轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure 作:竜の蹄
いよいよ、ボウケンジャーのお待ちかね! かの武器が出現します‼︎
では、どうぞ‼︎
雪歩達は、ミュージアムのサロンへと集まっていた。紅葉が攫われた刹那、新たな任務を言い渡された。その任務を告げたのは何と、サージェス財団のトップ直々だと言う話だ。
「財団のトップ…って、どんな人?」
「そういや、顔も知らねェな…」
「……貴方達、自分が所属している組織のトップの顔を知らずに今まで、所属してましたの?」
雪歩と紺亮の言葉に、菖は呆れ顔だ。
「…。じゃあ、アンタは知ってんのかよ⁉︎」
「……会った事はありませんわ」
「む〜‼︎ 菖ちゃんだって知らないんじゃん‼︎」
「話を聴いてまして⁉︎ 会った事は無いけど、誰かは知っていますわ‼︎」
揚げ足を取られた菖は、ムキになって言った。
「誰だよ?」
「名前は、レオナルド・ジョルダーナ。サージェス財団の会長であり、自身もレオンコンツェルンを経営している社長ですわ」
「レオンコンツェルンって、あれだろ? ゴーゴービークルとか、パラレルエンジンとかを造ってる会社だよな?」
「そうですわ。だから、実質に言えば、サージェスとレオンコンツェルンは同組織に当たりますの」
「う〜〜ん……」
雪歩は眉根を寄せて、考え込んでいた。
「何を唸ってますの?」
「ジョルダーナって、どっかで聞いた事ある様な……」
「多分、レオン・ジョルダーナの事じゃ無い?」
菜月が口を挟んで来た。レオン・ジョルダーナ……ルネサンス期に実在した画家にして、彼は稀代の科学者だった。
自分達の使うゴーゴービークルのエネルギーとなるパラレルエンジンの発案者として知られている。
「……そーいや、そんな名前だったな……。だが、そのジョルダーナと何か関係があんのか?」
「ジョルダーナ会長は、そのレオン・ジョルダーナの末裔…と言われてますわ」
菖の発した言葉に、紺亮は驚く。
「嘘だろ⁉︎ んじゃ、今のサージェスのボスはレオン・ジョルダーナの、孫の孫の孫の孫って事か⁉︎」
「そう言われてますわ……。実際、彼がサージェスの会長にのし上がったのは、その血筋を利用した事もあるみたいですわね……」
「どんな人かな?」
驚く紺亮と説明する菖、そして彼について考察する雪歩。今度は蒼太が語り始めた。
「……油断のならない性格だと聞いた事はある。現に彼の力は、サージェス内のみに限った事じゃ無い。
今や、サージェスの支配は全世界の中枢にまで食い込んでいる。従って、彼自身の権力の前では、日本の総理大臣などヒラ社員と変わらないらしい。アメリカの大統領、イギリス王室、国連をも黙らせる力があるらしいね…」
「……完璧超人かよ……。けどまあ、サージェスのトップを張るくらいだから、それだけあっても当然か……」
「シッ‼︎ 画面が……」
雪歩を何も映っていなかったモニターの画面が変動を始め、人の姿が現れた。
〜カメラ映りは大丈夫かな? やはり、ネクタイはこの色より、もう少し派手めな方が……〜
〜会長、既に通信は始まっています〜
現れたのは、飄々とした老紳士の姿だ。隣には背の高い外国人美女が控えている。彼の姿を見た雪歩は、アッと声を上げた。
「思い出した‼︎ ローズ・ダン商会で一緒に捕まってた、おじいちゃん‼︎」
〜ン? あ〜、これは失敬‼︎ 久しぶりだね、白瀬雪歩君‼︎ そして、ボウケンジャーの諸君‼︎ 私が、レオナルド・ジョルダーナだ!
