轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure 作:竜の蹄
では、どうぞ‼︎
サージェス・ミュージアム、研究ラボ……。
「影斗さん、大変アル‼︎ 緊急事態発生ヨロシ‼︎」
紅花は、影斗の研究室のドアを叩く。さっきから、施設コールを鳴らしているのに連絡が無い。案の定、ドアには「仮眠中」の札が掛けられていた。
「起きるアルよ! 仮眠してる場合じゃ無いヨ‼︎」
けたたましい音でドアを叩いて、更に大声で叫ぶ。しかし、一向に返事は無い。紅花は「…まさか…」と呟いて、マスターカードキーでドアを開ける。
「やっぱり! ま〜た、バックれたアルな‼︎ あのサボり常習犯‼︎」
紅花は影斗の個室兼研究室を覗いてみたら、案の定、もぬけの殻だった事に気付く。
また、と言う言葉通り、影斗がラボから無断で離れるのは、これが初めてでは無い。
紅花は怒りを通り越し、呆れてしまった。
「全く、影斗さんは……‼︎ あの人が、ミュージアムにいた事なんか、殆ど無いよ! はァ……また、私が残業アル……ん?」
ボヤく紅花だったが、影斗の几帳面に整えられた作業机にメモが置いてある事に気付き、其れを手に取る。
「なになに……?
〜紅花へ。このメモを読んでいるなら、恐らくボウケンジャーのピンチと言う事だろう?
実は、ダイボウケンmk−Ⅱの強化オプションとして新武器を開発してある。実戦投入は初めてだが、コンピューター上でのシュミレーションテストでは、合格基準値に達している。
と言う訳で、ボウケンジャー達に送ってあげて欲しい! 僕は、別で片付けたい仕事があるから、其方は君に任せるよ!
PS チーフには内緒でね♡ 帰ったら、君の好物の焼売を焼いてあげるから♡
影斗より〜
ムッキー‼︎ 毎回毎回、大概にするアル! 私は影斗さんのパシリか⁉︎ 子分か⁉︎ お手伝いさんアルか!⁉︎」
怒りの余り、メモを破り捨てそうになるくらい怒る紅花。しかし、怒っている場合では無く、紅花は彼の起動したままの彼のPCを確認する。
「えっと……ゴーシャベラー……これアルね‼︎ 先ずは、転送して………………」
暫く、無言でキーボードを打つ紅花。すると、PCに転送完了の文字が出て来た。
「よし、これで終了! 全く……影斗さん、帰ってきたら、覚えとくアルよ……」
ブツブツ言い残し、紅花はラボの外にある整備ドッグを見た。すると外では巨大なリボルバー拳銃を思しき大砲が動いていた。すると、弾を装填するシリンダーにクレーンで運ばれて来たコンテナが装填された。
そして、紅花は手に持つリモコンに似た端末を操作し始める。
途端に、ドックの天井が開き、砲台を乗せた土台は迫り上がって行く。やがて、地上に達した砲台の姿が目の前に画面に映された。
「目標設定! エクスプレス・リボルバー砲、発射‼︎ 速達でいってらっしゃい〜‼︎」
紅花が赤いスイッチを押す。すると砲台は動き出し、つんざかんばかりの砲音と共にコンテナが撃ち出された……。
その頃、樺蔵邸では……別方面から忍び込む謎の影があった。それは、ディエンドだ。
幸いにも屋敷のSP達は、ネガティブの襲撃騒ぎの収拾に追われ、屋敷の裏口の警備は疎かになっていた。
ディエンドは裏口から屋敷の敷地内に侵入し、裏庭へ辿り着くと3階にあるバルコニーへとジャンプした。
そして、バルコニーにある窓のガラスの一部をくり抜いて内側のロックを解除し、屋敷内へ潜入する。
其処は、樺蔵夫人の自室だ。室内には、金に物を言わせて世界中から収集した美術品などのコレクションが並べてある。
「……趣味の悪いコレクションだ……」
と、ディエンドは難色を示す。どれもこれも、二束三文にもならなさそうなガラクタばかり……どうやら、情報は本当だったらしい。
己の物欲を増幅し、自分が欲した物は如何なる手段を講じてでも手に入れなければ気が済まなくなるプレシャス『妲己の腕輪』。
誰が何の目的があって造らせたのか、はたまた長い年月と生きとし生ける人間達の際限ない欲望に触れ続けた結果、欲を肥大化させるプレシャスへと変えたのか……ディエンドには分からないが、どうやら自分の求めるプレシャスでは無い事は確かだった。
