夏休みの予定を決めるために、明里は撮影前の現場でスマホをいじっていた。やはり……海だろうか? しかし、毎年行っているし、たまにはこう……別の場所にも行ってみたい。
自分は両親と夏休み、どこに行っていただろうか? 確か、割と自分が行きたい所に連れて行ってくれた。小笠原諸島、鳥取砂丘、知床、イースター島……なんか、どれもあんまり参考にならない気がする。
そんな中、ようやく一緒に共演する人が来た。全身を怪人の格好をして来た男の人だ。
「よーし、明里くん。やるよー」
「あ、はーい」
返事をしながら、明里は横に置いといた仮面を被った。……仮面ライダーの。
実を言うと、首から下も仮面ライダーだ。仮面ライダージュウド、という柔道をモチーフにしたゴリゴリのインファイトスタイルのライダーである。
「よろしくお願いしま〜す、明里せんぱ〜い」
それと、明里の妹役、市川雛菜も。
「よろしく、雛菜」
「は〜い」
まさかのキャスティングだった。
さて、では早速、撮影開始。早速、ライダーと怪人の戦闘シーンから。殺陣に関しては割と練習して来たので、現地での撮影でも問題無さそうではある。
地面に尻餅をついて座り込む雛菜。そして、その前に立ち塞がるライダーと、対峙する怪人。
ライダーは構えることなく片手だけ腰に当てて、怪人を睨む。
夏休みのことで悩んでいたが、今は仕事中。切り替えなければ。役になりきれ、今の自分は仮面ライダージュウド。
妹とキャンプに来て、怪人に襲われる。人間のままでも強い主人公は、柔道技を駆使して雑魚怪人をフルボッコにするが、卑怯な罠にハマり、ボス怪人にやられ、致命傷を負う。
その過程で、キャンプ場の立ち入り禁止エリアにある祠に落ちて帯にそっくりのベルトを拾う。
主人公を殺した、と勘違いしたボスは妹を殺しに行き、絶体絶命。そこに、ベルトによって覚醒した主人公が登場。そのまま怪人を倒し、妹に正体を明かさないまま、またキャンプを続けようと……ん? キャンプ?
それ、良いかも。川沿いの。水遊び、釣り、肝試し、虫取り……は円香がいるから無理として……あとは、あれだ。
「……バーベキューとか良いかも。焚き火して肉を焼くんだ」
皮肉にも、たまたま口から漏れてしまったこの言葉が「殺気高い主人公の遠回しな戦闘前のセリフ」とアドリブを取ったと捉えられ、オンエアでそのまま使われたのは、また別の話である。
×××
休憩中。流石に真夏にライダーの衣装は暑く、明里は一度、それらを脱いで短パンにタンクトップ姿で木陰に項垂れる。
疲れた……まぁ、でもこのくらいまだまだ。怪人役の人の方が大変だろうし、若い自分が根を上げるわけにはいかない。この辺は根性だ。
そんな明里の頬に、ピタッと当てられる冷たい棒状のもの。
「ひゃわっ⁉︎」
「やは〜♡ 可愛い悲鳴〜」
「ひ……雛菜か」
「差し入れもらってきたよ〜?」
渡されたのはスポーツドリンクだった。ありがたく受け取る。
「ありがと」
「ねぇ、さっきの何〜?」
「? さっきの?」
「ほら、バーベキューがどうのーとか言ってた奴〜」
「あ、ああ。あれ」
聞かれてたか、とまぁまぁデカい独り言だったことを忘れていた明里は思います。
「いや、マドちゃんととおるんと何処行こうかなって。夏休みだし。で、ちょうどここキャンプ場だから、キャンプ良いかもって思って」
「あは〜〜〜楽しそ〜〜〜♡」
「でしょ?」
「雛菜も行きたい〜」
「良いね……あーでも、一応マドちゃんととおるんに聞いてみないとかな」
「ちぇー」
少し不満げな顔をしつつも、雛菜は反論する様子を見せない。まぁ、それなりに長い付き合いではあるし、なんなら許可なんて必要ない気もするが……なんか最近二人ともやたらと自分を見てきている気がして仕方なかった。
