轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure   作:竜の蹄

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新作が出来ました!
今回は戦闘はありません。その代わり、原作からの懐かしき彼女が登場します‼︎


task13 母と娘と…

 ネオ・クエスターズ達がアジトとする廃墟……其処で、ラアナ達は反省会を兼ねた作戦会議を繰り広げていた。

 ラアナは顔に幾つか絆創膏を貼り、腕を包帯で固定している。

 

「ああ〜……またしても、負けてしまったわ……何故よ⁉︎ 何で私達は、ボウケンジャー如きに勝てないの⁉︎」

 

 ラアナは悔しげに地団駄を踏む。同じく手当てを施されたツルギも唸る。

 

「……さて、おかしいですね……。シュミレーシュンでは、ボウケンジャーを倒せる筈だったんですが……」

「……ドラゴン……」

 

 ツルギの後ろで、ドラゴンも梅いた。これで、ボウケンジャーには四連敗……先日の、ゴードムツクモは自信作であり、九分九厘までボウケンジャーを追い詰めた。にも関わらず、完敗を喫したのだ。

 ラアナは、ツルギを睨み付ける。

 

「大体、ツルギ‼︎ アンタの設計が中途半端だから、負けたんじゃ無いの⁉︎ 何が忍科学よ‼︎ ボウケンジャーに勝てない様な役立たずな科学なんか、何の役にも立たないじゃ無い‼︎」

 

 八つ当たり同然に自分の研究を扱き下ろされたツルギは、ラアナに噛み付いた。

 

「や、役立たず⁉︎ 言うに事を欠いて役立たず⁉︎ 幾ら、ラアナ様でも、それは聞き捨てなりませんよ‼︎

 其れを言うなら、一番の役立たずはラアナ様じゃありませんか⁉︎ 今回だって、貴方がボウケンジャーの挑発に踊らされるは、ゴードムツクモの中でも偉そうに踏ん反り返っていただけじゃ、ありませんか‼︎」

 

 ツルギは感情のままに、ラアナに今日までの不満をぶつけた。ラアナは顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

「い、い、言ったわねェェ‼︎ 何よ‼︎ ダークシャドウからも間引かれた三流忍者の分際で‼︎」

「ハッ‼︎ 旧石器時代に没落したカビだらけの文明の栄光に縋り付く事しか出来ない三下呪術師よりはマシでしょうが‼︎」

「な、何ですってェェェ⁉︎」

 

 とうとう、ラアナとツルギは仲間割れを始めてしまう。ゴードム文明、ジャリュウ一族、ダークシャドウ……元々、この三つの派閥はネガティヴの三大勢力であり、互いに仲間意識があった訳では無い。

 たまたま、ボウケンジャーと言う共通の敵があったから、時には手を組む事こそあったが、あわよくば互いに足を引っ張り合い、プレシャスの独占と各々の計略の為に動いていた。

 その残党メンバーにて構成されたネオ・クエスターズもまた、組織として一枚岩では無い。ラアナは没落したゴードム文明の復活の為、ツルギは自分の研究を認めなかった世界への報復の為、ドゴランに至ってはジャリュウの末裔ではあるものも、まだ一族内では子供でしか無く腕っ節と力を見込まれて仲間に引き入れられたに過ぎない……はっきり言って明確な目的の下、結成された新米ボウケンジャーにも劣る烏合の衆なのだ。

 そんな訳で溜まりに溜まった不満が爆発し、二人は罵詈雑言を浴びせまくった。

 

「悔しかったら、ボウケンジャーを倒せるツクモロボを開発してみなさいよ‼︎」

「ラアナ様みたいな無能に、どんな優れたツクモロボを造っても、宝の持ち腐れも良い所ですな‼︎」

「無能はどっちよ‼︎」

 

 もう、お互いに引こうともせずに互いに互いを貶しあった。ドゴランは、その様子に止めるでも無く見ているだけだった……。

 

 

 〜いい加減にしないか‼︎〜

 

 突如、凄まじい怒声が響いた。三人の目の前にあるウィンドウが起動し『D』の文字が浮かぶ。

 