中国史にても名高い、かの殷王朝の時の皇帝を色香にて誑かして、酒池肉林の贅沢三昧の果てに没落させたと言われる『傾国の美女』と謳われた毒婦の名を冠するだけの事はある訳だ。
「……あの夫人の持っているコレクションは、あの腕輪以外の物は無価値な品だけ……それ以外に、プレシャスを所有しているとは思えない。
せめて、他のプレシャスでも有れば、と言う望みも絶たれたか…」
そう呟くと、ディエンドは立ち去ろうとした。自分が探し求めるのは、真理を見せるプレシャス……其れが無いと分かった今、此処に用はない。だが、其処へ……。
扉を蹴破り、多数のカース達が雪崩れ込んで来た。ネガティブ達も屋敷内を物色していたらしい。
出来れば、騒ぎを起こさずに立ち去ろうとしたが、どうやら向こうは逃す気は無いらしい。
しかし、数が多い。まだ、ディエンドの力を使い熟せでは居ないから、下手に戦闘をしても勝ち目は無い。すると、バックルに備えたカードホルダーから二枚、取り出し、ディエンドライバーに読み込ませた。
『RANGDR・RIDE 』
ディエンドライバーから無機質な声がする。と、次の刹那、ディエンドの左右に2人の戦士が現れた。
右は赤いヘルメットに赤のアクセルスーツを着用した通称【熱き冒険者】ボウケンレッド。
左は黒いヘルメットに黒のアクセルスーツを着用した通称【迅き冒険者】ボウケンブラック。
何れともに、今は伝説として語り継がれる初代ボウケンジャーの二枚看板だ。彼等は実体では無く、ディエンドライバーによって2人のボウケンジャーの動作、戦闘パターンを再現した一種の立体映像であり、本物では無い。
しかし実力こそ、オリジナルには劣るが、並大抵のネガティブを相手にするならば、十分な相手だろう。
「やれ‼︎」
ディエンドが命令すると、レッドとブラックはカース達へ挑む。最初こそ、突然の助っ人に混乱を隠せなかった彼等だが、敵には一切の容赦をしない様にインプットされたカースは、一斉に襲い掛かる。
レッド、ブラックは映像とは思えない物理的な攻撃にて、カースを攻撃した。レッドはサバイバスターを構え、カースを狙撃していく。その攻撃を受け、カースは夫人のコレクションへと吹き飛ばされ、ガラガラと音を立てながら倒れる。
ブラックも自身の得物であるボウケンアームズ『ラジアルハンマー』でカースを叩き潰した。その余波で、夫人の部屋は大混乱となった。
と、レッドの攻撃を掻い潜り、一体のカースが走り出す。カースは、石に魔力を加える事で誕生し、石の耐久性と砕けても忽ち再生する能力を持っている。術者であるディエンドに狙いを定めており、彼を倒せば、ボウケンジャーの幻は消滅すると考えだのだろう。
しかし、ディエンドは再び、カードを取り出して、ディエンドライバーに装填する。
「DIEND BLAST‼︎」
同時に、ディエンドライバーの銃口が一瞬だけ分身した。すると、一回の銃撃で多数の光弾が発射、カースは蜂の巣となった。そして、体色は変色し粉々に砕け散った。
「悪いが……君達と遊んでいる暇は無い……‼︎ さっさと終わらせて、退散させて貰うよ‼︎」
そう言うと、ディエンドは不敵な態度でカース達を見る。明らかにレベルが違う……それは、単純な思考しか持たないカース達にも理解した…。
その頃、雪歩達は襲来して来たネガティブの引き連れた巨大ロボットと対峙していた。
「お、おい! どうすんだ⁉︎ あのオバハン、人質に取られちまったぞ‼︎」
紺亮は慌てふためく。突然の巨大ロボにも驚きだが、樺蔵夫人が人質に取られてしまった。しかも、プレシャスと共に……。
「どうするもこうするも……戦うしか無いでしょう⁉︎」
菖も突然の事態に、完全に取り乱していた。しかし、不思議な事に雪歩は嫌に落ち着いている。
「皆、慌てちゃ駄目! こんな時は冷静に対処しなきゃ‼︎」
1人、呑気な事を言う雪歩に菖は苛立ちながら怒鳴る。
「冷静⁉︎ 目の前でプレシャスを奪われて、民間人が人質に取られてますのよ⁉︎ どう冷静になれ、と⁉︎」
