浅倉が増えて、樋口のストレスは加速した。   作:バナハロ

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今回も「俺何書いてるんだろ」感がすごかった。しばらく構想練っておこうかな。


約束とフラグは紙一重。
ペットは身勝手なものであり、それを許すほど人としての器は広がる。


 色々あった高校最初の二学期も、残り僅かとなった。と言っても、まだ一ヶ月あるが。

 体育祭も終わり、残りのイベントは期末試験のみ。11月下旬で「まだ秋」と言い切れる時期だが、肌寒さは「もう冬」である。

 そんな冬にも近い季節。従って、そろそろコタツが欲しいとか考えていた反面、もう少し後に出さないと電気代が終わるとも思っていた菅谷は、休日は気晴らしに表に出るのが日課になっていた。

 と言うのも、なんだかんだ動いていれば身体は温まるのだ。単純な身体の作りをしている。あとこの季節にしか見られない虫とかもいるし、何一つ問題はない。

 そう思って、今日も玄関を出た時だった。ちょうど良いタイミングで、お隣も出てきた。ランニングウェアに身を包んでいる上、大好物が一緒だ。

 

「あ、カトちゃん! あと、有栖川さん、こんにちは」

「ついで?」

「ワン!」

 

 菅谷を見るなり、カトレアは駆け寄ってきて、爛々とした瞳を向けてくる。菅谷もそれに対し、しゃがんで頭と顎を撫でながら抱き締めた。

 

「おー、よしよし。お前もう朝飯食った? 何、ドッグフード? あれ不味いよね。俺、前に食べた時吐いたし」

「あなた何してるのよ……ていうか、動物相手に普通の高校生みたいな会話してどうするの」

「何言ってるんですか。動物が相手だろうと、幽霊が相手だろうと、自然体で対応しないと意味ないでしょう」

「待って。あなた幽霊と会話したの? やめて。そんな霊感強い人と隣にいて……」

「いや幽霊と話したのは、とおるんとマドちゃんですけど」

「どっちにしろ怖いわよ!」

 

 実を言うと菅谷も話したどころか成仏させていたのだが、それに本人は気付いていなかった。

 

「明里も走りに行くの?」

「はい。コタツ出すか悩んでたんですけど、電気代を考えると表に出て暖まった方が良いかなって」

「偉いわね。一緒に行く?」

「え……有栖川さんと、ですか……?」

「今ならカトレアも一緒だけど?」

「行きます」

 

 秒殺だった。お前それで良いの? と思われるまである。

 エレベーターに乗り込み、そのまま一階へ。その間、アキレス腱を伸ばしたり、膝や足首の準備を整える。

 一番下に到着し、エレベーターを出た。

 

「よし、じゃあ行くわよ」

「どれくらい走ります?」

「軽く10キロくらい。行ける?」

「カトちゃんが一緒なので」

「……」

 

 これで本当に行けるのだからタチが悪い。一人の時はそこまで走る体力は無いが、犬と一緒だと走りきれるのはわけがわからない。

 早速、二人と一匹でジョギングを始めた。

 

 ×××

 

 大分、汗をかいたわけだが、本当にカトレアと一緒なら走り切ってしまった。

 マンションの前に到着し、軽く伸びをした。

 

「ん〜……走った。つい、12キロくらいやっちゃったわ」

「カトちゃんも調子良さそうでしたからね」

「わふっ!」

「……」

 

 息を荒くしながら、カトレアは菅谷を見上げている。それを見て、思わず菅谷はウズウズして来てしまった。

 

「……あ、あの……有栖川さん……」

「何?」

「最後にもっかい、もふもふしても良いですか……?」

「良いけど……もう飼ったら? 犬でも猫でも」

「嫌です。動物は自然の中にいるのが一番だと思うので」

「いや、頬擦りしながら言われても説得力ないわよ」

 

 わしゃわしゃと撫でまわしているその姿は、もうブリーダーにしか見えない。カトレア自身も撫でられて気持ちが良いのか、ペロペロと菅谷の頬を舐め返す。

 

「あ、別にペットを飼っている人を否定してるわけじゃないですからね。カトちゃんとか見てると、人と一緒でもやっぱ幸せそうだなって思いますし、俺の知り合いにもクワガタのブリーダーいますし」

