轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure   作:竜の蹄

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遅くなりましたが、新年おめでとうございます。
昨年中の投稿に間に合いませんでしたが、本年もボウケンジャーの冒険を楽しんで下さい‼︎


task10 轟轟戦隊VS仮面ライダー!

 都内某所……都心から離れた場所にある見た目は朽ちかけたビルの一室……其処で数人の者達が、たむろしていた。

 何れも厳つい顔つきに、派手な金髪や赤毛に染めた髪、中には袖を捲り上げて晒した上腕には刺青を彫っている者も居る。

 賭けても良い、彼等は真っ当な堅気の人間では無かった。それもその筈、此処は密輸ブローカー達によって結成された闇の市場だからだ。

 更に言えば、彼が扱う品は密造武器やドラックでは無い。今や世界中で需要のあるプレシャスの密輸、密売だった。

 

「あ〜、其れは10億で取り引きします。其れ以下だと応じませんから!」

「はい、ローズ・ダン商会……ああ、その品でしたら……」

「アンタね、ウチが扱ってるのが何なのか知ってます⁉︎ そんな端金じゃ、話にならないですね‼︎」

 

 男達は、明らかに商売をしている様だった。だが、その内容はプレシャスであり、売りつける相手も堅気でありながら闇社会に片足を突っ込んでいる、若しくは物の価値も分からない様な金持ち等にだ。

 すると、デップリと太った中年の男が葉巻を燻らせながら姿を現した。

 

「よう、お前達! 捗っとるなァ‼︎」 

 

 ニチャア…と下卑た笑みを浮かべる男は言った。彼が欲賀剛。ローズ・ダン商会のトップであり、密輸ブローカー達の元締めである。

 

「あ、ボス‼︎ 売り上げは上々ッスよ‼︎」

 

 ブローカーの一人が報告した。彼が扱うプレシャスは大なり小なり、多額の金を産む。正に無限に金が湧き出る打出の小槌さながらだ。

 欲賀は報告に、ほくほく顔だ。

 

「結構、結構! 全く、良い時代になった! プレシャスを美術品感覚で買い占める金持ちの他に、セーフティ・パラレルエンジンと言う需要性もあって、プレシャス密売の市場は常に高騰化する一方だ!

 プレシャスを転売すれば、数億単位の売り上げが儂の懐に転がり込む‼︎ 笑いが止まらんわい‼︎」

「全くですね‼︎」

 

 ガハハハッと、馬鹿笑いを上げる欲賀に釣られ、部下のブローカー達も笑う。

 

「さて……例の品の買い手はまだかな?」

「あ、それでしたら、待合室で待ってますよ! 今、榎田さんが応対してます‼︎」

 

 ブローカーは待合室を差す。どうやら、客が来ていたらしい。

 

「そうか! さてさて、あれは50億で買い値が付く品だ‼︎ 倍の価格で買い付けて貰わんとな‼︎」

 

 そう言うと、欲賀はいそいそと向かって行った。彼の姿が見えなくなった途端、ブローカーは溜め息を吐いた。

 

「やれやれ、ボスの守銭奴に呆れるね……金を得る事ばかり考えて……」

「ま、あの人からしたら、命より金が大事ッてガチで言い張る徹底的なドケチだからな……」

「どっちだって良いよ。俺達には、お溢れしか手に入らないんだ……デカい金は、あの人の独り占めだぜ? これだったら、俺達でプレシャスを横流しした方が早いんじゃね?」

「馬鹿! 滅多な事言うなよ‼︎ あの人のバックには、ヤバイ連中が控えてるって噂だ! 命が幾つ有っても、足りやしねェ……」

 

 ブローカー達は内心では欲賀の強欲振りに、辟易している様子だ。とは言え、彼は闇社会にて財を成して来た男だ。当然、自身の財力だけでまかり通って来た訳では無い。

 時には闇に生きる交わらざる者達と交渉し、莫大な賄賂で彼等を買収し、自身の後ろ盾を約束させると言ったやり口にて長年に渡り、自身の地位を不動の物として来た。

 金の使い方、世渡りの巧さこそが欲賀の真骨頂であり、そんな彼が一声を上げたなら、間違いなく自分達の前に血に飢えたケダモノ達が集結させるだろう。

 君子危うきに近寄らず、と言う事を理解しているからこそ、ブローカー達も渋々ながら彼に従っていた。

 