「取られただけだよ‼︎ このまま、ネガティブに持ってかれたら私達の負けだけど、取り返す事が出来たら私達の勝ちだよ‼︎」
雪歩には珍しく、妙に説得力のある言葉だった。確かに、まだ奪われた訳では無く、取り返す事は可能だ。
「雪歩……お前、何か策はあるのか⁉︎」
紺亮は期待しながら尋ねる。こんな時の雪歩は、最良の打開策を持っているかも知れないからだ。
しかし、雪歩は……
「策? 無いよ?」
と、あっけらかんと言った。紺亮と菖は脱力し、ズッコケそうになる。
「ねェのかよ⁉︎ じゃあ、さっきの自信は何処から来たんだよ⁉︎」
「ホワイト! 真面目に考えなさいな‼︎」
紺亮、菖は呆れと怒りから捲し立てた。しかし、相変わらずにも、雪歩はシレッとしたままだ。
「私、ふざけてる訳じゃ無いよ。私達は、ボウケンジャー! だったら、私達が今出来る事をすれば良いんだよ!」
そう言った雪歩の顔は一切、屈託が無い。ただ只管に純粋、混ざりっ気の無い新雪の如し、である。
その彼女の態度に、紺亮は深い溜め息を吐いた。
「……ッたく! 思い付きの行動かと思えば、的を射た事を言いやがる……! 仕方ねェ……一丁、やるか‼︎」
「……いつか、貴方のせいで死ぬ気がしますわ……! やりますわよ‼︎」
紺亮は呆れ混じりに、菖は皮肉を交えながら返すが、奇しくも纏まりが壊れ掛けていた三人は、雪歩の発した言葉により一致団結した。
「変身アプリ、アクセス‼︎」
「レディ…‼︎」
「ボウケンジャー・スタートアップ‼︎」
三人は同時にスーパーアクセルラーを起動、アクセルスーツを身に纏い、変身を完了させた。
「真しき冒険者! ボウケンホワイト‼︎」
「明るき冒険者! ボウケンネイビー‼︎」
「逞しき冒険者! ボウケンバイオレット‼︎」
「果てなき冒険
轟轟戦隊! ボウケンジャー‼︎」
ボウケンジャーに変身した三人にカースが襲い掛かって来る。しかし、カース等、敵では無い。先ずはネイビーが仕掛けた。
「バイアスワインダー! ガストロール‼︎」
ネイビーが、自身のボウケンアームズ、バイアスワインダーを回転させながら、一体のカースにぶつける。すると、カースは洗濯機に入れられた様に高速で回転しつつ、他のカースを巻き込みながら、吹き飛ばされて行く。
「フリーズライオット! アイスクイックショット‼︎」
バイオレットが、フリーズライオットの右にあるレバーを下げると、弾を一斉に射撃するのでは無く、単発単発に分けて撃ち出された。
だが、そのスピードは速く、カース達に躱す間も与えない。
弾の打ち込まれた箇所から凍りつき、やがて氷像となってしまう。
「ボウケントンファー! スチーム……インパクト‼︎」
ホワイトが、ボウケントンファーのグリップを握り締めると、グリップの底から煙が噴き出す。
その状態でトンファーを打ち出すと、蒸気と衝撃が発されて、カース達を全て吹き飛ばした。
同時に、樺蔵邸の壁に大穴を開けてしまった。
「……全く! 貴方の技、周りに対する被害が甚大ですわよ‼︎」
「もっと加減できねェのか⁉︎」
「ごめ〜ん! コントロールが難しいんだ、これ……!」
仲間達の非難に、ホワイトは軽い感じで謝る。
ボウケンアームズは個々として威力は異なる。ネイビーやバイオレットは使い方次第では、ピンポイント攻撃を可能と出来るが、ホワイトは全ての攻撃が全力全開、一撃一撃が強力だが、その反動が周囲に及ぶ危険性がある。中々に、リスキーな戦い方だ。
だが何はともあれ、雑魚は一掃した。三人は屋敷の裏庭へ出ると、カラシシ・ツクモが佇んでいた。
「で、デッカイね〜〜‼︎」
「こりゃ、厳しいな…‼︎」
「感心してる場合じゃ無いですわよ‼︎ ロボットには、ロボットですわ‼︎」
呑気に感想を述べる2人にツッコミを入れながら、バイオレットは急かした。確かに敵は巨大ロボだ。こちらも、ダイボウケンmk−Ⅱを出撃させれば、互角に戦えるだろう。
その時、カラシシ・ツクモから声がした。
〜ハッハッハッハッ‼︎ 驚いたか⁉︎ 此れぞ吾輩が編み出した忍科学の真骨頂であるツクモロボ!
