轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure   作:竜の蹄

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お久しぶりです。
最近、勤め先がコロナ騒ぎに巻き込まれて、執筆が遅れていました。
そんな中、こんな状況の打破を込めて、“あの男”が登場します‼︎

では、新作をどうぞ‼︎


task18 不滅の遺伝子

 東京某所にある広大な敷地にある屋敷があった。この屋敷の主は西堀財閥であり、当主はかなりの高齢でありながら、今なおも社会的な地位と発言力を有していた。

 かのサージェス財団に対しても、自身の娘と娘婿が所属していたと言う実績から顔が聞く。

 この屋敷には西堀財閥会長と妻である老夫婦と数名の執事、メイド、専属シェフ等と大多数の人間が暮らしている。

 更に、この屋敷には老夫婦の孫にあたる子供も暮らしていたが……。その時、メイドの一人は慌てて走り回っていた。

 

「坊ちゃん〜⁉︎どちらにいらっしゃるんですか〜⁉︎ 坊ちゃん〜⁉︎」

 

 若いメイドは慌ただしく人を探し回っていた。すると、他の中年のメイドや壮年の執事がやって来た。

 

「坊ちゃんは⁉︎ 見つかったの⁉︎」

 

 中年のメイドは尋ねた。若いメイドは首を横に振る。執事は深く溜め息を吐いた。

 

「……全く、相変わらず人騒がせな方だ……」

 

 執事の言葉に若いメイドが、よよと号泣した。

 

「私のせいです……。ちゃんと、見ていなかったから……」

「貴方だけの責任じゃないわ……。誰だって分からないわよ……まさか、三階の窓からシーツをロープにして抜け出すなんて……」

「……やれやれ……誰に似たのやら……。いや、言わずもがな……父親譲りだな……」

「坊ちゃんは、きっと認めないでしょうね……」

 

 三人は深く溜め息を吐いた。その人物の人騒がせな我儘など今に始まった事では無いが、今回のは度を越している。

 一体、何処に行ったのか……執事はスマホを取り出した。

 

「……幸い、スマホを持って行っている様だが……ダメだ! GPSを外してしまわれている……‼︎」

「……そんな技術を何処で覚えてくるのやら……」

「……頭の良さは母親に似たのですよ……。ですが、両親から受け継いだ才能を持ち腐れてますね……」

 

 若いメイドが啜り泣きながら言った。執事は、かくなる上は……とスマホを動かす。

 其処へ中年メイドは提案した。

 

「旦那様と奥様も外出中ですし……やはり警察に頼むしか……」

「……いや……警察より確実な者達に依頼する。例のサージェスの冒険家達に!」

「サージェスって……お嬢様が、かつて所属されていた⁉︎」

 

 中年メイドの言葉に執事は頷いた。確かに彼等なら、物探しのプロだ。まだ、警察よりは安心出来る。

 

 

 

 その頃、サージェスの冒険者である雪歩、紺亮、菖の3人と蒼太と菜月は私服で久しぶりの休暇を満喫していた。

 5人が来ていたのは都内にある巨大なテーマパーク施設にして、サージェスの権力と財力を豊富に注ぎ込んで作成された遊園地『サージェスランド』であった。

 先日の任務の御礼として、ジョルダーナ会長から直々にサージェスランドの入場チケット兼アトラクション用フリーパスを貰った三人は早速、休暇を利用してやって来たのだ。

 

「わーい! 遊園地だ、遊園地だ‼︎」

「楽しみだね〜、雪歩ちゃん‼︎」

「うん、なっちゃん‼︎」

 

 雪歩と菜月は子供の様な喜んでいた。

 

「ガキみたいにはしゃぐなよ……恥ずかしいな……」

「まぁまぁ……折角の遊園地なんだから……」

「てか、何で蒼太さんと菜月さんまで? チケット、どうやったんすか?」

 

 紺亮は怪訝な顔で尋ねた。サージェスランドのチケットは予約が常に満タンであり、簡単には取れない筈だ。蒼太はニヤリと笑う。

 

