轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure 作:竜の蹄
「よーし‼︎ 見えて来た‼︎」
雪歩、紺亮、菖は蒼太に指定された場所へと辿り着いた。海が見渡せる岬だが、下には砂浜が広がっている。
「海だ〜‼︎ 広〜い‼︎」
「当たり前だろ、海なんだから広くて……」
「遠足じゃ、ありませんのよ? 真面目にやって下さいな!」
海を前にして子供の様にテンションが昂る雪歩だが、紺亮と菖は冷めた様子だ。
「さて……問題は、件の沈没船をどうやって探すか、だな…‼︎」
「海に潜って探す‼︎」
「……分かってるよ。そうじゃなくってな、雪歩さん……」
的外れな回答をした雪歩に、紺亮は気が抜けた様に突っ込む。
「先ずは沈没船の沈んでいる場所を特定する所から始めませんと。その後は……白瀬さんの言う通り、泳いで探す事になりますわ」
「潜水服も無いのに、どうやって?」
紺亮の言う事は最もだ。海底を探索するには、潜水服が欠かせない。海底では呼吸と水圧が、どうしても障害となる。
菖は、ハァ……と溜め息を吐いた。
「……貴方、何にも知りませんのね? このN=アクセルスーツは、10000mくらいの水圧には耐えられますわ。後は、ゴーゴークルーザーを使って、沈没船をサルベージしましょう……」
「サルベージか‼︎ 電話番号が沢山、載ってるよね‼︎」
「そりゃ、タウンページな‼︎ 分かりにくいボケをかますな‼︎」
「……貴方がたを見てると、下手なコントより見ていて飽きませんわ……」
菖が素っ気なく言った。紺亮は……
「なんか皮肉に聞こえるな……俺の気のせいか?」
と、尋ねる。すると、菖はジト目で見つめながら…
「あら? 皮肉を言ったつもりですが、何か?」
とだけ、呟く。
「……そうッスか……」
最早、紺亮は突っ込む気すら失せてしまった様だ。しかし、雪歩は既にウズウズしている様子だ。
「ねェ! 早く行こうよ‼︎ この海の何処かにあるんだから、泳いでれば見つかるよ‼︎」
あくまで楽観的に物を言う。だが、菖は額に青筋を浮かべながら雪歩を睨み……
「何処かにある、ではだめなの駄目なの‼︎ 明瞭に場所を特定してからで無いと、探検するのに効率が悪いですわ‼︎」
「効率とかなんて良いじゃん‼︎ 私は早く冒険がしたいの‼︎」
子供みたいに駄々を捏ねる雪歩。すると、遂に菖の中にある堪忍袋の緒が切れた。
「お黙りなさいッッ!!! 」 ースパァァン!!!!ー
菖の持ち出したハリセンが雪歩の頭に直撃した。
「イタァァァイ……!!!! 酷いよ、菖ちゃん……!!」
「冒険行きたいから突っ走れば良いって訳じゃありませんの‼︎ 先ずは状況を確認する事が要ですの‼︎
分かりまして⁉︎」
「……はァァい……」
菖に怒られて雪歩は渋々、納得した。その様子を見た紺亮は……
「……自分も、コントみたいだって自覚ねェのかな?」
と、ポツリと呟いた。しかし、菖はギラッと見据える。
「何か言いまして、松浦さん⁉︎」
「いや、別に……」
「オーッホッホッ‼︎ 相変わらず、チームワークがガタガタの格下戦隊達ね‼︎」
突然、高笑いが響き渡る。声の方を見ると、ネオ・クエスターズ三人が立っていた。
「現れたね! オバさん‼︎」
「いい加減にしつけェな……‼︎ また、やられに来たのかよ⁉︎」
「私達が格下戦隊なら、差し詰め貴方達は歯牙にも掛からない様な最底辺ネガティブじゃなくて?」
「お黙り‼︎ まぐれで二回、勝ったくらいで、いい気になるな‼︎」
痛い所を三人から突かれたラアナは激昂した。
「今回の私達は、今迄とは一味違うわよ‼︎ パワーアップして、強力な戦力を整えて来たのだから‼︎」