「なら尚更、飼えば良いじゃない」

「学校へ行く時『行かないで』と足を甘噛みされた時、抵抗できる自信がありません」

「……そんなに好きなの」

 

 実際、また最近は少し考えが変わってきていて、里親募集とかあったらむしろ引き取ってあげた方が良い気もする。保健所に預けていては、いずれ殺されてしまうのだ。ならば、自然の中にいられなくとも命を繋いだ方が良い気もする。

 だが、それで自分のことがダメになっては本末転倒も良いとこである。

 

「カトちゃん、よしよしよしよし」

「……」

 

 いや、でもやっぱりそんなにモシャモシャと撫でくりまわすなら、やっぱり飼えよ、と思わないでも無かった。

 ……というやり取りを、アポ無しで遊びに来ていた透は、物陰からジッと眺めていた。

 

 ×××

 

「ふぅ〜……少し張り切り過ぎたな……」

 

 足が痛くなるまで走ってしまった。冬が近いとは思えないほど汗をかいてしまった後で、今はシャワーを浴びている。

 ……いや、割とマジで走り過ぎた。明日は筋肉痛かも……と思ってはいるものの、動物と久しぶりにゼロ距離で触れ合えて、満足はしているのだが。

 あのモフモフの毛だるまの中に顔を埋められる機会なんてそうそうないので、もうホクホクだ……なんて思いながら、シャワーを浴び終えてバスルームを後にした。

 すると、そのタイミングで呼び出し音が鳴り響く。

 

「はーい……あ、とおるんとマドちゃん」

『開けてー』

「はいはい」

 

 遊びに来たのかな? と、すぐに察して扉を開ける。その間に着替えだけ済ませると、すぐに扉の前のインターホンが鳴り響いた。

 

「はーい」

 

 鍵を開けると、扉が開かれた。そこにいた透と円香は……。

 

「わん」

「……に、にゃあ……」

 

 何故か、犬耳と猫耳をつけていた。

 

「……何してんの?」

「わん」

「……なう」

「いや、分からんから」

 

 いや、本当に何しているのか。可愛いのが少し困るが、多分、今「可愛い」とか言うと、円香に引っ掻かれる。

 

「リカ、犬と抱き合ってたから」

「……なんで私まで……」

 

 どうやら、さっきのカトレアとの一幕を見られていたらしい。

 

「え……俺の犬になりたいの?」

「わん」

「わん、じゃないでしょ。言い方」

「マドちゃんは猫?」

「……別に、私は猫になりたいわけじゃないし」

 

 見た感じ、ほぼ透が無理矢理、自分のノリに乗せさせたのだろう。流石にハロウィンが終わった後に猫の仮装は恥ずかしいのか、円香は頬を赤らめて目を逸らしている。……いや、なんならやりたくないのかもしれない。

 

「じゃあ、とおるん。おいでー」

 

 そんなわけで、透にだけ構ってあげることにした。今、円香も一緒に呼んでしまうと、多分恥ずかしさでオーバーヒートする。

 

「わん」

 

 返事をしながら、透は靴を脱いで自分の方に歩いて来る。とりあえず……カトレアと同じことをすれば良いのだろうか? 

 透の事を正面からハグし、頭と顎を撫で回す。

 

「よーしよしよしよし」

「わん」

「よしよ……あ、耳取れた」

「えっ。痛い」

「痛いで済んじゃうの?」

「つけて」

「……脱着可能なの怖いんだけど」

「うるさい。良いから構って。犬は寂しいと死んじゃうんだよ」

「それ兎じゃね?」

 

 もう既にグダグダになりつつある中、菅谷と透は部屋の中に入り、円香も猫耳をとって奥へ進んだ。

 犬耳を付け直した透は、ソファーの横に来るなり、菅谷に飛びかかった。

 

「わん」

「うおっ……と」

 

 そのままソファーの上に押し倒す。仰向けになる菅谷の上に、透は四つん這いになった。

 

「と、とおるん……どしたの?」

「わん」

「え……まさか、これも犬ごっこの延長?」

「わん」

「あ、あの……流石に少し恥ずかしいんだけど……」

「わふっ」

 

