友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第12話 【魔法の謎】

 あの後、腰が抜けて立てなくなってしまった僕は暫くスローアさんと一緒に訪れた建物で休ませて貰うことになった。

 その時に聞いた話だが、僕たちが行ったあの建物は【商業ギルド】と呼ばれる場所でこの街で商いを行っている人々の為に作られた施設らしい。各店ごとの帳簿や国への税金の納付、また魔道具製作や武具の制作に使われる素材の売買なども請け負っているらしい。

 

「長い間ご迷惑をおかけしました、ダンキスさん。もう大丈夫ですので」

 

 立てるようになった僕は、僕とスローアさんの対応をしてくれた男性―――ダンキスさんにお礼を言ってその場を後にする。

 

「うん。もし困ったことがあったらまたうちに来てくれ。商いに関する手ほどきや店を構える場所の手配も請け負っているからね」

 

 右腕に力こぶを作ってニカッと笑うダンキスさん。ポーズはとても力強いが、体格が細身な為にどうしても頼りなく見えてしまうのは僕だけではないだろう。

 

「ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げ、商業ギルドを出る。既に外はすっかり暗くなっていて、街路のところどころに設置された街灯が夜道を照らしている。この世界には電気が無いはずなのにどういった仕組みで光っているのかが気になって見てみると、中で炎が揺らいでいるのが確認できた。

 

「これも魔道具、なのかな……」

 

 こうして見ていると、この世界は魔道具がありふれている。僕が思っている以上に、魔道具というものの多様性は凄まじいのかもしれない。

 

「……うん、頑張ろう」

 

 灯火の為に、地球に帰る為に、僕にできる最大限のことをやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

「……成程ね、よかったじゃん」

 

 宿に戻った後、先に到着していた灯火に今日の件を話した。灯火はまるで自分のことのように僕が新たな道を見つけられたことを喜んでくれた。

 

「うん、何とかこの世界で灯火のヒモにならなくて安心したよ。

 ……ところで灯火、一つ聞いていい?」

 

「ん? なんだ?」

 

 僕は帰ってからずっと疑問だったことを灯火に聞いてみる。

 

 

 

「なんでそんなにボロボロなの?」

 

 

 

 灯火の身体には、至るところに擦り傷や打撲痕のようなものがあり、見るだけで痛々しさを感じる。

 もしや今日の授業で何かあったのかと思ったが、次の灯火の言葉で僕の心配は杞憂に終わることとなる。

 

「ああ、師匠に剣の稽古をつけて貰ってたんだ」

 

「稽古?」

 

 灯火曰く、僕と同じようにこの世界で師匠を見つけたらしくその人に手ほどきを受けていたらしい。

 

「考えることは一緒だね」

 

「さすがにこの世界で誰にも頼らず生きていける訳ないからな。それに俺剣なんて使ったこともないし、扱い方すらわかんねぇもん。

 先人の教えを乞うのが一番だろ」

 

「……言い方はともかく、僕もそう思う」

 

 これで僕も灯火も、当面の間やることは決まった。暫くはこの街に定住し、互いの師匠から色々なことを教えて貰って力を蓄える。どれだけやっても過剰ということは無い。僕たちはこの周辺の世界しか知らないんだし、準備はし過ぎて損をすることもないだろう。

 

「ひたすらに頑張ろう。時間はかかるかもしれないけど、無理して死んだら元も子もないし」

 

「だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、そういえば」

 

 お互いに今日のことについて一通り話終わり、ご飯も食べ終わってそろそろ寝ようかというところで僕は大事なことを思い出した。

 

「灯火、僕に今日の授業の内容教えてくれない?」

 

「授業って、魔法のか?」

 

 ベッドから起き上がった灯火が、こちらに身体を向ける。

 

「うん、魔道具製作をするにあたって、マナについての知識とそれを自由に操作するための技量が必要らしいんだ。だから僕も明日から授業に参加しようと思うんだけど、それで今日やった内容を知りたくて」

 

「なるほど了解。それなら今ここでちょっとやるか」

 

 灯火は立ち上がると、僕が座っているベッドの横に腰を下ろす。

 

「今日教えてもらったのは"マナと魔法"についてだ。まずマナってのは―――」

 

 ここから、灯火による特別授業が始まる。

 

 灯火によると、マナとは空気のようにこの世界に溢れている魔法の源となる物質のことで、普通の人間は目で捉えることが出来ないらしい。

 マナは空気のように無意識的に取り込むようなことはなく、魔法を使う際に意識することで漸く体内に取り込むことが出来る。そしてマナの循環を意識できない人間に、魔法は扱えないと言う。

 

「……ええと、つまりマナっていうのは空気と同じように空気中に当たり前に存在しているものなんだけど、空気とは違って意識的に取り込まないと体に入ってくることは無い、ってこと?」

 

「そうらしい。んで次に魔法なんだけど、正直こっちの方が俺にとっては厄介だったな」

 

「厄介?」

 

「ああ。先生が言ってたことをそのまま言うと、『魔法は自分自身のイメージが強く、強固であるほど威力が上がる』らしい」

 

「イメージ……ねぇ」

 

 魔法の説明を聞いたとき、僕の中で何かが引っかかる感じがした。

 

「……商業ギルドに行った時の話したじゃん? その時にそこの職員さんと話したんだけど、魔道具を作る時に『付与魔法』って言うのを使うらしいんだ。道具に対して付けたい効果を自分で思い描いて、その道具に効果を付与する、らしいんだ。

 説明を聞いたときは正直なんのこっちゃって思ってたんだけど、その『イメージ力』っていうのが魔法を使う上で大事ってことなのかな」

 

「ああ、多分俺もそうだと思うんだ。

 んで問題はここからなんだけど、そのイメージ力ってのが大事なら、なんで『属性』なんて概念があるんだ?」

 

「……言われてみれば、確かに」

 

 自分自身のイメージが魔法において重要だって言うなら、そもそも属性とか付与魔法とか、そういう魔法ごとの種類の概念があることに疑問が生まれる。イメージが大事だと言うなら、それこそ属性という垣根を越えて何でも想像通りの事象を起こせるのではないだろうか。

 

「聞いてみなかったの? 先生に」

 

「聞こうと思って忘れてた」

 

「…………」

 

 大事なことだろうに、忘れないでくれよ。

 

「まあいいや。明日からは僕も授業に出るし、その時に聞いてみよ」

 

「そうだな」

 

 結局その日は謎を謎のままにして、僕たちは眠ることにした。

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