「それ、典型的な敗北フラグじゃん? 勝てる、って自信満々に話す奴は大抵、負けるって相場が決まっているよな?」
得意げに語るラアナにダメ出しを入れる紺亮。益々、ラアナは猛り狂った。
「きイィィィィッ!!! あー言えばこー言う‼︎ アンタ達みたいな、屁理屈並べ立てるガキは嫌いよォォォォッ!!!」
「ラアナ様。挑発に乗ってる場合じゃ無いですよ」
頭を掻き毟りながら、喚き散らすラアナをツルギが宥めた。漸く、落ち着きを取り戻したラアナはコホンと咳払いした。
「……そうだったわ。ボウケンジャー! 態々、やってきて何だけど、私達は既にプレシャスのある場所を特定しているのよ‼︎」
「ええ〜!? 嘘〜⁉︎」
「オーホッホッホッホッ‼︎ 悔しい⁉︎ でも、もう遅い‼︎ アンタ達が手こずっている前に、プレシャスを奪ってトンズラさせて貰うわよ‼︎」
一転して勝ち誇りながら、ラアナ達は海に飛び込む。海面には彼女達の潜水艦が停泊していた。
「悔しかったら、私達より早くプレシャスを見つけてごらんなさ〜い‼︎
アデュー! 格下トリオ‼︎」
そう言い残し、潜水艦は海中に消えて行った……。
「マジかよ……今回は嫌に冴えてるな、アイツ等……」
「二度も負けてるから、三度目の正直で勝つつもりでしょうね……」
「二人とも、落ち着いてる場合じゃ無いよ‼︎ 早くしないと、ネガティブにプレシャスを取られて逃げられちゃう‼︎
……そうだ‼︎ ネガティブ達は、プレシャスの場所を特定したって言ってたよね‼︎ だったら、ネガティブを追跡すれば、良いんじゃ無い‼︎」
雪歩の提案に、紺亮は頷いた。
「なるほどな……万が一、プレシャスを奴等が奪ったら、奴等を倒して奪い返したら良いって寸法か……。
無闇矢鱈と探して回るよりかは、効率が良いかもな……」
「……しかし‼︎ それで逃げられたら、元も子もないのでは……とは言え、他に手掛かりがある訳ではありませんし……。
仕方ありませんわね! 一先ずは、その方法で行きますわよ!」
菖も渋々ながら納得した様子だ。雪歩は……
「よーし‼︎ じゃ、早速、出発進行‼︎ 皆、早く早く‼︎」
と、雪歩は走り始めた。菖は溜め息を吐く。紺亮は菖を見る。
「何だ? もっと反対するかと思ったけど、意外にすんなり納得したな? ひょっとして、アドバイザーの一件か?」
紺亮の言葉に菖は目を釣り上げる。
「私は別に……任務成功を優先した結果ですわ‼︎」
菖はムキになった。紺亮は肩を竦める。
「そうかよ。アンタ、何だかんだで雪歩に厳しいけどよ……結構、心配してる風に見えるぜ。案外、仲間思いなんだな……アンタ……」
と、軽く溢す紺亮。すると、菖は振り返る。酷く機嫌を損ねている様子だ。
「仲間思い⁉︎ 今は許すけど、二度と言わないで‼︎」
「な、何を怒ってんだよ?」
菖の剣幕に紺亮は困惑した。
「私は、サージェスが貴方達をチームメイトに指名したから、共に行動しているだけですわ‼︎ 私は仲間なんか必要無い‼︎
……仲間なんか信じたって……馬鹿を見るだけですわ……‼︎」
そう吐き捨てると、菖は去って行った。訳が分からない紺亮は首を傾げる。
「……何だってんだ?」
しかし、今はプレシャスの奪還が先決である。紺亮も後に続く。しかし、海面から突き出したスコープが彼等の姿を監視していた事に気付かなかった。
「オホホホ‼︎ 上手くいったわね‼︎」
ラアナは得意となっていた。右の操縦席に座るツルギは……
「しかし、ラアナ様もズル賢い……ボウケンジャー達に、プレシャスを探させて見つけた所を横から掠め取るなんて……」
「ドゴラン……」
と、ドゴランと共に呆れた様子だ。