特に、風呂上がりと寝起き。あと休みの日は透は自分の布団の中に毎回、潜り込んできているし、円香も薄い部屋着を着ている時に限って、一緒にソファーに座っていると肩に頭を乗せるどころか、膝に乗せてくるし、ちょっと色々困っている。
なので、少し慎重になっておきたい、というのもあった。
「とりあえず、聞いてみるよ」
「ありがと〜」
「でも、行くならどこのキャンプ場が良いかな……」
「どこのって〜? ここじゃないの〜?」
「や、せっかくだし良いとこが良いかなって。父ちゃんに聞けば分かるかな、そういうの……」
「じゃあ〜……富士山の麓とかは〜?」
「あー……面白いかも」
あの辺は割と景色の良いキャンプ場が多かった気がする。まぁ、今は撮影中なので調べたりしないが、ちょっと考えてみても良いかもしれない。
「ありがとう。ググってみる」
それだけ話していると、監督の呼び出しで二人とも再び撮影に戻った。
この後は、キャンプ場で兄妹で夜を過ごすシーンもあるので、今日の仕事は泊まり。その為、とりあえず隙がある時に調べるしかない。
×××
「と、いうわけなんだけど……雛菜と小糸ちゃん連れてキャンプとかどう?」
翌日の夜、帰りが遅かった明里だけ食事をしていて、同じ席に座っていた円香は聞かれて、額に手を当てて目を逸らした。自分達の計画は、早くも御破算になりそうだ。
その隣で、呑気な顔をした透は真顔のまま答えた。
「良いんじゃない?」
「ちょっと、透……」
なんで平気で許可を出すの……と、ジロリと睨み付けると、透は一瞬だけ円香を見てウインクしたあとすぐに明里に言った。
「でも、それだとテント足りないよね。いくつ持っていく?」
「あー……そっか。一応、外だし俺と二人ずつので三つ?」
なるほど、と円香はすぐに理解する。確かに、それならアリだ。というか、むしろそれしかない感じある。
寝る時、二人で明里のテントに行けば……いや、でも相当恥ずかしい。外に声が漏れないとも限らないし、鍵付きのテントにしたとしても「外」という特殊な感じは拭えない。
「……」
……いや、それはそれでアリなのかも……なんて迷っている間に、明里が結論を求めるように聞いてきた。
「じゃあ、雛菜と小糸も誘っちゃって良い?」
「おっけー」
「え? あ、ちょっ……」
「じゃあ、俺はキャンプ場探すね」
結局、キャンプになってしまった。嫌なわけではないが……いや、まぁ良いかと思うことにした。
そのまま明里はとりあえず円香が作った麻婆豆腐を食べ続ける。
「じゃ、とりあえず明日はテント、買いに行かないといけないね」
泊まりの仕事だったこともあって、明日は休み。流石にキャンプグッズは持ってきてきなかった為、必要なものは買ってこないといけない。
「明日行くの?」
「休みじゃん」
円香だけでなく、珍しく透も心配そうに声をかける。
仮面ライダーの撮影や打ち合わせや練習やらが結構、続いている為、明里はしばらく忙しくなる。
その上、キャンプグッズを買うとなると車での移動が必須だ。
しかし、明里は首を横に振った。
「大丈夫だよ。俺、体力だけはあるから」
「じゃあ、後でマッサージしたげる」
「あと、運転私するから」
「ありがとー。ご馳走様。美味しかったよ、マドちゃん」
「……ん」
食べ終えた明里は直球で褒めてくれて、円香は少し頬を赤らめて目を閉じる。ほんと、こういうところ欠かさないの、作り甲斐がある。
「食器、私片付けるからリカはマッサージしてもらってて」
「え、なんかごめんね?」
「別にいい」
「じゃ、リカー。ソファーで足伸ばして」
円香が明里の食器を持って台所に戻り、使われたレンゲをちょっとだけ舐めてる間に、透は明里とソファーに座った。
「リカー、どこ疲れてるー?」
「うーん……脹脛?」
「はいはーい。じゃあ、うつ伏せになってー」
「え、食べたばかりだからそれはちょっと」
「あー……じゃあ、まず肩からで」
「はいはい」
