轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure   作:竜の蹄

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お久しぶりです‼︎

長らく投稿が出来ずに居ました。体調を崩したり、職場を異動になったり、入院したりと新作が書けませんでした。

これからも、不定期ながらも連載復活して行きます‼︎
休載中に以前から書き進めていた小説を同時掲載しますので、そちらもご覧下さい‼︎


task17 プレシャニウムを運べ! 後編

 ホワイト達は、ゴーゴーコプターにて上空を飛んでいた。菖と雪歩と紺亮、横たわる紅葉だ。

 コプターは自動パイロットに設定してある為、紺亮の操縦は必要無い。ミュージアムまで、安全にプレシャニウムを運ぶのが先決だ。

 菖は疲れた様子ながらも、外の様子を窺っていたが、紺亮は紅葉を見ながら、溜め息を吐く。

 

「全く、紅葉さんが攫われた時は、ヒヤリとしたよ……。サージェスまで押しかけてくるなんて、無茶な所はそっくりだな……」

 

 紺亮がポツリと呟く。子供の頃から、彼女の破天荒さには驚かされていたが、それは今も変わっていなかった。

 しかし、雪歩からは返事が返ってこない。彼女を見てみると、雪歩は紺亮の肩に凭れかかり、スヤスヤと眠っていた。

 

「……ッたく……呑気な奴だぜ……」

 

 相当、疲れていたのだろう……紺亮は思った。ボウケンジャーとなってから、雪歩は以前に増して無茶を繰り返していた。

 このまま続けば、彼女はいつか、壊れてしまうかもしれない……そんな不安が、紺亮を襲う。

 

「……俺が……しっかりしなきゃな……」

 

 紺亮は改めて、自身の責任感を感じた。今までは、自分はボウケンジャーとして活動する事に、夢も目的もない自分には相応しくないのでは、と考えていた。

 だが、蒼太から送られた言葉がふと蘇る。

 

 

 〜僕にとっての冒険は『誰かを傷つける事じゃ無く、守る為』だってね……〜

 

 

「……俺にとっての冒険は……雪歩が夢に向かっていくのを守る為……」

 

 漸く、紺亮は自分のボウケンジャーとしての目的を見出せた気がした。これまで、彼は済し崩し的にボウケンジャーに在籍していたが、彼女の側に居たい、と言う考えが根底にあった事に気付いた。

 と、その際、菖が声を上げた。

 

「二人共、本機に何か近付いてきますわ‼︎」

 

 菖の叫びに、紺亮は外の景色を見た。其処には漆黒の帆船に似た乗り物が接近して来ていた。

 

「何だありゃ⁉︎ 海賊船か⁉︎」

「ネガティヴの襲撃ですわ‼︎ 気を抜かないで‼︎」

 

 菖の言葉と同時に、海賊船から声が響いた。

 

 〜逃げられると思ったか、ボウケンジャー‼︎ この、忍科学の結晶たるツクモガレオンの威力を知れ‼︎〜

 

 それはツルギの声だ。すると、ツクモガレオンから光弾が撃ち込まれてきた。

 間一髪で躱したが、光弾は次々に飛んでくる。

 

「あいつら、気は確かかよ⁉︎ プレシャニウムが爆発したら、どうする気だ⁉︎」

「どうやら、敵はそのつもりみたいですわ‼︎」

 

 緊急事態に二人共、慌てふためく。と、その際、光弾の一部がコプターに当たり、機内は激しく揺れる。

 

「くそッ‼︎ 喰らった‼︎」

 

 紺亮はコプターの内情をアクセルラーで調べたが、航行に問題は無い。だが、今の攻撃で自動パイロットの機能が停止してしまった。

 

「まずいですわよ‼︎ このままじゃ、墜落ですわ‼︎」

 

 菖は青ざめながら叫ぶ。だが、紺亮はボウケンネイビーのアクセルスーツを身に纏い、操縦席へ向かった。

 

「今から俺が操縦する‼︎ お前は、二人を見ていてくれ‼︎」

「本気ですの⁉︎ プレシャニウムの限界時間は、20分を切りましてよ⁉︎」

 

 プレシャニウムを爆発させない為に、更にあと20分でミュージアムに運ばなければ任務は失敗だ。

 しかし、ネイビーは親指を立てた。

 

「任せろ‼︎ 俺が無事にプレシャニウムをミュージアムまで無事に運ぶ‼︎」

「分かってますの⁉︎ 時間切れと追撃……リスクは大きいですわよ⁉︎」

 

 菖は楽観する様に叫ぶネイビーに怒鳴る。だが、ネイビーは明るく言い切った。

 

「雪歩は、お前を信じてんだ‼︎ だから、偶には俺の事も信じろ‼︎」

 

 そう言って、ネイビーは操縦席へと入った。菖もボウケンバイオレットに変身した。

 

「……何が『俺を信じろ』よ……私達の中で一番、頼りない癖に……!