『ま、マスターD⁉︎』

「ど、ドゴラ⁉︎」

 

 画面から聞こえて来たのは、自分達のスポンサーである謎の人物《マスターD》の声だ。

 マスターDは珍しく、ピリピリしていた。

 

 〜仲間割れをしている場合では無いでしょう⁉︎ 一体、いつになったらメガ・プレシャスを手に入れる事が出来るのです⁉︎〜

『は、はは〜ッ!!!』

 

 三人は喧嘩をしていた事を忘れて平伏した。

 

「お、お言葉ですが、マスターD‼︎ プレシャスの情報を頼りに突き進んでも、メガ・プレシャスに辿り着けない訳で……」

 

 ラアナは取り繕う様に、言い訳をした。しかし、マスターDは聞き入れない。

 

 〜言い訳は聴きたくありません。どうやら、貴方がたには少し立場を弁えさせる必要がありますね‼︎〜

 

 と、言った途端に大量の白紙が三人分、落ちて来た。

 

「あの……マスターD? この白紙は?」

 

 ラアナが尋ねると……

 

 〜反省文を書きなさい! 其れを貴方がたへの罰とします〜

「ええ〜⁉︎ これ全部に⁉︎」

「ドゴランは字が書けないんですが⁉︎」

 

 ラアナが大量の白紙を前にぼやき、ツルギがドゴランを差しながら言った。

 

 〜ドゴランの分はツルギが書きなさい!〜

「そ、そんな理不尽な〜‼︎」

 〜口答えする毎に、白紙の量が増えますよ〜

 

 マスターDが言うや否や、ツルギの書類が更に増えた。

 

「ヒィィ〜〜〜!!!」

 

 こうして、ラアナとツルギは大量の反省文を書かされる羽目になった。

 

 〜さて……反省文を書きながら聞きなさい。次に貴方がたの向かう場所の指令です。

 サージェス管轄下としている区域にある古墳に忍び込むのです‼︎〜

「古墳? 古墳って、あの?」

「大昔の王様の墓ですよね?」

 

 ラアナとツルギは反省文をしたためながら、マスターDに聞いた。 

 

 〜そうです。とある区域に半ば忘れ去られた古墳があります。其処は、サージェスの手の入った古墳であり、外見こそ変哲のない陵墓ですが、内部にはプレシャスが隠されていると噂です……〜

 

 マスターDの言った言葉に、ラアナ達は勢いよく息巻いた。

 

「分かりました‼︎ その古墳にあるプレシャスこそが、メガ・プレシャスなのですね‼︎」

 〜未確認ですがね……その説が濃厚です……。良いですか? これ以上の失敗は御法度ですよ?〜

「お任せあれ‼︎ 今度こそ、メガ・プレシャスを献上して御覧に入れましょう‼︎ オーっホッホッホッホッ!!!」

 

 ラアナは高らかに笑って見せるが、マスターDは小声で…

 

 〜……期待はしませんがね……〜

 

 と、呟いていた……。

 

 

 

 さて、サージェスミュージアムでは……紺亮と菖は、ハイパー・ビークルのシミュレーショントレーニングに励んでいた。

 二人共、今後に追加されるハイパー・ビークルの性能を試す為、ハイパー・ビークルの動作を模したVRマシンを操作していた。

 菖はマシンの動きに合わせた反応を見せていたが、紺亮はマシンに振り回されるばかりだ。

 

「う、おッ……‼︎ な、なんだコレ……‼︎ ッて、うわァァァ!!?」

 

 紺亮はVRの中で、見事に失敗をしでかしたのだ。自身が乗るハイパー・ビークルを墜落させてしまったらしい。

 そうして、紺亮がゴーグルを外してマシンから飛び降りる。

 

「もうギブアップですの? だらしがない……」

 

 菖は、ゴーグルを外しながら紺亮に言った。紺亮はと言うと……

 

「う…ウプッ‼︎ は、吐きそう……‼︎」

 

 と、口を抑えながら隣接するシンクに飛び込み、迫り上がる物を吐き出した。その様子に菖は呆れていた。

 