まあ、気兼ねなく『レオ』なんて呼んでくれて構わんよ?〜
〜会長。この後も仕事が控えているので、要件は御早めに〜
知り合いの様に話すジョルダーナ会長に反し、隣に控える秘書のレーブはキビキビと話す。
紺亮は菖に小声で聴いた。
「なァ? あのオッさん、本当にサージェスのトップか?」
「……恐らく……」
菖も自信なさげにも言った。大組織のトップの座に立つくらいだから、相当に威厳の満ち溢れた人物だと思っていたが、いざ見てみると秘書に完全に尻に敷かれている茶目っ気のあるおじさんだった。
〜さて……本当なら、もっとゆっくり話したいが……あまり、長話をすると怖い秘書に叱られてしまうのでね……なるべく、単刀直入に話させて貰う。
今回、君達に依頼したいのは、ある老朽化した陵墓に向かって貰いたいのだよ!〜
「陵墓…って、お墓?」
「多分、古墳の事だね」
雪歩の言葉に蒼太が言った。
〜そう、それだ‼︎ その古墳は、サージェスの管理下にあり、今は半ば忘れ去られているのだがね……その古墳の中にある鉱石の入手を頼みたいのだ‼︎〜
〜その鉱石の名は《プレシャニウム》。石自体が、プレシャスエネルギーを有しており、ハイパー・パラレルエンジンに匹敵する力を持っています〜
「プレシャ……ニウム……?」
「なんで、そんなものが日本の古墳に?」
聞くだけ聞いてみたら、凄まじい力を持っているのは間違い無い様だ。ジョルダーナ会長は眉根を寄せながら続ける。
〜その古墳は、あくまで表向きの姿だ! 実は、中にはプレシャニウムを保管する為のシェルターが築かれているのだよ! そうやって、世界各地にプレシャニウムを隠しているのだがね……最近、ネガティブの連中が日本で暴れ回っているだろう? プレシャニウムが彼等の手に渡れば、危険だ‼︎
何しろ、あれは一つでもあれば、街一つの電力を賄えるエネルギーを持つからね!
サージェス本部も何かと忙しい身でね……日本にまでは手が届かないのだよ! そこで、君達、ボウケンジャーにプレシャニウムをネガティヴの手に落ちる前に、回収して欲しい‼︎
尚、プレシャニウムは非常にデリケートな代物だ‼︎ 強い刺激を与えると、大爆発を起こしかねん‼︎ だからこそ、君達、ボウケンジャーに依頼したいのだ‼︎〜
雪歩達は正直、驚いていた。そんな凄い力を持った鉱石が日本にあった事もそうだが、そんな重要な任務をサージェスの会長直々に依頼されるとは思わなかった。
〜君達の任務はプレシャニウムの確保と、ミュージアムへ移送する事だ。それと、今回はプレシャスBOXアプリは使用不可だ。さっきも言ったが、プレシャニウムは非常にデリケートでね。強い刺激に加え、BOXアプリを使用すると生じる“歪み”に耐え切れず、やはりプレシャニウムは大爆発してしまうのだ。
更にシェルターから出して、外気に触れると変質してしまい、プレシャニウムは唯の石ころになってしまう弱点もある。耐えられるのは精々、2時間が限界だろう」
「要するに、プレシャニウムを回収して手で持って、2時間以内にミュージアムまで運搬するのが今回の任務と?」
〜アッハッハ‼︎ 流石、冒険者としてキャリアのある植村家のご令嬢だ‼︎ 理解が早くて助かるよ‼︎〜
「……恐れ入ります……」
家名を出され不快感を抱く菖だが、其処はサージェスの会長の手前、礼だけは言っておいた。
〜それじゃあ頼むよ、ボウケンジャー‼︎ プレシャニウム確保任務を終えたら、気持ちだがボーナスも考えているからね‼︎〜
〜会長。では、この後すぐに会議がありますので〜
〜はァァ……会議なぞ、私が参加する必要も無かろうに……〜
〜最終的には会長の意見が必要なんです。さァ、参りますよ?ー
〜分かった分かった。では、雪歩君! お母さんの無事を祈っているよ?〜
会長は子供みたいにブツブツと文句を言ったが、レーブによって映像は切られてしまった。
「……なんつーか……大組織のトップらしくない人だな……」
紺亮が感想を述べた。
「……ええ。読めない人ですわ……」
菖も同様の意見だった。しかし、雪歩だけは訝しげだった。
「どうしたの、雪歩ちゃん?」
菜月が雪歩に尋ねると…
