浅倉が増えて、樋口のストレスは加速した。   作:バナハロ

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お久しぶりです。
なーんか一次創作やりてーなーと思って作ってはやめてを繰り返していました。
結局やめました。


炬燵という名のミミックの季節。

 1月……それは、寒さで人を凍らせる季節。基本的に怠け者な透と、元々超怠け者だった明里がいるお陰で、炬燵という人喰いの生き物は今日も絶好調。進撃の巨人とか、炬燵型の巨人とかあれば人間なんぞ入れ食いなのではないだろうか? と思うような季節。

 夜中になってもいまだに炬燵から出る気配がなく、カタツムリのオルトロス版みたいに同じ辺から顔を出している透と明里を、ゴミを見る目で眺めながら円香は呟いた。

 

「もう夜だけど。あんたらいつまでそこにいるつもり?」

「あー、いつまで?」

「あー……五つ刻まで?」

「それ言いたいなら、朝五ツか辰の刻だから。5時のこと言ってるなら七ツ半だから。そしてどっちにしてもそんなにそこにいさせられないから」

 

 文系ではない明里に容赦ないツッコミが降り注いだ。まぁそんな時間まで炬燵の電気を入れっぱなしにしていたら当然電気代がバカにならないし、当然と言えば当然である。

 

「あんたら明日仕事は?」

「ないー」

「休みー」

「……」

 

 ダメだ、早起きで脅すことが出来ない、と円香はため息をつく。出来ることなら2人の間に混ざってキングギドラになりたいところなのだが……生憎、円香は仕事なのだ。ソロの仕事が増えるとこういうことになるから困る。

 

「……明日、私が起きてきてここで寝てたら覚えときなさいよ」

 

 それだけ言って、円香は部屋に退散した。その背中を眺めながら、明里と透は顔を見合わせる。このまましばらくのんびり出来そうだ。

 

「どうする? とおるん」

「もう少し居よ。ここに」

「りょかい」

 

 肩と肩が密着し過ぎる距離感が、妙に心地良い。頭をのせている両手が繋がっている両肘を床につけていて、割と痛いはずなのに動きたく無かった。

 こうして好きな人と一緒にいられる時間はとても幸福だ。正直、円香にも一緒にいてほしいくらい。

 

「ふー、疲れるね。肘」

「分かる。だらーんってしちゃう?」

「良いね。だらーん」

 

 両肘を解除して、顎の下に折り畳む。お互いに顔を見つめ合いながら、顔を近付ける。

 

「……リカ、キスしたい」

「……ん」

 

 軽く唇を触れ合う。……やはり、幸せだ。こういうことが平気で出来る生活が。

 そんふうに思いながら、二人でイチャイチャしていると、透がふと思ったように言う。

 

「なんか見る? 映画」

「お、良いねー。じゃあ俺、テレビ……」

「あー、違う違う」

 

 炬燵から出ようとした明里を透が止める。そして、炬燵の机の上からスマホを手に取った。

 

「これ、これで見ようよ」

「あー……え、してる? 充電」

「大丈夫大丈夫。多分大丈夫。今日使ってないから。あんま」

「マジかー」

「ほら、84%」

「マジだー」

 

 そんなわけで、スマホを持ってアマプラを起動。さて、何を見るか。

 

「何見る?」

「とおるんが好きなの」

「じゃあジュウド」

「えー、それは嫌ー」

「ふふ、照れる?」

「うん」

「可愛い。うりうり」

「んー、もっと突いて。ほっぺ」

「甘えんぼー」

「とおるんだって俺が入ってた場所にわざわざ入ってきて密着して来た癖にー」

「ふふ、生意気」

 

 むにむにっとさらに頬を突かれるも、なんか気持ち良くてさらに身を委ねる。……ていうか、そうじゃない。何を見るかだ。

 

「それより、何見る? 映画」

「あー……じゃあ、アイアンマン?」

「良いね」

 

 話しながら、一作目を見ることにした。というか、何なら今日の夜は二人でシリーズ全部見ても良いかもしれない。

 スマホを二人の位置から見えるように置き、序盤の車のシーンを眺める。

 

「金持ちかー……良いなー」

「リカの家はそうでしょ」

「いや、そうだけど。でも父ちゃん基本厳しいから、ここまで好き勝手できないよ」

「まぁ、自分で稼いでるから。スタークは」

「よくよく考えれば、俺モデルって言ってもバイトだし……現状、彼女2人のヒモかー……」

「良いよ、一生ヒモでも」

「え、やだよ」

「養う。円香と2人で」

「や、だからやだよ」

 