「……情け無い……それで、よく今までビークルを操縦できましたわね……」

 

 菖の言葉に吐くものを吐いた紺亮は、青褪めながら振り返る。

 

「……う、うるせえな……‼︎ 何で、お前は平気なんだよ、菖‼︎ てか、雪歩もそうだけど、ハイパー・ビークルの順応性が早過ぎるだろう⁉︎」

 

 元が一般人である紺亮は、ハイパー・ビークルの操作に四苦八苦していた。ゴーゴージープは専用のビークルであり、ハイパー・パラレルエンジンと適合している故か反動は少ないが、他のビークルは反動がキツイ。

 今、紺亮がVRで操縦していたのは旧タイプのビークル、ゴーゴージェットだが

 、シュミレーシュン内ではハイパー・ビークル並のパワーを持ち、紺亮にはきつ過ぎた。

 

「当たり前でしょう? ハイパー・パラレルエンジンに適合したからとは言え、ビークルを完璧に操縦できる訳じゃ無いんですのよ?

 最低限のトレーニングをしておかないと、実戦で役に立ちませんわ」

 

 そう言って菖は結っていた髪を解き、華麗に掻き上げた。菖は冒険家としてのスキルがある故か、ハイパー・ビークルの反動に振り回される事は少なかった。

 少ないとは言え、やはり新たなハイパー・ビークルであるゴーゴークルーザーは反動がキツイのが確かであり、最低限のトレーニングを要求されるのだ。

 

「で? 雪歩は、どうしまして?」

「アイツなら、さっき和菓子食いに行ったぜ? 休日は、行きつけの和菓子屋行くのが、アイツの拘りだからよ」

「全く……呑気な娘だわ……。いつ、出撃要請が出ても良い様に待機しておかないと……」

「……なァ……ずっと気になってたけどよ……」

 

 紺亮はペットボトルの水を飲みながら、菖に尋ねた。

 

「何か?」

「アンタ……最近、雪歩に対して緩くなったよな?」

 

 紺亮の何気ない言葉に菖は、少し慌てた様だ。

 

「な、何の事ですの⁉︎」

「いや、目に見えて分かるぜ。前までは、雪歩に対して目尻を吊り上げながら話してたぜ?」

 

 自分の目尻を指で吊り上げながら、紺亮は言った。菖は鼻息荒く…

 

「失敬な! この顔は生まれつきですわ! 悪かったですわね、人相が悪い女で‼︎」

 

 と、そっぽを向いた。

 

「其れを言うなら、貴方が雪歩に甘過ぎるんですわ‼︎ 何かと言えば、彼女を肩を持つ様な事を……」

「……ん〜……ま、俺はアイツがボウケンジャーに入らなきゃ、此処に居なかったと思うし……」

 

 そう言う紺亮の顔は、何処か寂しげだった。菖は、その顔を怪訝そうに見た。

 

「どう言う事ですの?」

「……俺さ……元が民間人だし、雪歩みたいにプレシャトピアを見つけるなんて大それた夢も無ければ、菖みたいに冒険家としての経験も無い……。

 仮にハイパー・パラレルエンジンに適合していたとしてもさ……自分が冒険家になるなんて考えても見なかったよ……」 

「………貴方……雪歩の事が好きなんですの?」

 

 菖は、自身の中にある女の勘から閃いた。今度は紺亮が慌てた。

 

「ハァ⁉︎ んな訳ねェだろ‼︎ 何だって俺が、あんな冒険バカなんか‼︎」

「……貴方、嘘吐くの下手ですわね……。薄々、見てて分かりましたわ。最も、あの娘は気付いてないでしょうけど」

 

 慌てて強がる紺亮に対して、菖は冷めた口調で言った。紺亮は、深く溜め息を吐いた。 

 