「菜月ちゃんが『雪歩ちゃん達だけなんてズルい‼︎』って機嫌を損ねてね……。

 まあ、僕の腕に掛かれば、チケット2枚分を裏から仕入れるのなんて軽い物さ」

「……聞いちゃならない話を聞いたよ……」

 

 さらっと犯罪話を耳にした紺亮はゲンナリした。忘れていたが、蒼太は元はハッカーと言う経歴の持ち主だった。

 一方、菖は仏頂面で立っている。

 

「何を不機嫌な顔してんだ。そんなに来たくなかったなら、留守番しとけば良いだろうよ?」

「来たくなかった訳ではありませんわ‼︎ ただ、ボウケンジャーの任務を放棄する様な真似を、プロがすべき事では……」

 

 紺亮の嫌味に対して、菖は口を尖らせながら言った。

 

「菖ちゃん、身体運動適応って知ってる?」

 

 蒼太は菖に質問をした。

 

「は? 何ですの、急に? 知ってますわよ、難度や強度の高い運動を行うと、疲労によって体の機能は一時的に低下するが、その後に適度な休養をとることによって前よりも高いレベルまで回復する適応の事でしょう?」

「そう、それだ! つまり、ボウケンジャーとして良い任務を熟す為には、適度な休暇も必要と言う事さ。

 仕事のプロは自分の限界を超えるまで仕事をせず、幾分か余裕を残しておくんだ。

 常に限界まで働いていたら,それは社畜と変わらないからね」

 

 蒼太の最もな発言に菖は、渋々ながらも納得した様だ。

 

「……まぁ……良いですわ……。確かに最近は忙しくてった訳だし……」

「やれやれ、素直じゃねェな……。さてはアンタ、遊園地に来た事ねェんじゃ無いか?」

 

 紺亮は揶揄う様に言った。菖は顔を赤くしながら返した。

 

「失敬な‼︎ 遊園地くらい来た事ありますわ‼︎」

「へいへい」

「二人共〜‼︎ もうすぐ入園だよ〜‼︎」

 

 尚も喧嘩を続ける二人を雪歩が呼び掛けた。と、その際、自分の後ろからの声に雪歩は気が付く。

 

「ねェ……やっぱり、子供だけで遊園地に来るなんて、良くないよ……」

 

 小学生と思しき女の子が、不安げに言った。

 

「何だよ、お前も一緒に行きたいって言ったから連れてきたんだぞ! 帰りたきゃ、一人で帰れよ!」

 

 共に来ていた男の子が苛立たしそうに言った。

 

「もう……旭真くんを置いて帰れる訳無いでしょう……」

「だったら、黙って付いて来いよ‼︎」

 

「貴方……桃花ですの?」

 

 菖が女の子に声を掛けた。すると、桃花は血の気が引いた様な顔になる。

 

「やっぱり、桃花ですわね! 貴方、こんな所で何してますの!」

「あ、菖叔母さま⁉︎」

 

 桃花がどもるながら言った。しかし、菖は桃花に凄い圧を露わにし、桃花は「ヒッ!」と慄く。

 

「菖お姉様……でしょう?」

「ごめんなさい……菖お姉様……」

 

 その時の菖の顔は無表情ながらも、有無を言わさぬ程な迫力があり、桃花は愚か横にいる少年も震え上がり。

 

「ねェ、菖ちゃん。この子達、知り合い?」

 

 雪歩が話に割り込んできた。

 

「ええ、女の子の方は親戚ですわ。植村家の分家筋に当たる従姉妹で、植村桃花ですわ」

「……よ、宜しくお願いします……」

 

 桃花は丁寧に挨拶をした。成る程、確かに礼儀正しい一面を見れば、育ちの良い家庭の出身である事は間違いない。

 其処に紺亮が口を挟む。

 

「なんだ、従姉妹かよ。だったら、別に叔母さ……ぐえッ‼︎」

 

 紺亮は話の途中でアヒルみたいな呻き声を上げ、その場に座り込んだ。菖が紺亮の腹を殴り付けたからだ。不意打ちを喰らい、もろに水月辺りにパンチを受けた事で、紺亮は堪らず苦しんでいた。

 

