浅倉が増えて、樋口のストレスは加速した。   作:バナハロ

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ピンチにこそパワーは宿る。

 今年も残りわずかの時期になった。クリスマスも過ぎて、今年のメインイベントは後、年末のみ。それに伴い、当然ながら三人の家は大掃除である。

 

「え、明日?」

「うん。実家戻るわ。二日くらい」

 

 そんな話をしているのは、円香と明里。各々の部屋の片付けはすでに終えていて、リビングで明里がソファーやテレビなどを退かし、その下を円香が雑巾掛けをするというコンビネーションを発揮しながらそんな話をしていると、廊下から透が声を掛けてきた。

 

「混ぜて、私もそっちに」

「いいから自分の部屋の掃除して」

「あ、とおるんの部屋、手伝おうか?」

「リカ、甘やかさないで。自分の部屋くらい自分でやるって決めたでしょ」

 

 透を部屋から追い出す。前に大掃除した時は大変だったので、いい加減あのバカを甘やかすのは控えなくては。

 さて、そんな中で円香は明里に声を掛ける。

 

「で、実家?」

「うん。ほら、うちの事務所、スポンサーが父ちゃんだし、その忘年会に俺も出ろって言われちゃってさ」

「ふーん……まぁ仕方ないけど」

「30には戻れるから、それまでとおるんと一緒に仲良くしてて」

「あんたは親か」

 

 そんな呑気な話をしながら、掃除を続ける。まぁ実際、仕方ない。何せ、彼の父親にはとてもお世話になっている。特に長期休暇とかで。

 なので、そういう時にはむしろ進んで協力してあげるべきなのだろう。

 

「……あっそ。なら、頑張って」

「そう寂しそうにしないでよ、電話するから」

「は? してない。死ね。電話しなかったら殺すから」

「うん。可愛いね」

「うるさいばか」

 

 本当に人を嬉しく苛立たせる男だ。困るほど困らせられてしまう。まぁ、嫌と言うわけではないが。

 

「……とにかく、早く帰ってきてよね」

「うん」

 

 そんな話をしている時だった。リビングの扉がまた開かれた。

 

「リカー、終わんないー。掃除ー」

「もう……仕方な」

「ダメ。今日はリカ、私の部屋で寝るから」

「えー。じゃあ私もー」

「なら部屋片付けて」

「円香の部屋で寝るなら私もー」

「狭いから嫌。あんたまた大きくなったし」

「え、そう?」

「え、とおるんまだ背伸びてるの?」

「「そう」」

 

 適当にアホをあしらっておきながら、とりあえず円香は透を掃除に戻らせた。

 

 ×××

 

 さて、翌日の玄関。荷物を軽くまとめて家を出ようとする明里を前に、円香と透は両サイドからハグをしていた。

 

「あの……今生の別れじゃないから……」

「うるさいばか」

「聞いてないんだけど、私」

「だから昨日、一緒に寝たじゃん」

 

 結局、三人で寝てしまったわけだが、透にとっては寝耳に水だった。てっきり円香が話したものだと思っていた明里は、ちょっと申し訳なかったりする。

 

「ごめんって」

「こんな事なら、昨日こねておけばよかった。ダダ」

「……ちゃんと今日までに掃除を終わらせるように」

 

 この子の掃除は全く終わっていないらしい。途中で漫画読むのに夢中になってしまったそうだ。

 まぁ、帰って来てもまだ終わっていなかったら手伝えば良い。そう思って、二人の頭に手をのせた。

 

「じゃあ、行ってくるね。マドちゃん、家のことよろしく」

「……ん」

「え、私は?」

「掃除よろしく」

「任せて。リビングの床、舐められるくらい綺麗にしとく」

「それもう終わってる。自分の部屋な」

 

 それだけ話してから、明里は二人と離れて家から出ていった。

 ……その背中を、円香は眺めながらため息を漏らしてしまう。明日の夕方までが待ち遠しい……と、小さくため息をつく。

 まぁ、彼も割と甘えん坊なので、本当は自分たちと離れたくないのだろうし、ここは我慢だ。

 それより、最後まで透にお願いしていた事をしよう。

 

「透、やるよ」

「? スマブラ?」

「やらないなら良いけど。掃除」

「あー嘘嘘。やる、超やる」

 

 話しながら、二人で透の部屋に向かった。しかし、昨日一日かけて終わらないとか、どれだけ散らかしているのだろうか? ちょっと見るのが怖かったりする。

 さて、そんなわけで透の部屋に入ると……まー汚れていた。死ぬほど汚れていた。

 散乱した教科書に衣服。まぁパンツや靴下が散らかっていないだけマシだが、それでも袋が入っていないゴミ箱に直でポテチの袋とかが入っていたりする。

 

