。あの方はありのままのアタシを受け入れて下さるの⋯⋯、アンタみたいな頭でっかちな男は嫌いよ!」

 

「な゛⋯⋯ッ」

 

「グレイグったらショックを受けてる場合じゃないでしょ、マルティナちゃんを正気に戻してあげないと!」

 

 シルビアにそう言われるもののグレイグは気後れしてしまい、当のマルティナはジュイネに危うげな視線を向ける。

 

 

「あら失礼ね、アタシは正気よ? ところで、そこの可愛い坊や⋯⋯ジュイネ、だったかしら」

 

「えっ、そ、そうだけど⋯⋯」

 

「良かった⋯⋯生きてくれていたのね。さぁ、こっちに来てよく顔を見せて頂戴⋯⋯?」

 

(ど、どうしよう)

 

 助けを求めてロウの方を見るジュイネ。

 

 

「いかんジュイネ、そそられるのは判らんでもないが今の姫は危険じゃ⋯⋯!」

 

「勇者の使命なんて忘れて、私とここで一生遊んで暮らしましょ⋯⋯?」

 

「⋯⋯⋯⋯。本来のマルティナなら、そんなこと僕には言わないよ」

 

 

 真摯な眼差しを向けられ、癪に障るマルティナ。

 

「───ブギー様ぁ、この子つまらなくて可愛くないわ、アタシのオモチャにしたいのに⋯⋯!」

 

「ボクちんのアイするマルティナを悲しませるヤツは⋯⋯ダレだぁ~??」

 

「貴様が妖魔軍王ブギーか、姫様を返してもらうぞッ!」

 

 気を取り直したグレイグが、でっぷりとした醜悪な姿を現したブギーに敵意を露わにする。

 

 

「ウゲー、ボクちんの大嫌いなオス共がいっぱいだ⋯⋯ヌヌ? そんな中にメスらしくはないケドかわいげのある子がいるじょ⋯⋯?」

 

(な、何でこっちを見るかな⋯⋯き、気持ち悪い)

 

 視線を感じてジュイネは思わず目を逸らす。

 

 

「そう、その子よ! アタシが今欲しいのは!!」

 

「エ、ボクちんじゃないの?」

 

「ブギー様は一番に決まってるじゃない⋯⋯アタシにとって二番目の可愛いオモチャも欲しいのよ⋯⋯ねぇ、ブギー様?」

 

 上目遣いのおねだりをするマルティナ。

 

 

「イヨーシ! マルティナの為なら欲しいオモチャくらい引ったくってあげちゃうよ!!」

 

「みんな気をつけて、アイツったらジュイネちゃんを狙ってるわ!」

 

「何だと⋯⋯! ジュイネ、俺の背後に───」

 

 シルビアは警戒を促し、グレイグはジュイネを自分の背後に守ろうとする。

 

 

「そ~れ、どいつもこいつも踊らにゃソンソン!《超さそうおどり》!!」

 

「うひょひょーい! な、何じゃ身体が勝手に⋯⋯?!」

 

「あら~ん、超さそうおどりって言うくらいだから誘われちゃったわ!!」

 

「花が~、咲く咲く~、バンデルフォ~ン⋯⋯はッ、俺は何をしているのだ⋯⋯?! くそ、バンデルフォン音頭が止まらん⋯⋯!!」

 

 ブギーに不意を突かれ《超さそうおどり》で強制的に踊らされるロウ、シルビア、グレイグ。

 

 

「み、みんな⋯⋯?!(僕だけ効かなかったみたいだけど、とにかくブギーを何とかしないと)」

 

 はやぶさ斬りを放とうとするジュイネの前を、呪われしマルティナが諸手を広げ遮る。

 

「ダメ! ブギー様を傷つけないで!!」

 

(!? マルティナを攻撃に巻き込むわけには⋯⋯っ)

 

 

「今だよ、マルティナ!!」

 

「はぁ~い♡ 奪ってあげる⋯⋯アンタの全て!!」

 

 ブギーの掛け声と同時にマルティナの全身から迸る強烈なセクシービームがジュイネに向けて弾け飛ぶ。

 

 

「⋯⋯⋯っ!!!」

 

 

「さぁ⋯⋯こっちへいらっしゃい、ジュイネ」

 

「──────」

 

 

「ああっ、ジュイネちゃんが魅了されちゃってるわ!? ツッコミ入れてあげたいけど誘う踊りが止まらないんだからもう!!」

 

「こ、この状況はいかん⋯⋯!?」

 

「そっちへ行くな、ジュイネ⋯⋯! 勇者のお前には相応しくない⋯⋯ッ!」

 

