轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure   作:竜の蹄

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投稿が遅くなりました!
最近、スランプで遅筆となりましたが、何とか書ききりました‼︎
また、風邪を引いたり腰を痛めたり、と季節の変わり目から様々な病気にも悩まされてました…(涙)

では、本編をどうぞ‼︎


task9 密輸組織を追え!

 都内某所……サージェスタワービル……サージェス財団の権力と富の象徴とされるビルディング……その前に一台のリムジンが停まっていた。

 そのリムジンの周りには幾人ものカメラマンのシャッターを切る音が鳴り止まない。

 すると、ビル内から出てきた背の高いモデル体型の女性……濃いめなディープレッドのジャケットの下にはダークブルーのシャツ、ジャケットに合わせたタイトスカートから覗く黒いタイツを履いた両足、ダークグレーのヒールを含めたら、かなりの高身長の外国人女性だ。

 その女性に付き纏う様に、薄めのライトイエローのスーツを着たレポーターと思しき女性が叫んでいた。

 

「……それでは、答えになっていません‼︎ サージェスが、プレシャスの保護を口実に私設軍隊を組織している、と言う噂の真否を話して下さい‼︎」

 

 レポーターの女性の強い口調に対して、外国人女性は鋭い目で睨む。

 

「だから、さっきから言っているでしょう? 秘書である私が、サージェスの中枢の考えを知っている訳が無いと」

「貴方は、現会長に最も近い立場にあります‼︎ その貴方が、何も知らされていない訳が無いでしょ‼︎」

「……貴方もしつこい人ですね……。大体、これはサージェスが日本国に支援する為に設立した支援金の取材では?」

「……飽くまで、シラを切るつもりですか? 日本国民全体が、サージェスに盲信している訳じゃ無いんですよ‼︎

 この、サージェスタワービルにしろ、サージェスが独自に何かを隠す為に建設した隠れ蓑だ、と噂が広まっている事を知らないんですか⁉︎」

 

 レポーターの女性は問い詰める様に迫った。しかし、外国人女性はリムジンのドアを開けた。  

 

「もう話す事はありません。では、失敬」

「ちょ、逃げるんですか⁉︎ 会長との話がまだ……‼︎」

 

 外国人女性は、リムジンのドアをピシャリと閉めて走り去ってしまった。残されたレポーターは憤りながら、カメラ目線になる。

 

「……残念ながら、サージェスの上層部へコンタクトを取る企画は失敗に終わりました。ですが、私も報道関係者として意地があります‼︎ 必ずや、サージェスの隠す裏の顔を暴いて見せます‼︎」

 

 そう言って、撮影は一旦、カットとなる。カメラマンの一人が言った。

 

「白瀬さん! 局より、連絡入ってます!」

 

 そう呼ばれ、彼女は携帯を受け取る。

 彼女は白瀬紅葉。テレビ局のディレクターであり、今回はサージェス財団の上層部への突撃インタビューだった。

 因みに、彼女は雪歩の母親でもある。

 

「はい、白瀬です……」

 〜おい‼︎ 気は確かなのか、君は‼︎ 見たぞ! さっきのサージェスの秘書に対する態度は何だ⁉︎ ウチの局を潰す気か‼︎〜

 

 局では自身の上司であるプロデューサーが電話越しに怒鳴る。紅葉は片目を瞑りながら、その怒声を聞き流す。

 

 〜あんな、サージェスに対して煽る様な言動は慎め‼︎ 今や、サージェスの力は日本の経済庁から法務省にまで及んでいるのだぞ‼︎ 万が一、サージェスを敵に回して見ろ‼︎ 我々は明日から、全人類からハブられる事態になりかねん‼︎〜

 

 局長は保身の為に、サージェスと敵対するな、と釘を指した。しかし、紅葉は…

 

「御言葉ですが、プロデューサー! 私は現場を取り仕切る人間として、真実を世に報道する義務があります!

 それに、昨今のサージェスの権力が暴走しているのは、プロデューサーもご存知の筈でしょう⁉︎」

 〜……君の、サージェス嫌いは知っているが……これは流石にオンエア出来ないぞ‼︎ 良いか! 今後、サージェスを否定する様な取材を取る事は禁じる!