 ……頼みますわよ……‼︎」

 

 

 

 操縦席に着いたネイビーは、ドライバーを操作する。背後からは、ツクモガレオンの執拗な攻撃が迫ってくる。

 

「おら、付いてこれるかよ⁉︎」

 

 ネイビーはコプターを急旋回して、ツクモガレオンを躱した。大きい船体では、小回りのきくコプターを追尾しきれないと踏んだからだ。

 しかし、ツクモガレオンは各部所に仕掛けた砲門から、攻撃が鳴り止まない。これでは撃墜されるのも時間の問題である。

 ネイビーはコプターの行く先を一気に下に向かわせた。重力と引力が重なり、コクピットには凄まじいGが掛かる。

 当然、操縦しているネイビーへの負担も大きかった。

 

 〜ネイビー、何してますの⁉︎ 気は確か⁉︎〜

 

 バイオレットの怒号がヘルメットに響く。このままでは地表に正面衝突してしまう。

 しかし、ネイビーは……

 

「大丈夫だ‼︎地表スレスレで反転する‼︎」

 〜そんな事、無謀ですわ〜

「無謀だろうが、無茶だろうが、やり遂げるのが……ボウケンジャーだろうが‼︎」

 

 ネイビーは言い切り、コプターを地表に進めた。あと、もう少しで地面という所で、コプターを操作して地表ギリギリで反転、滑空した。

 しかし、ツクモガレオンは上空より、追撃をしてこようと砲門を向けてきた。

 だが、その刹那、ツクモガレオンに爆発が上がった。

 

 〜な、何だ⁉︎ 誰だ、攻撃して…⁉︎〜

 

 ツルギの慌てふためく声と共に頭上から現れたのは、マシン・ディエンダーに搭乗したディエンドである。飛行形態にしたマシン・ディエンダーは、ツクモガレオンの眼前に立ちはだかった。

 

「行き給え‼︎」

 

 ディエンドはボウケンジャーに言った。バイオレットはネイビーにコンタクトを取る。

 

 〜あと、15分しかありませんわ‼︎〜

「あ、ああ…‼︎ どうやら、アイツに任せるしか無いな!」

 

 そう考えたネイビーはコプターを急速旋回して、ミュージアムへ続く空路へと向かった。

 残されたツクモガレオンからは、ツルギの怒声が響く。

 

 〜また貴様か‼︎ 度々、我々の邪魔をしおって‼︎ 今日こそ、目に物を見せてやる‼︎〜

「……悪いが……余り時間は無いのでね……短期決戦で行かせて貰う‼︎

 

 ROBO RIDE‼︎ D・ENDER‼︎」

 

 ディエンドがカードをマシン・ディエンダーに挿入すると、マシン・ディエンダーが巨大化し始めた。

 そして、見る見る間に変形して行き、巨大なロボットへと姿を変えた。

 ディエンドは、現れた頭部のコクピットへと搭乗する。

 

「騎面機兵! ディエンダーロボ‼︎」

 

 ディエンドは名乗り口上と共に、ツクモガレオンの穂先を掴む。そして、背中に出現したジェットパックで飛行しながら、ツクモガレオンをジャイアントスイングの要領で振り回す。

 

 〜や、やめろ‼︎ 目が! 目が回る〜‼︎〜

 〜ドゴラァァァ‼︎〜

 

 ツルギとドゴランの叫び声が木霊した。だが、ディエンダーロボは上空へと投げ飛ばす。

 

 〜うわああァァァッ‼︎〜

 

「では……フィナーレと行こうか‼︎

 

 ディメンション……フルブラスト‼︎」

 

 ディエンダーロボに全身から幾つもの砲門が出現し、其処から複数発もの光弾がツクモガレオンを狙い撃ちした。

 ツクモガレオンの内部では…

 