「……そうだよ、好きだよ‼︎ ガキの頃から、ずっとな‼︎」

「……だったら告白するなり何なりと、なさいな」

「……ッ‼︎ てかよ⁉︎ なんで、アンタにそんな事を言われなきゃならねェんだよ‼︎」

「迷惑だからですわ。ボウケンジャーの任務に色恋沙汰を持ち込まれた挙句、仲間同士でイチャイチャされたら、任務の障りになりますもの。さっさと告白して、スッパリと振られなさい」

 

 菖は冷ややかに言った。紺亮は激怒する。

 

「いや、待てよ‼︎ 何で俺が振られる事、大前提なんだよ⁉︎」

「貴方が言ったんでしょう? 冒険バカだって。あの頭の先から爪先まで冒険好きな雪歩が、貴方を好きになるとは思えませんもの。賭けても良いですわ」

 

 菖は、鼻で笑う様に言い放つ。紺亮は舌打ちした。

 

「ハッ‼︎ さっき、アンタが緩くなったって言ったのは撤回するぜ‼︎ やっぱり、アンタは高飛車なお嬢様のまんまだ‼︎」

「それはどうも。前にも言いましたけど、貴方に見直された所で全く心に響きませんわ」

「そうかよ‼︎」

 

 すっかりヘソを曲げた紺亮は菖に背を向けた。菖は、何かモヤモヤした気持ちを抱えていた。

 彼女は元来、他者に対して高圧的だった。名門である植村財閥の令嬢であり、菖は幼い頃から英才教育を施されて来た。

 勉強、文学、芸術……植村家の娘として、何処へ出しても恥ずかしくない様に厳しく躾けられた菖は何時しか、他人と距離を置く様になった。

 これまでの人生にて、菖には友人と呼べる人間は片手で数える程しかいない。唯一の親友と呼べたのは、高校で所属した登山部で出会った椿だけだったろう。自分とは違い、穏やかな性分で敵を作る様な気質でも無い。まるで、自分の無い一面を全て持っていた彼女……だからか、菖は椿に惹かれて親友になれたのかも知れない。

 椿を亡くしたのは高校最後の登山にて……遭難からの事故死と言う悲しい結末で喪った。

 それから、菖は自分を押し殺して生きて来た。大学に進学後、冒険家の道に進んでからも彼女には仲間を作る、と言う考えは無かった。

 そんな頑なな自分の心の隙間に入り込んで来たのが……白瀬雪歩だった。精神的に幼く未熟で、冒険家としてもズブの素人……それが彼女への第一印象だった。だが、彼女は自分が冷たく突き放しても、グイグイと入り込んで来る。

 最初こそ煩わしかったが、雪歩の無遠慮で強引な性格に根負けし、次第に彼女を受け入れていた。

 悪い気はしない……しないが、これまで一匹狼を貫いて来た菖は、やはり仲間に対して高圧的に接してしまう……。

 と、その時、サロンに誰かが入ってきた。

 

「ちょっと! 一大事アルよ‼︎」

 

 それは、サージェスのサブメカニックであるホンファだ。菖と紺亮は顔を上げた。

 

「どうしたんスか、ホンファさん?」

「テレビ局の取材に来たヨ‼︎ サージェスの取材をさせろって‼︎」

 

 テレビ局の取材? 今日は、ミュージアムは休館日だ。菜月も蒼太も出払っていて、ミュージアムに居るのは自分達だけだ。

 

「何処の局ですの? アポ無しで取材に来るなんて非常識ですわね」

 

 菖は、嫌悪感を募らせた。令嬢である彼女はマスメディアを嫌っている。他者の意思に背き、自分勝手な事を報道する様な人間を心底から軽蔑していた。

 

「局は分からないけど、サージェスを批判する事で有名なディレクターアル‼︎ 私じゃ対応出来ないから、代わりに出て欲しいヨ‼︎」

「勘弁してくれよ……。そんなもん、なんて言ったら……ちょい待て。まさか、そのディレクターの名前、白瀬って言うんじゃ……」

「よく分かったアルな。白瀬紅葉って、名前だったヨ‼︎」

「マジか……」

 

 紺亮は頭を抱えた。菖は彼を見ながら尋ねた。

 