「……なんで、お母さんが攫われた事、知ってたんだろう?」
「そう言えば……何でだ? 何か、関わりがあんのか?」
「まさか……」
確かに、ジョルダーナ会長は雪歩の母親である紅葉が攫われた事を周知している様な口ぶりだった。
だが、今はそれ所では無い。
「皆‼︎ 今は早く、風のシズカを追わなくちゃ‼︎」
菜月は三人に言い放った。雪歩達も我に帰る。
「でも、なっちゃん‼︎ プレシャニウムは、何時もみたいにBOXアプリでの転送を使えないんだよ‼︎」
「ハイパー・ビークルでも、スピード出したら、プレシャニウムが爆発して、ビークルごと木っ端微塵だしな」
「かと言って、歩いて行く訳にもいきませんしね」
雪歩、紺亮、菖は各々に考えを述べた。と、その際、モニターに紅花が映り込んで来た。
「心配ないヨ〜‼︎ こんな事もあろうかと、新型のハイパー・ビークルを完成させておいたよ‼︎」
「……毎度ながら、都合の良い展開だな……」
紅花の言葉を聞いた紺亮はボヤいた。紅花は、紺亮に…
「雪歩ちゃんにはゴーゴートランスポーター、菖ちゃんにはゴーゴークルーザーを渡したネ‼︎
だから、このビークルは紺亮君の専用だヨ‼︎」
「俺専用?」
「そう‼︎ では、新型のハイパー・ビークル……ゴーゴーコプターを御覧あれ‼︎」
すると、モニター画面に地下ドックに収納されている巨大なヘリコプター型のビークルの姿があった。
「No−S07 ゴーゴーコプターだヨ‼︎ 見た目通り、空中からの任務に用いたらヨロシ‼︎
帰りは、このコプターにプレシャニウムに載せて帰れば、問題無く運搬できるヨ‼︎」
紅花は説明を終えると、モニターは消えた。
その際、紺亮は考え込んでいた。ついさっき、ハイパー・ビークルの訓練をしていたが、上手く乗りこなせなかったからだ。
実の所、紺亮はボウケンジャーとして戦う事に自信が無かった。菖は冒険家としての実績から、雪歩はプレシャトピアを見つけると言う夢から、前へ突き進んでいく強さがある。
だが紺亮には、二人の様な夢も目的も無い。菖に指摘された通り、ただ雪歩に付いて来た形で、ボウケンジャーに加わったに過ぎないのだ。そんな自分が、これからもボウケンジャーとして戦っていけるか……彼は自信を喪失し始めていたのだ。
「紺君? おーい?」
一人で呆然としている紺亮を不振に思い、雪歩は彼を呼び掛けた。紺亮は我に帰り、雪歩を見た。
「どうしたの? ボーっとして……」
「……いや、別に……」
「? 変なの……」
「呆けてる暇はありませんわよ。早く出撃しましょう‼︎」
雪歩は怪訝な顔をし、菖に急き立てられる。紺亮はサロンから出て行こうとしたが……
「紺亮君? ちょっと良いかい?」
「何すか、アドバイザー?」
急に蒼太に呼び止められ、紺亮は振り返る。
「雪歩ちゃん達は先に行ってて」
蒼太は雪歩達を行かせると、紺亮を見た。
「大丈夫かい、紺亮君? 何か、不安そうな顔をしてるけど……」
「何も無いっス……。ただ……俺、このまま、ボウケンジャーをやってて良いのかなって……」
「……何かあったの?」
菜月も心配しながら話し掛けてきた。紺亮は俯き頭を掻きながら…
「俺、雪歩がボウケンジャーになるから、それに便乗して付いて来ただけだし、菖みてぇに冒険家だった訳でも無いし……。
かと言って、雪歩の様にデカい夢も無いし……何の為に、ボウケンジャーしてんのかな…って…」
「冒険する事に理由なんか要らない。寧ろ、雪歩ちゃんと共にいたい、って言うのが君が冒険する理由なんじゃ無いか?」
蒼太の言葉に、紺亮は顔を上げた。
「……僕はね……ボウケンジャーに入る前はスパイだったんだ。スパイとして数多の企業や国の機密情報を盗み出し、その企業や国をメチャクチャにしてきた……。けど、そうしたのはつまらない理由だ。『命懸けの危険を冒すスリルを味わいたい』……そんなチープな理由だ……。
けどね……気付いたんだ……。自分の欲求を満たす冒険心の為に、罪の無い人達を不幸にしてしまった事にね……」
「……それと、何の関係が?」
蒼太の過去話に、紺亮は首を傾げた。