「……ちょっと」

「大学って大変だよね。高校と違って制服ないからさ、悩むじゃん。着る服。で、タンスにしまうの面倒で……気がついたら」

「じゃあ何? 着てないのに放置してる服もあるってこと?」

「えへっ」

「……」

 

 こいつは……と、ため息。まぁそこは良い。百歩譲って分からなくもない。特に、あまりお気に入りでもない服は、円香も朝は放置して帰ってきてから片付けたりする。

 問題は……と、ゴミ箱を摘んだ。

 

「これは? まさか、夜中に食べたの?」

「たまにね」

「……溢れそうなほど入ってるけど?」

「てへっ」

「正月明けに太ってたらタダじゃおかないから」

「えっ」

 

 そりゃそうだ。自分達の職業をお願いだから理解していただきたい。

 

「とにかく、今日中に終わらせるから。終わんなかったら、年末はこの部屋にあんた閉じ込めるから」

「わ、分かりました……」

 

 そんな話をしながら、二人で掃除を再開した。

 まずは衣服から。あまりに散らかっているので、全部洗濯機にぶち込めば散らかっている面積は大きく減るだろう。

 

「透、洋服全部洗濯機にダンクして」

「ラジャー」

「私が廊下に出すから待ってて」

 

 手分けする。円香は部屋の中の洋服を集め、両手に抱えると廊下に追い出す。途中で袖と裾が絡まっている服とかも出てきたので、少しイラっとしながらも解いて出した。

 さて、それが終わった後は布団だ。いつから干していないのか知らないが、一度洗ったほうが良いまである。

 

「次、布団。洗濯機空いたら洗って」

「あ、うん」

 

 さらにその後は……と、少しずつ落ちている物を減らしていく。割と時間は食われてしまうが、まぁ仕方ない。

 そのままえっさっさ、ほいさっさ、と片付けを済ませつつも、次はゴミ拾いだ。全部ゴミ箱にぶち込み、そのゴミ箱の中身を袋に入れ、ゴミ箱を洗わなければならない。ベタついたゴミ箱ほど汚いものはないから。

 その後に掃除機をかけて、ようやく一息つける……と、思いながら、ゴミ拾いをしている時だった。

 目に入ってしまった。触覚を2本、生やした……黒く艶のある節足動物を。

 

「〜〜〜っ!?!?!?」

 

 思わず腰を抜かし、後退りし、背中を壁に強打するも、痛みを感じている暇もなく転がるように部屋の外に逃げ出した。

 ヤバい、怖いし気持ち悪いし吐きそう、と涙目になりながら四つん這いになっていると、いつの間にか自分の真下に透がいることに気がついた。知らぬ間に押し倒してしまったらしい。

 

「ったぁ〜……どしたの、円香。ゾンビごっこ?」

「ち、違っ……ご、ごめっ……いやっ、虫っ……背中ぶつけて……!」

「ふふ、めっちゃテンパるじゃん。ウケる」

「いいからなんとかして! ゴキ……が出た!」

「えっ……」

 

 透の顔色も、さぁーっと青白くなる。自分ほど苦手なわけではないが、好きと言うわけでも絶対にないのだ。

 

「なんとかして! あんたが生み出したモンスターでしょ!」

「え、そんなこと言われても……リカみたいに意思疎通出来ないよ」

「そんなの期待してない。殺すしかないでしょ」

「え……リカ怒るんじゃない?」

「バレなきゃ平気だから。それに、夏場は割と私達は蚊とか殺してたけど、あいつ何も言わなかったでしょ」

「そっか……そうだね」

 

 話を終えると、透はいらないと思われる雑誌を丸め、立ち向かった。残念ながら、この家にゴキブリバスターはないのだ。明里自身がゴキブリマスターみたいなとこあるから。

 円香は部屋の外で待機。胸前で両手をもじもじさせながら待っている間、中からは「とりゃ」「うわっ」「育ての親だぞっ」と声がする。それ、透が言うセリフでは絶対にない。

 さて、そんな時だった。

 

「ごめん、円香。行ったわ、そっち」

「は?」

 

 その直後、すぅっと扉から黒い触覚付きのそれが姿を現す。

 

「────っ!」

 

 無言でそのままジャンプし、過去最高到達点に達したその飛躍は、天井に頭をぶつけるに至った。でも痛みは感じられないほどである。

 