 まだ大学一年とはいえ、そろそろ将来について決めなければならないなーなんて考えながらも映画を見る。

 トニーが襲われ、拉致された後、少しだけ過去に戻ってトニーと言う人間がダイジェストのように流れる。

 その様子を眺めながら、明里がポツリと呟く。

 

「……この時のトニーってそんなに良い男かなぁ」

「お金あるし国に貢献してるし、良い男なんじゃない?」

「俺、そこそこバイトで稼いでるからお金あるし、税金も納めてるから国に貢献してるよ」

「? そうだね?」

「あ……あと、多分頑張ればアイアンマンも作れるよ」

「いやそれは無理でしょ」

 

 なんか張り合い始めたが、透には一切通じていなかった。そんな時だった。トニーが引っ掛けた記者の女性とベッドシーンを始める。その直後、透は明里の目を隠した。

 

「わっ、と、とおるん?」

「子供には教育に悪い」

「子供じゃないけど⁉︎」

 

 終わった頃合いに手を離され、ルーズな事に遅刻して飛行機に乗ろうとするシーンまで眺める。

 

「そういえば、リカ」

「ん?」

「いつ抱くの? 私と円香」

「バブっ⁉︎」

 

 思わず吹き出してしまった。こいつはまた唐突に何を言い出すのか。

 

「な、何言ってん……!」

「いや、待たされてるなーって。トニーなんて彼女じゃない人と戯れあってるのに」

「え……い、いや俺そういうのはちょっと……」

「何、恥ずかしがってんの?」

「そ、そりゃそうでしょ……」

 

 他人に裸を見られるのは恥ずかしい。それは当たり前のことだろう。透だって同じだろうに……と、思うが、まぁとにかく今はその話題から離れたい。

 

「そ、それよりさ、アイアンマン。ようやくスタークが捕まったよ」

「あ、ホントだ」

「そういえば、ジュウドが好きな小宮さんは、アメコミも好きなんだっけ?」

「好きなんじゃない? でも私もアメコミ好きだよ。だから観に行くなら私と行こう」

「う、うん。どしたの急に?」

 

 なんか急に自分を押し始めた。いや別に一緒に行くとか言っていないし、そんな気はないわけだけど……そんな気を知る由もない透は横でモゾモゾと動く。

 何しているのだろうか? というか、アイアンマン見ないのだろうか? なんて考えていると、透は横になっている明里の真上に寝転がったまま乗っかった。

 むにゅっ、とうつ伏せになった時に床に当たる面が全て背中に乗っかって来て、柔らかさや温もりが背中を支配する。

 

「ふふ、いえーい」

「いえーい、じゃないよ! 何やって……!」

「私がこうしてれば、リカはずっと私と円香のものだよね」

「っ……い、いやそんなことしなくてもそうなんだけど……」

「ふふ、念の為」

 

 透をおんぶしたことだって前にもあったはずだ。なのに……何故、今だけこんなに柔らかさをやたらと感じてしまうのだろうか? というか、透の胸はこんなに弾力を感じるほど柔らかかったのだろうか? 

 って、自分は何を考えて……と、自分で自分の頭を殴る。……だが、そんな明里の煩悩打払撲殺術をさせんとばかりに、至近距離の透は耳元で囁く。

 

「ちなみに……ベッドの中なら、これをリカは触れるんだよ?」

「っ〜〜〜! と、とおるん!」

「嫌?」

「い、嫌だよ! てか映画!」

 

 ダメだ。もう一回、頭から血が出るほど殴らなければ、と思って拳を作る。……だが、うつ伏せなだけあって強く殴れない。

 そんなわけで、第二案に移った。自分の首を絞めた。

 

「えっ、り、リカ……?」

「ッ……か、カハっ……!」

 

 絞め落とせば気絶出来る。気絶してしまえばこっちのものだ。命の危機はあるが、せめて円香がいる時でないと意識を保ってはいけない。

 

「っ、ご、ガハッ……!」

「い、いやごめん。ごめんってば。だからやめて」

「コフッ……」

「分かった、降りる。降りるから」

 

 何とか自分を絞め落とそうとしていると、背後からの感触が消えてハッとする。透が隣に移動していた。

 

「っ、はっ……はぁっ……!」

「……大丈夫?」

「だいっ、じょぶ……!」

「そんなに拒否られるとショックなんだけど」

「いや、その……せめて、マドちゃんと一緒の時に……!」

「あー……ごめん」

 

 割と反省しているかのように、しょぼんと肩を落とされてしまった。なんか……悪いこと言ってしまったような気がするのは何故だろうか? 