「君も菖ちゃんの親戚?」

「はァ? ちげェよ‼︎ 一緒にすんな‼︎」

 

 少年は生意気な態度で雪歩に言った。紺亮は立ち上がりながら…

 

「えらく生意気なガキだな」

「ガキじゃねェよ、旭真って名前があるんだ! オッさん‼︎」

「……あ、ああ⁉︎ 誰がオッさんだ‼︎ お兄さんだよ‼︎ テメェの親父は口の聞き方も教えてくれなかったのかよ⁉︎」

 

 親父と言われて少年の顔が歪んだ。と、その時、菜月が少年に気付く。

 

「……ねェ? もしかして、旭真くん?」

 

 菜月は少年に語り掛けた。途端に少年は驚いた様子だった。

 

「菜月ねえちゃん⁉︎ なんで、前にあった時から変わってねェの⁉︎」

「やっぱり、旭真君だ‼︎ 大きくなったね‼︎ パパとママは元気?」

 

 その言葉に少年は再び不貞腐れた。

 

「……帰ってこない人が元気かどうか知る訳ないじゃん……」

「お父さんとは偶に連絡は取ってるよ? 今はバカンス中らしいけど……」

「だと思った‼︎ 息子の誕生日にも帰ってこないで、冒険ばかりしてんだ‼︎」

「ねェ……。なっちゃんと蒼太さん、この子を知ってるの?」

 

 雪歩が尋ねた。二人の態度を見るに、少年の両親とも知り合いらしい。

 

「勿論さ。この子は明石旭真(あかしてるま)君。ボウケンジャーの初代チーフの明石暁さんとサブチーフの西堀さくらさんの息子さんだよ」

「さくらお姉ちゃんの息子⁉︎ 知らなかったですわ⁉︎」

 

 菖が驚いていた。その際、雪歩と紺亮はニマニマとした。

 

「な、何ですの⁉︎」

「へェ〜……菖ちゃんがお姉ちゃんなんて呼ぶとか以外〜」

「確かにな……。先ず、呼ばなさそうだしな……」

 

 二人から茶化されて、菖は咳払いした。

 

「言い間違いですわ‼︎ さくらさん‼︎」

 

 必死になって誤魔化す菖を、尚も揶揄う様にニマニマする二人。そんな様子を冷めた目で見ている旭真だった……。

 

 

 

 その頃、サージェスランド内では……多数のスタッフがパタパタと忙しく走り回っていた。

 今日は日曜日だから、子供連れの客で賑わう事が予想されていた。

 そんなスタッフの中で、何処となく異質な三人組が居た。女性スタッフの制服を身に包んだ化粧の濃い女……ネオ・クエスターズのリーダー、ラアナである。

 

「……全く、やってられないわよね‼︎ 何で、私が遊園地でバイトなんかしなきゃならないのよ⁉︎」

「……金欠だからです……」

「……ドゴラン……」

 

 警備員に変装したツルギ、ドゴランが冷静に返した。

 

「……金欠……ツルギ‼︎ アンタのツクモロボ、金を掛け過ぎでしょう⁉︎ もっと、節約出来ないの‼︎」

「お言葉をお返しますが、ラアナ様? 吾輩の研究だけならず、ラアナ様がエステやらブランド服やらに、やたらと金を突っ込んだ事が根本な原因では?」

 

 ツルギに痛い所を突かれ、ラアナは押し黙る。

 

「……仕方ないじゃない……‼︎ 自分を常に最先端に保ち、ゴードム復活の際にも美しくなきゃ、意味が無いじゃない‼︎

 全ては自分磨きよ‼︎」

「自分を磨く前に、ラアナ様は現実を見て下さい。金が無ければ、メガ・プレシャスを探せないし、ツクモロボも作れません。

 今の我々には安定した収入が必要です」

 

 と、冷めた口調のツルギ。ドゴランが、ツルギに言った。

 

「なに? マスターDに言って、金を貸して貰えば良い……だと?」

「そうよ、ドゴラン! それは、ナイスアイデアだわ‼︎」

 

 ラアナは喜び勇むが、ツルギは溜め息を吐いた。

 