「うああァァァッ‼︎ 吾輩の忍科学の結晶がァァァ‼︎ こうも容易く敗れる筈がァァァッ‼︎」

「ド、ドゴラァァァッ‼︎」

「……騒々しいね……何事だい?」

 

 慌てるツルギとドゴランを尻目に、ラアナが目を覚ます。だが、既にツクモガレオンの耐久は限界を迎えていた……。

 

 

「整いました! 撃沈されたツクモガレオンと掛けまして、大爆発に巻き込まれた我々と解きます」

「その心は?」

「どちらも、ボカン(母艦)となるでしょう‼︎」

「上手い‼︎ 座布団一枚‼︎ って、大喜利しとる場合かァァァ‼︎」

 

 

 ラアナのツッコミも虚しく、ツクモガレオンは大爆発を起こし、文字通り「ボカン(ボカン)」と空へと消えて行った…。

 

 その様子を下からディエンダーロボが見上げつつ、ディエンドがコクピットから出てきた。

 すると、何処からか取り出したメモの様な物を覗き見る。

 

「やはり、彼等は掴んでいたか……メガ・プレシャスの手掛かりを……‼︎」

 

 と、だけ言って、ディエンドはメモの内容を暗記するや否や、細かく千切って捨ててしまった…。

 

 

 

 その後、雪歩達はサージェス・ミュージアムへと無事に帰還する事が出来た。正に紙飛行機の差でミュージアムに運び込み、プレシャニウムを収納する事で事態は解決したのだ。

 紅葉は現在、医務室で治療を受けており、高田がそれに付き添っている。

 雪歩、紺亮、菖はヘトヘトになりながら、サロンで座っていた。

 

「ハァァ……危機一髪だったな……‼︎」

 

 紺亮は机に突っ伏しながら、ポツリと呟く。菖はジロリと紺亮を睨む。

 

「本当ですわよ! さっきは死ぬかと思いましたわ!」

 

 菖は恨みがましげに紺亮を詰った。ネガティヴの追撃を躱す為とは言え、コプターで地上を反転する等、自殺行為でしか無い。

 

「まあまあ。結果オーライだったし、任務も無事に済んだし、良しとしようぜ!」

「……呆れた……! 貴方も雪歩の事を、とやかく言えない程、無鉄砲じゃありませんの……!」

 

 そう言うと、菖は雪歩を見た。雪歩はボケーッと天井を仰ぎ見ている。

 

「雪歩、どうしまして? 脳震盪を起こした猿みたいな、間の抜けた顔してますわよ?」

 

 皮肉げに菖が尋ねた。しかし、雪歩は菖の嫌味に対して、ボケーッとするばかりだ。

 

「おい! 雪歩ってばよ‼︎」

「ふァッ!!? なに⁉︎」

 

 紺亮の怒鳴り声に、雪歩は我に返った様だ。

 

「本当にどうしましたの? そんなに疲れたのかしら?」

「お袋さんなら、心配すんな。ちょっとすりゃ、目を覚ますって最上さんも……」

「べ、別に心配なんかしてないよ‼︎ お母さんは殺したって死なない人だし⁉︎」

 

 雪歩はムキになりながら、反論した。

 

「じゃあ、何を考えてましたの?」

「……んとね……ディエンドの事……。ディエンドって、いつも私達の事を先回りして、なんだかんだ助けてくれるじゃない?」

「……まァな……。癪に触る奴だけど、今回は三度もアイツに助けられちましったし……」

 

 紺亮らディエンドのキザの言い回しを思い出して、腹立ちまぎれに言った。しかし、彼の助太刀があって、何度も危ない目から脱したのは事実である。

 

「……最初、ディエンドの正体は別の人って思ったけどね……今は、違うの……。

 もしかしたら、ディエンドの正体はお祖父ちゃんなのかも知れない……」

「雪歩の祖父さんって……まさか⁉︎」

「有り得ませんわよ‼︎ だって、貴方のお祖父様は……‼︎」

 

 二人共、雪歩の仮説を信じなかった。雪歩の祖父、白瀬冬次郎は公には行方不明扱いだが、既に死亡していると考えられている。

 しかし、雪歩は寂しげに笑いながら……

 

「……分かってる……。そう思いたいだけかもしれない……お祖父ちゃんが生きてたらな……ッて……」

 