ただの、ロボットでは無い‼︎ このツクモロボは吾輩達が操縦するまでも無く自立した行動が取り! 更に戦闘でも、ロボットのパワーに生き物の如し素早い動作が取れる‼︎
正に生体ロボットと言っても差し支えないのだ‼︎〜
「ねェ? 長々と話してるけど、どういう意味?」
「知りませんわよ‼︎ 後でググりなさい‼︎ それより、ゴーゴービークルですわよ‼︎」
雪歩の質問を菖はキレ気味に黙らせる。
バイオレットに急かされる様に、3人はスーパーアクセルラーの『ビークルアプリ』を起動して、複数のコマンドが映る画面にして、右下の『GO』のキーをおした。
『ハイパー・ゴーゴービークル、発進‼︎』
ホワイトは『S01』、ネイビーは『S02』、バイオレットは『S03』と入力した。
『発進シフトオン! ロコモーティブ‼︎ ジープ‼︎ スノウ‼︎ GO! GO‼︎』
スーパーアクセルラーの音声と共に、サージェスミュージアムより、ゴーゴーロコモーティブ、ゴーゴージープ、ゴーゴースノウが発進された。ロコモーティブの牽引する貨車ビークルに二機のゴーゴービークルが収納され、現場へと急行する。
やがて、駆けつけたビークルの姿を確認し、3人は左下のロボットのマークを押す。
『合体シフトオン‼︎ ロコモーティブ‼︎ ジープ‼︎ スノウ‼︎
ボウケンフォーメーション』
スーパーアクセルラーの声に合わせ、合体を始めるビークル達。そうしてる間に、合体シフトは完了した。
「合体完了‼︎ ダイボウケンmk−Ⅱ ‼︎ スーパー・ファーストギアイン‼︎」
三人は搭乗し、スーパーアクセルラーの『ドライバーアプリ』を起動して、コクピットにセットした。
ダイボウケンmk−Ⅱは、カラシシ・ツクモと相対する。
「ネガティヴ‼︎ プレシャスを返しなさい‼︎ じゃないと、捻り潰しちゃうよ⁉︎」
〜オーホッホッホ‼︎ 捻り潰せる物なら、潰してみなさい‼︎ こっちには人質がいる事を忘れてないかしら⁉︎〜
ラアナの勝ち誇る声が響く。確かに、敵の手には樺蔵夫人がある。下手に手を出して、彼女に危害を加える訳にはいかない。
ネイビーは、ネガティヴの卑劣なやり口に激昂した。
「……テメェ等、汚ェぞ‼︎」
〜お生憎様! 私達は悪の組織! 勝つ為なら、どんな汚い手だって使うわよ‼︎〜
ラアナの言葉に、全員がマスクの下で苦い顔を浮かべた。夫人を助けたいが、夫人はカラシシ・ツクモの右腕に捕まっている。
ダイボウケンmk−Ⅱを出せば何とかなる、と考えたが、これでは手出し出来ない。
〜来ないのか⁉︎ ならば、こちらから行くぞ‼︎ カラシシファイヤー‼︎〜
ツルギが叫ぶと、カラシシ・ツクモの胸部にはあるライオンの口から火炎放射が放たれた。
火炎はダイボウケンmk−Ⅱを包み込み、コクピット内に火花を走り、高温に包まれる。
「あ、熱いィィ!!!」
「これじゃ、蒸し焼きになっちまう‼︎」
「くゥ…‼︎ 火責めはキツいですわ‼︎」
ボウケンジャー達も蓄積された炎熱によって、苦しめられた。アクセルスーツのお陰で炎には強いが、じわじわと上がってくる高熱の責めには耐えられない。
〜ハッハッハッハッ‼︎ この2000℃の高温を誇るカラシシファイヤーで、ボウケンジャーのウェルダンステーキにしてくれるわ‼︎〜
ツルギは勝ち誇る。確かに、このままではダイボウケンmk−Ⅱの中にいる自分達が参ってしまう。
と、その時、空から飛んで来た物体がカラシシ・ツクモに直撃し、ツクモロボは横転した。
火炎放射も止まった為、ボウケンジャーも火責めから解放された。
「な、何だ⁉︎ ありゃァ⁉︎」
「でも、助かりましたわ…‼︎」
「サージェスのロゴが入ってるよ⁉︎」
