友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第11話 【僕は孤独じゃない】

 お婆さんについていく形で歩くこと暫く。どこへ行くのかも分からず、聞いても「黙ってついてきな」の一言が返ってくるだけ。陽は大分落ちていて、もうあと数十分もすれば月明かりが街を照らす時間帯になるであろうことが容易に想像できる。

 この時間まで僕が帰らないことで灯火に心配をかけてしまうかもしれない、と一瞬思ったが、それよりもこのお婆さんについていく方が今は重要だろう。

 ごめんね灯火、帰ったら説明するから。

 

 お婆さんは、一つの建物の前で足を止める。そこは冒険者ギルドよりも一回りほど小さな建物で、壁には魔道具店を表す三角フラスコのような絵が描かれた看板と鍛冶屋を表すハンマーと金床が描かれた看板、そして飲食店を表すナイフとフォークが描かれた看板の三つが掛けられている。

 

「お婆さん、ここは……?」

 

 お婆さんは僕の問いかけに答えることなく、目の前の建物の扉を押し開いた。

 中は冒険者ギルドと似たような作りになっていた。入って左手奥にはカウンターが設置され、そこには常駐している職員と思しき方々が。右を向けばそこには壁一面にびっしりと紙が貼りつけられ、その紙一枚一枚に何かしらの絵と数字が書かれていた。

 

「こっちだ」

 

 お婆さんはそう言うと、左のカウンターの方へと向かって行く。よそ見をしていた僕は危うく置いて行かれそうになり、慌ててお婆さんの後を追う。

 

「おやスローアさん、珍しいですね。帳簿ですか? それとも何か素材の調達ですか?」

 

 お婆さんが向かった先は、僕たちから見て一番左に座っている男性のところ。男性はお婆さんの顔を見ると少し驚いたような表情になる。

 そういえば、お婆さんの名前を今まで聞いていなかった。多分今この男性が言った『スローア』というのがお婆さんの名前なんだろう。

 

「素材も帳簿も間に合ってるよ。今日は適性を測りに来たんだ」

 

 お婆さん―――スローアさんはそう言うと、目線を男性から僕の方へと移す。それにつられる形で男性も僕の方へと視線を移し、そして訝しげな顔になった。

 

「スローアさん、流れ人ですか? 一体どういう風の吹き回しで」

 

「こいつは私の弟子だ。まだ適性を見ていないからそれを見に来た。いいかい?」

 

 男性の言葉を遮るようにスローアさんが口を挟む。余計なことを言うなと暗に言いたげなその口ぶりに、男性もそのまま口を噤んでしまった。

 というかちょっと待って。今僕のこと"弟子"って言わなかった?

 

「ほら、さっさと仕事しな。魔導水晶引っ張り出して」

 

 スローアさんは急かすように男性を煽る。男性も慌てて奥へと引っ込み、少しして冒険者ギルドで見たものと全く同じ水晶を持ってきた。

 

「あの、スローアさん。僕魔法の適正は……」

 

「誰が名前で呼んでいいって言った」

 

 ものすごい勢いで振り返り、ギロリと僕を睨みつけるスローアさん。まだ僕には名乗っていないから名前で呼ぶのは駄目ってこと……? 今僕のこと弟子って言ったのに?

 

「あの、じゃあなんて呼べば……」

 

「それはこれから決める。

 ほれ、これに手をかざしな」

 

 これは僕が何を言っても無駄なんだろう。昨日のギルドでの様子が頭をよぎるが、やれと言われたからには仕方ない。きっと魔法適正が無いから雇うことは出来ない、とか言われるんだろうな……。

 

 せっかくのチャンスだと思っていたのに、今回もダメそうだ。そんなことを思いながら水晶に手をかざす。やはり水晶は透明のまま、一切色づかない。

 

「……ふん、『付与』と『分離』、それに『合成』か。まあ適正自体はかなり低いけど、あるだけ十分だね」

 

 しかしスローアさんの反応は、僕が思っていたものとは異なった。思いのほか好感触というか、もしかして認められたのか?

 

「あんた、明日から冒険者ギルドで魔法に関する授業を受けてきな。丁度最近流れ人が来たらしくて、それ向けに授業が開かれてるらしいからね」

 

「魔法の授業、ですか?」

 

 昨日魔法適正が無かったからという理由で暗に受けなくていいと言われた授業が、何故今になって再び登場するんだろうか? しかも僕には適性が無いというのに。

 

「あれは冒険者向けに開かれているものだから、受けるのはマナに関するところとその操作に関するところだけでいい。それを()()()覚えたらもう一回私のところに来な」

 

 スローアさんはそう言うと、「それじゃあまたね」とぶっきらぼうに言い捨ててその場を後にした。

 

 残された僕は、何が起こったのか訳の分からないまま置いて行かれたような状態。僕って魔法適正無いんじゃなかったのか……?

 

「ねえ、君どうやってスローアさんの弟子になったの?」

 

 先ほどまでの出来事を頭の中で咀嚼していたところに、先ほど僕たちの対応をしてくれた男性が話しかけてくる。

 

「弟子……ですか?」

 

「え、違うの? でもさっきスローアさん、君のこと"弟子"って言ってたよね」

 

「……言ってました、よね。やっぱり」

 

 さっきのスローネさんの言葉は、どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。ということは、僕はスローアさんの弟子ってことでいいんだろうか? スローアさんの元で魔道具の勉強が出来るってことでいいんだろうか……?

 

「よ、よかった……!」

 

 働き手のではなく弟子として見てくれるなら、僕も気兼ねなくスローアさんのもとで勉強が出来る。もしかしたらスローアさんは、僕の話を聞いて雇うのではなく弟子として取ってくれたのかもしれない。

 

 あまりの嬉しさと安堵感に僕の膝が耐え切れず、その場に崩れ落ちてしまう。今まではまるで、この世界に存在していないような気分だった。みんなから拒絶され、魔法適性も無く、灯火のお荷物にしかなれない、価値の無い僕。

 

 

 

 

 

 そんな僕が、この世界での僕の居場所を漸く見つけることが出来た。

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