 

 さて、その別室にある待合室では、プレシャスを購入したいと言う顧客がにこやかに微笑んでいた。

 見た目は茶色のスーツを着込み、皺の刻まれた顔の右目にモノクルを嵌めた背の高い老人だった。

 靴、腕時計、右手に持つステッチも上質な品であり、彼が富裕層の人間である事は窺い知れた。

 対面には髪をオールバックにして固めた若い男が座っている。彼の名は、榎田大輔。ローズ・ダン商会の会計を取り仕切り事実上、欲賀の右腕を務める男だ。

 にこやかな老人に対し、榎田の目は一切、笑っていない。まるで、獲物を狙う野獣の様な鋭い目だ。

 すると、欲賀がやって来た。

 

「いやはや、お待たせして申し訳ない」

 

 欲賀は愛想良く挨拶をしつつ謝罪した。しかし、彼の胸中にあったのは、この商談によって得られる儲けの事だけだ。

 電話によれば、つい最近、裏から横流しにて手に入れたプレシャス《フェニックスの尾羽》を100億で買いたい、と言って来たのだ。

 これは久しぶりに舞い込んだ特大な儲け話である。鴨がネギを背負って、ノコノコとやって来た以上、何が何でも成功させてやる、と意気込んでいた。

 

「いやいや、どうか気になさらず……。さて、単刀直入に申し上げましょうか? フェニックスの尾羽、譲って頂けるのでしょうな?」

 

 老人は気さくに言った。欲賀は手揉みせんとばかりに言った。

 

「ええ、勿論ですとも。榎田、例の品を」

「はい、此処に」

 

 欲賀に、榎田はソファの横にあったジュラルミンケースの鍵を外し、開いてみせた。中には厳重に固定されたクリスタルガラスの容器の中に、虹色に輝く鳥の尾羽が収納されていた。

 

「これが、フェニックスの尾羽……間違いなく、本物なんでしょうな?」

 

 老人の品定めする様な問いに、欲賀は北叟笑む。

 

「そりゃ、本物に違いありませんよ。ここだけの話ですがね……此れは、サージェスの輸送ルートから横流しにして、ここにやってきたのですから……」

「ほほう……それはそれは……」

 

 得意げに犯罪自慢する欲賀を尻目に、老人のモノクルを嵌めた右目からキラリと光った。

 

「では……約束通り、100億でご購入して……」

「いや、金は持って来てません。現金は持ち歩かない主義でしてね」

「勿論、カードでも構いませんよ」

「言い方を変えましょう。払う気は無い、と言っているんですよ」

 

 老人の発した言葉に、欲賀と榎田はポカンとした。

 

「……また、ご冗談を……」

「私は冗談は嫌いでしてね。はっきり言いますが、サージェスから泥棒紛いに奪ったプレシャスを買い戻す気は無い、返してほしい、と言ってるのです」

 

 この言葉に、欲賀の顔色は変わる。榎田は懐に手を伸ばした。

 

「……アンタ、まさか……サージェスの関係者で?」

 

 もう、欲賀の顔は笑っていなかった。裏社会の人間らしい凄みを効かせた顔だった。しかし、老人は構わずに続けた。

 

「隠す気は無かったのですがね……私は、レオナルド。レオナルド・ジョルダーナです」

 

 老人は自身の名を名乗った。その名を聞いた榎田は懐から手を出した。右手に拳銃が握られている。しかし、ジョルダーナはその手を掴む。

 

「クッ⁉︎」

「銃を隠し持っている事くらい、直ぐに見抜けましたよ」

「サージェスのトップが、何の為に⁉︎」

 

 榎田が尋ねた。しかし、ジョルダーナは薄く笑う。

 

「プレシャスは貴重品ですからね。闇社会に流されて黙っている訳に行きませんよ……。ましてや、本部でも希少なフェニックスの尾羽ともあれば……」

「……成る程な……会長が自ら、交渉にやって来るとは……仕事熱心な事で。しかし、ジョルダーナ会長。少し、迂闊でしたな」

「どう言う事ですかな?」

「サージェスのトップが護衛も付けず、単身で乗り込んで来るなんて……不用心が過ぎるぞ‼︎」

 