ソファーの背もたれと明里の間に透は入り込み、両手を肩に当てて揉み始める。
「どうー?」
「もっと強くても良いかなって」
「アイアンクローくらい?」
「アリアンロッド? よく分かんないけどそれで」
「はいはい。……よっ、と」
「あだだだだ! 肩取れる、取れちゃう!」
「え、肩取れるの? あ、脱臼的な?」
「いや知らんけど……も、もう少し優しく!」
「はいはい、優しく」
「ひゃふぅぅん……や、優し過ぎぃ……くすぐったいよ……!」
「ふふ、何今の声。かわいい。こんな感じ?」
「ひゃんっ……ら、らめらってば……!」
少しずつなんかマッサージではなくなっていく。肩やら脇の下やら首筋辺りに、触れているか触れていないかギリギリの強度で揉まれていく……つまり。
「ひゃっはっはっはっ! し、死んじゃう、死んじゃうっひゃっひゃっひゃっ!」
「痒い所はございますかー?」
「なんで美容院になってんのっはっはっはっはっはっ!」
「……何してるの」
洗い物を終えた円香が二人の元に訪れる。いつの間に明里の背中の上に馬乗りになっていた透にくすぐられている明里を見て、円香は引き気味な声を漏らす。
「マッサージ」
「マッサージって笑いが漏れるものだっけ?」
「ま、マドひゃんっ! はふっ……たふけて……!」
「……」
マドひゃん、が良くなかった。どちらかというとMの円香の中にあった僅かな嗜虐心をくすぐり……そして。
「透、押さえておいて。リカ、足疲れてない?」
「ちゅっ、ちゅかれてるけど……まず退けて……!」
「じゃ、やってあげる」
「話聞……わひゃひゃひゃひゃ! あ、足の裏はらめ! らめらから……!」
労いなど忘れて、虐められていた。
そのまましばらく虐められた後、ようやく解放される。力を入れるわけにもいかなかったのか、明里は本当にされるがままだった。
ひぃ、ひぃ……と、真っ赤な顔のまま肩で息をする明里に、やり過ぎたと思った円香と透は少し恐る恐る声をかける。
「あー……大丈夫?」
「ごめん、やり過ぎた」
「……大丈夫なわけ、あるか……」
虫の息のまま、ボソボソと答えた。
さて、流石にこのまま放置するわけにはいかない。マッサージをすると言ってくすぐりで終えたら、性格悪いにも程がある。まぁ、マッサージをすると言い出したのは透なわけだが。
「透、そろそろ普通にマッサージしてあげて」
「えー、疲れた。手」
「は? くすぐったからでしょ。勝手に」
「いや……もう二人ともいいから触らないで……」
かすれかすれな声で聞こえてきたそれに、思わず円香も透も少しだけ傷ついた。自業自得とは言え「触らないで」と言われるとは……。
これは弁解の必要があると思い、透はコホンとわざとらしく咳払いをして言った。
「ごめんごめん、ちゃんとやるから」
「……ほんとに?」
「ほんと」
仕方なさそうに透に脹脛をマッサージしてもらい始めた。
足を手のひらで圧迫するように押しながら、透が聞いた。
「で、昨日今日はどうだった?」
「楽しかったよ。着ぐるみ相手に柔道技かけられるか分からなかったけど、意外と余裕だった」
「今時珍しいよね。なんか最近のは武器とかアタッチメントとかウエポンとか持って当たり前だし」
「透、それ全部一緒」
なんだか仮面ライダーというよりはアメコミのヒーローのようだ。
「ていうか、着ぐるみ投げて中の人は平気なの?」
「今日に備えて、畳とかの上で練習してたからね。俺も受け身が取れるように速度を落としてたし、怪我はしてなかったよ」
「へぇ……そもそも、リカがライダーの中の人もしてるんだ」
「最近の仕事はスタントの練習も入ってたし。俺今、バク転もバク宙も出来るよ」
「見たい」
「ちょっと。今はリカ休息中だから。休ませて」
円香が止めると、そのままマッサージを続けてもらった。
×××
翌日、円香の運転で三人は出掛けた。小糸と雛菜の許可ももらい、必要な器具は三人が揃えることになった。