 透は強引に、菅谷の胸の上に顎を置いた。あまりの顔の近さと、犬耳の可愛さに菅谷は頬を赤らめる。今にしても思えば、透は確かに犬っぽい。分かりにくいだけで感情を隠しているわけではないし、いつでも素直にしている。

 こうして耳を作り物とはいえ具現化されると、胸の奥に来るものがある……いや、それどころかブンブンと左右に揺れる尻尾さえ見えて来るような……。

 ……いや、透だと思うから恥ずかしくなってくるのだ。これは透にそっくりな犬……よく聞く「ケモミミ娘」という奴だと思えば良い。

 つまり、犬、犬……よし。

 

「よーしよしよし、とおるん。良い子。今日のお昼何食べたー?」

「わん」

「まだ食べてないの? 俺もだわ。これから何か作ろうかと思ってたんだ。一緒に食べる?」

「わんわん」

「よっしゃ。何食べたい? やっぱドッグフード?」

「グルルルッ……」

「あ、そこは犬じゃないのね。よしよし」

 

 言いながら、頭、喉、背中、頬を撫でくりまわす。透は透で、恥ずかしさ以上に心地良さが優っているのか、目を閉じたままそれはもう甘え切っている。

 ……なんかほんとに犬に見えてきた。さっきまで女の子として可愛く見えていた視線が、徐々に犬に対する視線に変わっていく。

 

「とおるーん、もふもふして良い?」

「わん! ……わん?」

「んー……」

「ひゃうっ⁉︎」

 

 菅谷が、透の肩と首の間に顔を埋め始めた。

 

「とおるん……もふもふ」

「ちょっ、り、リカ……! そこ、肩……」

「とおるん、今犬でしょ。口答えしない」

「えっ……ちょっ、さすがに恥ずかしいと言うか……そ、そこまでなりきらなくても良くない?」

「とおるん。ワンワンでしょ」

「え、いや……あの……」

「……」

「……わ、わん……」

「よしよし」

 

 先に犬から人に戻った透が、頬を赤くしながら菅谷の胸の上で顔を隠すしかなかった。

 

 ×××

 

 円香はリビングに入る前、トイレに入ってから来た。直後、扉のガラスの部分から二人の様子を眺める。声までは届いて来ないが、見た限りだとかなりレベル高いことしている。

 幸せそうな顔で身体を撫でてもらう透と、背もたれで顔は見えないが、わしゃわしゃと両手を動かす菅谷。

 ……いや、別に全然、羨ましくなんかない。アレを羨ましいと感じてしまったらおしまいな気がする。だから、全然ウズウズなんかしていない。

 透がどんなに満たされた顔をしていようが、全くもって羨ましくなんか……。

 

「……っ」

 

 菅谷が透の首と肩に顔を埋め始めた。アレは……何をしているのか? まさか、自分を抜きにしてえっちなことを……? 

 そんなの許されない。や、別に羨ましくなんかないけど、ちょっとズルいだけ。

 そうと決めたら、すぐに部屋の中に入った。

 

「え、いや……あの……」

「……」

「……わ、わん……」

「よしよし」

 

 透を全力で愛で続ける菅谷の枕元にそそくさと移動する。自分が入って来たのに、気付かない菅谷に苛立ちつつ、でも少しだけエッチなことをしているわけでもなさそうでホッとしつつ、なんやかんやで背後に回る。

 ……直前になって、少し恥ずかしくなり、顔がほんのりと赤く染まる。それでも、控えめに手を伸ばして、菅谷の背中を摘むように握り、引っ張った。

 

「? マドちゃん?」

「あ、ひ、樋口……」

「…………に、にゃー……」

 

 悲しいかな、結局の所、透の犬っぽさより、円香の猫っぽさの方が大きく優ってしまっていた。

 お陰で、菅谷はさらにスイッチが深く入る。

 

「ひ、樋口……? どうしたの?」

「マドちゃんも、おいで」

「……何処に?」

「とおるんと一緒に、膝の上」

「…………にゃう」

「樋口……」

 

 だめだった。ソファーの上に寝転がる菅谷の上に、二人のJKが強引に乗っかった。

 

「マドちゃーん」

「……なーう」

「良い子」

 