 欲賀が右手の指を弾いた。すると、待合室の中に数名の男が乱入して来た。全員が手に銃を持っている。

 ジョルダーナ会長に狙いを定め、男達は銃を向けた。

 

「……形成逆転……と、言った所ですかな?」

「ローズ・ダン商会を舐めて貰っては困る。ウチは真っ当な会社じゃ無い、飽くまで裏社会で商売をしている身だ。

 さあ、手を離して貰おうか?」

 

 欲賀に促され、ジョルダーナ会長は抵抗をせずに手を離す。

 

「で? 私をどうする気かね?」

「サージェスのトップが自ら出向いて来たのは丁度良い。プレシャスを更に手に入れられるチャンスだ……アンタの身と引き換えにな!」

 

 欲賀は勝ち誇った様に言った。しかし、ジョルダーナ会長は不敵な顔だ。

 

「こんな老いぼれが、人質の役に立つとは思えませんがね」

「それは、我々の手腕でどうにでもなる……おい‼︎ 会長殿をお連れしろ‼︎ 丁重にな‼︎」

 

 欲賀の命によって、ジョルダーナ会長は連行されて行った。欲賀は苛々した様子だ。

 

「クソッ‼︎ 折角のデカい儲け話と思ったら……‼︎ 榎田‼︎ サージェスとの取り引きは、お前がやっておけよ‼︎ ワシは席を外す‼︎」

「しかし、社長。この後の仕事の予定ですが……」

「クドイぞ、榎田‼︎ 商会の経営に関しては、お前に一任しているだろうが‼︎ ワシは別の仕事を片付けるんだ‼︎」

「……了解しました……」

 

 ドスドスッと荒々しく部屋を出ていく欲賀を見送りながら、榎田は溜め息を吐く。仕事、などと言ってるが、どうせ愛人に会いに行ったのだろう。

 だとすれば好都合だった。欲賀は基本、儲けた金にしかし興味を示さず、その間の仕事の内容など気にも留めないのだ。つまり、商会を自分が自由に動かす事が出来る。

 そもそも、ローズ・ダン商会に自分が加わって五年近く、商会を動かして来たのは自分の采配による物だ。その事を理解している事から、組織の連中も社長である欲賀より、その腹心である自分を信頼しているのも事実だ。

 

「ボス! サージェスの野郎達が……‼︎ あれ? ボスは?」

 

 待合室に若いブローカーの男が飛び込んできた。しかし、榎田しかいない事に困惑する。

 

「ボスは不在だ。大方、愛人の所だろう」

「またっスか……」

 

 欲賀の強欲さ、好色さを知っているブローカーは呆れ顔だ。

 

「で、サージェスが何だって?」

「え? は、はい! 何でも、サージェスのアドバイザーの最上って男から指令を受けた奴等が、ボスに会わせろって……」

「最上? ああ、アイツか……」

 

 榎田は少し前、自身に接近して来たある人物を思い出す。自らを、サージェスのアドバイザー、と名乗った上で、取り引きを持ち越して来たのだ。

 榎田はニヤリと笑うと…

 

「分かった。俺が担当する。あと……彼等に連絡を取れ」

「了解ッス‼︎」

 

 ブローカーは慌ただしく、部屋を出ていく。榎田はサージェスの使いとして来たと言う者達の姿を監視カメラで見た。

 そして……

 

「フン……まさか、あっちから来てくれるとはな……」

 

 と、呟いた。

 

 

 

 雪歩、紺亮、菖は別の応接室で待たされていた。雪歩はソワソワしながら、紺亮は脚を鳴らしながら、菖は脚を組んで無言のまま、と各々に待っていた。

 

「遅いね〜……」

 

 と、雪歩。

 

「えらく待たせるじゃねェか……」

 

 と、紺亮。

 

「……貴方達、少し落ち着きなさいな」

 

 と、菖は二人を睨みながら言った。

 

「落ち着け、ッて言うがよ……俺達、明らかに堅気じゃ無い奴等と取り引きしようとしてんだぜ? 緊張するな、ってのが無理じゃねェかよ」

「今更でしょう? ネガティブと渡り合って来て、反社会勢力を恐れますの?」

 

 菖は呆れながら、または小馬鹿にする様に言った。紺亮は顔色を変える。

 