飛んで来たのは、ダイボウケンmk−Ⅱと同型くらいの大きさのコンテナだった。コンテナの中央には《S.G.S》と、サージェスのロゴマークが刻まれていた。
事態を飲み込めずに居る三人だったが突如、スーパーアクセルラーのアラートが鳴った。
〜無事に着いたみたいアルな‼︎〜
「紅花さん⁉︎ あれは⁉︎」
ホワイトが、アクセルラーの向こうの紅花に尋ねる。
〜それは、影斗さんが開発したダイボウケンmk−Ⅱの強化オプションパーツだヨ‼︎ 有効に使うヨロシ‼︎〜
と、言って通信は切れた。
「強化オプションパーツ? 何だろう?」
「どうやら、考えている場合じゃ無さそうですわ‼︎」
バイオレットが指差す。カラシシ・ツクモが再び立ち上がったのだ。
〜やってくれたわね‼︎ もう許さない‼︎〜
ラアナの怒り狂う怒声が響く。すると、カラシシ・ツクモは右腕に持つ樺蔵夫人を持ち上げた。
〜おーほっほっほ‼︎ 私達に逆らった罰よ‼︎ この女、叩きつけてくれるわ‼︎〜
「いやァァァァ!!? 助けてェェェ‼︎」
激昂したラアナは、樺蔵夫人を投げ捨てて叩きつけようとしていた。あの高さから落とされたら、それも力一杯に叩きつけられたら、民間人の身体なぞ木っ端微塵になってしまう。
「た、大変だよ‼︎ た、助けないと⁉︎」
「無理ですわ‼︎ もう間に合わない‼︎」
ホワイトは夫人を助けようと動くが、バイオレットは今から動いても間に合わない事を悟る。
〜ラアナ様⁉︎ あの女のプレシャス、まだ回収してませんが?〜
〜ボウケンジャーを料理した後、回収すれば良い‼︎ つべこべ言ってないで、さっさとおやり‼︎〜
〜り、了解‼︎〜
ラアナに怒鳴られ、ツルギはツクモロボを動かす。すると、樺蔵夫人はツクモロボの手から投げ落とされた。
「い〜〜〜や〜〜〜!!!!!!!」
夫人は絶叫しながら、地面に落下して行く。
「だ、駄目ェェェ!!!!!」
ホワイトは叫んだ。しかし、もう手遅れだ……地面を見たら、変わり果てた樺蔵夫人の亡骸が転がって……いると思ったが、そうはならなかった。
「あ、あれ? おばあさんは?」
「お、おい⁉︎ あれは⁉︎」
ネイビーが指で示した方向には、気を失った夫人を両腕で抱えた見た事が無い戦士……ディエンドが居た。
どうやら、間一髪で夫人を助けたらしい。
「だ、誰ですの⁉︎」
「ボウケンジャー……じゃ無ェよな⁉︎」
「あ、あの人⁉︎」
バイオレットとネイビーは気付かない素振りだが、ホワイトはディエンドを知っていた。
先日のサージェスタワービルでの戦いの際、自分のペンダントを取り返してくれた「通りすがりの仮面ライダー」と名乗った人物……暗闇でよく見えなかったが、彼と同じ姿をしていた。
しかし、その男は踵を返して歩み去ろうとする。カラシシ・ツクモの中から、ラアナが激昂して叫ぶ。
〜ちょっと⁉︎ 何処の誰か知らないけど、プレシャスの横取りは許さないよ‼︎
カラシシ・ツクモ‼︎ あの男を踏み潰しなさい‼︎〜
ラアナの命令に従い、カラシシ・ツクモは動いて踏み潰そうとした。しかし次の刹那、ディエンドは、その場から姿を消していた。
空となった場所を、カラシシ・ツクモは踏むが、既にディエンドも樺蔵夫人も居なかった。
益々、ラアナは怒り狂った。
〜おのれおのれおのれェェェ!!! 何なのよ、あの男はァァァ!!?〜
〜ラアナ様‼︎ 今は、ボウケンジャーを倒す方が先決ですよ⁉︎〜
ツルギに宥められ、改めてカラシシ・ツクモはダイボウケンmk−Ⅱに向き直る。
気を取り直し、ダイボウケンmk−Ⅱはコンテナに右手を伸ばす。すると、コンテナは一人でに展開して、中からダイボウケンmk−Ⅱと同サイズはある巨大なシャベルが現れる。シャベルは、ダイボウケンmk−Ⅱの右手に収まった。
