Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master-   作:からすまそういち

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第六節

 第六節 怪異・スクナヒコナ

 

 

 悪鬼、怪異・スクナヒコナとの戦いが始まった。

 陣形はその場で作った。前衛がスパルタクス、一寸法師。その支援にヘクトール、レオニダス。後方での攻撃にアーチャーとライダー。私とエレナが皆のサポートに回る。

 即興だが完璧に近い布陣だった。前衛の二人が剝がされてもヘクトールとレオニダスが前に出て後衛を守る。そして後衛の面々でしっかりとダメージを与えていく。

「ヘクトール、宝具行くよ!」

「応よ!」

 ヘクトールが少し下がり、剣を投げる構えを取る。

 その間にレオニダスとスパルタクスが時間を稼いだ。

「標的確認、方位角固定」

 息を深く吸い込んで、彼はそれを投擲した。

「――『不毀の極剣(ドゥリンダナ・スパーダ)』」

 投擲したその軌跡は、まるで光の道筋のようだった。

 それが怪物の胴に深く刺さる。

「ぐ、ぐぉぉおおおおお‼」

「皆、続けていくよ!」

「よくってよ! 海にレムリア! 空にハイアラキ! そして地にはこの私!」

「フハハハハ‼ 往くぞ、我が愛は爆発するぅ‼」

「『金星神・火炎天主(サナト・クマラ)』‼」

「『疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)』‼」

 二人の宝具も炸裂した。悪鬼スクナヒコナの体勢が揺らぐ。

 今のはかなり効いたに違いない。

「どうする? 俺らもやっとく?」

「儂らの宝具、あんまり相性よくないからのう。やらんでもええじゃろ。ここできっちり仕事こなしとればよい」

「聞こえてますよー」

「やべっ、じゃあやっとくか! 『本能寺の変(最初で最後の叛逆)』!」

「……意志のない奴じゃのー。どれ、『豪華絢爛日輪城』」

 悪鬼の足元から燃え盛る城が生え出てきた。城は悪鬼を取り囲み、炎によって爆発する。

「がぁああァァァああああ‼」

 瓦礫を巻き上げて怪異は身悶え苦しみ始めた。

「あともう少し!」

「では私がとどめを。これだけ弱れば効くでしょう。――『小槌』」

 一寸が飛び出し、体勢を崩した悪鬼の顔面目掛け巨大な槌を振り下ろした。

「ぐぁ、あがががががっがが――」

 そして、叩かれた怪異はみるみる萎んでいき、人の形に戻った。

「どう、して。何故勝てない――」

 悪鬼は言う。

 一寸は見下ろして、答えた。

「それはお前が悪役だから、ですよ。何時の時代も悪役は負けるものです」

『リツカちゃん! 大丈夫かい!』

 突然通信が繋がった。ダヴィンチちゃんだ。

「大丈夫! 概ね終わった!」

『そうか、大変だったね。お疲れ様。でも一応そっちにサーヴァントを送るから待ってて!』

 そう言って通信が途切れた。あちらは相当慌てているらしい。

「援軍も来るようです。貴方の負けですよ」

 一寸がもう一人の自分に言う。

「ははは……どうやらそのようです。聖杯を使ってもこれでは、歯が立ちませんね」

 空を見上げて彼は言った。

「で、どうする? とどめを刺すかい?」

「ヘクトールさん、大丈夫です。こいつはもう、終わっている」

 一寸はヘクトールに向かってそう言った。一寸にはもう一人の自分のことが分かっているらしい。

「こいつは私です。だから、私はこいつの願いを知っている。こいつの願いは破滅。自らの存在を座から消し去ること。――そうでしょう?」

「……」

「な、どうしてそんなこと」

「――それは私が悪だから、ですよ」

 彼は語る。

 彼は空を見上げたままだった。

「私はどうしようもない悪だった。皆を騙し、財産を乗っ取った。その挙句の果てに得た肩書きが妖怪。人を苦しめる悪鬼なのです。

 私は、座にいるべきではない。私は英霊などではない。決して人の為にはならない。この身は悪性に満ち満ちている。私は存在してはいけない――悪なのですよ」

 彼は笑った。その笑いは自虐に満ちている。

 愚かな自分を嗤えとでも言わんばかりの、微笑みだった。

「どういうこと?」

 私の問いに一寸は答える。

「私達一寸法師は、鬼を倒した英雄として知られているのはマスターも知っているでしょう。しかし、私達はその英雄という一面を持ちながら、人を騙して財産を騙し取る悪鬼としての側面もあったのです。悪を討ち取った悪。彼はそれが赦せないのです。私は子供に信頼される穢れなき英雄でありたかった。未来ある子供達の眼を輝かせるような、そんな存在でありたかったのです。それは叶わぬと知りながら」

 一寸はもう一人の自分へと向き直った。

「私よ。確かに私は間違った。もっと良い方法があった。それは間違いありません。しかし、己を赦さぬ程の悪ではなかった筈です」

「どの口が言うか!」

 悪鬼は激昂する。

「お前は悪だ! 穢れに穢れた悪童が! お前は皆を騙したのだ! あの手この手で誑かし、破滅させた! それが赦されると⁉ この私が‼ お前の様に善人ぶれたらよかっただろうよ。知らぬ顔で存ぜぬと白けていたら良かったのだろうよ。そうしたら、こうして苦しまずに済んだのだ!」

「……」

 一寸は顔を背けた。

「もういい。お前はそうして白々しくあるがよい。だが私はお前を赦さない。お前もいつか連れて行く。それまで地獄で待っていようぞ――」

 彼は地面に手を置いた。そこから黒い円が広がっていく。その円は彼を囲んだ。

「こ、これは――っ!」

「これは分解の海。存在を抹消する破壊機関。これに呑まれれば私はこの海の中で分解され消えていく。聖杯でここまで具現した。これで私は滅ぶのだ」

 そう言いながら彼はずぶずぶと黒円に沈んでいく。

「お前は、本当にそれでいいのですか。お前だって人の優しさや温かさは知っているというのに――」

「私にそれを享受する資格などないよ」

 ははは、と。

 彼は笑いながら円の中に沈んでいった。

 それを、誰も止めなかった。

 止められなかった。

 それが彼の願いだというのなら。

 私達にそれを止める資格など、ないから。

 そうして、彼は円の中に沈み切った。

「……」

 でも、

 本当に、これでいいのだろうか。

 自分が消えるべきだからといって、こんなに呆気なく、いなくなってしまっていいのだろうか。

 彼の笑う顔が頭に浮かぶ。

 生きることを諦めてしまった儚い笑顔。

 自分を嘲笑った果てに出た最後の表情。

 あんな顔をさせてしまって、いいというのだろうか?

 ――きっと、違う。

「⁉ 何をしている。マスター!」

 私は走り出した。

 円に向かって。

「やめろ! 無茶だ!」

 皆の制止を振り切り、私は。

 黒円の中に飛び込んだ。

 

 

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