 これは上司命令だ‼︎ 命令に反すれば、君は懲戒解雇とする様にと上層部から、お達しもある! 分かったな‼︎〜

 

 と言って、プロデューサーは強引に電話を切った。紅葉は電話越しに…

 

「腰抜けプロデューサー‼︎」

 

 と、毒を吐いた。側で見ていた若いADが困った顔で見ている。

 

「白瀬さん……やっぱり、局の意向を無視したこの企画、無謀だったんじゃ……! サージェスの闇を暴くなんて……。今の時代、アメリカの大統領やイギリス王室でさえ平伏させる権力を持っているサージェスですよ?」

 

 ADは冷や汗をかきながら、上司でもある紅葉に進言した。しかし、紅葉は頑なに譲らない。

 

「こんな時代だからこそよ‼︎ この国の政府高官や富裕層の人間でさえ、サージェスの顔色を伺って、彼等が白だと言えば黒も白だと言ってしまう!

 驕り高ぶるサージェスの天下も長く続かない事を、はっきりさせてやるわ‼︎」

 

 そう言う紅葉は、鼻息荒く宣言した。ADは頭痛がする思いだった。

 

(は〜……。また、女王様に振り回されるのか……)

 

 彼女は局内でも有名な気の強い人物と知られていた。自身が考えた企画を成功させる為なら、例え上司だろうと喰らいつく様な女傑として有名だ。

 故に、彼女の性格を揶揄して『女王様』と影で呼ばれているのだ。

 

「……そう言えば、白瀬さん。あれから、娘さんとはどうなりました?」

 

 何気ない質問をしたつもりだが、それは悪手だった事にADは気付く。紅葉が手に持っていたボールペンを片手でへし折ったからだ。

 

「……あの()()鹿()()の話はしないでくれる?」

「あ……すいません……‼︎(怖ェェェ‼︎)」

 

 そう言うと、ADはすごすごと退がる。君子危うきに近寄らず、とはよく言った物である。

 紅葉は、娘の雪歩の事になると感情的になってしまう。娘は、幼い頃から冒険家に憧れている節があった。

 今は亡き父、白瀬冬次郎……熟練の冒険家からは未だに一目置かれ、若き冒険家から神の様に崇められている……。確かに冒険家としては、彼は偉人だったかも知れない……だが、父親としては大失格である。

 年がら年中、冒険と称して世界を飛び回り、たまに帰ってきたと思えば、世界地図や古文書を読み漁っていた……。幼少期、あの男の姿はと言えば自分の書斎で難しい書物を読み耽っている後ろ姿しか見た事が無い。

 自分の誕生日も、卒業式も、結婚式も、雪歩が生まれた日も……母が急逝した日さえ、あの男は帰って来なかった。

 

(お父さんは家族より、冒険が好きなんでしょう⁉︎ なんで、あんなお父さんと結婚したの⁉︎)

 

 思春期に差し掛かった頃、母に八つ当たりする様に、父の不満をぶつけた事があった。だが、その都度に母は、宥める様に紅葉に諭した。

 

(お父さんは冒険の話しかしない様な人だけど、あの人が冒険の話を得意げに話す姿を見ていると、自分も一緒に旅をしている様な気持ちに浸れた……。

 それでかしらね……)

 

 等と、母は語っていたが、紅葉にはカケラも理解出来なかった。今だって、理解してやりたくても理解出来ない。

 あの男は最後まで冒険に生きた……。確かに、冒険家の父が冒険の中で命を落としたなら、本望であったに違いない。

 だが……娘として、父にもっと甘えたかった……雪歩や海人の成長を見守って欲しかった……そんな父への渇望が、父へのやり場のない怒りが、自分のサージェス批判への原動力となっていた……。

 と、変にセンチメンタルになりながら、スマホを目を通していた紅葉は思わず目を見開く。

 それは、サージェスの傘下である博物館、サージェス・ミュージアムの画像だった。其処には、他のミュージアム学芸員達に紛れて、写真に写っている人物……紛れもなく、娘だった。

 海人から『姉ちゃん、就職先が決まったって』と聞かされていたが、よりによって就職先が、サージェスの傘下なんて聞いてない。

 ADが缶コーヒーを持って、戻って来た。

 

「白瀬さ〜ん、コーヒー買って……うわッ⁉︎」

 