「大丈夫?」

「なわけない! どこ行った⁉︎」

「え? えーっと……あ、あそこ」

 

 透の指差す先で、カサカサとそれは動きながら部屋の扉の隙間に入っていった。

 

「あれ誰の部屋?」

「え? ……あ」

 

 入って行ったのは……明里の部屋だった。さっき出て行った明里が寝泊まりしている部屋。げっ、と円香は冷や汗をかく。

 

「リカの部屋じゃん。良いんじゃない? 放っておいても。で、来たら追い出してもらおうよ」

「バカなの? リカの部屋にじっとしてるわけないでしょ。ただでさえ昨日、片付けたばかりで綺麗なのに」

「あー、確かに。寝てる間に口の中に入ってくることもあるらしいからね、ゴキブリ」

「は? 何気持ち悪い話してんの。大概にしないとぶっ飛ばすよホント」

「ご、ごめん?」

 

 そもそも誰があの魔物をサモンしたと思っているのか。しかも、逃した挙句、他人の部屋になすりつけてそのままなんて絶対ダメだ。

 

「……仕方ない、私も手伝う」

「え、大丈夫? どうしたの?」

「あんたの部屋なら別に良いけど、リカの部屋はダメだから。もし万が一にもベッドの上に行かれたら、もうあの上で眠れなくなるし」

「ふふ、了解」

 

 話しながら、二人で丸めた雑誌を構えて部屋の中に入る。ソッと電気をつける。正直、死ぬほど怖い。姿を見るだけでも身震いしてしまうほどだ。

 でも……透に任せてはおけないし、ここでやらなければ、明日まで安心して眠れない。

 ゴクリ、と喉を鳴らし、緊張気味に中を見て回る。……相変わらず、円香から見ると悪趣味な部屋だ。昆虫や動物のフィギュアが大量に並び、本棚にはそれらの図鑑。いや、ホント何度も思うけど、生き物何か飼えば良いのに、と。

 ……こっちをまじまじと見てはダメだ。戦意が遠のく。まぁどこを見てもフィギュアはあるわけだけど、ショウケースをわざわざ見ることはない。

 なので、虫がいない方を眺める。ゴキブリを見つけたら、もう決めた。サーチアンドデストロイ。目に入った瞬間、キングジョーの如くマウントから連打を繰り出す……そう思っている時だった。

 

「!」

 

 カサカサっと、自分の前に置いてある机の上で動きがあった。綺麗に片付いている机の上で、何食わぬ顔のまま触覚を揺らしていた。

 

「ぶっ殺す」

「え、いた?」

 

 一気に雑誌をぶち込んだ。ジーンが駆るザクを撃退するガンダムのように。

 だが、ジーンとは違いすばしっこいのがゴキブリ。するりと回避してカサカサと動く。

 

「ッ、ッ、ッ!」

 

 それを、追う。真下に雑誌を振り下ろして。尋問官にバルカンを撃ち落とすガンダムMk-Ⅱのように。

 ダンッ、バゴン、ズガンッと、派手な音を大きく立てながら真横に移動し続けた挙句、とうとうパキョッと何かを潰したような音が耳に響く。恐る恐る、雑誌の裏を見ると……足と触覚以外の原型がなくなった亡骸がへばりついていた。

 

「……」

 

 すぐに視界から消す。そして、透に声を掛けた。

 

「透、ビニール」

「うん、それは良いけど……」

「早くして」

「死んだの、ゴキブリだけじゃないよ」

「は?」

 

 言われて真下を見ると……そこには、机の上にも並んでいた昆虫のフィギュアが、粉々に砕け散っていた。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……ビニール取ってくるね」

「…………うん」

 

 どうしよう、と頭の中が新たなるピンチを迎え、パニックになりつつあった。

 

 ×××

 

 思えば、円香も透も明里が怒りそうなことをしたことがない。割とわざとセクハラして揶揄ったり、普通の人が言われたら怒りそうなことも言うが、明里と自分達の関係なら大丈夫、と言う程度に収めている。

 その一方で、ちょっと取り返しがつかないことをしてしまった……なんて事はしたことなかった。

 一応、粉砕してしまった虫のおもちゃのパーツからゴキブリの肉片は拭き取り、水で洗い、一片のDNAも残さないように綺麗にした。

 問題は、この後である。

 

「どうしよっか……」

「とりあえず……謝る?」

「今、電話出れるのかな」

「さぁ……とりあえず、かけてみる」

 

