Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master- 作:からすまそういち
第一節 孤立
目が覚めると、私は交差点の中央で横になっていた。
体を起こす。辺りを見回すと、誰も居ない。車もない。
唯一私の印象に残ったのは、神社の門だった。
赤々とした大きな門。その門の近くの石碑に「八坂神社」と彫られている。
(八坂神社……?)
昔、遠足で京都に行ったことがある。そこで確か八坂神社に行ったことがある筈だ。
つまり、ここは京都ということになる。日本の西側に位置する古都。日本の代表的な都市の一つ。
再び辺りを見回しても、やはり誰も居ない。京都はいつも人で溢れ返っている。神社の前なら猶更だ。観光客がいてもおかしくない。
(そうだ、通信)
「マシュ! ダヴィンチちゃん! 聞こえる⁉」
……。
返事はない。通信に障害が起きているのか、それとも通信ができない場所に居るのか。
それは分からないけれど、私が目覚めた時点で通信が入らないのであれば、おそらくカルデアは私の管理ができていないということだろう。私が今何処にいるかも分かっていない可能性が高い。
つまり、指示なくその場で戦わないといけないということだ。通信に障害が起きる程度なら今までもあったし、そんなに驚くことでもない。アドリブで戦闘に入るのも数え切れないほどあった。
しかし、
「マーリン! 孔明!」
影法師としてサーヴァントを簡易召喚することもできなかった。これでは全く戦えない。私は所詮、ただのマスターなのだから。魔術師としては最低のレベルの。
敵の雰囲気が漂ってこないのが唯一の救いだった。今ここで襲われると為されるがままだ。逃げるための知識は身に着けているが、それもいつまで持つか分からない。
「困ったなあ。あはは」
とりあえず笑ってみる。落ち込むよりかはマシな筈だ。どんな状況でも、前を向かないと。
ひとまずは、現地のサーヴァントとの接触が最優先だろう。
ここが特異点というならば、それに応じて召喚されたサーヴァントが何騎かいる筈だ。彼らと仮契約を結び、戦力にできれば私も戦える。
私は通りを歩いていた。
何処に向かえばいいかは分からない。
しかし、とにかく進まなければ光明も見えてこない。
私にできるのは何時だって前に進むことだけなんだ――
暫く歩き続けた。
誰も居ない道なりを。
露店にも喫茶店にも、お土産屋も。
店員含め誰も居ない。
まるで、立体的なジオラマに閉じ込められたかのよう。
進む度に得体のしれない不安感が私を襲う。
『怖いよぅ』
何者かが私の足を掴んだ。いや、誰も掴んでいない。私がそう感じているだけだ。私の中の恐怖心が私の足を掴んでいる。これ以上前に進ませないように。
私はそれを振り切った。
『寂しいよ』
今度は肩を掴まれる。幻覚だ。誰も私を引き摺ろうとはしていない。
私だ。私なんだ。
いつだって私の背中をつつくのは私だった。
弱い私。
私の敵はいつも私だった――
躓いて、倒れる。
手をついて跪いた。
「分かってる。分かってるよ」
声を漏らす。
「怖いよ。寂しいよ」
呟く。
「それでも、私は前に進まないといけないんだ――」
私は立ち上がった。
今にも胸は張り裂けそうだ。私は何時だって一人では何もできない。だから皆に支えてもらって生きている。それがどうした。それが
マシュの手を握った、あの日から。
強い私など、どこにもいない。でも強くあることは私にもできる。
それが私に許された私の強さだ。
私は走った。何かを振り切るように。
思い切り。私は走り続けた。
すると、歩道の交差点で人とかち合った。
「わっすみません!」
私は慌てて避ける。ぶつからずには済んだ。
「――おや、珍しいですね。こんなところに人がいるとは」
その人は言った。
その人は、袴着の青年だった。