 思わず、ADは言葉に詰まった。さっきの比ではない程、紅葉の周りにメラメラと炎が立ち昇っていたからだ。

 

「白瀬……さん?」

 

 ADが遠慮しがちに話しかけた。だが、紅葉は一言……

 

「……あンの馬鹿娘……! ただじゃ済まさん……‼︎」

 

 と、地を震わせるくらい、低く籠った声で呟いた……。

 

 

 

 ミュージアムでは、雪歩はそうとは知らず、珍しくミュージアム内での業務に勤しんでいた。

 ボウケンジャーである以外は、雪歩はサージェスミュージアムに務める学芸員、と言う事になっている。

 とは言え、雪歩は展示物の説明や紹介が出来る様な知識はない。だが、ミュージアム内を見回り、観覧客を他の学芸員に案内したり、迷子は居ないか、等が業務である。

 しかし、今日は平日である。客層も老人や金持ちそうな見た目の人間ばかりで、客入りも少ない。はっきり言って、暇である。

 雪歩は退屈さから、軽く欠伸をした。と、彼女の肩を叩く者がいた。

 

「あ‼︎ 菖ちゃん、サボって無いよ‼︎ 今のは……‼︎」

「雪歩ちゃん、僕だよ」

 

 菖の声では無く、紺亮でも無い。振り返ると、影斗が優しく微笑んでいた。

 

「影斗さんか……。なんだ、脅かさないでよ……」

「ハハ、ゴメンゴメン。けど、退屈そうだね」

 

 影斗は普段、ラボに篭って出て来ない。プレシャスの解析や、ビークルの修理、開発などが主な仕事だからだ。

 そんな彼が、ミュージアム内に居るのには正直、驚いた。

 

「影斗さん、何してるの?」

「……ちょっとね……。そうだ、雪歩ちゃん。もし今、手が空いてるなら手伝って欲しい事があるんだ……」

「手伝って欲しい事? いいよ! どうせ暇だし!」

 

 はっきり言って、ミュージアム内で暇を持て余すくらいしか無い。彼女は朗らかに言った。影斗は苦笑いを浮かべながら……

 

「そっか……じゃ、ちょっと着いて来て」

 

 と、雪歩を手招きしながら呼ぶ。雪歩は、ノコノコと着いて行った。

 

 

 職員用のエレベーターに搭乗し、影斗に着いて行った先は、広大なドックだった。ドック内に足を踏み入れたのは初めてである雪歩は、改めて広さに圧巻された。

 

「すごーい‼︎ ミュージアムの地下に、こんなドックが広がってたなんて‼︎」

 

 雪歩は素直に驚愕した。影斗は振り返りながら、微笑む。

 

「君達の搭乗するゴーゴービークルの開発し、収納しておく格納庫さ。ボウケンパーキングへようこそ」

 

 そう言いながら、影斗は横を指差す。其処には窓が備え付けられ、中の様子が一望出来た。雪歩は、覗き込む。

 

「あ‼︎ ロコだ‼︎」

 

 雪歩は前面に見えるゴーゴーロコモーティブを見ながら言った。影斗は目を丸くする。

 

「ロコ? ああ、ゴーゴーロコモーティブの事かい? 名前を付けたの?」

「そうだよ! だって、私達を何度も助けてくれたんだよ? ロコも立派なボウケンジャーの一員だよ‼︎」

「ハハハ……そう言ってくれると、ロコモーティブも嬉しいだろうね。さて……君に見せたいのは、こっちだ」

 

 影斗は別の窓を指差した。雪歩が覗き込むと、其処にはコバルトブルーのカラーをした巨大なキャリアトラックが収納されていた。

 

「新しいビークル?」

「そうだ。名付けて、No -S06 ゴーゴートランスポーター。君達の搭乗するビークルを運搬、輸送する為の役割を持ち、ハイパービークルの到着時間の誤差を無くす為に開発しているんだ。旧タイプのゴーゴーダンプの後継機に当たる。

 此れを雪歩ちゃんの、専用ビークルにしようと考えている」

「本当⁉︎ 紺君のは?」

 

 雪歩はワクワクした感じで聞いた。前回、投入されたゴーゴークルーザーは菖の専用ビークルとなった。次のゴーゴートランスポーターは雪歩の専用ビークルとなるらしい。ならば、紺亮のビークルは?

