Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master-   作:からすまそういち

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第三節

 

 第三節 衝突

 

 

 ライダーと一寸がお互いの剣を構える。

 そして、一寸の猛攻。右手で針を振り下ろすと同時、左手で針を弾き飛ばし、ライダーに二者択一を迫る。しかしライダーは卓越した剣技で両方を振り払った。

 傍からみていると分かる。ライダーの方が一枚上手だ。おそらく場数が違う。一寸には戦闘センスがあるように見えるが、ライダーはその逆。長い時間を培って養ってきた実力だ。

 それに、判断力もある。ライダーは常に一寸の背後を私に見せ、援護しにくい体制を取る。このままではガンドが撃てない。軸をずらそうと私が動いてもライダーがそれに応じて軸を合わせに来る。戦闘において視野もライダーの方が広かった。

 一寸もライダーに食いついてはいるが、このままでは時間の問題だということが分かった。ライダーに勝つには特別なもうワンアクションが必要だった。

 私はまだ一寸の宝具を知らない。ここに来るまでに彼の宝具が単純な単体攻撃宝具であることを訊きだせたが、それ以上は分かっていない。どうする? 宝具を使ってみるか――

「おい、もういいじゃろう。茶番は」

 ライダーは言った。そして、剣を収める。

「なっ、どういうことですか」

 思わず固まる一寸。

 ライダーは剣を収めたが、戦いが終わったというわけではない。まだ彼の宝具を見ていないからだ。

「じゃから、もういいじゃろう。概ね格付けは済んだ。それとも、儂の宝具が見たいのか?」

「ぐっ……」

 一寸も状況は理解していたようだった。自力で負けている相手に宝具を使われて勝てるかどうかは怪しい。それにライダーの宝具はこちらも分かっていた。ここに来るまでに一寸からある程度説明を受けている。

 ライダーの真名は豊臣秀吉。

 戦国時代に天下を取った大武将である――

「どうせ、マスターを噛ませて不意打ちを狙っとったんじゃろ。作戦が見え見えじゃ。ガンドに頼り過ぎておる。ばかばかしい。そんなもので儂を討ち取れるなぞ思うておったのか」

「……」

 言い返せない。確かに実際に対峙した今考えるなら、その作戦は甘かったのだと分かる。

 しかし、ここまで圧倒的だとは、思ってもいなかった。

「そこの女子(おなご)よ! 何処から来た? ここにはマスターは居らぬ筈。では何故(なにゆえ)何処から現れたのか。申してみよ」

 ライダーが再び縁側に座り、手招きをした。

「……私は、カルデアから来ました」

 私は答える。

 戦闘では勝ち目が薄い。そう判断して、私はライダーに全て話すことにした。

「――成程。人理継続保障機関のう。そんなものが未来にはあるのか」

 ライダーが頷く。

「それで、特異点を修正しに来た、というわけじゃな」

「ええ、そんなところです」

「はっはっは!」

 ライダーは突然笑い出した。

「よもやよもや。そういうことか。だから儂が召喚されたのかもしれんのう。聖杯戦争とは、願いのある英霊が集まるもの。じゃが儂にはその願いはない。儂は聖杯戦争がこれで二回目での。一度で儂の願いは叶うものではないと理解したわ。願望器とは他人任せじゃからのう! それで願いを叶えたとて、自らの力で成し遂げたと言えるものか! なあ!」

「確かに、そうかもしれませんね」

 生前のライダーは相当な自信家だったと聞いている。彼なりの定規があって戦いに臨んでいるに違いない。

「此度の聖杯戦争は願いのない物共が集まっておるのではないか? そして、そやつらで殺し合いをさせておる。中々良い趣味ではないか。はっはっは!」

「? そうとは限らないのではありませんか?」

「はん、セイバーよ。それがあり得るのじゃ。そら、そろそろ来るぞ」

 ライダーは門に向かって指を差す。

 私達が振り返って見てみると、門に人影が現れた。

 人影が姿を現す。

 それは、男だった。

 金髪のロングヘア―、黒いインナーに白のジャケット。首と指周りはアクセラリーがじゃらじゃらとぎらついている。一言で例えるなら、ホストだ。ホスト風の男が両手に酒瓶を持ってこちらに来ている。

