Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master- 作:からすまそういち
まえがき
この小説は那須きのこ原作「Fate/stay night」シリーズ及びその派生作品「Fate/Grand order」
の二次創作です。
この作品を読む前に、前作「Fate/loneliness -little summoners-」「Fate/loneliness 2 -survival plans-」を読むことをお勧めします。
注意:執筆者はFateシリーズにわかです。原作の設定世界観及び雰囲気を壊す可能性があり、尚且つこの作品は作者にとって都合のいい概念、所謂メアリー・スーが登場しました。なんでも許せる方のみの閲覧を推奨します。(尚この物語は2019年に構想された話です)
原案 からすまそういち
執筆 からすまそういち
編集 御今士郎
人理焼却が否決されてから、数カ月が経った。
あれから私達は新宿、アガルタ、セラフの亜種特異点を修復しながら、日々発生する微小特異点の修復に尽力している。
人理を守る戦いは、終わった。
絶望から始まった壮絶な旅。多くの都市を渡り、多くの人と出会い、別れてきた。
そんな私達の戦いは終わったのだ――大きな犠牲を払って。
私の部屋には倒したまま起こしていない写真スタンドがある。
生前、忙しそうに働く彼に無理を言って一緒に録ってもらった一枚の写真。
その写真が入ったスタンドを、未だに私は起こすことができない。
「……」
朝。シャワーを浴びて、バスタオルで体を拭きながら姿見鏡の前に立った。
傷だらけの肉体。あらゆる特異点を旅するうちにできた生傷。
乙女の顔だけは、とダヴィンチちゃんは顔の傷は目立たなくしてくれた。でも、私の身体には多くの痕が残っている。それは、私が遺してくれと頼んだのもあった。
傷は勲章だ。この痕の数だけ、私は戦ってきたんだと言える。思える。だから、私はこれらに対して引け目に思うことはない。けれど、
「こんな体じゃあ、お嫁にはいけないな」
へへへ、と笑ってみせる。笑い声は空虚に消えた。
でも、いつまでも後ろを向いているわけにはいかない。
一緒に戦ってくれる仲間がいるからだ。
支えてくれる人がいるからだ。
マシュが――いるから。
「よし!」
体を拭き終え、着替える。今日も一日頑張りましょう!
とりあえず食堂に行こうかな。皆がいるだろうし――
と、部屋の扉を開けた時だった。
「やあ、初めまして。こんにちは」
男が――目の前に現れる。
そいつは背が高く、白の短髪に青い眼で神父のような衣服を身に纏っていた。見覚えはない。
「清姫! 静謐!」
私は彼女たちの名前を呼ぶ。カルデアに居る人達は全員顔見知りだ。知らない奴がいるということはつまり、外部の人間ということ。外部の人間、ということは――
「「はい!」」
私を押しのけ彼女たちは前に出る。彼女らは私の部屋に断りもなく潜入してくる。だから呼べばすぐに駆け付けてくれる。
「貴方は誰ですか」
私は男に問いかけた。このカルデアにゲストが来ることはそうない。今あるとすれば査問員会の人達だが、彼らが来るのは今日ではなかった筈だ。
「物騒だね。挨拶しに来ただけだよ」
男は胸の前まで両手を上げる。
「私の名前は間宮詩。ゲストさ。ほら、」
間宮と名乗った男は胸から下げているゲストカードを手に取ってみせた。ダヴィンチちゃんが発行している来賓用のものだった。
「……そうですか。失礼しました」
きよひーと静謐ちゃんの二人を下がらせる。ダヴィンチちゃんから許可が下りているのなら問題はないだろう。
「それで、何の用ですか?」
「ダヴィンチ君から部屋を教えてもらってね。挨拶がてらカルデアの案内でもしてもらおうかと」
「そうですか。――じゃあ今から食堂に向かうところなので、一緒に行きましょう」
この間宮という男が何者かは分からないが、許可がある以上私から何も言うことはない。どうせ査問員会の内部調査の一環だろう。いつも通りにしていれば問題はないはずだ。
「楽しみだねえ」
間宮はにこにこして手を揉みながら私についてくる。