 

「勿論、作成済みだ。コッチだよ」

 

 影斗が別の窓を開いて見せた。其処には、巨大なライトイエローのヘリコプター型ビークルが鎮座していた。

 

「No-S05 ゴーゴーコプター。空中からの援護射撃、高所への移動などを考慮してある。

 因みに、ゴーゴートランスポーターの開発に踏み切ったのは、クルーザーやコプターを同時同所へ出撃させる際に必要となるからなんだ」

「へ〜! で、影斗さん? 私に手伝って欲しい事って、これを見せる事?」

 

 雪歩の質問に、影斗は黙り込む。そして振り返った。

 

「……白瀬冬次郎……。君のお祖父さんの名前だ……」

「?」

 

 急に祖父の名が出て来た、雪歩はポカンとした。

 

「……僕は自分が何者なのか知らない……と言うより、分からない……。しかし、僕は夢の中で君に会っていたんだ。幼い頃の君とね」

「どうして?」

 

 訳が分からないまま、雪歩は問うた。しかし、影斗は真面目な顔だ。

 

「単刀直入に言おう。記憶を失う前、僕達は会っている! そして、僕の見る夢には必ず白瀬冬次郎の名が出てきた! つまり、僕の失われた記憶を知る鍵は君のお祖父さん、白瀬冬次郎が握っていると僕は睨んでいる!」

「……そんな事言われても……」

 

 雪歩は言葉を濁した。しかし、影斗はツカツカと雪歩の前に立っていた。そして、雪歩の肩を掴む。

 

「よく思い出してくれ‼︎ 君は彼から、何か聞かされていないか⁉︎」

「……え、影斗さん……痛いよ……‼︎」

 

 彼の余りの剣幕に、雪歩はたじろいだ。その際、雪歩の首から下げられたペンダントが揺れる。

 

「君が僕の過去を知っているのは明らかだ‼︎ 頼む、雪歩! 僕は自分を……‼︎」

 

「何をしてる‼︎」

 

 突然、怒号がして二人は振り返る。其処には憤怒の形相の紺亮が、こちらを睨んでいた。

 

「雪歩! こっちに来い‼︎」

「紺君⁉︎ どうして此処に⁉︎」

「お前が、ソイツに付いて行ったのを見たから後を付けたんだ‼︎ おい、お前! 雪歩に変な事するな‼︎」

「変な事、とは心外だな。僕は彼女に話を聞いていただけだ」

 

 と、言って影斗は雪歩から手を離す。雪歩は慌てて紺亮の方に行った。紺亮は鋭い目で、彼を睨んだ。

 

「……何の目的か知らねェがよ……雪歩に妙な真似しようってんなら、俺が許さねェからな‼︎」

「許さない? どう許さないんだ? 僕を間宮チーフや最上アドバイザーに突き出すか? そうしたら、君達のビークルの修理やプレシャスの解析は誰がするんだい?」

 

 いつもの優しい彼は嘘みたいに、何処か凶暴な獣の様な荒々しさを感じ、流石の雪歩もゾッとした。

 紺亮は負けじと怒鳴る。

 

「……とにかく‼︎ 雪歩は俺達の仲間なんだ‼︎ ちょっかいを掛けるなよ‼︎」

「……ああ……善処はするよ……」

 

 それだけ聞いて、紺亮は雪歩の手を引く。

 

「行くぞ、雪歩……新しい任務が出来た……」

「え? ……う、うん……」

 

 雪歩は紺亮に連れられ、パーキングを後にする。一人残った影斗は、服の下からペンダントを取り出す。そのペンダントには金色の十字架の形をしたアクセサリーが取り付けられ、彼は思案に暮れていた……。

 

 

 

 高速道路を走る一台のリムジン……中で先程の外国人女性が、電話で話していた。

 

「……会長……。今、どちらに居るんです? 方々を探したんですよ?」

 

 彼女は端正な顔立ちで無表情のままだが、明らかにピリピリしていた。

 

 〜何やら、機嫌が悪いね……。もしかして、怒っているのかな、レーヴ君?〜

「当たり前です。会長が空港で姿を消したせいで今、大変な騒ぎになってますよ? 貴方は、日本国内でも顔を知られるVIPだと言う自覚をお持ち下さい」

 

 淡々と告げるレーブに、電話の相手は悪びれる様子なく言った。

 

 〜ハッハッハッ…! まァ、そう言うな。久しぶりに来た日本だからね、ゆっくりと見ておきたい物があったのだよ!