「知り合いですの?」

「ああ……。しかも顔馴染みだよ……」

「白瀬って……雪歩と同じ性ですわね……まさか……!」

 

 菖も何かを察した様に顔を曇らせる。

 

「そう、そのまさかだよ。雪歩のお袋さんだ」

「……だったら、別に嫌がる必要は無いでしょうに……。雪歩のお母様でしたら……」

「アンタ、あの人の事を知らないから、そう言えんだよ……! 考えて見ろよ! あの雪歩の母親だぜ? 性格だって、あの娘にしてこの親あり、を地で行く性格だよ‼︎」

「……成る程……と、納得してしまう自分が嫌になりますわ……」

 

 菖も、いよいよ雪歩に迎合しつつある事を認めざるを得なくなり、溜め息を吐いた。

 

「……よく分からないアルが、雪歩ちゃんの母親なら、雪歩ちゃんに対応して貰えば良いのでは?」

「そりゃ、完璧に悪手だ‼︎ 雪歩と、あの人を鉢合わせにしたら、それこそ面倒な事になる‼︎」

「……仕方ありませんわね……私達が対応するしか……」

 

 菖は席を立った。紺亮も渋々ながら立ち上がる。

 

「あ〜、かったりィ……。まだ、訓練してた方がマシだよ……」

「文句言ってる暇があれば、雪歩のお母様を納得させる常套句でも考えなさいな」

 

 ブツブツと腐る紺亮を菖は嗜めた…。

 

 

 

 サージェスミュージアムの前には、TVディレクターの白瀬紅葉とAD、カメラマンが待ち構えていた。

 紅葉は今にも噛み付かんとする様な態度だ。

 

「し、白瀬さん‼︎ ヤバいッスよ⁉︎ こんな事がプロデューサーに知られたら僕達、クビになりますよ⁉︎」

 

 ADはあたふたした様子で、紅葉に言った。対して、紅葉はキッと睨む。

 

「何よ、高田君! 貴方、私とプロデューサーとどっちが怖い訳⁉︎」

「どっちが怖いとかじゃ無くて……局の許可無く、サージェス傘下のミュージアムに殴り込むだなんて、減給だけじゃ済みませんよ‼︎ 下手したら懲戒解雇です‼︎」

 

 高田は、困り果てながら言った。彼女の下に付いて、無茶な行動に振り回されたのは、今に始まった事では無いが……今回は完全にヤバい。

 ただでさえ、サージェス関連に対する取材を禁じている昨今、アポも取らずにサージェス傘下のサージェス・ミュージアムに飛び込み取材するなんて、正気の沙汰では無い。

 

「文句あるなら、帰りなさいよ‼︎ 私はどうしても、サージェスに真実を追求しなきゃ気の済まない女なのよ‼︎」

「ハァァ……(雪歩ちゃんが心配なら、仕事じゃ無くてプライベートで来たら良いのに……)」

「(マジで、それです)」

 

 高田は溜め息を吐きながら、ポツリと言った。今回は仕事では無く、紅葉の私情からの事だ。ハッキリ言って、高田もカメラマンも紅葉に無理矢理、付き合わされているのだ。

 急に紅葉は凄まじい形相で睨んで来た。

 

「何か言った⁉︎」

 

『イエ、ナンデモナイデス‼︎』

 

 二人は声を揃えて、半ば棒読みになりながら叫んだ。すると……

 

「♪明日にギアを〜、入れた瞬間〜、果てしな〜き〜夢とスピリッツ、弾けるのさ……」

 

 と、雪歩が帰って来た。陽気な様子で鼻歌を歌いながら、好物の芋羊羹に口に咥えている。しかし、サージェスミュージアムに正門の前にいる人物の顔を見た彼女は呆気に取られ、口をパサッと開けてしまう。その際、芋羊羹はポロリと落ちた。

 雪歩の顔を見た紅葉も最初こそ驚いていたが、一瞬に般若の如し顔になって雪歩にツカツカと歩み寄る。

 

「雪歩〜? 久しぶりじゃ無い?」

「お、お母さん?」

 