「とっくに頼みましたよ。マスターDは、メガ・プレシャス探しも遅々として進まず、メガ・プレシャスの有力な情報までディエンドに奪われる様な奴等に、金を回す気は無いそうです……」

「……だったら、いっその事、銀行に押し入ったら大金が手に入るじゃ無い‼︎」

「サージェスの支配下にある日本で、ネガティヴ以外の犯罪を犯せば、メガ・プレシャス探しも捗りませんし大体、非効率です」

「……うう……‼︎」

 

 何を言ってもダメ出しを喰らい、ラアナはグウの音も出なくなった。

 

「ど、ドゴラン?」

「どうしたの、ドゴラン?」

 

 ラアナが尋ねると、ドゴランが指を差す。其処には、ラアナ達にとって因縁深い相手が居た。

 

「ちょっと‼︎ ボウケンジャーの連中じゃ無い‼︎ 何で、こんな所に⁉︎」

「そりゃ、遊園地に遊びに来たんでしょう?」

「キイィィィッ‼︎ 私達は、バイトに勤しまなければならないと言うのに、アイツ等は遊園地なんかに来て‼︎

 ムカつく‼︎ 許せん‼︎ 腹立つ‼︎ 死なす‼︎」

 

 ラアナが顔を真っ赤にして喚き散らす。ツルギはドゴランに言って、ラアナを黙らせた。

 

「落ち着いて下さい、ラアナ様。奴等に見つかってしまいます」

「ム〜ム〜!!!」

 

 ジタバタするラアナを他所に、雪達達は気付かずに行ってしまった。やっと、ドゴランは手を離してラアナを解放した。

 

「何するんだい‼︎ 私を窒息させる気⁉︎」

「ラアナ様が騒ぎ立てるからです……。それはさておき……これはチャンスでございますぞ、ラアナ様」

「チャンス?」

 

 ラアナはゲホゲホと咳き込みながら、ツルギに尋ねた。ツルギは悪い顔でニヤリと笑う。

 

「さっき居た子供ですが……吾輩の調査によれば、ボウケンジャーのリーダーの明石暁の子供に違いないです」

「明石暁って……ボウケンレッドかい?」

 

 ツルギの言葉にラアナは返した。明石暁の名は、ネガティブのコミュニティ間では有名人だ。かつては『不滅の牙』と謳われたトレジャーハンターにして、ボウケンレッドとしてボウケンジャーを率いて、ゴードム文明、ジャリュウ一族、ダークシャドウのネガティヴの主戦力を崩壊させたと自分達、ネガティヴからすれば不倶戴天の仇敵である。

 

「そうです……。現会長のレオナルド・ジョルダーナと、財団のスタンスについて対立して以降は現職を離れていますが、奴の首にはネガティヴの連中達から涎が出る程の高額な懸賞金が掛けられている……。

 更に言えば、明石暁とジョルダーナ会長の対立の裏には、プレシャトピアについてである事も囁かれている……」

「……つまり⁉︎ 明石暁を追えば、メガ・プレシャスが⁉︎」

「その通り。事のついでに、明石暁の首を手土産にネガティヴの連中に差し出せば、大金も手に入る……」

 

 ツルギの計画にラアナは、さっきまでの不機嫌が嘘の様に飛び跳ねた。

 

「ツルギ! アンタ、天才ね! 上手くいけば、メガ・プレシャスも手に入るし、私達の懐具合も一気に解消する!

 じゃあ、あの小僧を人質にして!」

「ついでにボウケンジャーも倒しましょう‼︎」

 

「「それこそ、悪の組織‼︎」」

 

 二人で盛り上がるラアナとツルギ。ドゴランは二人を他所に、飛び回る蝶を見て…

 

「ドゴラ〜ン……」

 

 と無邪気にしているだけだった。

 

 

 

 その頃、雪歩達はサージェスランドを満喫していた。

 流石、サージェスが経営する遊園地だけあり、アトラクションは充実していた。

 ゴーゴービークルを模したジェットコースターである「G.B.ライド」、サージェスロボを操縦する気分を楽しめるVRダイボウケン(これは、男の子に人気らしい)、ボウケンジャーとネガティヴの戦いを3Dで体感できる「ボウケン・バトル3D」、ボウケンジャー達のヒーローショー、ゴーゴーボイジャーに乗って宇宙旅行を満喫出来る「ボイジャー・アドベンチャー」等と、他の遊園地では味わえないアトラクションがあった。