「これが……ダイボウケンmk−Ⅱの武器……‼︎」
ホワイトは手に取ったシャベルを眺めながら呟く。再び、紅花から通信が入った。
〜凄いでしょ‼︎ 見た目はただのシャベルだけど、変型させればピッケル、ハンマーにもなるヨ‼︎ トドメを指す場合は、フィニッシュモードになる機能も搭載された万能武器アル‼︎
名付けて『ゴートライウェポン』‼︎ 大切に使うヨロシ‼︎〜
そう言って通信は途切れる。ダイボウケンmk−Ⅱは、ゴートライウェポン・シャベルモードを構えた。
〜そんな、チンケなシャベルで、このカラシシ・ツクモに勝てると思っているのか⁉︎
カラシシ・ツクモ‼︎ 捻り潰してやれェェ‼︎〜
ツルギの命令を受けて、カラシシ・ツクモは動き出す。夫人を手放した為、両腕ともに使える。
しかし、人質を無くされた事から、こちらも遠慮なくやれる。ゴートライウェポンを突き出し、カラシシ・ツクモの腕を弾き飛ばし、更に力を込める事でカラシシ・ツクモを投げ飛ばした。
〜ぬゥゥ‼︎ ならば、これだ‼︎ カラシシファイ……‼︎〜
「ゴートライウェポン・ハンマーモード‼︎」
ゴートライウェポンの先端がハンマーに変わり、カラシシ・ツクモの胸部に叩き付けた。すると、胸部の発射口が破壊される。
〜ああ〜‼︎ 火炎放射ランチャーが破壊された‼︎ これでは、カラシシファイヤーが撃てない‼︎〜
〜何やってるの⁉︎ 他に武器は無いのかい⁉︎」
慌てふためくツルギを、ラアナが叱責する。
〜御安心を‼︎ ならば……カラシシミサイル……発射‼︎〜
ツルギが自信満々に言うと、カラシシ・ツクモの肩と両指と膝からミサイルポッドが出現し、ミサイルが複数、発射された。
「ゴートライウェポン・ピッケルモード‼︎」
今度は先端がピッケルに変形したゴートライウェポンを地面に突き立てた。すると、突き立てた箇所から衝撃波が放たれた。ミサイルは着弾する前に、衝撃波によって撃墜される。
「凄い凄い‼︎ これなら、負ける気がしないよ‼︎」
ホワイトは興奮していた。
「ホワイト! 油断は禁物ですわ!」
バイオレットが嗜めるが、既にカラシシ・ツクモが接近して来た。
〜ええい‼︎ こうなりゃ、接近戦だ! カラシシ・ツクモのパワーで押し潰してやる‼︎〜
ツルギが叫ぶと、カラシシ・ツクモは重量で、ダイボウケンmk−Ⅱを押し潰しに掛かる。体躯はカラシシ・ツクモの方が上であり、総重量で押し潰されたら、ダイボウケンmk−Ⅱと言えど、一溜まりも無い。
「おいおい‼︎ このままじゃ、スクラップにされちまう‼︎」
「判ってますわよ‼︎ 其れが嫌なら、全力で抵抗しなさい‼︎」
ネイビー、バイオレットは突然の反撃に慌てふためく。しかし、ホワイトは冷静だった。
そうしてる間に、カラシシ・ツクモの重量で後ろに押し倒されそうになる。だが、ホワイトは……
「今だ‼︎ ハイパー・アドベンチャー……ビーム‼︎」
ホワイトが操作して、ダイボウケンmk−Ⅱの胸部から、ハイパー・アドベンチャービームが放たれた。
ビームはカラシシ・ツクモの胸部に直撃し、そのまま横転してしまう。
「よし‼︎ 当たったよ‼︎」
「あ、貴方⁉︎ まさか、これを狙ってましたの⁉︎」
「そうだよ! さっきの攻撃で敵の胸部にダメージを受けてたから、そこに追加ダメージを与えるチャンスを待ってたの‼︎」
「マジかよ……! お前、結構にエグいな……‼︎」
サラッと言ったホワイトを、ネイビーは引き気味に言った。しかし、何はともあれ助かったのは事実だ。
同時に、バイオレットはホワイトの機転の良さに目を見張る。
(私でさえ、追い詰められた際には慌てふためいてしまったのに……彼女はピンチの状況をも利用して、反撃のチャンスを作るなんて……!