 と、言った。雪歩も祖父の生存を主張しながらも、頭の何処かでは分かっていたのだ。祖父は、自分が大好きだった祖父は、もう地球上の何処を探してもいないと……。

 重苦しい雰囲気の流れるサロン内に、菜月と蒼太が入ってきた。

 

「あれあれ? どうしたの、皆? 深刻そうな顔してるよ?」

「あ、なっちゃん!」

 

 菜月の姿を見た雪歩は少し元気が出た様だ。菖は、任務の詳細を伝えた。

 

「プレシャニウムは無事にミュージアム内のプレシャスバンクに貯蔵し、最悪の事態は防ぎました。

 けど……プレシャニウムの幾つかは……」

「ああ……ネガティヴに使われてしまったんだね……。その事で会長が話がしたいそうだ……」

 

 蒼太の言葉に紺亮と菖は狼狽えた。

 

「……やっぱり、怒られんのかな……俺達……」

「……理由はどうあれ、上からの命令を忠実に従えなかったんですもの……。最悪、ボウケンジャーの資格を剥奪だって有り得ますわ……」

 

 会長直々からの話だと聞いて、平常心で居られる訳が無い。考えれば考える程、悪い様に考えてしまう。

 雪歩は二人を見ながら、言った。

 

「大丈夫だよ! プレシャニウムは運んだんだから‼︎ きっと褒めて貰えるよ‼︎」

「……ハァァ……どっから、湧いてくんだよ……。その腹立つくらいのポジティブ思考は……」

「……いっそ、羨ましいですわ……」

 

 紺亮と菖は、雪歩の前向きな姿勢に呆れながら、もう軽く笑うしか無かった。

 見かねた二人に、菜月はフォローした。

 

「大丈夫だよ‼︎ 菜月達の時も任務失敗したり、ダイボウケンをネガティヴに奪われたりしたけど、クビにならなかったよ‼︎」

「ああ、懐かしいね……。けど、菜月ちゃん……それ、フォローになってないと思うな……」

「……あ、ごめん……」

 

 菜月の発言に益々、一層に暗い面持ちとなる二人。其処へ、モニターが変わり、ジョルダーナ会長の顔が映し出された。

 

 〜やあ、諸君‼︎ プレシャニウムの運搬任務は終わったかね?〜

 

 会長の温和な笑顔に、菖と紺亮は互いに顔を見合わせた。

 

「アンタ、報告しろよな」

「嫌ですわ。貴方が報告して下さいな」

 

 互いに、口の重い報告を受けてしたくないのか、押し付けあってしまう。

 その時、雪歩は口を開いた。

 

「あのね、おじいちゃん‼︎ プレシャニウムは何個か、ネガティヴに使われちゃったんだ‼︎ だから、全部じゃ無いけど、ちゃんと回収してきたから!」

 

『うォォォォォォォォッい!!!!』

 

 雪歩の口から放たれた堂々たるカミングアウトに、二人は慌てていた。

 

「お前は真性の馬鹿なの⁉︎ アホの子なの⁉︎ すっとこどっこいなの⁉︎」

「だって……嘘ついたって仕方ないでしょ、この場合……」

「だからって、言い方と言う物があるでしょうが⁉︎ ましてや、サージェスのトップにタメ口を聞くなんて……本気で、ボウケンジャーをクビになりたいんですの⁉︎」

 

 〜まァまァ、君達……落ち着きたまえよ。別に私は怒ってなんかいない。寧ろ、君達を改めて再評価する事が出来た〜

 

 そう言うジョルダーナ会長は、とてもにこやかだった。

 

 〜ボウケンジャー……現在、世界中に14ヵ所あるサージェス支部に於いて、過去数年にて最も功績を残してきたのが、日本支部のボウケンジャーだった……。

 特に明石暁君……彼は優秀なボウケンジャーだったよ……些か優秀過ぎるのが玉に瑕だったが……それは君のお祖父さん譲りかも知れんな?」

「? 私のお祖父ちゃん?」

 

 急に祖父を引き合いに出されて、雪歩はポカンとした。

 

「おや? 聞いていないのかね? 明石暁君は君の祖父、白瀬冬次郎の弟子に当たるのだよ。

 ある意味では君は明石暁君の妹弟子になる訳だが」 

 

「ええ⁉︎ そうだったの⁉︎ 菜月、知らなかった‼︎」

「いや、前に明石さんが言ってたじゃ無いか……」

「そうだっけ?」

 