 ボウケンジャーのコスプレをした従業員が持て成す街を模したサージェスタウンには、レストランや宿泊施設も完備してある。

 冒険者の試練エリアには、古代遺跡、熱帯ジャングル、海底神殿、秘境……と、様々な冒険を堪能出来る。

 遊園地の中心部には、遊園地の要でありシンボルである通称『サージェス・キャッスル』が、そびえ立っている。

 これだけのアトラクションを有するには、莫大な土地が必要だが、其れを建設してしまうのも、ひとえにサージェスの財力の成せる技とも言える。

 紺亮と菖はベンチに腰を下ろして、一休みをしていた。

 

「むちゃくちゃ広いな、サージェスランド……。もう地理の半分くらいは回ったたか?」

「まだ、3分の1も回ってませんわよ。ジェットコースター等があるプレジャーエリアだけでも、膨大な面積ですわよ」

「……マジかよ……。ガイドブックには、アトラクションを全部を回るには、最低でも3日掛かるって書いてあるけど、この具合じゃ言い過ぎじゃ無いな……」

「遊園地内に、ホテルを設置してあるくらいだからね……。まあ、大抵のお客は半分を一日で回れたら、良い方だと思ってるらしいけどね……」

 

 菖と紺亮の隣に、蒼太が座って来た。手にはソフトクリームが二つ持ってある。

 

「食べるかい?」

「あ、ども……」

「いただきますわ……」

 

 紺亮と菖はソフトクリームを受け取る。二人は既にクタクタだったが、雪歩と菜月は遊園地を満喫していた。

 すると、旭真がベンチに座った。

 

「なんだ? お前は遊ばねェのか?」

 

 紺亮が尋ねると、旭真は舌打ちをした。

 

「遊園地で遊ぶ様なガキじゃねェよ。桃花が来たいって言ったから、連れて来ただけだ」

「そう言えば桃花と仲が良いのですわね? もしかして、ガールフレンド?」

「へェ? 最近のガキはませてんのな……」

 

 菖の言葉に紺亮は茶化す様に言った。旭真は顔を赤くした。

 

「はァ⁉︎ ちげェし⁉︎ 桃花は親同士の付き合いの幼馴染だよ! 桃花がガールフレンドなんて、鳥肌が立っちまうよ‼︎」

 

 そう言いながら、旭真は携帯ゲーム機を取り出した。

 

「……お前な……遊園地に来てゲームで遊ぶとか、どうなんだよ……」

「……別に良いだろう! ほっとけよ‼︎」

 

 旭真は拗ねた感じで噛み付く。蒼太は、ふと尋ねた。

 

「そう言えば、君達だけで来たのかい? 大人は一緒じゃ無いの?」

 

 遊園地の入り口で見た時から旭真と桃花は2人しかいない。大人の姿が居なかった。

 

「俺達だけで来たんだ。タクシー捕まえてさ」

「金は?」

「じいちゃんのクレジットカードのキャッシュレスアプリが俺のスマホに入ってるから、大丈夫」

 

 なんて事は無い感じに答えた旭真に、紺亮と菖はポカンとした。

 

「……お前、ガキのうちからクレカを使ってんのかよ……。てか、お前のじいちゃんに叱られねェのかよ?」

「叱られねェよ。じいちゃんもばあちゃんも俺の事、溺愛してるしな……。てか、放任されてんだ……身の回りの事はメイドや執事がやってくれるし……。

 勉強だって、家庭教師とネットでやってるから、何も言われねェし……」

「中々に、捻くれてますわね……」

 

 同じく、お嬢様である菖から見ても旭真は恵まれた環境に置かれ、かなり甘やかされて育てられた影響から所謂『苦労知らずのゆとり世代なお坊ちゃん』に映った。

 

「てか、ゲーム何やってんだ? ちょっと見せてみ?」

「あ、勝手に見るなよ⁉︎」

 

 紺亮が旭真のゲームを覗き見た。それは、モンスターを狩ってレベルを上げるゲームだが、旭真のゲーム内のアバターの装備品を見た紺亮は不審に思った。

 

「……そのゲーム、俺もやったけどよ……その装備って、レベル100のクエストをクリアしないと手に入らないぜ?