 紅葉は満面の作り笑いを浮かべながら、少しオクターブ高めの声を出した。素っ頓狂な顔で見ていた雪歩だが、紅葉の手が彼女の顔を掴む。

 

「お母さん? じゃ無いわよ‼︎ アンタ、此処で何してるの⁉︎」

「痛い、痛い‼︎」

 

 紅葉が、雪歩の顔を掴み上げアイアンクローで締め上げた。雪歩は痛がりながら、手を外そうと暴れる。

 

「大学に受かるまで家には帰らない、って大見栄切って出ていった癖に、サージェスに就職するなんて何考えてるのよ、アンタは⁉︎」

「イッ…タイなァ‼︎ 離してよ、暴力女‼︎」

 

 雪歩は力尽くで、紅葉の手を振り解いた。そして、紅葉を睨む。

 

「なんで、アンタが此処に居るのよ‼︎」

「…‼︎ 親に向かって“アンタ”とは何よ⁉︎」

 

 紅葉も負けじと、雪歩を睨みつけた。雪歩は続ける。

 

「アンタだから、アンタって言ったんだよ‼︎ こんな所まで来て、私の邪魔しないでよ‼︎」

「邪魔じゃないわよ‼︎ 進学を諦めて就職したって海人からは聞いてたけど……よりによって、サージェスだなんて……‼︎

 アンタも、あの男と同じ幻想を追い掛けて死ぬつもり⁉︎」

「……‼︎ おじいちゃんの事、悪く言わないで‼︎ おじいちゃんの事、何にも分かってない癖に‼︎」

「何よ‼︎」 「そっちこそ、何よ‼︎」

 

 雪歩と紅葉は、ミュージアムの前で親子喧嘩を繰り広げた。高田もカメラマンも呆然と見守るしか無い。

 

「AD……これ、カメラに収めるんですか?」

「良いよ、こんなの撮らなくて……」

 

 そうしてる間に、騒ぎを聞き付けた紺亮と菖が駆け付けると、ミュージアム前で掴みかからんばかりの勢いで怒鳴り合う二人の姿に嘆息した。

 

「……ハァァ……遅かったか……‼︎ 相変わらず、パワフルな人だな……‼︎」

「……何というか……過激なお母様ですわ……」

 

 紺亮は幼い頃から見てきた雪歩の母親の性格はよく知っているが、菖は初めて見た事から驚きを隠せない様子だ。

 マイペースだが比較的に温厚な雪歩だが、紅葉に対峙する彼女は非常に苛烈だった。反対に紅葉も娘に負けず劣らずの気の強さだ。

 

「……大体、アンタはいつも、勝手に決めて‼︎ 少しは周りに掛かる迷惑を考えなさいよ‼︎ 全く、海人は手の掛からない子なのに、なんでアンタは我儘なの⁉︎」

「それ、アンタに言われたく無いから‼︎ また私情で高田さん達を振り回したんでしょ‼︎ それに、私は我儘じゃないもん‼︎ もし、私が我儘だって言うなら、アンタに似たからだよ‼︎」

「私に似たから⁉︎」

「そうじゃん‼︎ だって、お父さんは我儘じゃないし⁉︎」

「〜〜‼︎ アンタは、もう屁理屈ばかり……‼︎」

 

 益々、親子喧嘩がヒートアップして来て、止まらなくなって来た。其処に、意外な人物が現れた。

 

「これは、大騒ぎだね」

 

 それは、影斗だった。雪歩と紅葉がミュージアム前で人目を憚らず、大喧嘩をしていると聞いて飛んで来たのだ。

 

「雪歩のお袋さんだよ。まあ、暫くしたら終わるだろうけど……て、おい⁉︎」

 

 何を思ったか、影斗は二人の喧嘩に近付く。

 

「まあまあ…。どうか、その辺にして」

 

 影斗は穏やかに笑いながら仲裁した。

 

「雪歩ちゃん。折角、訪ねて来てくれたお母さんに、その口の利き方はあんまりじゃないか」

「……だって……‼︎」

「ちょっと⁉︎ 誰か知らないけど、邪魔しないで‼︎ 私は今……‼︎」

 