「ボウケンジャーにスカウトされた時は、自分の犯した過ちから逃避する為だったけど……皆と冒険を重ねていく内に知ったんだ。
僕にとっての冒険は『誰かを傷つける事じゃ無く、守る為』だってね……。
だから、紺亮君。君もボウケンジャーとして戦っていけば、自分にとっての冒険する理由が見つかる筈だ」
紺亮は理解出来なかったが、何となくだが、蒼太の言いたい事は分かった。冒険する理由は自分で見つける事、そして、それは必ず見つかる事だと……。
「……よく分かんないっスけど、肝には銘じておきます……」
「ああ‼︎ 期待してるよ、ボウケンネイビー‼︎」
蒼太の激励に対し、紺亮は腑に落ちないながらもサロンから出て行った。残された蒼太と菜月は……
「……蒼太さんって、やっぱり優しいね!」
菜月の言葉に、蒼太は苦笑いする。
「彼は昔の自分に似てるよ……。やりたい事を探していた時の自分にね……。かつて、明石チーフ達との冒険で、それを知れた様に彼も見つけられると良いけど……」
「大丈夫だよ‼︎ だって、ボウケンジャーなんだから‼︎」
一見、菜月の根拠のない言葉だが、蒼太は軽く頷き、紺亮の顔を思い描く。かつて、スパイ活動を休止し、生き甲斐を無くした自分は、ボウケンジャーの活動に新たな生き甲斐を得た。
紺亮も、そうなってくれる事を蒼太は信じていた……。
地下ドックにやって来た紺亮は、雪歩達に合流する。雪歩は振り返ると…
「何を話していたの?」
「大した話じゃねェよ」
紺亮は、ぶっきらぼうに返した。雪歩は理解できない様にしていたが、菖は紺亮に…
「雪歩の片思いを任務に出すな、とでも言われたかしら?」
と、ボソリと呟いた。紺亮はイラッとしながら…
「ルセェな! 関係ねェよ!」
と、返した。菖は呆れながら、告げた。
「……さっきは言い過ぎましたわ。ごめんなさい」
菖が紺亮に謝罪したのだ。プライドが高く、仲間にも強気に接する菖が、である。
「は? なんで、謝んだよ?」
「……先ずは、その鈍過ぎる性格を治しなさいな」
紺亮の問いに対し、菖はつっけんどんに言った。と、其処へ影斗がやって来た。服装も何時ものツナギ姿である。
「やァ。間に合って良かった」
「影斗さん?」
にこやかにやってくる影斗に雪歩は語り掛けたが、紺亮は不機嫌そうだ。
「君達に、ハイパー・ビークルに続いて渡したい物があってね! 前から話してた新武器が開発出来たんだ‼︎
雪歩ちゃん、スーパー・アクセルラーを出して」
影斗に言われるがまま、雪歩はスーパー・アクセルラーを出した。すると、影斗は自身のノートPC端末を操作し、何かを転送して来た。
「新武器《デュアルクラッシャーG》だ! ハイパー・ビークルに対応し、強力なパワーを発揮する武器だ!
これなら、ボウケンアームズを使っても倒し切れない敵でも倒せる‼︎」
「凄い凄い‼︎ これがあったら、怖い物無しだね‼︎」
「だけど、欠点もある」
無邪気に話す雪歩に対し、影斗は人差し指を立てながら言った。
「攻撃力は高いが、その反動も強力でね……下手に乱用したら、使用者に負荷が掛かってしまう。最悪、骨折だけじゃ済まされない重傷を負う可能性も否定出来ない」
「……確かに、強力な武器にはリスクが付き物ですわ……」
菖も同意を示す。強力な武器は敵のみならず、使い手にも甚大な被害を齎しかねない……。
だが、影斗は軽くウィンクした。
「そこで、だ。デュアルクラッシャーG専用の装備も用意しておいた! 其れが、この《アクセルテクター21》だ!」
影斗は画面を下にスライドすると、其処には胸部にサージェスのロゴが表記されたプロテクターが映し出された。肩アーマーは金色に輝き、更に両腕と両足に装着するアンクルリストも付いていた。
「これを装備すれば、通常の攻撃も防いでくれるし、デュアルクラッシャーGの反動にも耐えられる筈だ!
君達が以前、見つけてくれたプレシャス《コスモハート》を解析した結果、そのエネルギーを利用する事で開発したんだよ!」
「凄いよ、影斗さん! ありがとう!」
「但し、気をつけて欲しい! 耐えられるとは言え、このテクターはまだ未知数だ! 乱用して何発を撃ち続けると、耐えられなくなる可能性もある!