 まだ、お前のレベルじゃ無理だろう?」

「俺のPCで、ゲームデータを弄ったら出来たぜ?」

「……おま……! それ、改造チートだろ⁉︎ てか、その有り得ないステータスなんだよ⁉︎ 全パラメーター、限界突破してんじゃん⁉︎」

 

 紺亮の苦言に、旭真は呆れた様に言った。

 

「今時、データの改竄なんか幼稚園児でも出来るつーの! てか、ゲームデータに最初から組まれてるデータを改竄するなんか、昔からあるだろ? それをやって何が悪いんだよ⁉︎」

「……いや、悪かねェけどよ……そんなんしても、楽しくねェだろ? ゲームは自分でレベル上げて、努力するから楽しいんじゃねェの?」

「出た、努力! 今時、努力とか根性とか古いよ? それに、俺は時間掛けてゲームクリアするの嫌いだしさ……最初から最強の方が楽しいし?」

 

 旭真は憎まれ口を叩く。この年頃の子供には、よくある努力や根性と言った精神論を無駄だと馬鹿にする風潮があるが、旭真は其れの最たる例だった。

 すると蒼太が口を挟む。

 

「君のお父さん……明石暁は、最初から凄い冒険者じゃ無かったよ? 沢山の失敗や挫折を味わって、其処から学んで努力して一流と呼ばれる様になったんだ……。

 努力は一人前になる為の自分への投資だと考えれば無駄だと感じなくなるんじゃ無いかな?」

 

 諭す様に旭真に言い聞かせるが、旭真はゲームを乱暴に切って、蒼太を睨んだ。

 

「あの人が、どんな偉い冒険家だったなんか、俺には関係ねェよ‼︎ 俺は俺だ! 明石旭真なんだ‼︎

 大体、あの人は俺の事より冒険しか興味がない男なんだよ‼︎ そんな奴と比べられるなんて、不愉快だよ‼︎」

「別に、そんなつもりは……」

「俺は、サージェスもアドベンチャー時代も冒険も大ッ嫌いなんだ‼︎ 息子より冒険が好きなら、勝手に冒険してれば良いさ‼︎

 ほっといてくれ‼︎」

 

 旭真は機嫌を損ね、走って行ってしまった。そんな彼の背を3人は見送る。

 

「親への反抗か……。ま、あれくらいの年頃なら良くある話か……」

 

 紺亮は呟く。菖は溜め息を吐いた。

 

「……気持ちは分かりますわ……。私も植村家の娘と言う、親の敷いたレールの上を歩くのが嫌で、冒険家になりましたし……」

「……それだけじゃ無いよ……。きっと寂しいんだろうね、旭真君は……。お祖父さんがお金持ちで、周りは其れに迎合する人ばかりで、ご両親とも長く会えてないみたいだし……。

 だから、その寂しさを埋める形で、必死に粋がってるんだと思う……」

 

 3人は幼いながら、父に会えない寂しさを反抗心で覆い隠す彼を同情的だった……。

 

 

 その頃、雪歩と菜月は桃花と一緒に行動していた。

 

「ねェ‼︎ 次は何に乗る?」

 

 雪歩は子供みたいにはしゃいでいた。菜月も同様だ。

 

「じゃあ、ボイジャー・アドベンチャーに乗ろうよ‼︎ あれは懐かしいから‼︎」

 

 楽しげな2人に対し、桃花は浮かない顔だ。

 

「どうしたの、桃花ちゃん? 楽しくないの?」

「……いえ、違うんです……。ただ、旭真君が気掛かりで……」

 

 桃花の言葉に雪歩は首を傾げた。

 