 惚けた感じで返す菜月に突っ込む蒼太。雪歩は会長に尋ねた。

 

「会長さんは……お祖父ちゃんがどうして帰って来なくなったか……知ってるんですか?」

「……もし、知っているとしたら……君はどうするのかね?」

「……」

 

 少しはぐらかす様に会長は、真面目な目つきで雪歩を見据えた。しかし、雪歩は無言のまま、会長を見つめ返した。

 暫く、無言のままだった二人だが、会長は突然、笑い出した。

 

「ハッハッハッハッ‼︎ いやはや、君には負けたよ‼︎ 君の前には駆け引きは無意味だと言う事が分かった!

 結論から言おう。白瀬冬次郎は死んでいない。これは、世界中にあらゆるコネクションを持つサージェスの情報網を駆使して導き出した結果だ」

「お祖父ちゃんは……生きてる⁉︎」

 

 雪歩はパァッと明るくなった。だが、会長はチッチッと指を振った。

 

「生きてると言うより……死亡したと言う報告を受けていない、と言う事だ。

 反対に言えば、彼と思しき人物を見たと言う情報は入っていない……」

「……じゃあ……分からないよ……」

「その通りだ! こうやって机上の空論を続けていても答えは永久に出ないだろう……。

 君は、お祖父さんが生きているなら、会いたいかね?」

 

 会長の言葉に雪歩はコクンと頷いた。会長はニコリと微笑む。

 

「だったら、探すしか無いな。言っておくが、彼を探すのはプレシャスを探すより困難だ。それこそ、大海原に落としたダイヤモンド一個を探しすより大変だろうね。

 

 それでも彼に会いたいなら、探し出してみたまえ。君も冒険者ならばね」

 

 それは雪歩を試す様な、はたまた焚き付ける様な言葉に聞こえた。だが、雪歩は満面の笑顔だ。

 

「元から、そのつもりだよ‼︎ 私はボウケンジャーだし‼︎」

 〜ハッハッハッハッ‼︎ 素直な娘だ‼︎ 君とは、もっと語り合っていたいがね、生憎と私も忙しい身の上でね……この後、アメリカ大統領と会う約束をしているのだよ!

 あ〜、それとだ! 君達の今回のボーナスについてだが、君達の個人口座に振り込んでおいたよ!

 あと、これは私からの気持ちだ! 取っときたまえ‼︎」

 

 そう言って、会長が画面の向こうで何かを操作した。すると、3人のアクセルラーに何か返信が届く。

 雪歩達はアクセルラーを開いてみると…

 

「サージェスランド、入園チケット&アトラクション用フリーパス? 無期限? なんだこりゃ?」

「サージェスランドは、サージェス傘下のテーマパークだね。人気が多くて、入園チケットも取るのも困難らしいけど…」

 

 紺亮の言葉に蒼太が説明した。雪歩は、テンションが上がっている様子だ。

 

「遊園地のチケットとフリーパス⁉︎ やったァァァ‼︎ ありがとう、会長‼︎」

 〜なんのなんの! 私も行きたいんだが、秘書が怖くて行かせて貰えんのだよ、ハッハッハッハッ‼︎〜

 〜会長。その怖い秘書が後ろに控えている事を、お忘れですか?〜

 

 秘書レーブの厳格な声が聞こえ、会長は咳払いをして誤魔化した。

 

 〜会長、ヘリの準備が出来ました。アメリカ大統領が待っていますから、今からワシントンへ飛びますよ〜

 〜やれやれ、面倒臭いな……。済まないが、レーブ君。会長は急病で面会は謝絶だと……」

 〜会長。そろそろ私も、貴方のサボり癖に対し手を出しても構いませんか?〜

 〜いや、冗談じゃないか‼︎ 分かった分かった、直ぐに行くから‼︎ じゃあ、諸君! 冒険も良いが、偶には遊園地で骨休みしてきたまえ‼︎〜

 

 そう言って、会長との映像は途切れた。三人は顔を見合わせる。

 

「……取り敢えず、クビでは無い……よな?」

「……ええ……」

 

 蒼太と菜月も難しい顔をしている。

 

「……やっぱり、会長は読めないな……」

「……よく分からないよね、あの人……」

 

 だが、雪歩だけはウズウズしていた。

 