 左手で円香、右手で透の頭を撫でる菅谷だったが、円香には透がフニャッと力が抜ける理由がよく分かってしまった。この男、撫でるのが上手すぎる。気持ち良いとかそんな次元ではなく、抜群の撫で加減でこちらの身体の芯、全てを腑抜けにされてしまいそうなほどのテクニックを叩き込まれていた。

 

「ふぁ……」

「はふん……」

「めっちゃ気持ちよさそう。ウケる」

 

 二人揃って為すがままにされていた。しかし、まぁ当たり前の事ではあるが、こういう特殊な空気というのは長くは保たないわけであって。

 5分後、三人一緒に正気に戻った。それはもう、三人とも羞恥からしばらく黙り込むしかなかった。

 

 ×××

 

「で、二人とも今日はどうしたの?」

 

 何事もなかったかのように三人で飯を作って食べ始めている席で、菅谷がふと気になったように二人に聞いた。

 何しに来たのか、と問われれば遊びに来たのだろうが、まさかペットになりに来たわけでもないだろう。

 

「あ、そうそう。冬休みの予定、決めたくて」

「冬休みかぁ……」

「そう。夏休みはざっくりでも予定決めたり楽しかったし、それに倣おうって浅倉が」

「え、とおるんが? 熱でもあんの?」

「喧嘩売ってる?」

 

 そうは言うが、浅倉が予定を立てる事自体がレアなのだから仕方ない。

 たった二週間ちょいの休みでも、普通の休みに比べたら長いのだから、いまのうちに計画を立てるのは賛成ではあるが。

 

「てか、冬休みいつから?」

「24でしょ」

「わお、イブじゃん」

「二人とも、福丸とか市川との予定はないの?」

「あるの?」

「二人はそろそろ受験も本格化してる頃でしょ。遊びたくても遊べない」

「あーなるほどね」

 

 つまり、三人で遊ぶにはもってこいというわけだ。

 

「何処いこっか?」

「てか、イヴにする? 当日にする?」

「両方でしょ」

「一泊二日? ……は、金銭的に無理か。うち泊まる?」

「リカの部屋、マンションだから騒げないでしょ。やるなら、私か浅倉の家、どちらかのが良いと思う」

「じゃあ、今回は私の部屋にしよっか」

「良いの?」

「うん。前に美術の課題やってた時、樋口の部屋汚しちゃったからね」

 

 これまた珍しい気遣いをするものだ。透にも何か目的がありそうなものだ。

 

「リカも、うちに泊まって行って良いよ」

「え、ま、マジ?」

「大丈夫、私の部屋のベッド、雛菜と小糸ちゃんと樋口と私が入れるくらい広いから」

「え、同じベッドで寝る気?」

「……ていうか、それ中二の時の話でしょ」

「平気でしょ。多分」

「プレゼント、全員で枕元に置くようにしよう」

 

 それがやりたかったのね、なんてすぐに思惑を理解した。円香も菅谷も小さく笑みを漏らす。円香の部屋のベッドよりは大きいのだろう。

 プレゼント、の言葉を聞いて、菅谷は顎に手を当てる。

 

「はいはい。……何にしようかなぁ、プレゼント。何か欲しいものある?」

「お任せ」

「じゃあ、とおるんにはクワガタの模型あげる」

「いやお任せというか、そういうのは当日に開けるから盛り上がるんでしょ」

「あ、そっか」

 

 なるほど、と菅谷は理解する。そういうことなら仕方ない。

 

「まぁ、その日はプレゼント交換やるとして……他に何しよっか?」

「ていうか、クリスマス当日も遊ぶんでしょ?」

「そっか。むしろ、24日の夜に集まって泊まって、次の日朝から遊べば良いんだ」

「良いね、それ」

「じゃ、決まり」

 

 思いのほか、スイスイと話が決まっていく。全員、食事を終えると、食器を片付け始めた。

 その後、食後のコーヒーを淹れ、ホッと一息吐く。

 

「ま、クリスマス当日は三人でイルミネーションでも見にいこっか。飽きたらボウリングでもすれば良いし」

「私もそれで良い」

「私もー」

「じゃ、決まりだね」

 

 楽しみになって来た。正直、菅谷は冬休みを憂鬱に思っていたのだが。まぁでも、楽しみなんて作ろうと思えば作れるのだし、ネガティブな思考は消すことにした。

 そんな中、透がふと思ったように聞いてきた。

 