だから、使用には充分に……」
「うん、分かった‼︎ じゃあ、行ってくるね‼︎」
影斗の話を最後まで聞かず、雪歩は走り出してしまった。紺亮と菖は呆れながら、溜め息を吐く。
「……あれ、絶対に分かって無いよな……」
「……間違いなく……」
「……アハハ……」
影斗も苦笑いを浮かべるしか出来ない。それで、残った菖と紺亮に語り掛けた。
「……じゃあ、頼むよ。雪歩ちゃんが無茶しない様に見てやってて欲しい」
「……アンタに言われる迄も無ェよ」
と、素気なく返す紺亮はスタスタと歩いて行く。菖は紺亮の態度を疑問に感じながらも、彼に付いて行った。
影斗は去りゆく二人の背中を見届けると、ツナギのポケットに手を入れる。再び、手を出すとディエンドライバーを取り出した…。
同時刻……某所……
「会長……少し話し過ぎです」
サージェス秘書のレーブは、デスクに座るジョルダーナ会長に小言を言っていた。対し、ジョルダーナ会長は悪びれずに笑う。
「いやァ、スマンスマン‼︎ やはり、若者と話すのは良いものだね‼︎」
「……会長」
「特に……白瀬雪歩か……! あの娘は、金の卵だよ‼︎ 祖父とよく似ている‼︎」
「……会長!」
「あの娘は、純粋だ‼︎ 日本の諺にある『泥中の蓮』の其れだよ‼︎ 黒い物に飲まれても白いままで……」
「……ジョルダーナ会長‼︎」
レーブは声を荒げて、会長を黙らせた。ようやく、ジョルダーナ会長は黙る。
「……御言葉ですが、会長……貴方は、サージェスのトップであり、彼等は末端に位置するボウケンジャーです。
特定の者達を特別視する様な言動は、控えて下さい……」
「やれやれ……今日は何時に無く手厳しいな、レーブ君……。あまり、目鯨を立てると、顔が一層に険しくなるぞ? 君だって、そろそろ身を固める年頃だろうに……」
「……会長……私を本気で怒らせたら、困るのは貴方ではありませんか?」
「や……! ジョークだよ、ジョーク‼︎」
飄々とした会長に対し、冷静ながらに怒りを滲ませるレーブ。冗談では済まない、と悟ったジョルダーナ会長は謝罪した。
レーブは秘書として非の打ち所がない優秀な人物だ。反面、仕事に対しては一切の妥協を許さない為、彼女を怒らせた日には、後が恐ろしい……。その事を重々に承知している会長は、一先ず秘書の堪忍袋の緒が切れない様に、宥める事にした。
「……時に、レーブ君? メガ・プレシャスの捜索はボウケンジャーに任せるとして、“例の仕事”は滞りなく進んでいるのかな?」
さっきまでの好々爺な顔は消えて、大組織のトップに相応しい真面目な顔を見せる会長。
レーブは淡々とした口調で…
「ご心配なく。既に9割方、完遂しています。後は、メガ・プレシャスさえ、サージェスが抑えれば、全ては完了ですわ」
と、告げた。会長はニヤリと北叟笑む。
「宜しい……忌々しい明石暁に、あの“秘密”を嗅ぎつけられた時は、流石に肝を冷やしたがね……だが、其れも要らぬ心配に終わったよ……。
明石め……まさか、自分の飼い犬が、我々の手に落ちているとは夢にも思うまい……」
そう呟くと、会長は片眼鏡に隠された見えない右目を部屋の片隅に向けた。其処には、黒マントとローブで顔を隠し、肩から金色の肩当てを覗かせた者の姿があった。
「……サージェスが長年に渡り、進めてきた計画もいよいよ大詰めだ……何人たりとも、計画の邪魔はさせん。
白瀬冬次郎には幾多と邪魔されてきたが、その孫娘がサージェスに加わるとは些か皮肉な話だ……。
だが、あの娘はプレシャトピアの復活には必要な存在だ……それまでは……」
そう言って不自然に言葉を切る会長。自身のデスクの上には、3枚の写真が散らばっていた。一枚には、かつてのボウケンレッド/明石暁、一枚には雪歩の祖父である白瀬冬次郎……明石の写真には万年筆が彼の顔に深々と突き刺さり、白瀬冬次郎の写真は黒くバツ印が刻まれていた。