 

「──⋯⋯うるっさいな、ロウじいと同じくムフフ本愛読者のグレイグに言われたくないよ」

 

「ンな゛⋯⋯?!」

 

「グレイグはロウじいと一緒に秘蔵のピチピチバニーでも見てればいいでしょ、僕はマルティナと一緒にここで遊んで暮らすから」

 

 踊り続ける三人を尻目にジュイネは呪われしマルティナの元に行く。

 

 

「ウフフフ、私の元に来てくれて嬉しいわジュイネ⋯⋯ずぅっと楽しんで暮らしましょうね♡」

 

「じゅ、ジュイネ! お前は希望の勇者なのだぞッ! その使命を投げ出してこんな如何わしい場所で遊んで暮らすなど言語道断だッ」

 

「何が希望の勇者だよ⋯⋯ずっと僕のこと悪魔の子呼ばわりしてきたくせに今さら」

 

 グレイグに冷たい視線を向けるジュイネ。

 

 

「そ、それは⋯⋯ッ」

 

「勇者の使命なんて、下らないよ。そんなのはもうどうでもいい。⋯⋯悪魔の子の方が僕にはピッタリだ」

 

「その通りよ⋯⋯何てったってジュイネは魔王を誕生させてくれたんだもの、真の勇者ならそんな事するわけないでしょ?」

 

 ジュイネの身体に絡みつつ楽しげに言うマルティナ。

 

 

「あれは⋯⋯あれは仕方のない事だったんじゃ。尾行に気付かなかったわしらにも責任がある⋯⋯!」

 

「そうよ、アタシもあの場で何も出来なかった⋯⋯。勇者ちゃんであるアナタを守れなかったんですもの⋯⋯!」

 

「ジュイネが自らを悪魔の子だと言うのなら⋯⋯俺はさしずめ魔王となる者の眷属だったに過ぎない⋯⋯。お前が勇者である事を諦めてしまったら、預けた俺の命も返っては来ない。自ずと、俺も諦めねばなるまい⋯⋯」

 

 ロウは踊り疲れつつ、シルビアはキレのある踊りを保ちながら、グレイグは憂いのバンデルフォン音頭を踊り続ける。

 

 

「そぉねぇ⋯⋯だったらみんなでここで一生遊んで暮らしましょ? グレイグはアタシとジュイネの犬にしてあげるし、ジイさんと旅芸人はモンスターカジノのVIPルームの従業員にしてあげる♡」

 

「オスが増えるのはヤダな~、それにマルティナ、ボクちんよりサラサラヘアーの子カワイがっちゃってるし⋯⋯嫉妬しちゃうじょ! マルティナはやっぱりボクちんだけ見てなくちゃ! こっち見てよマルティナ~♡♡」

 

「え~? 何かしらブギー様、今ちょっと取り込み中───」

 

 呪われしマルティナはジュイネに執拗に触れていたが、ふとブギーに虚ろな目を向けたのはマルティナではなくジュイネだった。

 

「⋯⋯⋯??」

 

「ゲッ、何でキミがボクちんの《第三の目》見ちゃうの⋯⋯?!」

 

「うわぁ⋯⋯ブギー様最高、僕を奴隷にして下さい⋯⋯!!」

 

 ジュイネはブギーに釘付けになり縋り付き、それを見たマルティナは酷く動揺する。

 

「えっ、ちょっとやだジュイネ、そっちに行かないでよ⋯⋯?!」

 

 

「そうだじょ、キミじゃなくてボクちんはマルティナを魅了───」

 

「ブギー様⋯⋯僕を見捨てないで⋯⋯」

 

 ジュイネの上目遣いの涙目にブギーは一度雷に打たれたような感覚を覚えた。

 

「!!? 新しい境地に目覚めた気分だじょ⋯⋯⋯。よし決めた! キミは今からボクちん専属の奴隷だじょ!!」

 

「うれしいです⋯⋯何でも仰って下さい⋯⋯!」

 

「じゃあキミもボクちんのとっときのバニースーツ着てみる⋯⋯?」

 

 

「ちょっと待って、ブギー様⋯⋯? どういう事かしら」

 

 冷たい声音のマルティナにぎょっとするブギー。

 

「えっ、だってマルティナもボクちんが一番じゃなくなったんでしょ⋯⋯?」

 

「そういう問題じゃないわ⋯⋯、私のジュイネを勝手に奪わないでって言ってるの」

 

 凍える眼差しをブギーに向けつつ、マルティナはロウ、シルビア、グレイグに声を掛ける。

 