「旭真君? 何かあったの?」

「……はい……。旭真君、あんな風に突っぱねた態度ばかり取ってるけど……本当は、お父さんに会いたくて、でも会えなくて……それで……」

「お父さんって明石さんだよね? なにかあったの?」

 

 菜月も会話に入る。桃花は話し始めた。

 

「サージェスランドに来たかったのは、本当は旭真君なんです……。でも、お父さんもお母さんも仕事で世界を飛び回っているから、旭真君はお父さんに甘える事が出来ないんです……。

 あんな風にお父さんを嫌うみたいな事を言うのは、寂しさを紛らわす為で……だから、心配で……」

「……旭真君って……私と一緒だ……。私も、お祖父ちゃんに会えなくて、お母さんと喧嘩ばかりで、寂しかったから……

 なっちゃん! 私、ちょっと行ってくる‼︎」

「うん!」

 

 雪歩は旭真を探しに走り出した。残された菜月は桃花に話し掛ける。

 

「大丈夫だよ。いつか、旭真君もお父さんと笑い合える日が来るから。それまでは、桃花ちゃんが旭真君を見守ってあげたら良いんだよ」

「……私、何の役にも立たないし……旭真君も私が着いて行くと鬱陶しがるし……」

「それは、旭真君が桃花ちゃんを好きだからじゃ無いかな?」

 

 菜月の一言に桃花は顔を赤くした。

 

「……旭真君が⁉︎ 私を⁉︎」

「気付いてないんだよ、自分の気持ちに。旭真君のお父さんとお母さんもそうだったし。女心に鈍いのは、父親譲りだね!」

「……」

 

 菜月の言葉は桃花を混乱させ、黙りこくらせた。菜月は桃花を落ち着かせようと……

 

「桃花ちゃん、ジュース飲む? 買ってきてあげる!」

「……は、はい……」

 

 菜月はジュースを買いに走り出した。残された桃花はベンチに腰を下ろす。

 

「……旭真君……」

 

 桃花はポーッと夢を見ている様だった。旭真が自分を好きだなんて、考えた事も無かった。

 そんな彼女の後ろから、ゆっくりと近付く影があった。

 

「お嬢ちゃん、ちょっと良いかな?」

「は、はい?」

 

 桃花は自分を呼ぶ声に振り返る。すると、いきなり顔に何かを吹きかけられた。

 

「……な、何……今の……。あれ……? 急に……眠たく……」

 

 桃花は急激な眠気に襲われて、後ろに倒れた。其れを受け止めたのは、ツルギとドゴランだった。

 

「ククク……上手くいったぞ。ボウケンジャーが付いていたから、離れるのを見計らっていたが、小娘から離れて良かったわ」

「ドゴラン」

 

 そう言うと、ツルギは桃花を担ぎ、ドゴランと共に、その場から消えてしまった。

 

 

 

 旭真は一人で歩いていた。さっき蒼太から言われた言葉が耳から付いて離れない。

 

 〜君のお父さん……明石暁は、最初から凄い冒険者じゃ無かったよ? 沢山の失敗や挫折を味わって、其処から学んで努力して一流と呼ばれる様になったんだ……〜

 

 〜努力は一人前になる為の自分への投資だと考えれば無駄だと感じなくなるんじゃ無いかな?〜

 

「ケッ‼︎ 何が努力は自分への投資だ‼︎ バッカみてェ‼︎ 親父みたいな家族を顧みない奴が一人前だって言うなら、俺は半人前で構わねェや‼︎」

 

「旭真君‼︎」

 

 急に雪歩がフッと現れた。旭真は驚く。

 

「な、なんだよ……脅かすなよ……! てか、アンタ何なんだよ⁉︎」

「私、白瀬雪歩。宜しくね!」

 

 雪歩は屈託の無い笑顔で話し掛けた。旭真は鬱陶しそうにする。

 

「……何の用だよ……」

「桃花ちゃんに聞いたよ。お父さんと仲が悪いんだってねr

 

 雪歩の言葉に、旭真は顔を顰めた。

 

「アイツ、余計な事を……」

「桃花ちゃんは旭真君が心配なんだよ。だから、気に掛けてくれてるんだよ?」

 