「――あれ? 誰だお前ら」

 ホストはあっけらかんとしながら言った。

「キンカン! 遅かったではないか!」

 ライダーが彼に向かって叫ぶ。

「いやー、中々良い酒探すのに苦労してよ。で、この二人は誰?」

「私は、藤丸リツカと言います」

「セイバー、だ」

「ふうん、マスターがいたのね。で、こいつらも飲むの?」

 大きな酒瓶をこちらに向けて言うホスト。

「い、いえ。私は未成年なので……」

「じゃあ何しに来たの。ここ、誰も居ねえし、つまんねー場所でしょ」

「聖杯戦争だ。私達は戦いに来たのです」

「――あー、そう。で? 負けたんでしょ? お前は飲むの?」

「まだ負けてません」

「はいはい。でおサルさん、まだやるわけ? やるなら待ってようか?」

「いや、よい。話は終わった。はよ酒を寄越せ」

「はいよはいよ」

 ホストはライダーの傍に寄ると、靴を脱いで彼もまた縁側に胡坐をかいた。

 そして、ライダーに酒瓶の一つを渡す。

 ライダーは受け取るとすぐに蓋を取ってそのまま口に運んでいった。

「っぷはー。いつの時代も酒は旨い! 中々良いのを選んだではないか」

「でしょでしょ? 名産らしいのよ、これが」

「「……」」

 置いてかれてる。私はそう思った。

「ライダー、その方は誰ですか?」

 一寸が耐えきれなくなったらしい。

「俺ぇ?」

「キンカン、名乗ってやれ」

「……しゃーねーな。俺の名前は明智光秀。クラスはアーチャー。よろしくぅ」

 渋々、といった感じでアーチャーは名乗った。

 明智光秀。

 これもまた戦国時代のビッグネームだ。

 その風貌とのギャップに驚いた。

「で、おサルさんよ。結局こいつらとはどうするわけ?」

「ああ、そうじゃった。おい小娘! カルデアのマスターよ。こやつにも同じ話をしてやれ」

「は、はい――」

 ライダーに促され、私はもう一度カルデアについての話をする。

 その間、興味深そうに相槌を打ちながらアーチャーは聞いてくれた。

「はいはい。そういうことね。だから俺達以外いないわけだ」

「そうじゃそうじゃ。それで、願いのない物共をわざわざこうして戦わせておる」

「そうだねー。なんでかな。意味ある?」

「ま、待ってください。アーチャー、貴方にもないんですか――願いが」

 明智光秀といえば天下欲しさに上司を討ったことで有名だ。そんな彼が無欲だとは到底思えない。

「ないね」

 彼ははっきりと答えた。

「己が真に欲しいものは、もうどこにもないのさ。このおサルさんと同じくな。今の時代に俺達は必要ない。だからその逆、俺達にも今の時代に欲しいものなんてないのさ」

「……そうですか」

「おいおい、俺が信じられない気持ちは分かるが、少しは信じてくれよ」

「い、いえ。信じられないというわけではなくって、」

 意外だった。記録で教えられた人間と、実際の人物がこうも違うなんて。

 カルデアに滞在するサーヴァントを考えれば決して珍しいというわけではない。でも、やはり驚きはあるものだ。

「こやつはな、ただ仲間が欲しかっただけなのじゃ。どうじゃ、寂しい男じゃろう――」

「ば、バカ。それは言うなって――」

「だからこうして共に酒を飲んでやっとるじゃろう。はっはっは!」

 豪快に笑うライダーを見て、思う。

 敵には見えないと。

 やはりいつも通り、本当の敵は聖杯戦争の先にある。私はそう思った。

「そうじゃ、ほれ」

 ライダーは懐から電子機器を取り出して私に差し出した。

「これは――」

「儂の令呪端末じゃ。儂には必要ない。ならばこれを託そう。なあ、カルデアのマスターよ」

「おいおい、おサルさん、いいのかい? そんなことして」

「何を言っとる。お前も差し出すんじゃ。早よせい」

「うええ、マジかよ。――まあ、あっても無駄だし、いいけどさ」

 アーチャーもまた、ジャケットのポケットから令呪端末を取り出した。

 しかし、彼はそこに映された令呪を見て固まってしまった。

「どうした?」

 ライダーが問う。

「いやさ、この令呪の形、なんか見覚えがあってよ。なんでか分かんねえけど、懐かしい気がするんだ」

「そんなのええから早よう渡せ」

「――分かったよ」

 渋々、アーチャーは私に令呪端末を差し出した。

 私は二人の令呪端末を受け取る。

「ありがとうございます」

「人理の為じゃ。お前の為ではない」

「ああ、調子に乗るんじゃねーぜ」

 二人の言葉は重々承知しているつもりだ。そう、私が背負っているのは私だけの命だけではない。皆の命がかかっているんだ。

「これで残るは四人、ですね」

 一寸がそう言った。

「あー、そうだ。他にも令呪端末がいるんだろ。なら俺がキャスターの居場所を知ってるよ。そこにもう二騎居る筈だぜ」

「本当ですか! そこは何処ですか?」

「神谷道場って場所なんだが……ちょっと遠いな。よし、一緒に行こう。おサルさんも来な」

「えー、やじゃー。動きとうないー」

「駄々こねるなよいい歳こいたジジイがよ。ほら、行くぞ」

 アーチャーはライダーの肩を叩く。ライダーは酒瓶だけは離さず草履を履いて、全員で神谷道場に行くことになった。

 

 

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