と、いうのも、テントは一つ両親から送られてくる、ということなので、そのテントは小糸と雛菜に貸すことにして、残りは自分たちで使う二つを買うからだ。
あとは寝袋と、バーベキューもするから携帯用のセットは決まっている。
「あと、どうしよっか?」
「一応、川で遊んだり釣りとか肝試しとかしたいなーって思ってたよ、俺」
「じゃあ……浮き輪とかボートとか水鉄砲?」
「全部、川関係でしょそれ。それだけやるのも良いけど、車に乗るくらいの量にして」
「あー、そっか」
円香からのツッコミを聞いて、二人とも顎に手を当てる。車は五人乗り。何一つ成長していない小糸がいるから、後ろの席に三人は座れるだろうが、トランクが狭い。各々の荷物があると思うと、もっと乗らなくなるだろう。
……ぶっちゃけ、テント三つも乗れるか不安なまである。
「……父ちゃんからリムジン借りようかなぁ」
「良いんじゃない?」
「良いわけないでしょ」
透の賛成を速攻で抑えた円香が言う。運転するのはおそらく明里なのだろうが、汚した時の事はちょっと考えたくない。特に、キャンプ場なんて汚して当然の場所だ。
そんな中、透が提案した。
「レンタカーは?」
「あー……まぁ、ありっちゃありかな?」
七人乗りのワゴン車を借りて、後ろの席も荷物置き場に使えば良い。お金は掛かるけど……まぁ仕方ないだろう。必要経費だ。
「レンタカーにしよっか」
円香も賛同し、これで荷物の制限は緩和された。
「でも、ボートと浮き輪はどっちかじゃない?」
「うん。水鉄砲も小さいの五つね。アサルトライフルの形とか駄目」
「釣竿は……やめとこうか」
「そうだね」
と、サクサク計画は進んでいく。それとほぼ同時に、キャンプグッズが売っているお店に到着した。
「着いた」
「よし、降りよう」
「俺のテントは小さめで良いよね。一人だし」
「「ダメ」」
「え、な、なんで……?」
二人には二人の計画があるからだが、まぁ詳しくは言わずにお店に入った。あまりキャンプ用具のお店など行ったことはない三人だが、なんかこう……木製の作りになっているのがキャンプ感あって少し楽しかった。
「おお……広い」
「ね。なんか木の匂いするし」
「え、気の匂い? 悟空?」
「え、悟空って木の匂いするの?」
「え?」
「え?」
二人を無視した円香がサクサクと中を見に行ったので、二人とも後に続く。こうして見ると、テントにも様々な種類があるようだ。まぁ、一人用というつもりはないが、可能な限りコンパクトなものにしなければならないのだが。
「鍵付きが良いよね」
「うん」
「? 大丈夫だよ? 貴重品盗みに来るやつがいても、俺起きれるし」
「「鍵付きにするから」」
「ま、まぁ……刃物とか持ってたら危ないもんね……?」
そうじゃないが、テント選びは慎重になった。あと、布地が薄いのもダメだ。中が見えるかもしれない。
なんて真剣に選んでいる中、透が「あっ」と声を漏らす。
「見てこれ、なんか部族みたい」
そう言いながら指差した先にあるのは、三角形のテント。縦に長く、入り口が上にクルクルと巻かれるように開くタイプのテントだった。
「おおー……良いねこれ」
「革製?」
「いや、流石に布っぽいけど」
明里と円香も興味を持つ。流石にこれを買うということはないが、まぁこうして見てみるのも楽しみの一つだ。
「中、入っても良いって」
「マジか。見よっか」
「ん」
透が靴を脱ぎ、ビニールシートの上に上がった。そして、テントの中に入って寝転がる。
「おおー……良い旅部族気分」
「カルチャーショック?」
「リカと円香もおいでよ」
「はいはい」
円香のツッコミを無視して、三人で中に入ってみた。寝転がると、意外と狭い。形にこだわって性能自体はそうでもないのかもしれない。天井が高いのは良いが。
でも、狭さは割と悪くない。肌を寄せあってる感じが……こう、良い。
