Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master- 作:からすまそういち
第四節 説得
アーチャーが先頭になって組になり、私達は道場に向かっていた。
人のいない繁華街。私達の歩く音が響く。
そんな中、遠くからずんずんと大きな足音が聞こえてきた。
「! 誰か来るぞ」
「多分、バーサーカーでしょ。見たことがある。まあ、三騎もいればなんとかなるっしょ」
「……」
三人は己の得物を構えた。
近づいてくる敵に備える。
そして、道の曲がり角から――飛び出してきた。
「ふぅん!」
その姿は――
「スパルタクス⁉」
「なんじゃ、知っとるのか?」
「ええ、彼はカルデアにもいて――」
「でも今は敵です! やってしまいましょう!」
一寸がスパルタクスに突っ込んでいった。
「ああもう! アーチャーとライダーは一寸の支援を!」
「分かっとるわ」
「りょーかい!」
ライダーは弓を構え、アーチャーと共に射る。
一寸が前衛でスパルタクスの注意を引きつけながら、その背後で二人は弓を射る。
急造のパーティだが、連携が取れていた。
しかし、
「どぉらァ‼」
スパルタクスはグラディウスを薙いだ。一寸は脇腹を捉えられ、露店の中に吹っ飛ばされる。
「なっ!」
前衛が消える。それに合わせてライダーは刀を抜いた。
「キンカン! 合わせろ!」
「応よ!」
今度はライダーがスパルタクスの相手を始めた。私もガンドでスパルタクスの動きを抑制して支援する。
「私がここで倒れるとでも⁉」
一寸が店から飛び出してきた。そして、手に持つ針でスパルタクスの背後から彼を突き刺した。
「ぐぉおお、」
スパルタクスの動きが鈍る。
「よし!」
アーチャーが言うが、まだ戦いは終わっていない。
むしろ、スパルタクスはここから――
「いや、まだだ! 皆! 構え――」
瞬間、スパルタクスは吠えた。
その波動が一寸とライダーを吹き飛ばす。
大地が震え、足が取られた。しまっ――
「あぶねえ!」
アーチャーが私の手を取り私の前に立つ。アーチャーが私の盾になってくれた。
「……まずいな」
アーチャーが呟いた。
スパルタクスに視線を合わせる。
傷つけられれば傷つけられる程力を増すスパルタクスの常在宝具。
一寸とライダーは吹き飛ばされたようだ。視界に居ない。
「君は圧政者か」
スパルタクスは問う。
「私は、カルデアのマスターです。特異点の修復に来ました」
「……」
「叛逆者、スパルタクス。話を聞いてはもらえませんか」
私は彼に語り掛けた。
このまま戦い続けても厳しいだろう。
勝てるかもしれないが、彼との対決の場合、行きつくところまで行ってしまう。それを私は分かっている。ここで勝っても次の勝負まで繋がらない。
だから、
「スパルタクス。多分私達が戦うべき敵は他にいます。ですから、聞いてください」
アーチャーを手で制した。ここは私に任せて、と。
一寸とライダーも姿を現さない。私の意志を汲み取ってくれているのだろうか。
「……いいだろう。述べてみよ。マスター」
スパルタクスは手に持つグラディウスを地に刺した。話を聞いてくれるらしい。
そして、私はスパルタクスにカルデアのことと、ここまでの経緯を話した。
「マスター不在の聖杯戦争。それこそが新たな枷。斃すべき圧政か」
内容を理解してくれたようだった。
スパルタクスは自身の鎧の隙間から令呪端末を取り出した。
そして、それを手で握り潰して粉砕する。
「⁉」
「ならばこれは必要のない物だ。誰も命令などさせない。私にマスターは必要ない。そうだろう?」
「ええ、貴方は自由だ」
私が答えると、スパルタクスはにっこりと笑った。
良かった。本質はカルデアに居る彼と変わらないらしい。
「もうよいかの」
ライダーと一寸が現れる。
「厄介な奴でした。戦わないに越したことはありません。助かりました。マスター」
「もう、一寸が突っ込んでいくからだよ。最初から話し合いで済んだかもしれないのに」
「面目ない」
「まあ、若い奴は血の気が多い方が良いじゃろう! はっはっは!」
ライダーが髙笑う。勝手なイメージからもう少し気難しい性格なのかなと考えていたけれど、案外素直なのかもしれなかった。お酒が入っているからかもしれないけれど。