「ねぇ貴方達⋯⋯そろそろ踊ってるのも飽きたでしょう? ここは協力して、ジュイネを取り戻さない?」

 

 

「孫のバニースーツ姿は、流石にいかん⋯⋯。踊り疲れている場合ではないの、わしの唯一無二の孫を救わねばッ!」

 

「フフ、まだまだ踊れちゃうけどそれはお預けね。アタシ達の勇者ちゃんを取り戻すわよっ!」

 

「ブギーめ⋯⋯貴様絶対に許さん。我らが希望の勇者と誇り高きマルティナ姫を穢すとは⋯⋯万死に値するッ!!」

 

 

「ブギャー! ジュイネくん、ボクちんをまもって!!」

 

「了解しました⋯⋯!」

 

 ブギーを守ろうとジュイネが立ちはだかる。

 

「ジュイネは私が引き受けるわ、貴方達はブギー様を⋯⋯いいえ、ブギーを存分に殺っちゃって!!」

 

「マルティナは正気に戻りつつあるのかないのか⋯⋯まだ判らんが、とにかくわしらはブギーを討つぞいッ!」

 

「合点承知よんっ!」

 

「成敗してくれる!!」

 

 

「ブギーなんかに魅了されてちゃいけないわジュイネ、私だけを見つめなさいっ!」

 

「君に言われたくないよマルティナ⋯⋯君が興味無くしたブギー様に僕は身も心も奪われちゃったんだから⋯⋯!」

 

 マルティナのセクシービームの乱射を華麗に躱すジュイネ。

 

「嫌よそんなの⋯⋯ジュイネは私の物よ。あんな奴の奴隷になるより、ずぅっと楽しい事してあげるから⋯⋯!」

 

「必要ないよそんなの、僕はブギー様と楽しいことするんだ。ブギー様のためならバニースーツだって───」

 

 

「ルカニ!」

 

「グレイグへバイキルト! か~ら~の~⋯⋯」

 

「まじん斬りぃッ!!!」

 

「ブゲラあァ⋯⋯?!!」

 

「!?」

 

「⋯⋯?!」

 

 ロウ、シルビア、グレイグの猛攻により妖魔軍王ブギーは呆気なく倒され、その直後マルティナとジュイネは糸の切れた人形のように折り重なって倒れる。

 

 

「よし、倒したぞッ! ジュイネと姫は───」

 

「あらん、二人共倒れちゃってるわ!」

 

「ブギーは倒したのじゃ、二人共正気に戻ってくれると良いが⋯⋯姫は元の姿に戻っておるから大丈夫なはずじゃ。しかし⋯⋯なんじゃな、二人の倒れ方が───」

 

 

 仰向けのマルティナの上に、うつ伏せのジュイネが折り重なって倒れているのだが、ジュイネの顔がちょうどマルティナの胸の谷間に上手い具合いに挟まっていた。

 

「う、ん⋯⋯? えっ、ジュイネ⋯⋯私の上で、何をしているの⋯⋯??」

 

「───⋯⋯ぷはっ!? ち、違うんだマルティナ、僕はそういうつもりじゃ」

 

「ふふ⋯⋯いいのよ、判っているわ。⋯⋯もう少し、このままでいましょう」

 

 顔面を離したジュイネの後頭部に両の手を回し、再び自分の胸元に沈めようとするマルティナ。

 

「ちょっ、待って⋯⋯マルティナ、まさかまだブギーから受けた呪いが解けてないの⋯⋯?!」

 

「そういうわけじゃないけれど⋯⋯今はまだ、貴方を離したくないの」

 

「マル、ティナ⋯⋯」

 

「生きていてくれて、本当に良かった⋯⋯ジュイネ。また、貴方を守れずに失ってしまったんじゃないかって、怖くて仕方なかった⋯⋯。だけど、絶望しているわけにもいかなくて⋯⋯私なりに出来る事をしようと、魔物に占領されているグロッタまで来て町を助けようとしたのだけど⋯⋯まさか逆に手駒にされてしまうなんて、不覚だったわ」

 

「大変、だったね⋯⋯。マルティナも生きてくれていて良かった、本当に⋯⋯。僕が魔王を誕生させてしまったせいで、多くの人々の命を犠牲にしてしまった⋯⋯これ以上、誰も犠牲になんてしたくなかったから⋯⋯」

 

「つらかったわね⋯⋯。魔王を誕生させてしまった責任は、私にもあるわ⋯⋯あの時、ジュイネを守れなかったんだもの。まだ見つかっていない仲間もきっと、生きてくれているはずよ。そう信じて前に進みましょう」

 

「うん⋯⋯!」

 

 

 

 

end

 

 

 

 

 

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