「そうだ、リカ。お正月は?」

「あーごめん。正月は無理。実家戻る」

「あー……そっか」

 

 そういえば、そういうの厳しい家だった。いや、高校生ならむしろ当たり前かもしれない。

 

「……ま、顔見せられる時に見せといた方が良いでしょ」

「マドちゃんととおるんも一緒に来る?」

「遠慮しとく」

「面談とかされそうだもんね」

「え? 誰に?」

「「お義父さんに」」

「???」

 

 一人何もわかっていないバカだったが、円香も透も何も言わない。多分、父親が親バカとか知りたくないだろうから。

 

「いつ帰ってくるの?」

「三日の夜くらい」

「じゃ、その日以降だね。リカと初詣行くのは」

「え、いってくれるの?」

「当たり前でしょ」

「来年も三人一緒にいられますようにってお願いしないと」

「……ありがと」

「まぁ、でもそれならそれで私と樋口は雛菜と小糸ちゃんとお参り行くと思うけどね」

「合格祈願で」

「……」

 

 じゃあやっぱ初じゃないじゃん、なんて思ってしまったが、まぁ2回目なのに一緒に行ってくれると感動しておいた方が良い。

 

「じゃ、俺も地元の神社探して行ってみよ」

「良いじゃん。……てか、リカは地元の方が詳しくないんだもんね」

「割と田舎なんだっけ?」

「うん、夏休みに何回か見て回っ……てないや。てかあんまゆっくりする余裕もないかも……」

「……」

 

 正月なのに忙しないのだ。お金持ちの家というのは。

 

「でも……二人の振袖、見たかったなぁ……」

「なんでたかだか高一の正月で振袖なんて着るの」

「持ってないよ、私も樋口も」

「あれ、そうなの? なんだ」

 

 それは少しショックだったのか、それとも少しだけほっとしたのか。まぁ、どの道見れなかったのなら、損はしていないのだろう。

 

「ま、じゃあ予定はそんなもんだね」

「うん。……あ、何かしたいことある人とかいる? タコとか独楽とか」

「小学校の社会の授業じゃないから」

「俺、餅つきで父ちゃんの手をついちゃって以来、お正月のイベント苦手なんだよね」

「え……それ平気だったの?」

「一番、予測されやすくて起こっちゃいけない事故じゃん」

「俺の父ちゃんだよ? 咄嗟に握り拳作って杵の方が砕けた」

「何それ……」

「怖い……」

 

 人間じゃない、なんて思ってしまったが、菅谷もそう思ってる。自分はそこまで鍛えられなくて助かった。

 まぁ、何にしても予定は決まったし、とりあえず今日の予定を決めたい。

 

「よし、じゃあ今日はこれからどうしよっ……か?」

 

 と、言い出した菅谷の頭に、ちょこんと乗せられた犬耳。乗せたのは透だ。

 

「……え、何これ?」

「決まってんじゃん。犬耳」

「……な、なんで?」

「私達にだけペットやらせて、自分だけ飼い主はずるいでしょ」

「……確かに」

 

 円香にまで頷かれ、菅谷はたらりと冷や汗をかく。

 

「リカも十分、わんこタイプだし、犬耳で良いよね?」

「は? 何言ってんの? 両方やらせるに決まってんじゃん」

「いや……ていうか、勝手にペットになったのは二人の方じゃ……」

「「は?」」

「あ、いえ……なんでもないです……」

 

 ほとんど恐喝だったが、もう仕方ない。それに……その、何。菅谷も別に触られるのは嫌じゃないというかなんというか……。

 そうこうしているうちに、向かい側に座っていた円香が、菅谷の隣に椅子を置く。二人で挟み込むように座った。

 

「はい、リカちゃーん。良い子でちゅねー(棒読み)」

「よしよしよしよし」

「……あ、あの……なんで挟むの……?」

「は? 何喋ってんの?」

「わん、でしょ?」

「……わん」

「はい、よちよち」

「良い子ー。お手」

「……」

 

 菅谷はこの日、決めた。何が起こっても絶対に二人とペットごっこはしない。そして、迷った。その為なら、マジでペット飼おうかな、と。

 

 

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