 何となく罪悪感があった。ていうか……やはり、カップルならばその手の行為は当たり前にするものなのだろうか? 

 特に、自分のところは1対2。二人のお願いを自分のわがままで拒否してしまっていると思うと申し訳なさが増していく。

 ……いや、ていうか、だ。申し訳なさを感じているのは、結局のところ自分に勇気がないから拒んでいるだけ、ということを理解しているからなのではないだろうか? 

 ……透はどう思っているのか、聞いてみようか? やんわりと遠回しに尋ねてみる。

 

「そ、そもそもさ……とおるんは、その……恥ずかしくないの?」

「何が?」

「じ、自分の裸見られるの……」

「恥ずいよ?」

 

 やっぱりそうなんだ……とは思った。これで、やはり同じ心情でありながらも勇気を振り絞っていることは分かった。

 でも、ならばなんでそういうことをしたがるのかはわからない。

 

「じゃあ……なんで?」

「え? あ、あー……」

 

 少し考え込む。このままずっとくっついているだけでも幸せだし、わざわざ性行為をする必要はない気もする。

 なのにそこまで誘惑してくるのは何故なのか、と非常に気になる。もし、納得できる理由だったら、その時は……。

 

「……リカがゾウさん見られて恥ずかしがってるところが見たい、から?」

「……」

 

 しばらくいいや、と判断しながら、映画に集中した。

 

「お、そろそろマーク1出来るよ」

「ほんとだ」

「にしても……実際にこういう拉致とかあったら怖いよねーやっぱ。どうしたら良いのかな」

 

 あからさまに話題を変えた。

 何も察していない透は、その話題に食いついてくれる。

 

「いや、リカなら平気でしょ。強いし」

「いや、いくら俺でも銃や薬出されたら勝てないよ」

「ふふ、それはそうだよね。心配」

「とおるんとマドちゃんのが心配。だって素手でも勝てないでしょ?」

「あー……」

「別に天才でもないからアークリアクターも作れないし、火炎放射器なんてもってのほかだし……」

 

 話せば話すほど不安になってきた。大丈夫だろうか? 自分が近くにいない時。

 そんな明里を眺めながら……透はしばらく考え込む。しばらくっていうか、3秒くらい。

 その中身は言うまでもなく「リカが不安になってる→この流れに乗れば甘えてくれる? →もっとくっ付ける」という短絡的なものだ。

 

「どうしよー、リカー。私、もしかしたら明日の朝までに攫われて、炬燵の中に残ってるのはリカだけになってるかもー?」

「ーっ!」

 

 言ってみると、今度は隣の明里の方からギュウッとしがみついてくる。胸に顔を埋め、ちょっと痛いくらいに抱き締められて気恥ずかしいのだが、これを微塵の下心もなくやってのけるのが明里なので微笑ましい。

 

「だ、大丈夫とおるん。俺がこうしてれば何処にも連れて行かれないから」

「ふふ、心強い」

「でしょ? だから安心してアイアンマン見よう」

「んー」

 

 どっちかって言うと不安そうなのは明里の方だろうに……と、思いつつも、頭を撫でてあげながら、アイアンマンを二人で眺めつつ、気が付いたら寝落ちしていた。

 

 ×××

 

 翌朝。

 

「で、あんたらは深夜から早朝まで炬燵をつけっぱなしのまま抱き合って寝てた、と?」

「「…………はい」」

 

 ガチギレ円香の説教をそろって受けていた。当たり前である。

 

「言ったよね。そこで寝るなって」

「…………はい」

「ましてや、炬燵をつけっぱにするのはやめろって」

「…………はい」

「言い訳は?」

「とおるんが攫われると思ったんです!」

「リカが離してくれなかったんです」

「分かった。死刑」

「「ひえっ⁉︎」」

 

 揃ってお互いにハグをし始め、余計にボルテージが上がる。この野郎ども、やたらと仲良くしやがって。

 

「……とりあえず、そろそろ私も出かける時間だけど……」

「「いってらっしゃい」」

 

 勿論、簡単に出掛けるつもりはない。どうせこいつらは今日も炬燵を使うだろうから。そんなのは許されない。

 なので……炬燵布団を捲り、コンセントを抜いてケーブルを鞄の中にしまった。

 さて、もう時間だ。バカ達の所為で朝食を食べる時間もなかった。

 

「え、お、俺達の炬燵は?」

「使用禁止」

 