「オホホホ‼︎ 狡猾、と言いなさい‼︎ 別に、ボウケンジャーを倒さなくとも、プレシャスさえ手に入りさえすれば良いのよ‼︎
いつだって知略を巡らす者が戦いを制する‼︎ この美しく聡明なラアナ様の知謀の前には、ボウケンジャーなどを翅を捥がれた羽虫同然‼︎」
(単にセコいだけだと思うが……まあ、今は何も言うまい……)
ツルギは、ラアナに対し思う所があるが、プレシャス奪取の為に、今は閉口した。
「さァ、ツルギ‼︎ ドゴラン‼︎ ボウケンジャーを追跡するわよ‼︎ 発進‼︎」
「了解‼︎」「ドゴラン‼︎」
ツルギが潜水艦を作動させた……。
海上を突き進むゴーゴークルーザー。既にアクセルスーツを着用したボウケンジャー達は、甲板に集結していた。
「クルーザーを操縦しなくて良いのか?」
ネイビーがバイオレットに尋ねる。対し、バイオレットは……
「私のスーパーアクセルラーから遠隔で操作してますわ。だから、問題ありません」
「ネガティブは潜水艦だよ? 海の底の確認出来るの?」
「ゴーゴークルーザーの船底には10個近くカメラが仕掛けられており、ビークル自体にも魚群探知機の数十倍に感度の良いスキャンが内蔵されているから、魚1匹から魚雷一発だって見逃しませんわ」
「凄〜い‼︎」
バイオレットの説明を受けたホワイトは感心した。とは言え、海は広いし、限りなく深い。其処から、プレシャスを見つけ出すのは至難の業である。
「あ、見て見て‼︎ イルカだよ‼︎」
しかし、ホワイトは呑気にイルカの姿に興奮していたり、と危機感がまるで感じられない。
バイオレットは溜め息を吐く。
「何処まで、お気楽なんだか……。ネガティブの言葉が真実なら、プレシャスを奪われるまで、時間が足らないと言うのに……」
「……いや……その事なんだがよ……。多分、アイツ等、プレシャスの場所を特定したってのは、ハッタリじゃ無ェかな?」
急にネイビーの発した言葉に、バイオレットは振り返る。
「何を根拠に?」
「根拠なんか無ェよ。ただ、何となくな……。仮に俺達が来る前に、プレシャスを特定してたんなら、とっくにプレシャスを手に入れてた筈だろう?」
「……確かに……」
ネイビーの発言は根拠も何も無い仮説でしか無い。だが、もし嘘だったなら、ネガティブ達は今頃、プレシャスを探して海を彷徨っている筈だ。
「……だとしても、プレシャスを先に見つけるのは、ネガティブである可能性だってありますわ‼︎ 私達が先に見つけなくては‼︎」
「……おい‼︎ スーパーアクセルラーが‼︎」
ネイビーが、バイオレットが手に持つスーパーアクセルラーを指し示した。アクセルラーから、ピーー、ピーーとソナー音を発しているのが見えた。
「……この反応は……どうやら、この下に何かある様ですわ……」
「見つけたの⁉︎」
ホワイトも興味を持って、近寄って来た。バイオレットは二人を見て……
「どうやら、潜水してみる必要がありますわね……‼︎ 皆さん、船内へ‼︎」
バイオレットは仲間達を船内へ誘導した。そして、全員の姿を確認した後に、バイオレットがスーパーアクセルラーを操作した。
「ゴーゴークルーザー、潜水モード! 作動‼︎」
瞬く間にクルーザーは潜水艦の如く、水中へて潜っていく。窓から外を見ると、海底の姿が広がる。
「……海底って、こんなになってたんだね……‼︎」
「確かにな……ハッキリ言って、圧倒されちまうよ……地球の壮大さの前じゃ、人間なんて蟻みたいなもんだもんな……」
ホワイト、ネイビーは海底の見せる姿には息を呑んだ。バイオレットは、その間に思案に暮れていた。
(……考え方も育った環境も異なる……ただ、ボウケンジャーのメンバーである、と言う事しか共通点が無い……。
なのに私は……何故、彼等を……?)