「別に恐れてなんか無ェよ‼︎ それを言うなら、お前だってブルってるんじゃねェか⁉︎ かつての恋人が今はブローカーと来たらよ‼︎」

「……‼︎ 何ですって⁉︎ もう一回、言ってごらんなさいな‼︎」

「おお、何度だって言ってやらァ‼︎ お前だって……‼︎」

 

 紺亮の煽り言葉に激昂した菖は、間に雪歩がいる事を忘れて口喧嘩を始めた。

 

「止めて、二人共‼︎」

 

 雪歩は珍しく、2人を一喝した。

 

「紺君も菖ちゃんも苛々しないで‼︎ 任務中だよ⁉︎」

 

『は、はい……』

 

 何時もなら、自分達が突っ込む対象である雪歩の鶴の一声に、2人は戸惑いながらも押し黙る。

 珍しく雪歩は真剣な面持ちだった。だが、それは、先程の影斗の異変を払拭するしようとしていたからだ。

 さっき見せた影斗の姿は自分が良く知る彼とは、かけ離れていた。優しい穏やかな好青年では無く、獲物を狙う肉食獣の様な獰猛さを覗かせていた。

 

(どっちが、影斗さんの本当の姿なんだろう?)

 

 優しい影斗と怖い影斗……どちらかが、彼の本来の姿なのだろうが……雪歩には、どちらも彼の本来の姿では無い様な気がしない。

 だとするなら、本当の牧野影斗斗は……。

 すると、ガチャリと音がした。入って来たのは、榎田だ。

 

「お待たせしました。サージェスの使者と伺っております」

 

 榎田は冷静かつ慎重に話し出す。菖は榎田を見た。

 

「……久しぶりですわね……」

 

 遠慮しがちに菖は告げた。榎田は表情を変えずに……

 

「……ああ……。互いに歳を重ねたな……取り返しようが無い程の、時間と思い出の引き換えに……」

 

 と、言った。二人は、かつて友人だったが、共通の友人を失ってから互いに異なる道を進んだ。菖は冒険家に、榎田はブローカーに……。

 しかし、雪歩は榎田に対し違和感を覚えた。何故か、彼から妙な感覚がするのだ。

 彼は嘘をついている……昔から雪歩は勘の良い性格だ。相手が嘘をついていても、直感的に分かるのだ。

 

「……単刀直入に言いますわ。貴方がたが手に入れたプレシャスを、サージェスに渡して欲しい……。無論、見合っただけの代償は用意します……」

「……悪いが、プレシャスは無い……。確かにウチは、プレシャスを密輸の対象にしているが……あれは希少だ。

 そんなに数は仕入れてない……」

「隠すなよ。フェニックスの尾羽……アンタ方が持ってる筈だぜ」

 

 紺亮が問い詰めた。しかし、榎田は肩を竦める。

 

「さァ……知りませんね……」

 

「何で嘘をつくの?」

 

 咄嗟に雪歩が口を開く。紺亮と菖は同時に見た。

 

「嘘? 何の嘘だ?」

「貴方の言っている事。ある筈だよ、プレシャス。だって、私達が来てから他の人達にプレシャスに関する情報を隠してたんでしょう?」

「さて……何の事だか……」

 

 榎田は、素知らぬ顔で惚けた。だが、雪歩は僅かに眉が動いたのを見逃さなかった。

 

「あと、もう一つ……」

 

 雪歩は声を潜めながら尋ねた。

 

「貴方……榎田大輔さんじゃ無いよね……? 蒼太さんが教えてくれたよ。本物の榎田大輔と思しき人間が三年前に、北海道で凍死体となって見つかったって。

 此れは報道では発表されなかった……」

「ハァ⁉︎」

「まさか⁉︎」

 

 雪歩の一言に、二人は驚いていた。反対に榎田は冷たい無表情な面持ちで、雪歩を見ていた。

 

「さっきから、貴方からは違和感しか無かった。その違和感が、やっと分かったよ……。貴方は……榎田大輔じゃ無い誰かだよね⁉︎」

 

「……君みたいな勘の良い女は嫌いだよ……」

 

 榎田は冷たく吐き捨てた。そして、ソファーの肘掛けに手を置き、スイッチを押した。途端にドアがロックの閉まる音がする。

 

「な、何だ⁉︎」

 

 紺亮が異変に気付くが、時既に遅い。天井のスプリンクラーからガスが噴出して来た。

 

「な……此れは……毒ガス⁉︎」

 