 狼狽えたように言うバカを立たせると、そのバカに鞄を持たせる。そして、その腕を引っ張って連行する。

 

「じゃ、行ってきます」

「え、わ、私の抱き枕は……?」

「今日は私の鞄」

「……」

 

 さて、決まりだ。どうせ休みなのだから精々コキ使わせてもらうとしよう。

 

 ×××

 

「他所の事務所の子を使うわけにいくわけがないでしょ。元の場所に戻してきなさい」

 

 プロデューサーから却下され、明里は家にとんぼ返りした。

 

 ×××

 

「と、いうわけで、帰って来ました」

「ウケる」

 

 透と家で二人きり。結局、そこに戻った。とはいえ、色々と思うところはある。

 

「でもなんか、最近マドちゃん一人仕事の日多いよね」

「あー分かる。逆に私とリカが仕事の日、円香休みだったりね」

「うん。そんなわけで……なんか、パーティ的なことする?」

「良いね、さ、サプ……なんだっけ。サプレッサー?」

「サプライズ」

「そう、それやろう」

 

 特に何か祝うわけでもないが、とにかくサプライズだ。驚かせて喜ばせられれば勝ち。

 そんなわけで、とりあえず出かけることにした。

 

「何用意する?」

「ケーキ。あとくす玉」

「あー、良いね」

 

 そう決めながらも、だ。そこで明里が閃いた。

 

「マドちゃんにもさ、炬燵であったまって欲しくない?」

「あー……ぐー」

「そんなわけで、帰って来たらそのまま自動的に炬燵に吸い込まれるようにしてみよう」

「どうやって?」

「うーん……バナナの皮で滑らせる……的な?」

「おもしろ。それで転ぶ円香」

「見てみてえな……やってみるか」

「うん」

 

 当然のように次から次へと話が逸れていくバカ二人。そのまま二人でまずはバナナを食べ始めた。

 

「はい、むけたよ」

「ありがと」

 

 明里が皮を剥いてあげると、透は受け取って二人で食べる。バナナ美味しい。

 

「……バナナと言えばさぁ」

「何?」

「マリオ見ない?」

「良いね」

 

 まったりとマリオの映画を鑑賞し始めた。

 さて、マリオの話も中盤まで進んだ。そんな中、やりながらふと透が閃く。

 

「あ……そうじゃん。決めたわ、円香が帰って来たら廊下からマリカーやろう」

「あー……そういうこと?」

 

 普通の人なら理解出来ないセリフなのだが、明里にはすんなりと飲み込めた。

 つまり、玄関がスタートで、炬燵がゴールの一直線のレースのようにする、ということだろう。

 

「面白いじゃん。……でもマドちゃん乗ってくれなくない?」

「あー……じゃあリカ、円香のこと倒してよ。痛くない柔道技で」

「え」

「で、寝かせてから円香を滑らせて、自動的に炬燵に吸い込まれるようにしよう」

「あーそういう。良いね」

 

 痛くない、というよりも痛く投げない、というべきだろう。

 だが、派手にやると服が破れてしまうし、ハグするフリして大外刈りがベストだ。

 

「せっかくだし、廊下もカラフルにしよう」

「良いね。あ、てかアーチ欲しくない?」

「いるわ。ゴールとスタート地点に」

「よーし、作ろう。とりあえず材料を買ってきて、色々と飾りつけて」

「うん」

 

 そんなわけで、買い出しに出掛けた。

 

 ×××

 

「はぁ……疲れた」

 

 朝からいらない説教した上に持参したリカを、まるで拾ってきたペットを返してくるようにプロデューサーに諭され、もうイライラが止まらなかった。フルスロットルだ。その後の仕事も、バラエティのゲストで胸より尻派とか芸人がアホなトークを始めたことで巻き込まれそうになったりと、碌なことがなかった日だ。

 さて、帰ったらこのイライラをバカ2人への説教に使わせてもらう。というか、そもそもあいつらから始まったイライラだし。

 そんな風に思いながら、玄関の扉を開けた。

 

「ただいま……」

 

 そう呟きながら靴を脱いだ直後だった。まだ電気をつける前の暗闇で、ぐいっと腕を引かれる。

 

「えっ」

 

 そう声が漏れた時には遅かった。足元を優しく浮き上がるように持っていかれ、腰が空く。

 この技……大外刈り? と思ったが、尻餅をつく前に抱えられてヘリコプターの着陸のように優しく下された。

 ……ていうか、何の真似なのか? と思い、声をかけようと口を開く。

 

「ちょっと、リ……」

 