知らない内に、バイオレット/菖は、ボウケンジャーとして知り合った二人の仲間達に影響を受けていた。
特に雪歩には、何度も手を焼かされているに関わらず、彼女の奔放で何者にも囚われない自由な生き方に憧れている節さえあった……。
(菖…‼︎ 私、きっと戻るから…‼︎ 待っててね‼︎)
あの日の記憶がリフレインする。思い出したく無い、思い出せば辛さしか無い、あの日の記憶が……!
あの日、彼女は帰らなかった……怪我をして蹲っていた自分に必ず戻る、と約束しながら、彼女は戻らず、その後も会う事は無かった……。
止めて、思い出させないで‼︎ 記憶の果てに鍵を掛けて押し込めた記憶が、自分の頭の中に流れ込んでくる……。
(……やめちゃん……あやめちゃん……)
誰か別の声がする……誰かが呼んでいる……。
「菖ちゃん‼︎」
声はホワイトだった。ホワイトは呆然としていたバイオレットを呼んでいたのだ。バイオレットは我に帰る。
「どうしたの? ボーっとしてるよ?」
マスク越しに声を掛けて来る雪歩の顔……しかし、バイオレットはプイッと目を逸らす。
「……何でもありませんわ‼︎ そんな事より、任務に集中して‼︎」
いつもの様子に戻ったバイオレット。すると、ネイビーが叫ぶ。
「あれ、沈没船じゃ無ェか⁉︎」
ネイビーの指差した方角……周りの景色に溶け込んでいたが、バイオレットは船に備えられたライトを点灯する。
目の前に、中世のガレオン船タイプの巨大な帆船が沈没していた。
「あれが……海賊船……‼︎」
「スゲェな……‼︎」
「周りにネガティブは居ないみたいね……‼︎」
三人は各々に感想を漏らす。すっかり海藻や珊瑚に覆われているが、大きさはゴーゴービークルを上回る。
「けどよ……このデカさじゃ、サルベージなんて無理じゃね?」
「中を探索しようよ‼︎ もしかして、海賊船の幽霊が出て来たり?」
「ゆ、幽霊⁉︎」
ホワイトの何気ない会話にバイオレットが上擦った声を上げる。ネイビーは…
「あのよォ……幽霊なんか居る訳ねェだろうが」
と、冷たく返した。
「へ〜。紺君、幼稚園の頃、夏祭りのお化け屋敷でピーピー泣き喚いてた癖に〜」
「が…ガキの頃の話だろ⁉︎ つか、今は信じてねェよ‼︎ おい、植村‼︎ お前だって……‼︎」
ホワイトに茶化されて、ネイビーはムキになる。バイオレットに話を振ろうとしたが、当のバイオレットはガタガタと震えていた。
「……幽霊なんて居ない、幽霊なんて居ない、幽霊なんて居ない……」
まるで壊れたラジオの様に、ぶつぶつと繰り返しているバイオレットの姿に、ネイビーは…
「……なァ……まさか、お前……」
「菖ちゃんも、幽霊が怖いの?」
ホワイトのトドメの一撃に、バイオレットは喚き出した。
「な、何を仰ってますですの⁉︎ 大体、霊なんて物は、目には見えないエネルギー体ですわ‼︎ 百歩譲って存在したとしても、人体に害を及ぼせる様な高密度なエネルギーを有する霊など、存在する訳ありませんですますわ‼︎」
物凄く動揺しながら、バイオレットは捲し立てた。ホワイトとネイビーは、何かを察した様に頷く。
「……大丈夫だよ、菖ちゃん。私も子供の頃からピーマンが苦手で、今も食べれないんだ……。だから、苦手な事があるのは恥ずかしい事じゃ無いよ……」
