Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master- 作:からすまそういち
第八節 今日の日はさよなら
黒円が閉じる。
一寸の宝具『小槌』で私達の分解はなかったことになった。
ただ、一寸はもう一人の自分に小槌を振る事はなかった。
「私達は、哀れな男です」
彼は語る。
「消えたいというのは、私も同じです。私もまた、悪性を持つ妖怪の一味だ。しかし、私は夢を見た。私の活躍を見て、私の伝記を知って、それでも私を信じてくれる人達のために戦いたいと思った。彼らを守る存在であれと願った。それはお前も同じ筈です。私よ」
「……それで、我らの罪が償えると?」
「いえ、そんなことはありません。私達が行ったことは変えようがありません。ですから、これからなのです。これから、私達は英霊でありましょう。私達を英霊だと信じてくれる人がいる限り」
「そんな、都合の良いことがあるものか」
「あるよ」
彼の呟きに私は答えた。
「一寸オルタ……でいい? オルタもさ、カルデアに来なよ。カルデアは君を受け入れられる。なんてったって、君より悪い奴なんて沢山いるんだから――」
悪性を持ちながらそれでもカルデアに協力してくれているサーヴァントを沢山知っている。
「悪かどうかは関係ないんだよ。大事なのは何がしたいかだと、私は思うんだ」
「……」
「オルタは、何がしたい?」
「わたし、は……」
彼は言う。
「私は、ヒトの為に戦いたい。未来ある子らのために、私は彼らの救いとなりたい――」
「じゃあ、なろうよ。カルデアで。私達と一緒に」
「いいのですか。私は悪ですよ。そんな私が、子供達の未来を憂いても、いいのですか」
「勿論、大歓迎だよ。カルデアは何時だってメンバー募集中だからね」
「私よ。私達は私達でいいのです。私達にも使い道はある。だから、未来ある子らのために私達が立ち上がってもいいではありませんか。こんなちっぽけな悪童一人が決起したところで誰も咎めはしませんよ」
「……ははは」
オルタは微かに笑う。
「カルデア、か。いいですね」
「じゃあ――」
「機会があれば、参加してやってもいいでしょう。でもそれは、今ではない」
彼は空を見上げた。
「ああ、こんな私でも願っていいというのなら――」
彼は笑いながら、光の粒となって消えていった。
「……」
「終わった、でいいんだよな?」
一部始終を見ていたアーチャーが、やっと口を開いた。
「うん、終わったよ。彼はきっといつかカルデアに来てくれる。アーチャーは?」
「俺ぇ? うーん、どうかな。おサルさんよ。お前はどう思う?」
「儂は、そうじゃな。縁があればいつかまた出会えるじゃろ。それまではお預けじゃ。人の命令に従うのは懲り懲りなんでの。ま、儂を召喚したければ黄金の茶室でも用意するんじゃな! はっはっは!」
「結局はそういうこったな。縁があればまた会えるだろうよ。それまではお別れだ」
「うん、分かった」
頷くとライダーとアーチャーもまた、光の粒となって消えていった。
『特異点の反応が消えた。そろそろ退却だよ』
「うん、ちょっと待って」
私はヘクトール達の方へ向かった。
「今回もありがとうございました」
頭を下げる。
「うんにゃ、オジサン達はそんな大したことはしてねえよ。顔を上げな」
「ええ、皆が頑張った結果の勝利です」
「此度は終わった。しかしまた圧政は始まるだろう」
「誰も欠けなかったし、上々じゃないかしら。よくやったわね、マスター」
「はい……はい!」
彼らは手を振って、退去していった。
私も大きく手を振る。
「藤丸リツカ。私が迷惑をかけたようです。すみませんでした」
一寸が話しかけてきた。
「いいんだよ」
「貴女のおかげで救われました。私は、人の為に戦ってもよいのですね」
「誰だって、人の為に戦っていいんだよ」
「ええ、そうですね。そうだった。それを私達は忘れていたのでしょう。――では、また」
「またね」
一寸も消えていった。
「先輩、帰りましょう」
マシュが私の手を取る。
「うん」
今回の特異点は特に不思議だった。
始まりが唐突で――
「あれ? そういえば間宮は?」
「ああ、それは――」
エピローグ
「いやごめんね! 試すようなことしちゃって」
額の前で手を合わせ、そう間宮は謝ってきた。
「……結局、なんだったんですか」
「私からも謝っておくよ。間宮君と共謀して今回の聖杯戦争を始めたんだ」
ダヴィンチちゃんも両手を合わせる。
「ええ、そうだった?」
「間宮君からの提案でね。どうもリツカちゃんは人を信じすぎるきらいがあると。だから今回の一件で今一度考えてほしい、ということだったのさ」
「ええー、なんですかそれ」
「でもいい経験にはなっただろう?」
間宮が言う。
確かに、経験としては良かったかもしれないけれど、
「私、死にかけたんですよ⁉」
「いやー、まさか黒円に飛び込んでいくとは思っていなかったよ」
「ほんと、びっくりしたよ。ああいうのは心臓に悪いから控えてね」
「ええ……」
肩を落とす。全部仕組まれていたなんて。
なんか、一気に力が抜けた。
でも、良かった。
嘘ではなくて。
それならあの特異点で出会った彼らには、いつか出会えるかもしれないから。
「そうだ、リツカ君」
「なんですか?」
「実は、また特異点の修復を頼むかもしれないんだ。何時になるかはまだちょっと分からないけれど、その時はよろしくね」
間宮がウインクする。
また特異点が発生する? それが分かっているなら今からそれを修復しに行ってもいいのでは――
私はそう思ったけれど、疲れていたので言わなかった。
その次の特異点修復こそが本番なのだと、この時の私は知らなかったのだ。
《Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master-――了》
あとがき
はい、そういちです。
書いてみると終わるもんですね、これ。
これで残すとこあと一部となりました。
次で最後です。
集大成となりますが、ボリューム的にはそんなに書かない予定です。
1部が長かったよ1部が。
ここまで一緒に来てくれた皆様には感謝を。
そして、次回ではやっとシャルルちゃんが大活躍(?)してくれるのでお楽しみに。
ではまた次回!