 直後、聞き覚えのある音楽が耳に届く。まるでスタート前のような音楽だ。それと同時に、急激に電気が光った。床は虹色、壁は黒い星空、そしてリビングへの扉と自分の真上には、見覚えのあるアーチ。

 これ……マリカー? ていうか喧しいやっぱり。いらいらのわんこ蕎麦? とさらにムカついてくる中、目に入ったのは、天井から吊るされている信号。四つある中、オレンジの目が一つずつ点灯していき……そして、最後の赤が光った直後だった。

 

「ヒーアイゴー!」

「ちょっ、待っ……!」

 

 明里の掛け声で背中を押され、床を滑らされた。ていうか、この床光ってるのにやたらと滑る。

 

「きゃあああああ⁉︎」

 

 思わず悲鳴が上がる中、リビングの扉が開かれた。そして、その先で待っているのは、炬燵の口……なのだが、不思議なことにクッパの口に見えた気がした。

 

「やっ、食べられっ……!」

 

 リアクションが間に合わず、ズボッと突入する。その直後、部屋の中にいた透と後ろを追いかけてきた明里がクラッカーを鳴らした。

 

「「おかえりー!」」

「……」

 

 ……一体、何の真似なのか。何がしたいのか。どういうサプライズなのか。もう何年もこいつらと一緒にいるけど、いまだに分からないことが多い。

 そんな中でも、バカ二人はニコニコ……というか、心無しかニヤニヤしているように見える笑顔で聞いてきた。

 

「どう? 温かい?」

「全自動吸引式炬燵」

「そう、前人未到球児式炬燵」

 

 全然違うことを言われながらも……まぁ、意図は分かった。二人なりに、朝のことを気にした上でこうして変なサプライズを炬燵で表現してくれたのだろう。

 なんかもうホントこういうとこ、怒る気も失せるし、なんかもう色々といいや、と思いながら、とりあえず一つだけ答えた。

 

「寒い」

「「えっ?」」

「電源が入ってない冬の炬燵がどうなってんのかくらい知ってるでしょ」

「「……」」

 

 顔を見合わせて、大量に冷や汗を流す2人。怒られると思っているのだろうが、特に訂正もせずにため息をつきながら、鞄からコンセントを手渡した。

 

「……ん」

「あ、カンタの真似ごっこ? 良いよ、やろうか」

「カァァンタァァァァ!」

「違うバカ二人。いいからつけて電源」

 

 どんな勘違いしたらそういう発想になるのか分からないが、とりあえず先にそう言うと二人とも従う。

 すると、ようやくじわじわと暖かさが中で発生する。その事にため息をついていると、透と明里が側までやって来たので、足首を掴んだ。

 

「「えっ」」

「お返、し!」

 

 直後、ぐんっと2人の足を引っ張る。油断していた二人は足を持っていかれ尻餅をつくが、無視して足を引っ張り込み炬燵の中に叩き込んだ。

 強引に三人で一辺に肩まで浸かると、二人の腕を掴んで引き寄せる。

 

「んっ……次から同じことやっても、もう許さないから」

「ま、マドちゃん……」

「優しい……」

「これでようやく温まる」

 

 そう言いながら、三人でぬくぬく。

 すると、両サイドから透と明里が少しだけ上に出て、円香の頭の上に顎を乗せる。そして、二人揃って頭を撫でてくれた。

 

「ん……サービス足りない」

「ふふ、マドちゃん可愛い」

「甘えん坊円香、超レアじゃん」

「うるさい。黙って癒して」

「何か嫌なことでもあったの?」

「あったでしょ。こういう時」

「……」

 

 こいつらのこういう変なところ鋭いところも嫌いじゃない。大事な時は決めてくれるやつらだから。……まぁ、普段のボーッとしてる感じのマイナスの方がやや大きくはあるが。

 何にしても、今日の愚痴を肴に今日はゆっくり過ごすことにし……ようとしたところでピーっという電子音。コーヒーが入った音だ。

 

「コーヒー淹れてたの?」

「うん。……あ、てかケーキも買ってあるよ」

「え、今日なんかの記念日?」

「あー……炬燵記念日?」

「何それ」

 

 まぁ何にしてもありがたい。至れり尽くせりとはこのことだろう。でも自分は炬燵から出たくないので二人に任せたい。

 

「リカ、よろしく」

「え、俺? とおるんがケーキも買ったっていうから俺の奢りなのに?」

「えー、円香やってよ」

「何で私なの。そもそも何のためのケーキとコーヒー?」

 

 結局、明里が全部用意した。

 

 

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