 菖は口を塞ぐが、既にガスは室内に充満し始めた。榎田は常備していたガスマスクで顔を覆う。

 

「催眠ガスだ。少量でも吸い込めば……夢の中だ」

「く……て、テメェ……‼︎」

 

 紺亮が口惜しげに、榎田を睨む。だが、ガスを吸い込んだ紺亮は、そのまま倒れてしまった。

 

「こ、紺……君……」

「は、謀られ……ましたわ……」

 

 雪歩と菖も、続けて昏倒してしまう。榎田は、クックッと含み笑いを浮かべた。

 

「こんな初歩的な罠に引っかかるとはな……最近のサージェスは無能で助かるよ……」

 

 そう呟いて、榎田はマスク越しにニヤリと笑った。

 

 

 

 幼い頃……雪歩は、祖父の部屋に居た。何をするでも無い、冒険の書物を読み耽る祖父の背中を見るのが好きだったからだ。

 祖父は高名な冒険家の残した日誌、地図、古代文字の解読書などを手当たり次第に読み漁るのが日課だった。

 そんなある日、祖父が振り返る。孫が自分の背中を見て座っている姿に、微笑みながら呼び寄せた。

 雪歩は祖父に近付くと、引き出しを開けて中から錆びついた鉄製の小箱を取り出す。中には、丁寧に保管された金の十字架の装飾のあるペンダントが収められていた。

 

『おじいちゃん、何これ?』

 

 雪歩が尋ねると、祖父は無言のままに、ペンダントを取り出して雪歩の首に掛けた。

 

『私にくれるの?』

『……其れは、決して手放しては駄目だぞ。そのペンダントが何時の日か、お前をプレシャトピアへと導いてくれるからな』

『本当?』

『ああ、本当だ。おじいちゃんは嘘はつかん』

 

 そう言った祖父は優しく笑った。雪歩は祖父に抱きついた。

 其れから間も無く、祖父は旅に出て……そのまま消息不明となってしまった。何年も懸命な捜索が続けられたが、祖父の足取りは掴めないまま、冒険家である白瀬冬次郎は死んだ、と発表された。

 だが、雪歩は祖父の死を受け入れなかった。祖父は生きている……そう信じていたかった。雪歩は、そうしてペンダントを片時も離さずに持ち歩いた。

 母は、雪歩がペンダントを付けている姿を見ると、あからさまに不機嫌になった。

 

『あの男が遺した物なんか、チラつかせないで。虫唾が走るわ』

 

 母と祖父は仲が悪かった。と言うより、母が祖父を一方的に毛嫌いしていた。だから、娘である雪歩が祖父に懐き擦り寄る姿は、母からしてみれば不愉快でしか無いのだ。

 その頃からだろう……雪歩は、母を避ける様になった。母が嫌いだった訳では無いが、祖父の背中を追い掛ける娘を辛そうに見る母を見るのも、苦しかったからだ。

 以降は、雪歩にとって、このペンダントは祖父と自分を繋げる唯一の存在となった。このペンダントが、自分をプレシャトピアへ導いてくれる……祖父の言葉を雪歩は直向きに信じていたのだ……。

 

 

「う、う〜〜ん……」

 

 雪歩は目を覚ます。すると、其処は小さな小部屋に横たわっていた。身体を起こし辺りを見回してみるが、部屋は殺風景で何もない。

 

「菖ちゃん? 紺君?」

 

 更に言えば、菖も紺亮も居ない。別々の部屋に隔離されたらしい。雪歩はジャケットのホルスターを調べると、スーパーアクセルラーは無事だった。

 どうしよう、と雪歩は頭を悩ませていると……。

 

「やァ、目を覚ましたかい? お嬢さん」

 

 部屋の隅から声がした。声の方角に振り返ると、其処にはスーツを着た片眼鏡の老紳士が座っていた。

 

「貴方は?」

「私は、レオナルド・ジョルダーナ。訳あって、此処に閉じ込められているんだ。君の名前は?」

 

 ジョルダーナと名乗った老紳士は挨拶をした。雪歩は敵では無いと知り、自分も名乗る事にした。

 

「私は白瀬雪歩」

「白瀬……そうか。君は白瀬冬次郎氏の親族か?」

 

 ジョルダーナ老人の言葉を聞いた雪歩は目を丸くした。

 