 私くらいになると、少し小腹が空いたから軽食へ出ようにもSPやらボディーガードやらに囲まれて、息苦しくて仕方ない〜

「そう言うのを『贅沢な悩み』と言うのです。貴方は、サージェス財団のトップに立たれる人物なのですから、盤石の警護を敷くのは当然です」

 

 レーブの言葉に対し、会長は溜め息を吐いた。

 

 〜分かった分かった。14時に例の場所に来てくれたまえ。其処で合流し、本部へ直帰しよう。それで良いかな?〜

「……了解しました。現在、日本にはネガティブだけでなく、プレシャスの裏取引を行う密輸組織が入国しているので、ゆめゆめ御理解願います」

 

 そう言って、電話を切る。レーブは、小さく溜め息を吐いた。

 

「……全く、勝手な方だわ……こちらの苦労も考えて欲しいわ……。例の場所へ向かって頂戴」

「畏まりました」

 

 レーブの依頼に運転手は応える。リムジンは走り出した……。

 

 

 ミュージアムサロン内には、ボウケンジャーの面々が集結していた。雪歩は、さっきの影斗の豹変にまだショックを受けていた。

 あの時の影斗は明らかに普通では無かった。しかし、どんなに記憶を辿らせても影斗と過去に出会った記憶は無い。

 だが、強いて言えば……影斗からは妙に懐かしい感覚がした。まるで、祖父と話している時の様な感覚さえ感じる。だから、影斗に対し、警戒心無く接する事が出来た……。でも、それは何故……?

 

「……雪歩ちゃん……聞いてる?」

 

 菜月が、ボーっとしていた雪歩を呼び掛けた。雪歩は我に帰る。

 

「どうかしまして? まるで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔してましたわよ?」

 

 菖も聞いてきた。雪歩は首を振り…

 

「へ、平気! 何でもないよ……!」

 

 雪歩は要らぬ心配は必要無いとして、誤魔化す。だが、紺亮も様子が変だった。何処か落ち着かない様子だ。

 菖は憤慨する。

 

「全く呆れましたわ、2人共! いい加減、自分達がプロだと言う自覚を持ちなさいな‼︎」

「まぁまぁ、菖ちゃん……そんな、怒鳴らなくても……」

「チーフは2人に甘すぎますわ! もっと厳しくして下さい‼︎」

「え⁉︎……は、はい……何で菜月が怒られてるの?」

 

 怒りの矛先が自分に向いてきた事に、菜月は困惑した。すると、蒼太がウィンドウに出現する。

 

『やァ、皆揃ったね? 次なる任務を発表するよ! 今度は、メガ・プレシャスに辿り着く可能性が高い‼︎』

「……なんか、毎回そんな事を言ってて、メガ・プレシャスだった試しが無ェけどな……イテッ⁉︎」

 

 ボソリと紺亮はゴチる。だが、菖が紺亮の横っ腹に肘打ちを喰らわせて黙らせた。

 

「少し黙ってなさい」

「何すんだ⁉︎」

「紺君、シー‼︎」

 

 菖に文句を言おうとするが、雪歩にも黙る様に促されて紺亮は閉口した。

 

『……話を戻すけどね……今回の任務は、密輸組織を捕らえて彼等が闇の市場にて売り捌くプレシャスを押収する事だ』

「密輸組織? プレシャスを扱うと言う事は、バックにはネガティブが控えていると言う事ですわね」

 

 蒼太の言葉に、菖は推測する。前に対峙したプレシャスの売人、牧村隆もその一角だった。

 

「でも、プレシャスを扱う密輸組織なんて……なんで、民間人がプレシャスを密輸するの?」

「貴方、何も知りませんの? 今は、民間人だってプレシャスを手軽に入手できるからに決まってるでしょう?