「……その、まー何だ……。人間は二つ三つ、苦手な事があって丁度良い生き物だと、俺はそう思うぜ……」
「急に優しく励まさないで‼︎ 余計に傷付きますわ!!!」
馬鹿にする訳でも、罵倒する訳でも無い。寧ろ、傷口を優しく舐める様な労りに満ちた気遣いに、菖は却って傷口を抉られた。
「悪い⁉︎ 私、小さい頃に観たホラー映画がトラウマとなって、今も残っていますの‼︎
笑いなさい‼︎ 笑いたければ好きなだけ、たんと笑いなさいな‼︎」
「……………プッ……!!!」
「……………ククッ……!!!」
『アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』
次の瞬間、クルーザー内は大爆笑に包まれた。ホワイトは腹を抱えて笑っているし、ネイビーは床を叩きながら呻く様に笑う。
「菖ちゃんにも怖い物があったんだ‼︎ おっかし〜‼︎」
「普段、威張ってばかりの高飛車お嬢様の弱点が幽霊かよ⁉︎ いや〜、これは駄目だ! 笑っちまう‼︎」
さっきまでのシリアスさが吹き飛び、笑い転げる二人。しかし、バイオレットは、一人プルプルと震えていた。
「……そんなに面白いかしら……? 私に怖い物がある事が……‼︎」
遂にブチ切れたバイオレットは、一番に笑っているネイビーの首にチョークスリーパーを仕掛けた。
「……だったら、教えて上げますわ……‼︎ 幽霊より怖い恐怖がある事を……ね!!!!」
「ぐ…ぐるじ…い…!!! ……笑いたきゃ笑え、って言ったじゃ……‼︎」
「問答無用!!!」
力の限り、ネイビーの首を締め上げるバイオレットと、苦しみの余り悶え苦しむネイビー。
「……ぎ、ギブギブ……‼︎ ゆ、雪歩……助け……‼︎」
「見て、二人共‼︎ 沈没船が‼︎」
ホワイトが叫ぶ。彼女の声に釣られてわバイオレットは漸く手を離す。ネイビーは咳き込みながら息をした。
「ど、どういう事ですの?」
「な、何だ、ありゃァ? 沈没船が、浮上してる⁉︎」
目の前で起きている事に、ネイビーとバイオレットは目を丸くする。既に廃船となっている筈の沈没船が突然、浮上し始めたのだ。
「凄いね‼︎ 沈没船って動くんだ‼︎ 世界って広いんだね‼︎」
ホワイトは感心しながら叫ぶ。だが、バイオレットは…
「そんな訳無いでしょう⁉︎ 沈没船が勝手に動く訳ありませんわ‼︎」
と、突っ込む。世界広しと言えど、潮流に流されでもしない限り、沈没船が一人でに動く訳が無い。
だが、目の前の沈没船は明らかに何者かに操船されている様に見えた。
「……もしかして、本当に幽霊が……⁉︎」
「ち、ち、違います‼︎ 断じて違います‼︎ ゆ、幽霊なんか、存在しません‼︎ あれは迷信ですわ‼︎」
「……‼︎ ネガティブじゃ無い⁉︎ 私達より先回りして‼︎」
ホワイトの発言に二人はハッとした。
「き、きっと、そうですわ‼︎ 幽霊なんて居る訳ありませんもの‼︎ あー、ネガティブで良かったァ……‼︎」
「いや、良かねェだろ⁉︎ 寧ろ、ネガティブの方が大問題じゃねェか‼︎」
恐怖の余り、支離滅裂な事を言い始めたバイオレットに、ネイビーは突っ込む。
「とにかく、追いかけよう‼︎ バイオレット、クルーザーを浮上させて‼︎」