 雪歩は諭す様に言ったが、旭真はそっぽを向いた。

 

「ウルセェ! 俺は、アイツに同情される程、落ちぶれてねェよ‼︎」

「…旭真君、本当はお父さんが大好きなんだよね?」

「ハァッ⁉︎」

 

 旭真は雪歩の方を見た。雪歩の真っ直ぐとした目に、彼は思わずたじろぐ。

 

「……す、好きな訳ねェだろ‼︎ あんな冒険マニアの事なんか‼︎」

 

 旭真は精一杯に強がるが、雪歩は誤魔化されない。

 

「私のお祖父ちゃんもね、冒険家なんだ。家に帰ってくる事は殆ど無くて、帰って来ても次の冒険の事を考えてるの。

 でも、私はお祖父ちゃんの事が大好きだよ。お母さんも、お祖父ちゃんの事を嫌っていたけど、本当はお祖父ちゃんが大好きだったの」

「……それが、俺と何の関係があるんだよ⁉︎」

 

 旭真は苛立ちながら、雪歩を睨み付ける。しかし、雪歩は優しく言った。

 

「本当に素直な気持ちになったら、お父さんの事も好きになれるよ。私も、お母さんと喧嘩ばかりだけど、お母さんの事も大切なんだ」

「〜‼︎ 余計なお世話だ‼︎ アンタも桃花も……お節介なんか沢山なんだよ‼︎」

 

 そう叫んで走り去ろうとする旭真。その際、園内放送が響き渡る。

 

 〜あー、あー……只今、マイクテスト中……え〜、明石旭真君。明石旭真君。至急、サージェス・キャッスル前まで来て下さい。

 さもないと……お連れの女の子が、大変な目に遭いますよ‼︎〜

 

「な、何これ⁉︎」

「お、俺の名前⁉︎」

 

 雪歩と旭真は困惑する。その際、雪歩の聞き慣れた声がした。

 

 〜こんなまどろっこしいのは良いよ‼︎ サージェスは3人組‼︎ 明石旭真を連れて来な‼︎ 小娘の命が惜しけりゃねッ‼︎000

 

「この声は……‼︎」

 

 雪歩は何かを察し、走り出す。旭真もこれ後に続いた。

 

「旭真君は危ないから、そこに居て‼︎」

「連れの女の子って桃花だろ⁉︎ だったら、放っておけねぇよ‼︎」

 

 旭真の本気の顔に雪歩は頷いた。

 

「わかった‼︎ 離れないでね‼︎」

 

 そう言って、2人はサージェスキャッスルに向かった。

 

 

 

 〜某所

 

「キャプテン‼︎ キャプテン高丘‼︎」

 

 1人の若い青年の声がした。すると、巨大なモニターの前に座る男性が振り返る。

 目元は隠れているが明るい長髪に銀と黒を基調にした隊員服を着ている。

 

「サージェスランドより、ネガティヴによる被害を受けたと報告が入りました‼︎ どうやら、民間人が巻き込まれている様です‼︎」

 

 青年の声にキャプテンは立ち上がる。

 

「了解‼︎ いよいよ、我々の出番らしいな‼︎ 各隊員に出動要請を出せ‼︎ 俺も、ネオ・ビークルにて出動する‼︎」

「ハッ‼︎ キャプテン・高丘映士‼︎」

 

 青年は一礼をした後、走り出す。キャプテンの顔が映し出され、モニターの一つを見る。

 

「久しぶりに、お前の力が必要みたいだな……サイレンビルダー‼︎」

 

 キャプテン……高丘映士が呟く。その画面には一体のロボの姿があった……‼︎

 

 

 〜次回予告‼︎〜

 人質に桃花を助ける為に現場に急行するボウケンジャー達。しかし、ネガティヴ達の卑劣な罠と人質の存在から手を出せない。

 しかし、旭真の機転と思わぬ救援から、形成は逆転する‼︎

 

 次回! 轟々戦隊ボウケンジャー

 Return−White.adventure

 task19 Positive Relife

 

 

 高丘「次回は俺様が主役だ‼︎」

 雪歩「主役は私なのにィ……‼︎」

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