この娘、ただの向こう見ずなのか……かなりの大物か……⁉︎)
改めて知ったホワイトの意外性に舌を巻く。ただの素人に毛が生えた程度にしか見てなかったのだが、ボウケンホワイトは只者では無い、と認めざるを得なかった。
すると、カラシシ・ツクモは立ち上がる。しかし、至近距離からの光線を、破壊された胸部に受けた事で、カラシシ・ツクモは既に瓦解寸前だ。
〜ち、ちょっと⁉︎ 大丈夫なの⁉︎ 何か、ガタガタ言い始めたけど⁉︎〜
〜ま、拙いですね……今の攻撃で制御不能に陥り……リミッターも強制解除されました!〜
〜と、言う事は…⁉︎〜
〜暴走します……‼︎〜
ツルギの言葉通り、カラシシ・ツクモは暴走を始め、ガタガタと奇怪な動きを始めた。煙を発して、火花も散っている。
つまり、あと一発で倒せる。
「今だ! 一気に決めようぜ‼︎」
「うん‼︎ ゴートライウェポン・フィニッシュモード‼︎
ゴートライウェポンのシャベルモードが左右に展開し、十字槍の姿となる。後は、烈轟槍をカラシシ・ツクモへ投擲するのみだ。
「クロススパイラル……ブレイカー!!!!」
投擲された烈轟槍は、カラシシ・ツクモの胸部に突き刺さる。途端に、カラシシ・ツクモは火花を激しく散らし、炎上を始めた。
〜ちょっとォォォォ‼︎ 何とかしなさいよ、ツルギ⁉︎〜
〜無理です⁉︎ こうなったら、後は、シリーズでお約束の、アレしか……‼︎〜
〜ど……ドゴラァァァン……‼︎〜
そうしてる間に、カラシシ・ツクモは爆発してしまう。後は崩れ落ちる残骸から、キノコ雲があがるのみだ。
ラアナ、ツルギ、ドゴランは爆発と同時にコクピットから脱出したが、衝撃で吹き飛ばされてしまった。
「キイィィィ‼︎ 何が自信作よ、ツルギ‼︎ 負けちゃったじゃ無いのよ‼︎」
「……まァ……失敗は成功の母。次に期待して下さ〜い‼︎」
「ドゴラァァァン‼︎」
「くゥゥ……‼︎ 覚えてらっしゃい、ボウケンジャー‼︎ アンタ達の事……SNSで誹謗中傷しまくって、晒してやるゥゥゥ……‼︎」
ラアナ達は小物臭い捨て台詞を発しながら空の彼方へ吹き飛ばされた。
「……凄くベタな末路ですわね……」
「ロケ○ト団やバイ○ンマンみたいだね」
「そう言う事、言っちゃ駄目だって……」
ホワイト、ネイビー、バイオレットは呆れ気味に言った。だが、何はともあれ勝ったのだ。ダイボウケンmk−Ⅱは勝利のポーズを決めた。
地上に降りた三人は、ボロボロとなった屋敷と庭を見る。さっきの戦いの余波でこうなったのだ。
「……めちゃくちゃだね……」
流石にやり過ぎた、と雪歩は思った。だが、菖は何気なく言った。
「大丈夫ですわ。ボウケンジャーの戦闘で起きた被害は、サージェスから経費が下りて直してくれますわよ」
「身も蓋も無ェな……」
紺亮は呟く。最も、サージェスの財力は世界トップクラスであり、屋敷一軒どころか、東京都庁をも数日で修復してしまうのだから、開いた口が閉まらない。
すると、樺蔵夫人がやって来た。
「あ、貴方達が……闘ってくれたのかしら?」
「あ…えっと……」
雪歩は言葉に詰まる。基本、ボウケンジャーである事は民間人には秘密なのだ。だが、他人の家屋を滅茶苦茶にはした事に罪悪感を感じた雪歩は……
「ごめんなさい! お屋敷も庭も滅茶苦茶にしちゃって‼︎」
と、謝罪した。紺亮も共に頭を下げて、菖も仕方なく頭を下げた。だが、夫人の声は穏やかだった。
「頭を上げてちょうだい。貴方達を咎めるつもりは無いわ」
雪歩達は頭を上げると、夫人は朗らかだった。
「きっと、これは天罰ね。主人を亡くしてから、私は心にポッカリ穴が空いたみたいだった。
主人の残した遺産を湯水の如く使って、贅沢三昧していたバチが当たったのよ」
「おばあちゃん……」
夫人の憑き物が落ちた様な口調に、雪歩は呟く。樺蔵夫人は決して狭量な人間では無かった。ただ、大切な人を亡くした虚無感とアドベンチャー時代の好景気による金回りの良さから、おかしくなっていたのだ。
「貴方達の探していたのはこれでしょう?」
夫人は右腕の妲己の腕輪を外して、雪歩に手渡した。
「もう私には不必要な物よ。思えば其れを手に入れた日から、私はおかしくなってしまったのね。ならば、このプレシャスは貴方達に渡した方が良い」
「ですが、どうして此れが、プレシャスだと?」
菖は尋ねた。大抵の人間はプレシャスとそうで無い物と区別が付かない。夫人は微笑む。
「私を助けた人が教えてくれたのよ。『それは、何の益も齎さない。寧ろ、あってはならないもの』だって。