「え、ええ‼︎」
ホワイトに急かされて、バイオレットは急遽、クルーザーを浮上させた。
「ちょっと、ちょっと‼︎ なんで、沈没船が勝手に浮上してんのよ⁉︎ ツルギ、これもアンタの仕掛け⁉︎」
「い、いえ⁉︎ そもそも、沈没船の場所自体を知らなかったのに、罠を仕掛ける余裕もありませんでしたし……‼︎」
ネガティブ側の突然の事態に慌てふためいていた。目当ての沈没船を見つけたまでは良かったが、その沈没船が突然、動き出したのだから、パニックになるのも仕方がない。
「と、兎にも角にも‼︎ ボウケンジャーに先を越される訳には行かないわ‼︎ アンタ達‼︎ 先回りして、プレシャスを回収するわよ‼︎」
「其処までだ!」
突然、ラアナの後頭部に何かを突きつけられた音がした。すると、背後にはディエンドライバーを構えるディエンドの姿があった。
「だ、誰だ貴様は⁉︎」
ツルギは怒鳴る。しかし、ディエンドは肩を竦め…
「通りすがりの仮面ライダーだ! 覚えておきたまえ! それより、彼女の命が惜しければ、僕の命令に従え‼︎」
「ち、ちょっと〜‼︎ 何の真似よ〜⁉︎ て言うか、何時から私達の潜水艦に紛れていたの⁉︎」
ラアナは突然、人質に取られてしまって動揺してしまう。
「最初から、さ。君達が、潜水艦に乗り込む手前を見計らい、潜水艦に搭乗していた。後は君達が入って潜水艦を操縦するまで、身を潜めていたんだ!」
「信じられん……吾輩の背中を取り、かつ気配まで消していたとは……‼︎」
「ど、ドゴラン……‼︎」
ツルギとドゴランは、思わぬ侵入者の存在に驚愕するしかない。
「さァ、二度は言わない。このまま三人共、海の藻屑になりたく無いなら……僕の指示に従え」
そう言って、ディエンドはラアナの横に逸らし、引き金をひいた。撃ち出された銃弾は、潜水艦の壁に当たった。
「つ、ツルギ〜‼︎ な、何とかして〜‼︎」
ラアナは恥も外聞も無く、命乞いを始めた。幾らネガティブの幹部である彼女でも、命は惜しい。
「仕方が無いですね……発進‼︎」
ラアナを人質に取られては、逆らう事は得策では無い。ましてや、狭い潜水艦内では戦う事もままならない。
仕方なく、ツルギは潜水艦を浮上させた……。
その頃、地上へ出たビークルの外に出た二人は目の前に航行する海賊船を目にした。
「改めて見ると……馬鹿でかい船だったな……‼︎」
ネイビーはクルーザーをも上回る巨大船を見ながら呟く。だが、気になる事は其処では無い。
何で、沈没していた筈の海賊船が動いているのか、そもそも誰が操船しているのか、である。
すると、船からおどろおどろしい声が響く。
〜宝ハ……渡サン……全テ、俺様ノ宝ダ……一欠片ダッテ渡スモノカ……‼︎〜
まるで、執念の様な怨嗟を込めた言葉……バイオレットは慌てふためた。
「いやァァァ‼︎ 幽霊が! 妖怪が‼︎ お化けが!!!」
普段の沈着な姿は何処へやら、バイオレットの姿はシュールなくらいに取り乱していた。
「落ち着け‼︎ まだ、本当に幽霊だと決まった訳じゃ無ェだろ⁉︎」
ネイビーは取り乱す彼女を宥めるのに苦労した。すると、船首に姿を現した人影をホワイトは指差す。
「あ、見て!」