 先日の樺蔵夫人の様に、プレシャスを闇から購入する様な輩が後を立たない……だから、プレシャスの密輸、密売は今、需要がありますのよ」

 

 菖の説明に、紺亮が口を挟む。

 

「密輸組織って言うくらいなら、メガ・プレシャスが流れ込んでくる可能性が高いって訳か」

『その通り! しかも、コイツ等は牧村の様な小悪党じゃ無い。過去には、ダークシャドウの下部組織として働いていた実績もあるんだ。

 最も、ダークシャドウ自体が無くなった今は、こう言ったプレシャスの密輸組織が増大してしまったんだけど……』

 

 蒼太の言葉に雪歩は胸を痛める。プレシャスを密輸……これらは、アドベンチャー時代の余波による物であるのは間違いないからだ。

 自分達も、サージェスの傘下として働いている以上、この様な連中とは同じ穴の狢なのだ。

 菖は蒼太に質問した。

 

「で、アドバイザー? その組織の名前と首領は?」

 

 彼女の質問は至極最もだ。組織の名称、並びに率いるリーダーの正体を掴んでいなければ、任務にならない。

 

『組織の名は、ローズ・ダン商会。ボスは欲賀剛。商会の社長であり、元々は非合法な薬物や密造武器の取引きで儲けるケチな悪党だったが、アドベンチャー時代の到来とダークシャドウの崩壊から、プレシャスの密輸に手を出した。今じゃ、かなりの私財を蓄えているらしい』

 

 そう言って、画面に映し出されたのは、丸々と太った下卑た顔で笑う男の顔が映し出された。一目で堅気の人間では無い事は明白である。

 

「悪そーな顔してるねー」 

 と雪歩。

 

「ネガティヴより、おっかねェ面してら」

 と、紺亮。

 

「初見で既に下衆だと分かりますわね。はらわたまで腐ってそうですわ」

 と、菖。

 

 各々の考察した通り、欲賀は善人とは言い難い経歴の持ち主だ。蒼太の挙げた

 例だけでは無く、彼はアドベンチャー時代の好景気を利用して、あくせくと財産を作り上げていた。其れ等は決して、合法な物では無く非合法かつ悪辣なやり口が全てだった。

 しかし、汚いやり方で得ようが金は金。彼は金に物を言わせ、自身の地位を築き上げてきた。

 

「今回の任務は、コイツ等をドカーンと叩き潰すんだね‼︎」

 

 唐突に言った雪歩の発言に、全員がズルっと肩を透かした。

 

「んな訳あるか‼︎ 本当、あと先考えねェな‼︎ お前は‼︎」

「貴方、ボウケンジャーを何だと思ってますの⁉︎」

 

 紺亮、菖は雪歩にツッコミを入れた。雪歩は…

 

「エッ? 悪い組織をやっつけるんでしょ、ボウケンジャーは? ネガティヴとだって戦うじゃない」

 

 と、聞いてきた。蒼太は流石に頭を抑えてしまった。

 

「蒼太さん、大丈夫?」

 

 菜月は不安げに尋ねた。蒼太は気を取り直して、話を戻した。

 

『……雪歩ちゃん、あのね……。ネガティヴの場合は、彼等がプレシャスを奪う為なら手段を選ばず、時には国家レベルの危険性を持つから戦闘を許されてるんだ。民間人に対しては、戦闘する事は許されないんだよ』

「……なーんだ……」

 

 そもそもの、サージェスに対する理念を理解していなかった雪歩に、説明する蒼太。

 そうして、漸く本題に入り始める。

 

『話を戻すけど……君達は、この組織とコンタクトを取り、彼等が所有しているプレシャスを譲渡して貰いたい』

「相手は密輸組織っスよ。素直に渡してくれますかね?」

 

 紺亮の言葉に、今度は菜月が話した。

 

「其れを上手く交渉するの! 私達も、そうして来たんだから、大丈夫だよ!」

 

 菜月の根拠は無いが、妙に説得力の篭った言葉に一同は頷くしか無かった。だが、フォローするかの様に蒼太が介入して来た。

 

『実はね……組織内に1人、話の分かる男が居るんだ。その男と、コンタクトを取れば問題無いよ!』

「誰ですの?」

 

 再び、画面が変わる。其処には、眼鏡を掛けた整った容姿の青年が映った。菖は驚いていた。

 

「……! この人は……⁉︎」

「? 菖ちゃん、知り合い?」

 

 明らかに尋常では無い菖の様子に、雪歩は尋ねた。しかし、菖は平静に装った。   

 