「ねェ‼︎ 遊園地だって‼︎ 行こうよ、今から‼︎」

「馬鹿か‼︎ 今、帰って来たばかりだろうが‼︎ 遊園地に行く体力なんかねェよ‼︎」

「それに、遊園地に行ってる暇なんかありませんわよ‼︎ 私達は、メガ・プレシャスを探すと言う使命がありますわ‼︎」

「でも、会長が折角くれたんだよ‼︎ 使わなきゃ、勿体無いじゃん‼︎」

「そう言う問題では……‼︎」

 

 雪歩と菖は口論を始めた。と、蒼太が雪歩に伝えた。

 

「雪歩ちゃん、お母さんの意識が戻ったらしいよ」

「……そうなんだ……」

「……会いに行かなくて良いの? また、暫く会えないよ?」

「……良いの! 会ったって、喧嘩になるだけだし……あの人だって私になんか会いたく無いでしょう⁉︎」

 

 雪歩が不貞腐れた様に言った。

 

「自分には会いたくないって……それマジで言ってんのか?」

「紺君?」

「ミュージアムにまで怒鳴り込んできたのだって、大学を諦めて就職を勧めてきたのだって、態度や言動はともかく、娘の身を案じての事だろうがよ!

 いつまでも、ガキみてェに拗ねてんじゃねェよ‼︎ お前、お袋さんと一生、和解できないままでいる気か⁉︎」

 

 珍しく、紺亮が厳しい口調で怒っていた。雪歩は暫く押し黙っていたが……

 

「……ごめん、なっちゃん! ちょっと行ってくる‼︎」

「うん! いってらっしゃーい‼︎」

 

 と、雪歩はサロンを飛び出した。紺亮は深く溜め息を吐き、菖は意外そうに見ていた。

 

「……貴方が、人様の家族に其処まで世話を焼くだなんて……少し意外ですわ……」

「……そんなんじゃ無ェよ……。ただ……俺ァ、家族が歪み合う姿なんか、見たかねェんだ……」

 

 そう、ぶっきらぼうに返す紺亮は、何処か寂しげだ。

 

「アイツは幸せだよ……。まだ、心配されて怒られて喧嘩してる内が花だ……それさえ無くなっちまったら、おしまいだよ……」

 

 菖は何となく、紺亮の言う「歪み合う家族が誰を指して言っているのか、分かった気がした……。

 

 

 

 紅葉は高田と共にミュージアムを後にしようとしていた。紅葉は、どうもここに来てからの記憶が欠落していた。

 

「可笑しいわ……気が付いたら医務室で寝てて、何があったか覚えて無いわ……」

「もう良いじゃないですか……きっと働き過ぎなんですよ、紅葉さんは……。

 暫く、休暇でも取ったら、どうですか?」

 

 紅葉は立ち止まって、高田を睨む。

 

「……高田君……何か隠してない?」

「エッ⁉︎ いや、別に隠してなんか……」

「ハァァ……カメラマンも帰っちゃうし……取材は失敗ね……」

 

 ぶつぶつ言う紅葉だが、高田は意を決して話し掛ける。

 

「紅葉さんのプライベートに口を挟む気はありませんが……雪歩ちゃんに会って行かなくて良いんですか?」

「……会って、どうするのよ? あの娘だって、私となんか会いたく無いでしょうし……」

 

 母娘揃って、同じ事を言っていた。高田は続ける。

 

「……紅葉さんのサージェス嫌いは、父親への反発だと言う事も知ってます……。雪歩ちゃんの事も割り切れない事も……。

 ……でも……このままじゃ駄目ですよ……」

「……貴方に関係ないじゃ無い……もう良いのよ……」

 

 

「良くないよ‼︎」

 

 

 突如、雪歩の声が響いた。彼女は肩で息をしながら、紅葉を睨んでいた。紅葉は驚いていたが、近付いてくる雪歩は気にせずに怒鳴りつけた。

 

「お母さんの意地っ張り‼︎ 頑固者‼︎ 分からんちん‼︎ そうやって、私を子供扱いして、勝手に私の事を諦めてさ‼︎

 一度だって、私と向き合って話した事あった⁉︎」

 

 ギャンギャンと捲し立てる雪歩に対し、紅葉は言い返した。

 

「何よ‼︎ 口を開けば、あの男の事を引き合いに出す癖に良くそんな事が言えたわね‼︎

 子供扱いするなって言うならね、いい加減に大人しくなったらどう⁉︎」

 