 紅葉は影斗を見て怒鳴ろうとするが、影斗の顔を見るなり驚いていた。

 

「あ、貴方……‼︎」

「何か?」

 

 影斗の顔をまじまじ見ながら、紅葉は呟いた。まるで、影斗を知っているかの様だ。

 

「………そんな筈ないわ……‼︎ だって……‼︎」

「?」

 

 紅葉は狼狽して居たが、影斗にも雪歩にも理解できない。しかし、改めて雪歩に居直る。

 

「とにかく‼︎ アンタみたいな、紐の切れた凧の様な娘を、これ以上に野放しに出来ないわ‼︎ さっさと帰るわよ‼︎」

「いや‼︎ 私は、サージェスに入ってプレシャトピアを見つけるの‼︎ おじいちゃんと約束したんだから‼︎」

「…‼︎ これだけ言っても分からないの⁉︎ この……馬鹿娘‼︎」

 

 激昂した紅葉は雪歩を引っ叩こうとするが、流石に紺亮と菖が止めに入った。

 

「ちょっと、暴力は駄目っスよ‼︎」

「サージェス関係者に対し、これ以上に過干渉するなら、警備員に通報しますわよ‼︎」

「……貴方、紺君⁉︎ なんで、貴方も⁉︎」

 

 ここに来て、紺亮の存在を知った紅葉は驚いていた。

 

「いや……まあ……成り行きで?」

「兎に角‼︎ 今日は帰って下さいな‼︎」

「紅葉さん、流石にこれ以上はやばいですよ⁉︎」

 

 菖と高田に嗜められて、紅葉は何か言いたげにしながらも引き下がった。だが、雪歩に対して何かを言いたげな複雑な顔で雪歩を見た。

 

「どうしてなの、雪歩……? 家族より冒険を取ったのよ、あの男は……」

 

 苦しげに呟く紅葉が、祖父の事を言っているのは明らかだった。祖父の背を追う様に、娘も冒険家になった……母親からすれば、受け入れ難い事実だった。

 雪歩は、母親のそんな顔を見るのが辛かった。だが、真っ直ぐと見ながら告げた。

 

「……おじいちゃんが見たかった物を私が見たい……そう思う事って悪い事?」

 

 雪歩は自分の意思をぶつける。母と祖父の間にある確執……其れは簡単に拭い去れない事だ。しかし、雪歩は信じていた。祖父の夢を引き継ぐ事の重要さを……今は、伝わらなくとも母にも必ず届く事を……

 と、眩い閃光が走った。

 

「な、何⁉︎」

「め、目が⁉︎」

「ネガティヴですの⁉︎」

 

 雪歩達は慌てふためいた。と、其処に紅葉の悲鳴が響き渡る。

 

「ちょっと⁉︎ 何をするの⁉︎」

 

 紅葉が叫ぶ。そんな彼女を、カメラマンが拘束していた。雪歩達は驚いていた。

 

「……あ〜あ! まさか、意外だったわ‼︎ サージェスに批判的なアナウンサーを張っていたら、ボウケンジャーの血縁だったなんて‼︎

 これは、良い土産が手に入ったわ‼︎」

 

 そう言い放つと、カメラマンの顔を剥いだ。その下には見知らぬ女性の顔が…。

 

「え⁉︎ だ、誰⁉︎」

「誰なんですの?」

 

「風のシズカ‼︎」

 

 急に菜月が駆け付けて来た。彼女の顔を見ると、シズカと呼ばれた女はあからさまに嫌な顔をした。

 

「黄色いボウケンジャーじゃ無い‼︎ アンタが居るって事は、青いボウケンジャーもいる訳⁉︎」

「ああ! 久しぶりだな、風のシズカ‼︎」

 

 菜月と共に蒼太も現れた。益々、シズカは顔を顰める。

 

「お生憎だけど、アンタ達とゆるりと話している場合じゃ無いのよ‼︎ この女は貰って行くわよ‼︎」

「ちょっと⁉︎ お母さんをどうする気⁉︎」

 