 話しながら、とりあえず壊した円香がスマホを取り出す。まずは社会人として、電話に出れるかの確認だ。

 チェインでメッセージを送信。とりあえず、内容は「今、時間平気?」というもの。

 すると、電話がかかって来た。

 

「もしもし……」

『あ、マドちゃん? どしたの? 寂しくなっちゃった?』

「いや、その……」

『でもごめん、あんま時間取れないから手短にお願い』

「いや、忙しいなら別に……」

『マドちゃんととおるんとの電話が最優先に決まってんじゃん』

 

 こいつ……と、その返事に嬉しくなるが、状況が状況だけに申し訳なさの方が強い。

 しかし、時間はあまり取れないらしい。それなら……もうこっちも単刀直入に行くしかない。

 

「ビデオ通話に出来る?」

『うん。良いけど……』

 

 ビデオに切り替える。カメラの向こうの明里は……なんかいつもより紳士的な髪型と服装をしていた。

 

「え、なにその格好」

『忘年会の時とかはいつもこんなもんだよ』

「……」

 

 クッッッソかっこいい、と思ってしまう。元々、モデルになれるくらい外見は整っているのだ。

 

「どんな格好? わ、超イケメン」

『あ、やっほーとおるん』

「ひゃっほーリカ」

 

 どこの部族の挨拶だよ、と思ったけど、残念ながら今はそれに触れるタイミングではない。

 時間もないし、謝らないと……と、決心を固めていると、なんか向こうも少し離れていただけなのに寂しかったのか、いつも以上に喋り倒す。

 

『どしたのマドちゃん。そんな泣きそうな顔して』

「っ、そ、そんな顔してないし……」

『てか、とおるんもテンション低い?』

「え、わかる?」

『うん』

 

 透のそれも感じ取るとは、本当にこういう時ばっかり察しが良い男だ。なんにしても、そろそろ時間もない。告白しなければ。

 

「ごめん、リカ……その、透の部屋からゴキブリが出て……その、殺そうとして追ってたら……リカの部屋に逃げちゃって……」

『殺したの? 別に気にしないよ。ほんとは逃してあげてって言いたいけど、苦手な人の気持ちも……』

「その……リカの宝物と、まとめて一緒に……」

『え?』

 

 話しながら、ビデオ通話で見せている方向を切り替え、机に向ける。その机の上には……無惨なメンガタクワガタの破片が散っていた。

 

『えっ……』

「ホントごめん。ゴキブリがこっちの下に逃げて……私、その……怖くて、加減が効かなくて……」

 

 好きな虫を殺した上に、好きな虫のフィギュアが粉々……流石に怒るかも……と、割と覚悟を決めていた。

 

「あー……リカ。円香、一応このフィギュアとか拭いて、綺麗にはしたから……」

 

 あの透が珍しくフォローさえしてくれていた。茶化す気にはならないけど、お互いにどれだけことが深刻かを理解しているみたいだ。

 明里、怒ってるかな……と、思わず画面を直視できていないでいると、明里の声が耳に届いた。

 

『マドちゃんは大丈夫?』

「え? う、うん」

『こめんね、近くにいてあげられてなくて』

「え……いや」

 

 そんな、謝らないで欲しかった。自分が悪いのだから。

 明里はそのまま、作り笑顔だとあまりにも看破しやすいにへらっとした笑みを浮かべて続けた。

 

『フィギュアのことは気にしないで良いからね。所詮は500円のガチャガチャだから』

「……」

 

 さて、困った。この感覚……この罪悪感……怒るどころか、むしろショックを受けてそれを自分の中に溜め込み、他人には何も思わせないようにするタイプだった。

 つまり……怒られた方が数倍マシなタイプ。

 

『あ……もう行かなくちゃ。またね、マドちゃん、とおるん。明日には帰れそうだから』

「う、うん……」

 

 そのまま、電話は切れた。

 円香も透も、黙り込んだまま何も話さない。本人がいないのに気まずさがその場を包み込んでいた。

 アレだ、と理解する。優しい子供を泣かすような真似をしてしまった時ってこんな気分なのかもしれない。

 

「透」

「うん」

「新しいの買いに行こう」

「まずは壊したクワガタの種類を全部把握しないとね」

 

 フィギュアの残骸をかき集めながら、部屋の中の図鑑を大量に手に取って調べ始めた。

 

「確か、一つはメンガタクワガタって言ってた」

「どれのことだろうね」

「私が探すから、透はクワガタを組み立てて」

「うん」

 