不気味な男だ、私はそう思った。
食堂に着くと、色んなサーヴァントが食事を取っていた。えーっと、今日の朝ごはん担当はエミヤさんか。
「き、君……」
間宮は厨房に居るエミヤさんを指差しながら固まっている。
「どうしました?」
「あ、アーチャーじゃないか⁉ ここにはアーチャーがいるのかい⁉」
「はい? 確かにエミヤさんはアーチャーですけれど」
「な、名前! 君はアーチャーの名前を知っているのか!」
「はい、そうですが……」
食い気味に質問をされ戸惑う。な、なんだこの人は。いきなりテンションが高くなって、驚いているというか、舞い上がっているというか、不思議な人だ。
「いやいや、アーチャーがいるなんて聞いてないよ! 彼が調理をしている⁉」
「エミヤさん、お得意なので」
「それは知ってるよ! 知ってるけど――ここの人はアーチャーが作った料理を食べているのかい⁉」
「ええ。……あ、食べますか? 多分作ってくれますよ」
「そんな! 懼れ多い!」
彼はブンブンと両手を振った。
何が? 私はそう思ったけれど口に出すのはやめた。
「はい、トレイを持って。並びましょ」
なんかこのまま会話を続けるのはめんどくさそうなのでとりあえず本人に会わせることにした。強引にトレイを彼に握らせ、列に並ぶ。
「あっあっあっ。今の私って大丈夫かな? おかしくない?」
おかしいかおかしくないかでいうとかなり様子がおかしいがそれは言わないでおく。
「な、なんて呼べばいいかな?」
「エミヤさん、でいいと思いますよ」
どぎまぎしている彼を見ながら待っていると、私達の番が来たようだ。
「おはようマスター」
カウンター越しにエミヤさんが挨拶する。
「おはようエミヤ」
「注文は?」
「んー、スクランブルエッグ」
「了解した? ――彼は?」
エミヤさんが間宮に問う。しかし、返答はなかった。
「……」
か、固まってる……。
「間宮さん、注文注文」
「はっ、はい! え、エミヤさん! 初めまして!」
「……? 初めまして」
「私は間宮詩と申しま――いや、注文でしたねすみません! えと、えーっと……」
間宮が私の方を向く。
「……私と同じの。もう一つ」
「……分かった」
多分間宮の言動を不審そうに思いながらもエミヤさんは私達の朝食を作ってくれた。
料理を受け取って、私達はテーブルにつく。
「……どうしたんですか?」
明らかに挙動のおかしい間宮に私は問いかけた。エミヤさんの知り合いかもと思ったけれど、初対面らしいし、何が何だか分からない。
間宮は口に入れたスクランブルエッグを噛み締める。
「――ファンなんだ」
「へ?」
「アーチャーのファンなんだよ。私は」
「そうなんですか」
珍しいな、と思った。エミヤさんは英霊の中でも珍しい守護者の英霊だ。歴史に名が残っていないから存在を知る人は少ない。
そんな彼のファンだなんて。
彼が聞いたら照れるだろうな、そう思った。
「私は今、彼が作った料理を食べている」
「そうですね」
間宮の目から涙が零れ始めた。
「っ⁉」
「ごめん、まさか、こんな日がくるなんて……」
涙を拭いながら間宮は言う。怖っ。大の大人が感情をコントロールできずにいる。
「後でサインもらいましょうよ」
つい面白くなって私は間宮にそう言った。
間宮は大げさに手を振る。
「そんなっ! 駄目だよ!」
「エミヤさんなら書いてくれますよ、きっと」
狼狽える彼の様子を見て、私が思うほど危険な人物ではないのかもしれないと思った。
それから暫くして。
やっとのことで朝食を平らげた間宮と私は彼の提案でカルデアスの所へ向かうことになった。見てみたいらしい。
「へー、これがそれか。本当に地球みたいだねえ――」
彼はカルデアスを眺めながらそう言った。興味津々と食い入るように見ている。
「特異点が発生したら赤い点が浮かび上がって、分かるようになっているんですよ」
私が指を差してそう言うと、早速赤い点がカルデアスに浮かび上がった。
「そうだねえ――」
間宮が私の前に立つ。
私はそれに対して、反応が遅れた。
「じゃあ早速レイシフトってやつ、してみようか」
間宮が私の頭を掴む。
そこで私の意識は、途切れた。