 加速していく親子喧嘩に、高田も様子を見に来た紺亮と菖も唖然とするしかない。

 

「……何と言うか……似たもの親子ですわね……」

「……アレだ……同族嫌悪みたいな奴だ……」

「……確かに……あれは血筋ですね……」

 

 完全に二人の親子喧嘩に飲み込まれ、ただ傍観していた三人はポツリと呟いた。

 互いに言いたい事を言い合って一段楽した所、紅葉はフンッと鼻息を荒くして…

 

「そんなに、あの男と同じ道を辿りたいなら勝手にしなさい‼︎ その時が来てから、後悔したって遅いのよ‼︎」

「後悔なんかする訳無いじゃん‼︎ それに、お祖父ちゃんは生きてるかも知れないよ‼︎

 私がプレシャトピアを探して、お祖父ちゃんを連れて帰るから‼︎」

 

 その言葉に紅葉は目を丸くする。そして悲しい目で雪歩を見た。

 

「あり得ないわよ……あの男が生きている訳が無いわ……。理屈とかじゃ無い、私に分かるのよ……」

 

 紅葉は、これまで何度も冒険に旅立つ父の背を見送ってきた。しかし、最後の旅立ちの時、紅葉は何か嫌な予感を感じたのだ。もう、これっきり父とは会えない様な嫌な予感が……。

 

「……お母さん……そう言ってるのは、お祖父ちゃんへの反抗なんでしょう? お母さんだって、本当はお祖父ちゃんの帰りを待ってるんでしょう?

 だって、お母さんがお祖父ちゃんの書斎を何時も入念に掃除してるのも、お祖父ちゃんの背広や服をアイロンに掛けてるのだって、何時でも帰って来て良い様に、って事でしょ?」

 

 雪歩は気づいていた。母の祖父へと想いを……。本当は素直に旅立ちを見送りたかった、帰ってきたら労いの言葉を掛けたかった……。だが長年の確執が、紅葉の心を頑なにしてしまっていたのだ。

 

「……私ね……お祖父ちゃんが帰ったら、お母さんとちゃんと仲直りして貰うの。だって……お祖父ちゃん、お母さんに謝りたいって言ってたから……」

「……勝手にしなさいよ、もう……」

 

 紅葉は素気なく吐き捨て、高田に帰る様に呼び掛けた。帰り際、背を向けたまま紅葉は告げた。

 

「……正直、私はアンタの冒険に対する情熱は分からないわ……何に、そんな惹かれるのかもね……。

 ……けど、親の言う事を聞かずにやるんだから、中途半端に終わらせるなんて許さないわよ! やり遂げるまで、帰って来るな‼︎」

 

 紅葉は悪態を吐いている様に見えたが、実際は雪歩の夢を認めた。そして、去り際に一言……

 

「……偶には、電話くらいはしなさいよ……。あと……身体には気を付けなさい……」

 

 と、言い残した。雪歩はキョトンとしていたが……紺亮と菖に振り返る。

 

「……一応、許可は貰ったのかな……?」

 

 と、笑って言った。紺亮は雪歩を軽く小突く。

 

「いたッ! 何で小突くの⁉︎」

「お前が馬鹿面で馬鹿な事を言うからだろ? ……良いお袋さんじゃねェか……この道楽娘!」

「全くですわ……! あんな、優しいお母様を悪く言ったりしたら、バチが当たりますわよ!」

 

 紺亮と菖は説教する様に言った。叱られる事に不貞腐れる雪歩だが、内心は紅葉の顔を思い出した。

 何時も怒ってばかりの母だが、決まって祖父の部屋を掃除したり、背広をアイロン掛けする時は優しい顔になっていた事を…。

 

(……ありがとう……お母さん……)

 

 雪歩は母に対し、心からお礼を言う事が出来たのだった……。

 

 

 〜次回予告‼︎〜

 久しぶりの休暇にサージェスランドへ訪れた雪歩達。そんな彼女達の前に姿を見せた少年。

 果たして、彼の正体は⁉︎

 

 次回! 轟々戦隊ボウケンジャー

 Return−White.adventure

 task18 不滅の遺伝子

 

 雪歩「貴方は冒険しないの?」

 ???「冒険なんか、大ッ嫌いだよ‼︎」

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