あと、私が大金を叩いて買ったあの『アーベントデンメルグ・ヴォルフ』も唯の犬だったらしいわ。
いつの間にか、私は見る目も無くして居たらしいわね……あの人が、元の場所に返しておくって連れて行ったわ……」
樺蔵夫人は自嘲気味に笑った。あの、ディエンドと言う男は何者なのか……。とうとう、分からず仕舞いだが、プレシャスを無事に手に入れる事が出来た。
「凄〜い‼︎ これが、プレシャスか〜‼︎」
「お、おい‼︎ 一応、機密なんだから、雑に扱うなよ⁉︎」
妲己の腕輪を掲げる雪歩を紺亮は嗜めた。菖はスーパーアクセルラーを起動した。
「白瀬さん。プレシャスを下に置いて」
雪歩が言われた通りに下に置く。菖はスーパーアクセルラーのアプリを起動させ…
「プレシャスボックスアプリ作動! 転送‼︎」
スーパーアクセルラーから発せられた光が、妲己の腕輪を包み込む。すると正方形の光に包まれ、姿を消した。
「どうしたんだ、プレシャスを?」
「スーパーアクセルラーを通じて一度、分子レベルに分解したプレシャスをサージェスミュージアムにあるプレシャスバンクへと転送しましたの。これで、ミュージアムにプレシャスを持ち帰る手間も省けましたわ」
「……何でもありだな、サージェス財団……‼︎」
改めて、サージェスの技術力の高さに舌を巻く紺亮。樺蔵夫人は寂しげだ。
「……羨ましいわ……若い貴方達が……。私も若い頃は、亡き主人と一緒に世界を旅するのが好きだった……。世界の見た事も無い景色に触れた時は、本当に楽しかったわ……。
……もう、それは叶わない過去の夢かしらね……」
「そんな事無いよ、おばあちゃん‼︎」
雪歩は、感傷的になる夫人に言った。
「夢を見るのに、歳なんか関係無いよ! いつだって夢を見れば良いんだよ! 私は、いつかプレシャトピアを見つけるのが夢なんだ‼︎」
「……壮大な夢ね……。でも、私はすっかり老いさらばえてしまったわ。今更、夢を持っても死ぬまでに叶うか、どうか……」
「おばあちゃん、知ってる? 夢はいつか本当になるんだよ! だから、夢は持っていたら必ず叶うよ‼︎」
雪歩の言葉は何の根拠もない。だが、夫人は元気が出た様だ。
「……そうね……! まだまだ、私は死ぬまでやりたい事は沢山あるわ‼︎ 夢を持って生きていく……まさか、私の生きた人生の半分以上に若い貴方に焚き付けられるとは、思わなかったわ……‼︎」
樺蔵夫人は元気そうに笑った。雪歩も楽しげだ。
「……ったく、笑ってやがる……こっちの気も知らないで……」
「全くですわ……」
紺亮、菖も釣られて笑い出す。何はともあれ、任務は無事に成功した。
だが、そんな様子を遠方より見つめる謎の人物が居た。
半壊した屋敷の屋根から様子を伺う人物は、黒マントを羽織り、肩に金色の肩当てが装着されていた。顔はローブを羽織り隠している。
「……アレガ、ぼうけんじゃーカ……面白イ……‼︎」
謎の人物はそう言うと、闇の渦の様な姿となって、何処かへ飛び去って行った。
都会から離れた山の麓に、ディエンドは立っていた。手には件の子犬を抱えている。
「……メガ・プレシャスは手に入らなかった……けど、こんな価値のある種がいたとはね……」
そう言って、ディエンドは子犬を離す。すると、子犬は一目散に走っていく。
「アーベントデンメルグ・ヴォルフ……一説では、日本の絶滅種であるニホンオオカミより古い系列だと聞いたが……まさか、日本に密輸されたのが、野生化していたなんて……」
ディエンドはマスクのみを解除し、影斗の顔を見せる。子犬は振り返り、彼を見つめる。
「行くんだ。そして二度と人間に捕まるなよ。君は種を残して、生きていけ。過去を無くしては行けない、僕みたいに……」
影斗の声に、子犬は山に走っていく。まだ子犬だが、犬は成長が早いし、この山は天敵となる様な動物は居ない。ここで成長し、他の野犬との間に種を残す……それが、動物には相応しい。
ふと、山中から子犬の遠吠えが聞こえた。どうやら、野生に馴染むのが早かった様だ。
影斗は安心した様に……
「生きろよ! 偶に会いに来るから!」
と、残して去って行った……。
ー次回予告!
ボウケンジャー達に新たなプレシャスの情報が舞い込んだ。それは、伝説の海賊が遺したとされる財宝に、プレシャスがあったとの事だ!
しかし、情報を掴んだネガティヴ、ディエンドも財宝を狙っていた…。
次回! 轟轟戦隊ボウケンジャー Return−White.adventure
task6 海賊王のプレシャス
雪歩「海賊? ド派手に決めちゃう?」
紺亮「それ、違う海賊だから…」