船首に現れたのはテンプレな海賊船長の出立ちをした怪人だ。顔は骸骨でよく見たら頭部に髪の毛、口元にはカイゼル髭を蓄えている。
海賊の帽子を被り、服装も朽ち果てているが船長らしい身なりを整え、両手には豪奢な宝石を散りばめたサーベルが握られている。
「宝を奪いに来た馬鹿共が‼︎ 我が名はゴールディ・グリード‼︎ 俺様が掻き集めた宝は、砂金の一粒たりとも渡さん‼︎
宝を奪う者は……俺様のロッカーの中に閉じ込め、魂のままで未来永劫、苦しみ続けるが良い‼︎」
「いやァァァァァァッ!!! 出たァァァァァァッ!!!」
バイオレットは遂に泣き出した。確かに、髑髏の顔の幽霊が目の前に現れたのだから、常人からすれば恐怖である。
「もう帰りましょう‼︎ 私達、未来永劫、呪われて海の底を彷徨い続ける運命ですわァァァ!!!」
「だから、落ち着けって‼︎」
「バイオレット、あれは幽霊じゃ無いよ‼︎ プレシャスの力で動く幻なんだ‼︎」
子供みたいに泣き叫ぶバイオレットと、それを宥めようとするネイビー。そして、何かを悟ったホワイトは叫ぶ。
「ま、幻⁉︎ 何の根拠だよ⁉︎」
「アイツの胸元を見て‼︎」
ホワイトは、バイオレットの胸元を指差した。すると、破れた衣服の隙間から覗く彼の身体に吸い付く様に、赤く光る宝石が見えた。
「あれが、プレシャス《コスモハート》だよ‼︎」
「アイツ、プレシャスに操られてるってのか⁉︎」
「きっと、長い年月を掛けて、プレシャスと融合しちゃったんだよ! だから、あのプレシャスさえ何とかすれば…‼︎」
「な、何とかって……どうするつもりですの⁉︎」
ネイビーと気を取り直したバイオレットは、ホワイトに尋ねた。しかし、ホワイトは頷く。
「倒そう、アイツを‼︎ 彼は長い年月を海底で死ぬ事も出来ずに彷徨っていた‼︎ 全て、宝への執着とプレシャスの力のせいだよ‼︎
自由にしてあげよう‼︎」
ホワイトは確信した。彼の宝への底尽きぬ欲望を、プレシャスが歪な形で叶えてしまったのだ。
仲間を喪い、船を喪い、人として生きる事さえ喪った。ただあるのは、宝を独占したいと言う考えのみ……。今の彼は、プレシャスの力によって生き長らえているだけの咎人でしか無い。
「おじいちゃんが言ってた‼︎ 人は宝を手にすると、其れを失う事を恐れちゃうんだって‼︎ 今のゴールディも、まさにそうだよ‼︎
とっくの昔に肉体は滅びて、魂も其処には無い! 後生、プレシャスを持っているばかりに、永遠に海底で生き続ける事しか出来ない‼︎
そんなの……あんまりじゃ無い‼︎」
「……お前……‼︎」
ホワイトの切なる考えは嘘偽りでは無い。それを察したネイビーも…
「仕方無ェ……付き合ってやる‼︎」
と、応じた。バイオレットも漸く立ち上がり…
「……怖がってばかりでは駄目ですわね‼︎」
と、勇気を振り絞る。バラバラだった三人だが、ボウケンジャーとしての使命が団結させた。
しかし、ゴールディは怒りの奇声を上げた。
「宝を奪う者は……海の藻屑と化せェェ!!!」
ゴールディが叫ぶと、既に壊れた筈の大砲から弾が発射された。弾は、ゴーゴークルーザー目掛けて、飛んで来る。
「ちくしょう‼︎ これじゃ、近付けやしねェ‼︎ おい、バイオレット‼︎ このクルーザーには武装は無いのか⁉︎」
