Fate/loneliness 3 Fate/Grand order -a little master- 作:からすまそういち
第七節 藤丸リツカ
「やめろ! 無茶だ!」
私は黒円の中に飛び込んだ。
黒々とした海に、私は飛び込んだのだ。
その海の中を泳いでいく。
視界は暗いが前にはちゃんと彼が見える。ゆっくりと沈み込んでいくもう一人の一寸法師。悪童・スクナヒコナ。
彼は驚きの表情を浮かべる。
「な、何をしている! お前も死にますよ!」
彼の身体の半分はもう溶けてなくなっていた。
左半身が、粉が水に溶けるようにさらさらと分解されて消えていく。
私は手を伸ばした。
私の手もまた、分解が始まっている。既に小指の第二関節まではなくなっていた。
「一寸、掴まって!」
「掴まって、何になると。お前も私も沈みゆく身。意味などないのです。それに私のようなものなど放っておけば、」
「分っかんないやつだな――」
私は泳いで彼の目の前まで行き、彼の胸倉を掴んだ。
「⁉」
「目の前で死なれると迷惑なんだ。もうこれ以上――誰の死も背負いたくない!」
そうだ、これは私の私情。私の身勝手な感情だ。
これ以上、何も失いたくない。失うところを見たくない。
後で泣くのは懲り懲りだ――
「は、それで、どうなるというのです。私と心中するつもりですか」
こうしている間にも私達は海の深淵に沈んでいく。
私が一寸の手を握ったところでそれは変わりない。
二人して落ちていくだけだ。
でも、
「大丈夫。マシュが来てくれる」
私は本当に、身勝手なマスターだ。
一人では何もできない。サーヴァントが傍にいないと魔術師と名乗るのも恥ずかしい、半端者だ。
それでも――
「私には、これしかできないから」
自分を助けてくれる
だから私は待ち続けるんだ。
自分が無茶しても、誰かが救ってくれるから。
だからこそ私は前に進むことができる。
ただ、がむしゃらに。
無謀と言われても構わない。
だって、「それ」ができるのが私なのだから――
「
「いえ、主人公は私達です。先輩」
マシュは私の手を握りしめた。
「マシュ!」
「もう、先輩は無茶し過ぎです」
「でも、こうして来てくれた」
「先輩は私のマスターですから」
その時、地上から海に向かって逆さまに城が建築されていった。
その天守閣にはライダーが腕を組んで踏ん反り返っている。
「はっはっは! 中々無茶なことをするのう! 小娘が! 気に入った!」
「秀吉さん! 引き上げてください!」
「応よ!」
ライダーはマシュの手を取ると城の建築の逆再生を始め、海から彼らを引き上げた。
ざばぁ、と。
私達は地上に放り出される。
「全く、無謀甚だしい! 儂がいなければどうなっていたことか! 城を溶かしてまで助けてやったのだ! 有難く思うがよい!」
がっはっはとライダーは笑う。
「ありがとう、ライダー。皆」
本当に、助けに来てくれた。
私にマスターとしての才能があるとするならば、これだ。
皆に支えてもらう力。
誰よりも弱い代わりに、誰よりも強い仲間がいる。
それが、私だ。
「どうして、どうしてこのようなことを。するのですか」
悪童は問う。
私は体の殆どが分解されかかっていた。それでも、私は笑ってみせる。
「放っておけなかったから」
ただ、それだけだ。
ただ、それだけの力が臆病な私を奮い立たせてくれる。