 雪歩が、シズカに叫んだ。だが……

 

「ぺぺぺのペー‼︎ 教える訳無いでしょ‼︎ ボウケンジャーだったら、自力で探してみな‼︎」

 

 と、言い放ち、紅葉を連れたままビルを駆け上り、消えていった。

 

「ちょっと〜‼︎ 離しなさいよ〜……!!!」

 

 紅葉の悲鳴が木霊したが、既に二人の姿は見えなくなって居た。

 

「……行っちゃった……」

「……行っちまった……」

「……行ってしまいましたわ……」

 

 雪歩、紺亮、菖は呆然としていたが、菜月が慌てる。

 

「行っちゃった…じゃ無いよ‼︎ 何で、ダークシャドウが⁉︎」

「分からないけど……狙いはプレシャスだろうな……‼︎」

「……彼女は雪歩ちゃんの母親だ……。なら、人質に利用される可能性も高い……‼︎」

 

 菜月、蒼太、影斗は各々に述べた。しかし、雪歩は一人で走り出した。

 

「待ちなさい、雪歩! 何処に行きますの⁉︎」

「決まってるよ! 追い掛けなきゃ‼︎」

「追い掛けなきゃって……何処に連れてかれたか知ってんのかよ⁉︎」

 

 一人で行こうとする雪歩を、菖と紺亮は引き留めた。しかし、雪歩は……

 

「……分からないけど……探さなきゃ‼︎ あんな人だけど、私のお母さんだもん……‼︎」

「気持ちは分かる……分かるけど……闇雲に探せば見つかるってものじゃ……」

「菖ちゃんには分からないよ‼︎ 大切な人が居なくなる辛さなんて‼︎ おじいちゃんが居なくなった時、胸が張り裂けそうだったんだよ‼︎

 また、あの時と同じ苦しみを……」

「待てよ、雪歩‼︎」

 

 菖に当たる雪歩を紺亮が止めた。

 

「俺等は、お前の仲間じゃ無ェのかよ⁉︎ 頭を冷やせ‼︎ お前、一人で冒険してるんじゃ無ェだろう⁉︎」

「……⁉︎」

「俺等は、お前からしたら、そんなに頼りねェか⁉︎ 信用出来ねェのかよ⁉︎」

 

 紺亮は勢いのままに怒鳴りつけた。雪歩は目を丸くする。

 

「ち、違うよ‼︎ これは、ボウケンジャーの事とは関係無い……私の個人的な……‼︎」

「ざけんな‼︎ ボウケンジャーとは関係ないだァ? 其れが信用してねェって言ってんだ‼︎ お前が好き勝手に動こうが、何を夢見ようが勝手だがな! もっと俺達を頼れよ‼︎ 其れが仲間だろうが‼︎」

「……紺君……」

 

 紺亮の言葉に、雪歩は少し落ち着いた様子だ。菖に向き直り……

 

「……ゴメン、菖ちゃん……私……」

「良いですわよ……気にしてませんわ……」

 

 雪歩の謝罪に菖は、ぶっきらぼうに返した。

 

「……落ち着いた所だけどね……君達に朗報がある……」

 

 突然、蒼太の発した言葉に三人、そして菜月と影斗も振り返った。

 

「……どうやら、風のシズカの向かった先は、これから君達に行ってもらう予定だった場所だ。さっき、彼女に発信器を付けたんだ……」

「……いつの間に⁉︎ てか、次の任務って⁉︎」

「……どうやら、サージェスのトップ直々からの依頼らしい……」

 

 そう言った蒼太の顔は深刻な面持ちだった……。

 

 

 次回予告!

 ボウケンジャーに指令を出したのは、サージェス会長直々だった! そして、彼の示す先に広がるのは、古墳の地下に広がる広大な遺跡……そして、其れを遮る罠だった‼︎

 

 次回! 轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure

 task13 デュアルクラッシャーG、投入‼︎

 

 影斗「まだ、未完成だ。くれぐれも気を付けて……」

 雪歩「分かってるよ‼︎」




※ 129-6560-0
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