「……いえ……人違いですわ……」

「?」

「アドバイザー? 今回のプレシャスは何なんスか?」

『今回は、コレだ‼︎

 

 プレシャス《フェニックスの尾羽》だ‼︎』

 

 画面には虹色に輝く鳥の尾羽が映し出された。

 

「フェニックスって……不死鳥ッスか⁉︎ 実在するんスか?」

 

眉唾臭い、と言った感じに紺亮は尋ねる。

 

『フェニックスが実在するかどうかは分からないが、この尾羽は万病に効く力を持っているそうだ。だから、これを欲しがる国は多い。

裏ルートにて破格の100億円近くの大金で取引きされていたんだが、最近になってローズ・ダン商会が商品を横流しにして、強奪したと言う情報が入った』

「それって、普通に泥棒じゃ無いの?」

 

 雪歩が指摘した。紺亮は呆れた様に、溜め息を吐いた。

 

「あのなァ……そう言う事をやるのが、マフィアだってんだよ! 最も、相手は人間だからな……俺達には逮捕する権利が無ェしな……」

『その通り! でも心配は要らないよ! プレシャスを無事に回収し終えた後、彼等には法の裁きを受けて貰うつもりだ。既に警察に、彼等のアジトと過去数年に渡る罪状を示す情報をリークしてある!』

「……鬼か、アンタ……」

 

 蒼太の手際の良さに、紺亮は突っ込む。まあ実際、彼等は元から法の外を生きる外道者の集まりである。ましてや、貴重なプレシャスを商売に使っているとなれば、同情の余地も無いのだが……今回は、サージェスの都合による動きだけに、密輸組織達からすれば完全にとばっちりである。

 しかし、菖は映像の男の顔に穴が空くくらいに見続けていた……。

 

 

 定例会後、雪歩達は出動の準備に入る。雪歩は廊下を歩いていると菖は何だか沈痛な面持ちで立っていた。

 

「菖ちゃん、大丈夫?」

 

 雪歩が声を掛けると、菖は直ぐに何時もの様にキッとした顔になる。

 

「何でもありませんわ!」

「何でもない訳ないよ。あの男の人、やっぱり菖ちゃんと知り合いなんでしょう?」

 

 無遠慮に尋ねてくる雪歩に、菖はハァ…と小さく溜め息を吐く。

 

「……貴方、変な所に勘が良いんですわね」

「うん! ありがとう!」

「褒めてません‼︎」

 

 皮肉を返したつもりが、礼を言われた事に菖は突っ込む。

 

「……まさかとは思いましたわ……何であの人が……」

「どう言う知り合い? もしかして、元カレ?」

「……親友の恋人ですわ……何度も顔を合わせてましたし……付き合っていた訳では無く……私の片思いの相手ですわ……」

 

 珍しく、センチメンタルな雰囲気を醸し出す菖に雪歩は驚いて無言だった。

 

「名前は榎田大輔。その恋人の椿は私の高校時代の親友で、私が所属していた登山部の仲間だった。彼は、その部長。

 何時も三人で行動していたし、椿が彼と付き合っても仲は続いていた……。あの時までは……」

 

 菖はスマホを取り出す。其処には今より少し若い菖と先程の男性の榎田、そして愛らしい顔立ちの女性が写っていた。

 

「三人で、北海道にある冬山へ登山に行ったの……。けど、山の天候の変化に巻き込まれて三人共、遭難……彼とも離れ離れになった……私と椿は雪山を彷徨いましたわ……。

 けど、運悪く私が足を滑らせて怪我をしてしまい、動けなくなった私をほら穴に避難させて、椿は単身で救援を呼びに言った……。

 だけど……椿は……雪崩れに巻き込まれて……」

 

 言葉を詰まらせながら、菖は嗚咽を漏らす。菖が泣いていたのだ。

 

「……私は先んじて救助されていた彼と共に助けられたけど……後日、椿は凍死体となって発見された……。

 その事で彼は私を責めましたわ……。

 

 〜どうして、椿を置いて逃げた⁉︎ 椿は君の親友じゃ無いのか?〜

 〜ち、違う……私は……〜

 〜何が違う⁉︎ そもそも、この登山は君の発案じゃ無いか‼︎ 君が、発案しなければ……椿は……あんな……‼︎

 ……許さない……俺はお前を許さないぞ‼︎〜

 〜……ッ‼︎ー

 