 円香が破壊したクワガタは、おそらく四種類。メンガタクワガタが一つなので、残りは三つだ。

 

「あ、いた。メンガタクワガタ。……オレンジ色の奴」

「あーこれね。……え、こんなクワガタいるの? キモっ」

「分かるけど言い方」

「あと三つ……うええ、全部黒じゃん……」

「手伝うから」

 

 いい加減、フィギュアと理解しているので、リカのコレクションを触るのくらいは円香も平気になって来ている。

 ……とはいえ、やはりこうしてバラバラになったものをまじまじ眺めるのは少し苦手でもあって。さっきまでゴキブリの飛沫がついていたのなら尚更だ。

 それでも、あのスマホの奥の明里の顔は二度と見たくないので、頑張って組み立てていると「あっ」と一つ気がついた。

 

「ねぇ、透。なんかこの黒い奴、他のとツヤが違くない?」

「え? あー……確かに。なんかゴツゴツしてるし」

「ちょっと、これに似たパーツだけ集めてみて」

「ラジャー」

 

 話しながら、二人でそのパーツを集めていくと……なんかちょっと有りそうなクワガタが完成した。粉々なとこもあるのでくっつきはしないが、形にはなっている気がする。

 

「よし、調べよう」

「任せて」

 

 外見的特徴しか分からないので、図鑑を頭から順に見ていくしかないが、それでも読み進めた。

 そんな中でも、自身の中にあるにわか知識をフル活用。こんなクワガタ、日本にはいないだろう、と予測し、可能な鍵や範囲を絞り……そして。

 

「あ、いた。こいつじゃない?」

「あーぽいわ」

 

 タランドゥスオオツヤクワガタ、というらしい。本当に名前にツヤが入っている。

 さて、残り二匹だ。なんとか透と根性でクワガタを作りながら、残り二体の正体も探った。

 

 ×××

 

 アルキデスオオヒラタクワガタ、タランドゥスオオツヤクワガタ、メンガタクワガタ、そしてセネガルノコギリクワガタの四匹。

 これらを探すために、二人は家を出て秋葉原に来た。明里の話によると、彼らはガチャガチャ。だが、今のガチャで出るのはメンガタクワガタだけらしい。

 つまり、残り三つは買うしかない。……そう、秋葉原で。

 

「よし、探そう」

「分かってる」

 

 揃って二人でそれを探す。しかし、あるという保証はどこにもない。何せ、これから探すのはガチャガチャの景品だ。簡単に見つかる事はない。

 ……そう思っていたのだが。

 

「あれ、これじゃん」

「ホントだ。いくら?」

「1000〜1500円」

「結構する……でも、買わないと」

 

 バラのものは割とすぐに見つかった。流石は秋葉原。最近、流行りの500円昆虫シリーズなので、割と普通に売られていた。それも新品に近い状態で。値段はそこそこするが、まぁ普段はランダムに出るものなのだし、選べるというだけでも値段が上がるのはわかる。

 

「あ、ないわ。メンガタクワガタだけ」

「他のお店も見てみる?」

「ん」

 

 話しながら、片っ端からお店を回る。といっても、まず駅前にある一番でかいお店に入ってしまったこともあり、そこになかった以上は、中々獲物は見つからなかった。

 

「疲れたー……」

「分かるけどもう少しだけ」

「もう夜じゃん。お腹空いたー」

「……何処か入る?」

 

 確かに、少し休憩した方が良いかもしれない。円香も普通に疲れて来た。

 

「じゃああれ、ヨ○バシの一番上にあるレストラン街のつけ麺」

「高そうなんだけど」

「美味しいってネットにあった」

 

 まぁ、食べたいものがあるなら別に構わないが。

 さて、そんなわけで、二人でヨ○バシに向かう。結構大きい所で、確か8階くらいまであったはず。

 その中に入り、エスカレーターでのんびりと上がる。すると、おもちゃ屋のフロアが見えて来た。

 

「ていうか、おもちゃ屋ならあるんじゃない? ガチャポン」

「バラでないでしょ」

「ていうか、メンガタクワガタは新品あるかもなんでしょ? ガチャポンで良いじゃん」

「……」

 

 確かに、と思わないでもなかった。そんなわけで、ガチャポンだけ見てみることにした。

 降りて少し見て回った後、トイレの近くにガチャポンがズラーっと並んでいたので見てみる。

 

「あった」

「あったね」

 

 1回500円。出れば、今までに買って来たクワガタよりどれよりも安く手に入る。

 そんなわけで、二人はとりあえず500円玉を2枚、取り出した。

 

 

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