「……おお、なんか良いかも……」
「分かるわ。近いよね」
「……普通に暑苦しいけど?」
「マドちゃんは素直じゃないなぁ」
「いや、むしろ素直じゃん?」
「あんたら帰り走る?」
「「ごめんなさい」」
話しながら、そろそろ出た。まぁ、値段を見たらちょっと笑える金額ではなかったので買えないが。
「高さがあるのは良いかもね。あれなら椅子を中に置いても良さそう」
明里に言われて、透と円香は顔を見合わせて想像する。ただでさえ狭い空間に、椅子……。
「……いや、邪魔でしょ」
「寝れないし」
「そっかぁ……」
その通りといえばその通りなのかもしれないが……なんというか、二人の様子がいつもと違う気がする。
いや、まぁ割とドライな二人なので気の所為かもしれないが。少しだけ気になっていると、透が自分をじっと見ているのに気が付いた。その視線は、もう何度も実感している事だが、透き通るように綺麗で美しくて、何も考えていない空っぽの中身まで丸々、映しているようで。
それに少し頬を赤らめていると、透は明里の頬に手を当てて控えめに微笑んだ。
「ふふ……暑苦しくても、悪くないかも」
「ーっ……そ、そうかもね……」
「イチャつく暇はないから。ウインドウショッピングより自分達の用事を済ませてくれる?」
円香が後ろから言うと、二人ともとりあえず身体を起こした。
さて、テントから出た三人は改めて店内を見て回る。やはり、まずはテント。それは鍵付きのものがあったので、それにとりあえず決めておいた。
「これなら……うん。広過ぎず狭過ぎずだし」
「ね。ちょっとくらい激しくても平気そう」
「え、テントの中で枕投げでもする気なの二人とも?」
なんて話しながらも決め、続いてテーブルである。折りたたみ式のものじゃないと車に乗らないので、コンパクトなものを選ぶ。
「バーベキューする時、鉄板と網どっちにする?」
「普通に鉄板でしょ」
「焼きそばとか食べたい」
「だよね」
多分、朝食も鉄板で食べることになるだろうし、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
でも、それはそれでトランクのスペース取るだろうし、本当に大きめの車を用意しないといけない。
上手く運転できるかは心配だが……まぁ、なんとかなる。
さて、続いて携帯用の椅子。
「こんなに細く折りたためるんだ……」
「ね。でも五つでしょ」
「ていうか……やっぱこれ普通に全部、車に乗せるの無理じゃない?」
「キャンプ場でバーベキュー用品の貸し出しとか出来ないかな」
「俺、そこ探そうか?」
「「よろしく」」
さて、それなら鉄板など必要ないので、椅子も五つ入るだろう。……とはいえ、食材とかも入れるので、結局はぎゅうぎゅうになりそうだが。
と、こんな具合に必要なものを見繕い、メモをしていった。
×××
さて、買い物を終えた。とりあえず、購入したものは全て車に詰め込み、明里と円香と透は帰宅した。
荷物を一度、家の中に入れると、とりあえず三人とも疲れたように座り込んだ。
「ふぅ……思った以上に重かった……」
「分かる……ていうか、これ本当に車に乗るのかな……」
「どうだろ……」
でも、まぁとりあえず今日のところは良いだろう。後は、まぁ当日に使う食材や水辺で使うものを用意すれば良い。
「じゃあ……俺、キャンプ場探してくるね」
すぐに明里が立ち上がり、パソコンをいじりにいった。予約が必要な場合もあるから、急いだ方が良いと思っての事だろう。
その様子を見て、透も身体を起こした。
「じゃ、私も探すー」
「お、珍しい」
「私は少し休むから……そっちはよろしく」
それだけ話して、明里の部屋に二人で入り、パソコンを覗いた。
「えーっと、なんだっけ。条件」
「川の近くで、バーベキューセットの貸し出しが出来るとこで一泊二日」