最後の写真は雪歩の顔があった。
「……それまでは利用させて貰うよ、白瀬雪歩君……」
ジョルダーナ会長は、雪歩の写真を見つめながらポツリと呟く。その際、視力の無い筈の目が開かれ、謎の紋様の描かれた瞳が雪歩を見据えていた…。
雪歩、紺亮、菖はゴーゴーロコモーティブに乗り込み、現場へと直行していた。ロコモーティブ内の炭水車に当たる場所には別に三人が乗り込めるスペースがあり、連結する貨車二両にはゴーゴージープ、ゴーゴースノウが収納されている。
雪歩は運転席から上半身を出していた。
「きーもーちィィィ‼︎」
「危ないですわよ⁉︎ 座ってなさいな‼︎」
子供の様にはしゃぐ雪歩を、菖は無理矢理に引き戻す。紺亮は一人、無言のままだ。
「全く‼︎ 貴方のお母様を助けに行きますのよ⁉︎ 心配ではなくて⁉︎」
「別に〜! 任務はプレシャニウムの回収でしょう? あの人は、ついでだし?」
「……貴方、本当にお母様と仲が悪いんですのね……」
「当たり前じゃん‼︎」
菖の鼻先に、雪歩はグイグイと来た。
「何時まで経っても、人の事を子供扱いしてさ‼︎ その癖、自分はやりたい事を好きなだけやってて、私の話なんか聞こうともしないんだよ‼︎
少しは娘の言う事に耳を傾けろって思うよ‼︎」
(……普通は中学生辺りで、終わってる物ですのに……未だに、母親への反抗期が終わって無いのかしら?)
雪歩の言葉に、菖は呆れながら思う。普段は冒険バカな彼女だが、母親に対しては素直になれない普通の女の子だった…改めて、白瀬雪歩と言う人間を再認識する事が出来た。
「……子の心、親知らず……とは良く言った物ね……。気持ちは分かりましてよ……」
「菖ちゃん?」
「私も似た様な物ですわ……植村家の令嬢らしく、もっと淑やかに……そう言われて躾けられましたわ……。
けど……そんな親の敷いたレールの上を歩くだけの人生なんて馬鹿馬鹿しい。他の人からすれば『お嬢様の我儘』だとか『贅沢な悩み』だとか眉を顰められるでしょうけど……私は私の歩くレールくらい、自分で選ぼうと思ってるわ……貴方も、それで良いですわよ」
「……うん‼︎」
珍しく、菖が雪歩に寄り添う言葉を掛けてきた。雪歩は、ただ素直に喜んだが、紺亮が口を開く。
「……話の腰を折る様で悪ィが、お二人さん……さっきから尾けられてるぜ……このビークル……‼︎」
「何ですって?」
「……見てみろよ……」
紺亮に言われて、菖は外の様子を伺う。すると、ロコモーティブの死角から複数の影が現れた。
其れは、恐竜に似た頭部が付いた異様なバイクに搭乗したカース達だ。左右を合わせれば、ざっと20人近く居る。
「カース……ネガティヴですわ‼︎」
「右にも左にも……ロコモーティブを包囲してやがる‼︎」
「あ‼︎ あれ‼︎」
雪歩が指を差した方角には、恐竜スピノサウルスに似た大型のバイクに搭乗したラアナ、ゴドラン、ツルギの姿が。
「オーッホッホッ‼︎ また会ったわね、間抜けなボウケンジャー達‼︎ アンタ達が、ここを通るのを待ち伏せていて良かったわ‼︎」
「また、ラアナ‼︎ しつこいなァ‼︎」
「お生憎様‼︎ 私は蛇の様に執念深い女なのよ‼︎
ツルギが操縦するバイクに跨りながら、ラアナは雪歩に叫ぶ。
「アンタ達の行く先は分かってるわ‼︎ プレシャニウムは、私達が丸ッと頂くわよ‼︎ アンタ達は、此処で死になさい‼︎」
「ラアナ様‼︎ 飛ばしますよ‼︎」
「ちょ……まだ早……!」
ラアナが最後まで言い切る前に、ツルギはバイクを走らせた。危うく、ラアナはバイクから落ちそうになるが、ドゴランに助けられた。
「さあ、カースバイカーズ‼︎ 吾輩の自慢の小型ツクモロボ『ジャリュウチェイサー』で、ボウケンジャー共を血祭りに上げろ‼︎」
ツルギの命を受けたカースバイカーズは、バイクを動かしながらロコモーティブに攻撃を仕掛ける。