「とにかく、先に進もうぜ。キャスターの所に行けば全員揃うだろ」
アーチャーに促され、再び歩くことにした。今度は後ろにスパルタクスがいる。彼も付いてきてくれるらしい。
そうして神谷道場に向かっていくと、道中でぽつぽつと浮遊物体に出くわすようになった。UFOみたいな円盤があちらこちらを飛び交っている。何処かで見たような気がしないでもない。
道場に近づけば近づくほど量は大きくなっていった。そして、それらは私達に向かって飛んでくる。
まるで侵入者を撃退しに来た防衛プログラムのようだった。私達はそれらを振りっ払いながら前に進んでいく。
「ここだぜ」
そうして、道場の前まで辿り着いた。厳かな雰囲気の道場だ。築何十年と経っているだろう。門だけで威圧感がある。
「おーい、キャスター。来たぞー!」
アーチャーが門の扉を叩いて言う。
それに答えるように門の扉は開いた。
「入って」
門に取り付けられたスピーカーから声が響いた。中のキャスターが答えたのだろう。
罠かもしれないが、警戒する様子もなくアーチャーは中に入っていくので仕方なく彼についていった。戦闘になっても大丈夫だとは思うけれど、もう少し警戒してほしいなあ……。
門をくぐり道場に行く。アーチャーは既に建物の扉を開けていた。
中に人物が見える。そして、その人物はエレナ・ブラヴァツキーだった。
「エレナ!」
思わず声をあげる。
しかし、それに対しての反応はそっけないものだった。
「そう、私を知ってるのね」
彼女は私のことを知らない。それはいつものことだけれど、やっぱり少し寂しい感じがする。
「中に入って」
促され、中に入る。建物の中は結構広かった。中に入るとすぐに道場に繋がっている。彼女は道場の中央まで歩くと振り向いて正座した。
私と一寸も習って正座をする。アーチャーとライダーは胡坐をかいた。スパルタクスは座らない。
「けっこうな数を集めたわね。それで、要件は?」
アーチャーとエレナは面識があるようだ。彼女はアーチャーに問いかける。
「あれ? もう二騎はどこにやった?」
「あいつらは外に出したわよ。ここで争われたら困るもの」
「そうかい」
「で、これだけ人数を集めたのは何? 私の令呪端末を取りにでも来たのかしら」
「まあ、半分は合ってる」
「じゃあ、渡すから出てってくれる?」
彼女は懐か電子機器を取り出すと、こちらに向かって床の上をスライドさせるように投げた。
令呪端末がアーチャーの足元に流れる。
「えらい素直だな」
アーチャーは令呪端末を手に取った。
「戦う気はないって言ったでしょ? それを取ったら二度と来ないで頂戴」
「こっちも戦うつもりはねえよ。ただ、もう二人の居場所も教えてほしい」
「……嫌だと言ったら?」
「別に。こっちで探すさ。もうあんたの令呪端末はあるんだ。あんたはここから離れたくないんだろ? なんでかは知らないけど、それくらいは尊重するさ。ただ、それの前にこっちの話を聞いてはくれないか?」
「なに?」
「ほれ、マスター。出番だぜ」
アーチャーはエレナの令呪端末をこちらにスライドさせながら促した。私はそれを受け取り、口を開く。
カルデアのこと。特異点のこと。今までの皆と同じように。語った。
「……そういうこと、だったのね。だから貴女は私を知っていると」
「ええ、エレナさん。そして、特異点の修復には聖杯が必要です。あと二騎の令呪端末が必要なんです」
「そう。で、
エレナが言う。あれ、今のは誰に言ったんだ?
その疑問に答えるように、声が聞こえた。
『ああ、十分だ。オジサンのところまで案内してやってくれ』
ヘクトールの声だ。ヘクトールの声が聞こえた。
彼もまた今回の聖杯戦争の参加者なのだろうか。
「通信を繋げていたのよ」
エレナは言う。そして、立ち上がった。
「了解も取れたし、案内するわ。ああ、そこの大きいの。ゆっくり動いて頂戴。床が抜けるのは困るわ」
スパルタクスにエレナは言う。スパルタクスは少し困ったようにゆっくりと足を上げた。スパルタクスが言うことを守るのは珍しいな、そう思った。
そして、全員が道場を出る。
「ここから少し歩いた公園に二人はいるわ。ついてきて」
エレナはそう言って歩き始めた。私達もそれに付いていった。