「ありますわよ‼︎ ゴーゴークルーザー、武装モード‼︎」
バイオレットは、スーパーアクセルラーを起動させる。すると、クルーザーの両翼からファンが出現した。
「アクアボンバー‼︎」
クルーザーが汲み上げた海水を、ファンから多量の高圧水流として発射する。砲弾を全て無効化し、海賊船に横腹に激突した。
ただでさえ、オンボロだった廃船は、強烈な水流を受けて大きく傾いた。奇しくも、クルーザーの真横で傾いた事から、ホワイト達は乗り込めるタイミングを得た。
「今だ‼︎ 皆、行こう‼︎」
ホワイトを一番槍を仕掛け、海賊船に乗り込んだ。ネイビー、バイオレットも続く。
船上は、あちらこちらが崩れて、踏み場も無かった。そんな中、ゴールディは忌々しげに唸る。
「馬鹿め‼︎ あのまま、沈んでいれば楽に死ねた物を‼︎」
「馬鹿は、テメェだよ‼︎ 一生、海の底に居りゃ、二度も死ぬ事は無かったろうに…‼︎」
ゴールディの挑発に、ネイビーは返す。しかし、ゴールディは不気味に笑う。
「貴様等も……俺様のコレクションに加えてやる‼︎ カァァァ‼︎」
ゴールディが口を開くと、口からドス黒い煙が吐き出された。其れに触れた瓦礫は、宝石と変わってしまう。
「な、何だありゃ⁉︎」
「あの煙に触れると宝石に変えられる様ですわね‼︎」
下手に接近すれが、煙の餌食だ。しかし、ゴールディは飛び上がり、襲撃して来た。
振り下ろされたサーベルを、ホワイトはサバイブレードで受け止めた。
「ガハハハハ‼︎ お前も……宝石にしてやる‼︎」
「くゥ……ッ‼︎」
信じられない力でサーベルを握るホワイトは押し負けそうになる。だが、ゴールディの口がパカッと開いた。
「ホワイト、危ない‼︎」
バイオレットが駆け寄り、ホワイトを押しのけた。その刹那、ゴールディの口から放たれた煙を諸に浴びてしまう。
「あ、菖ちゃん⁉︎」
ホワイトが叫んだ刹那、煙が晴れていく。すると、ゴールディの前には紫色の宝石像と化したバイオレットの変わり果てた姿があった。
「い、嫌ァァァッ!!?」
「て、テメェ……‼︎」
「ガハハハハ‼︎ 宝石は美しいな‼︎ 全て、俺様の物だ‼︎ ガハハハハ‼︎」
ゴールドィは狂った様に笑った。ネイビーは我を忘れて、走り出した。
「う…うわァァァッ!!!」
「紺君、駄目ェェェ!!?」
ホワイトの生死も聞かず、ネイビーはサバイブレードを構えて、ゴールディの至近距離に入る。だが、彼の口から放たれた煙が、ネイビーを飲み込む。
次の瞬間、ネイビーまで青色の宝石像と化してしまった。
「あ…あ…!!!」
「これで、コレクションは二つ増えた……あと、一人……‼︎」
ネイビーから、ホワイトに標的を変えるゴールディの既に存在しない目には、妖しい輝きが揺らめいていた……。
ー次回予告‼︎
キャプテン・ゴールディの力で、宝石像に変えられたネイビーとバイオレット‼︎ 孤立無援と化したホワイトは、ゴールディに追い詰められる‼︎
しかし、其処に救援が現れた‼︎
次回! 轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure
task8 発動! 轟轟武装‼︎
雪歩「惜しい二人を亡くしたけど……私は負けない‼︎」
紺亮&菖「勝手に殺すな‼︎」