だが、カースの仕掛けるのは体当たりや蹴り、手に持つ鎌を叩きつけるぐらいだ。ロコモーティブを止める事は出来ない。
しかし、カースバイカーズ達が屋根へと飛び乗って来た。
「おいおい! アイツ等、乗り込んで来る気か⁉︎」
「ハイパー・ビークルとは言え、内部に侵入されたら手も足も出ませんわ⁉︎」
「 だったら、私達も屋根に出よう‼︎」
慌てる二人を尻目に、雪歩はロコモーティブの外へと出た。
「あ! あの馬鹿‼︎」
「行くしか無いですわ‼︎」
紺亮、菖も後に続く。ロコモーティブは自動運転になっているので問題は無いが、特急で移動するビークルの上での戦闘は、かなり危険である。
外に出た3人は待ち構えていたカース達と対峙する。
『スタートアップ‼︎』
掛け声と共に、アクセルスーツを身に纏う3人。カース達は一斉に襲い掛かるが、所詮は雑兵。サバイバスター・カスタムで撃ち倒して行く。
しかし、周囲を取り囲んで走るカースバイカーズ達は、倒してもまた乗り込もうとしてくる。
「くそッ‼︎ これじゃ、キリが無いぜ‼︎」
「元から叩かないと、駄目ですわね‼︎」
「でも、サバイバスター・カスタムじゃバイクまで届かないよ⁉︎」
ホワイトは、下を走るカースバイカーズを狙撃するが、走るバイクを正確な撃ち抜くのは不可能だ。
しかし、右側を走るカースバイカーズ達はかなり束になっている。ホワイトは、ある名案を思い付いた。
「そうだ‼︎ デュアルクラッシャーGを使おう‼︎」
「そうか、その手があったぜ‼︎」
「やるしか無いですわね‼︎」
ネイビー、バイオレットも賛成した。ホワイトはスーパーアクセルラーをタッチし…
「デュアルクラッシャーG‼︎ クルーザーヘッド‼︎」
と、叫びアプリを起動する。すると、雪歩の手にデュアルクラッシャーGが現れ、同時にアクセルテクター21も装着していた。
銃口は、従来のデュアルクラッシャー同様に力を供給するハイパー・ビークルの一機、ゴーゴークルーザーを模した二つのファンと噴水口となっている。
「皆、行くよ‼︎」
「何時でも良いぜ‼︎」「了解ですわ‼︎」
反動にて、ホワイトが吹き飛ばされない様に支える。
「レディ……GO‼︎」
ホワイトがトリガーを引くと、デュアルクラッシャーGの銃口から高圧水流が凝縮されてレーザーの如き勢いで発射される。
カースバイカーズは、その砲撃によって吹き飛ばされてしまった。
「やったァ‼︎ 凄いパワーだぜ‼︎」
「まだですわ! 左側のバイカー達が……ホワイト⁉︎」
「か、肩が……痺れて……‼︎」
ホワイトは先程の一撃で、肩を痛めてしまった様だ。ぶっつけ本番でやった為、アクセルテクター21でも防ぎ切れない反動が来てしまった様だ。
「く……まずいですわね……‼︎」
「貸せ、ホワイト‼︎ 次は俺が……‼︎」
「あ、あれは⁉︎」
ネイビーが代わりに撃とうとしたが、ホワイトは痛みに耐えながら指を差す。その先には、カースバイカーズとは別のバイカーが居た。
「ディエンド⁉︎」
それは、仮面ライダーディエンドだ。彼が専用バイク、マシンディエンダーに搭乗して、カースバイカーズ達を蹴散らしていたのだ。
更に右手のディエンドライバーを使って、次々にカースバイカーズを撃ち倒して行く。
「行きたまえ、ボウケンジャー! 此処は私が引き受ける‼︎」
そう言って、ディエンドはカースバイカーズ達を引き連れて行った。その姿を見ながら、ボウケンジャー達を乗せたロコモーティブは走って行く…。
次回予告
ネガティヴの妨害を擦り抜け、古墳へ辿り着いたボウケンジャー達‼︎ しかし、古墳内部に施された仕掛け、更にプレシャスを守護する番人達が彼等の前に立ち塞がる‼︎
次回! 轟轟戦隊ボウケンジャーReturn−White.adventure
task14 冒険者の試練
雪歩「何の為に、こんな物が⁉︎」
ラアナ「これが、サージェスの隠している物⁉︎」