「おじいちゃんを知ってるんですか?」

「勿論だとも。冒険家と名乗る者なら誰もが、彼の名を知らぬ訳が無い。私が知り得るだけで、彼を超える冒険家は未だに現れていない。

 成る程な……つまり、君は白瀬冬次郎の孫娘か……。何処となく、彼の面影が見て取れる訳だ」

 

 そう言いつつ、ジョルダーナ老人はマジマジと雪歩を見た。

 

「あ、あの……それより、此処から脱出しなきゃ……」

「ん? ハッハッハッ……そう慌てる必要は無い。今すぐに脱出しなくとも、チャンスはやって来る。

 私が、此処から脱出する未来は確定しているからね」

「? どう言う意味ですか?」

 

 ジョルダーナ老人の意味深な言葉を、雪歩は理解出来なかった。

 

「若すぎる冒険家の君に教えてあげよう。目に映る物の全てが真実とは限らん。誰もが有り得ない、と目を逸らした所に真実は隠れている。

 この世に有り得ない事は有り得ない……因みに、此れと同じ台詞を君の祖父は話してくれたよ……」

「???」

 

 益々、雪歩には訳が分からなかった。其れに今は、この老人と話している場合では無い。一刻も早く、仲間達を見つけ出さなければならないからだ。

 雪歩は、スーパーアクセルラーを構えた。

 

「ごめんなさい、おじいちゃん‼︎ 私、急がなきゃ‼︎

 レディ……ボウケンジャー、スタートアップ‼︎」

 

 雪歩は、ボウケンホワイトに変身し、ボウケントンファーを手にした。

 

「オーバーヒート……クラァァッシュ‼︎」

 

 ホワイトの放ったトンファーからの衝撃が、鉄製のドアを破壊した。凄まじい轟音が響き渡る。

 ホワイトは廊下へと躍り出た。

 

「えっと……どっちに行けば……」

「君の探している物なら……この廊下の奥にある部屋に向かうと良い……」

 

 ジョルダーナ老人が出て来ながら教えてくれた。

 

「其処に皆が居るの?」

「それは君の目で確かめる事だ。だが、忘れてはならんぞ? 人を信じるのでは無く、人の心を信じるのだ」

「うん‼︎ よく分からないけど、よく分かった‼︎」

 

 ホワイトは老人の教えてくれた場所を目指し、走り出す。残された老人は、小さく溜め息を吐いた。

 

「やれやれ、せっかちな娘だ……。そして、少し頑固でもある……祖父譲りか……。だが……何色にも染まりやすい純白の冒険者……。

 果たして君は、サージェスの裏の姿を知っても白く有り続けられるかな?」

 

 またしても意味深な言葉を残して、ジョルダーナ老人はその場から立ち去った。

 

 

 ホワイトは、ひたすら廊下を走る。周りには似た様な扉が続いている。だが、やがて巨大な倉庫の様な扉が見えた。

 あそこか……ホワイトは確信に至り、その扉を突き破る様に開けて室内に飛び込んだ。

 其処は数多のプレシャスと思しき、品が仕舞われていた。間違いなく、この部屋がローズ・ダン商会の隠し倉庫だ。

 ホワイトは部屋を見渡してみる。すると、目の前にキューブ型の特殊強化ガラスケースに収納されている品を見つけた。

 其れは虹色に輝く鳥の尾羽だ。プレシャス《フェニックスの尾羽》に間違いない。

 ホワイトは、不用意に近づこうとするが天井から突然、狙撃された。弾はホワイトの足元に命中した。

 

「だ、誰⁉︎」

 

 弾の飛んで来た方角をホワイトは見た。其処に居たのは、意外な人物だった。

 

「あ、貴方は……ディエンド⁉︎」

 

 天井にぶら下がり、右手に得物であるディエンドライバーを構えていたのは、これまでに何度か現場にて居合わせた戦士、ディエンドだった。

 ディエンドはホワイトの前に降り立つと、ディエンドライバーを突きつけて来た。

 

「ディエンド? どうして……?」

 

 ホワイトはディエンドが何故、この様な強行に出るのか理解出来ない。これまでのディエンドは敵か味方は不明瞭であるが、幾多と自分達を助けてくれた。

 謂わば、ホワイトはディエンドの事を仲間と同等なくらい信用していた。

 そのディエンドが、今は自分に銃口を向けてくる。

 