「あー……探すか」
いまいち、理解してるのかわからない透だったが、とりあえず明里は検索してみる。
その明里の横で、肩に頭を置いてもたれかかる透。……ちょっと、距離近いなーと明里は少し緊張気味に汗を流すが、透はそんなのお構いなしだ。
「ところで、リカ」
「んー?」
「やりたいこと言ってた時、虫取りのこと言わなかったけど……良かったの?」
「……あー」
言うと、明里は少し冷や汗をかく。不自然に感じたのは、おそらく透だけではない。その透も、理屈より直感で「あれ、言わないのかな」と思っただけだ。
案の定、少し狼狽えた様子の明里はすぐに答えた。
「まぁ……その、何? マドちゃんが嫌がるかなって思って」
「……あー、虫苦手だから?」
「そう。ただでさえ山の中なのに、もっと嫌がるでしょ」
苦手どころか嫌いなのだ。むしろ、明里としては夏の山といえばカブトムシやクワガタ……つまり少年の夢が詰まっているだけでなく、地域によってはミヤマクワガタやオオクワガタも見られるかもしれないし、なんならコガネムシとかもいるかもしれない。
しかし、円香は少しでも透と自分と一緒が良いだろうし、小糸や雛菜もいるとはいえ、離れ離れにはなりたくないと思っているだろう。
……と、思ったのだが、透はよくわかっていない様子ですぐに答えた。
「そうかな。割と一緒にくるかもよ」
「いや流石にそれはないでしょ……もしかしたら、ゴキブリもいるかもしれないのに」
「その時は、リカが守ってあげれば良いじゃん。謎パワーで」
「まぁ……そうだけど……って、謎パワーじゃなくて対話ね」
そのツッコミを「それにね……」と鮮やかに無視して続けた透は、隣で机に伏せながら顔だけを明里に向けて微笑んだ。
「正直、虫は嫌いかもしれないけど、それでも円香はリカの趣味くらいは理解したいと思ってるよ」
「……そうかな。俺の虫のフィギュアも触りたがらないし……」
「絶対思ってるよ。だって、私も思ってるし」
「っ……」
そう言うと、明里は少し照れたように顔を背ける。……まぁ、あれで円香は努力家だ。高校の時は、自分の一人暮らしをサポートするためだけに、家事やら何やらのコツを覚えてくれたし、聞いた話では虫の本とかも読んでいたこともあるらしい。
「……そうかな」
「あ、でも連れていくなら虫除けはしてあげてね」
「そりゃ分かってるけどさ……とおるんも行く?」
「うん。……だって、リカも行くんでしょ?」
……その「明里が行くなら当たり前のように行く」という考え……気恥ずかしくなるから本当に面と向かって言うのは勘弁して欲しかったのだが……まぁ、でも嬉しいので受け入れた。
「……じゃあ、虫眼鏡とミツも用意しておこうかな」
「網は?」
「俺、虫取りはしないから」
「あ、そっか」
「昼のうちに仕掛けて、夜に見て回るよ」
「ふふ、ちゃんと守ってね? ナイト様」
「……はいはい」
……本当に、可愛い彼女が二人もできたものだ、と少し明里はニヤついてしまった。
さて、何にしてもその為ならば、まずは場所を探さないといけない。
「ちなみに、とおるんは行きたい場所の希望とかある?」
「ないかな、特には。あ、自然が綺麗なとこ」
「キャンプ場は大体そう」
「確かに」
なんて話しながら、二人でキャンプ場を探した。
仮面ライダージュウド
日本の武道のルーツが眠る祠において、柔道の神に認められた青年「浅口円里」が変身した仮面ライダーとしての姿……或いは、柔術の神としての姿。
あらゆる柔道の技をマスターしている上に、それら一発一発が怪人を確実に殺すだけの威力を秘めているぞ!
スペック
身長:190センチ
体重:150キロ
ジャンプ力:11メートル
走力:時速65キロ
パンチ力::7.5t
キック力:15t
専用武器:無し
フォームチェンジ:無し
必殺技:ライダー大外刈り、ライダー背負い投げ、ライダー横四方固め等