「何それ⁉︎ ただの八つ当たりじゃん⁉︎」

 

 雪歩は激怒した。恋人を喪った気持ちは分かるが、榎田の言い分は単なる八つ当たり以外、何者でも無い。

 だが、愛する人を喪った榎田は、同じく親友を亡くした菖を気遣う余裕は無かった。恋人の死は菖の所為だと決め付け、彼女の心を更に傷つけたのだ。

 

「……それからは互いに険悪となり、私は高校を卒業後、大学に進学して冒険家の道に進みましたわ……。彼とはそれっきり……。

 たった一度の過ちで、私の友情は決裂してしまいましたの……」

 

 そう言う菖の顔には深い悲しみに満ちていた。雪歩は語り掛ける。

 

「……でも、菖ちゃんは悪くないじゃ無い! それは事故だったんだよ‼︎」

「……そう……ただの事故で、私は友を亡くしましたわ……その上……」

 

 もう、菖は耐えられなかった。大粒の涙を流しながら、泣き崩れた。何時も強く逞しかった彼女は今、子供の様に弱々しく泣いている。

 雪歩は、どう声を掛けていいか分からなかった。だが、その時、幼い頃に祖父から教わった言葉を思い出す。

 友達に自分の夢を馬鹿にされて、怒った雪歩はその子と大喧嘩に発展した。紺亮に連れられ、泣きじゃくりながら家に帰った雪歩は祖父に泣き付いた。

 

 〜ヒッ……クラスの子がね……ヒック……雪歩の事……バカだって……!〜

 

 雪歩の夢……いつか、祖父を探し求めたプレシャトピアを探し出す事……だが、不理解な物からすれば、ただの笑い話でしか無い。

 しかし、雪歩にしてみれな、自分の夢を笑われるのは、祖父を馬鹿にされた事と同じだ。

 祖父に縋り付き、泣き続ける雪歩に祖父は優しく言った。

 

 〜雪歩……人と言う漢字はな……二人の人が支え合って出来てるんだ……。片方が辛い時は、もう片方を支えて……逆の時も同じなんだ。

 だからな、雪歩……世の中ぬ同じ考えの人間は居ないし、中にはお前の夢を信じない者もいるだろう……。

 それでも、お前が辛い時に助けてくれる奴は必ず居る……もし、お前に助けを求めて来たら、そいつが何であろうと助けてやれば良い……。

 人間なんて、そう言うもんだ……〜

 

 祖父の言葉は雪歩の心に深く刻み込まれた。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げながら、雪歩は祖父を見る。とても、優しい顔だった……。

 

 雪歩は意を決して、菖に言った。

 

「菖ちゃん……人の漢字は支え合って出来てるんだよ? 菖ちゃんが辛い時は私が菖ちゃんを支えてあげるから、私が辛い時は助けて欲しいな?」

 

 その言葉に菖は振り返る。普段は破天荒で自分達を振り回すばかりの雪歩だが、まるで慈母の様に見えた。

 菖は拳で涙を振るい、雪歩を睨む。

 

「……貴方に心配される程、落ちぶれてませんわ! さっさと行きますわよ、雪歩‼︎」

「うん! やっぱり、菖ちゃんは其方の方が似合ってる‼︎」

「……ふんッ‼︎」

 

 何時もの高飛車な菖に戻った事に安堵した雪歩は、大股に歩いていく菖に付いて行った。

 其処から少し離れた角で、紺亮が立っていた。

 

「……アイツ等、仲良いのか悪いのか、マジ分ッんねェな……。ま、仕事に集中しますかね……」

 

 呆れ半分、安堵半分で紺亮も二人に続いた……。

 

 

 〜次回予告‼︎〜

 密輸組織ローズ・ダン商会へと赴く雪歩達。しかし、商会のボスである欲賀の仕掛けた卑劣な罠とネガティヴの襲撃により、フェニックスの尾羽は意外な人物の手に渡ってしまう……。

 

 次回! 轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure

 task10 轟轟戦隊VS仮面ライダー‼︎

 

 ディエンド「悪いが、君達の冒険はここで終わりだ‼︎」

 雪歩「な、何で、ディエンドさんが⁉︎」

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