「済まないな、ボウケンホワイト。君達は、私にとって目障りな存在となってしまった……」

「め、目障り?」

 

 ディエンドの口から発せられた言葉は、恐ろしく冷たく非情な物だった。

 

「メガ・プレシャス……君達が探し求めるプレシャスは、サージェスに渡す訳に行かなくなった。プレシャトピアが彼等の手に落ちれば、この世界は滅びてしまう」

「ど、どう言う意味⁉︎ 世界が滅びる⁉︎ 訳が分からない‼︎」

 

 ホワイトは決死にディエンドに語り掛けるが、ディエンドは銃口を向けたまま一歩近付く。

 

「……君を撃ちたくは無い。ボウケンジャーから足を洗い、プレシャトピアから手を引き給え。此れは警告だ」

「………貴方………影斗さんでしょ?」

 

 ホワイトは声を紡ぎ出した。ディエンドは否定はしなかったが、肯定もしなかった。

 

「……ずっと、ディエンドから感じられる雰囲気が、誰かに似ている気がした……でも、今ので確信したよ‼︎

 やっぱり、貴方は牧野影斗さんだよ‼︎」

「……何の事かな? 私は通りすがりの仮面ライダー、ディエンドだ。それ以上も、それ以下も無い」

 

 ディエンドは否定したが、些か動揺している様子だった。と、其処に扉を蹴破る音がした。

 

「ホワイト‼︎ やっと見つけたぜ‼︎」

 

 それは、ボウケンネイビーとボウケンバイオレットだった。二人共、サバイバスター・カスタムを構えている。

 

「二人共、無事だったんだね‼︎」

「ホワイトから離れなさい‼︎」

 

 二人の安否を確認し、ホワイトは安堵する。バイオレットは、ディエンドにサバイバスターを突き付けながら一喝した。

 しかし、ディエンドはさして慌てた様子を見せず、引き金を引いた。すると閃光が迸り、ホワイト達の視界を遮った。

 逆光が晴れて来て見てみると、ディエンドは自分達の目の前に立っていた。すると、ディエンドの横に二人の戦士が現れた。

 一人は全身が黒だが胸部、肩部、手足の付け根に紫色のパーツが装飾された、元に居た世界では仮面ライダージョーカーと言う名の戦士…

 もう一人は全身がライトグリーンだが胸部、肩部、手足の付け根に金色のパーツが装飾された、元に居た世界では仮面ライダーサイクロンと呼ばれていた戦士だ。

 二人の戦士は何れも、ディエンドを守護する様に立ちはだかる。

 

「な、何だ⁉︎ こいつ等は⁉︎」

「こいつ等、は御挨拶だな。彼等は優秀な二人にして一人の仮面ライダー、ジョーカーとサイクロンだ。

 最も、本来のライダーには及ばないが……実力は、ネガティヴの其れとは比べ物にならないくらい、強いぞ。

 サイクロン‼︎ ジョーカー‼︎ その力を見せてやれ‼︎」

 

 ディエンドの命令に従い、サイクロンとジョーカーはそれぞれに動き出す。サイクロンはネイビーにキックを、ジョーカーはバイオレットに手刀を浴びせた。

 

「グアアァッ!!!」

「キャアァァッ!!!」

 

 不意打ちで攻撃を受け、ネイビーとバイオレットは吹き飛ばされてしまう。

 

「ネイビー! バイオレット!」

「よそ見している場合かな? BLUST‼︎」

 

 ディエンドライバーから放たれた光弾が、ホワイトを撃ち抜く。ホワイトもまた、壁側にまで吹き飛ばされた。

 

「……ウゥゥ……‼︎」

「残念だが……君達の冒険は此処でジ・エンドだ!」

 

 ディエンドは不敵な台詞と共に、ボウケンジャーの前に立ちはだかった……。

 

 

 〜次回予告‼︎〜

 ボウケンジャーの前に、ディエンドが敵として現れた‼︎ しかし、ディエンドには別の思惑があったのだ‼︎ 暗躍を見せる榎田と対峙するのは、果たして⁉︎

 

 次回! 轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure

 task 11 危険なプレシャス

 

 雪歩「な、何の為に、こんなプレシャスが⁉︎」

 ディエンド「プレシャスには手を出してはならない物がある……」

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