友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第13話 【マナと魔法】

 翌日、僕はいつも通りランニングを終えた灯火と一緒に冒険者ギルドへと向かう。

 僕が授業を受けたい旨を伝えると職員の人は不思議そうな顔をしていたが、別に受けること自体は自由だと言ってくれたのでありがたく受講させていただくことにする。

 

 職員の人に案内され、僕たちはギルドの二階へと向かう。階段を上がってすぐのところに部屋が用意されていて、そこは日本の学校の教室をそのまま小規模にしたような部屋だった。ヨーロッパのような外観に対して超日本な教室の風景は、あまりにもミスマッチな気がしてならない。

 

「……まあ、何でもいいか」

 

 教室を見に来たのが僕たちの目的って訳じゃないんだし、別に合う合わないは大した問題じゃないだろう。

 

 

 

 

 用意された椅子に座って待っていると、間もなくして講師の先生と思しき人物が入ってくる。細身で身長の高い、20代後半くらいの男性だった。

 

「はい、というわけで今日も授業をやっていきます。今日は【マナ操作】についての勉強をしていきますのでよろしくお願いします」

 

 マナ操作、といえばスローアさんが完璧に覚えて来いと言っていた項目の一つだ。ということは、これと昨日灯火から教えてもらったマナについてを理解してから、スローアさんのところに行けばいいってことか。

 

「マナ操作に関してですが、習うより慣れろと言うことで実戦形式で覚えてもらいます。

 それでは二人とも、ちょっとお手を拝借して……」

 

 先生が僕と灯火の手を握る。

 

 最初はいきなり何をしているんだろう、と思ったが、段々と先生の手が触れている部分から僕の全身にビリビリとした痛みのようなものを感じるようになってきた。

 

「あの……先生これは?」

 

 耐えられないほどではないが結構痛い。顔を苦痛に歪めながら先生に聞くと、先生は笑顔で答える。

 

「これは二人の身体に『マナの通り道』を作る為の作業です。これをしないといくら適性が高くても魔法そのものが一切使えませんので、我慢してください」

 

 マナの通り道、回路のようなものだろうか。今まさに僕の身体は作り変えられているということなんだろうか。そう思うとかなりキツイな、これ。

 ちらりと灯火の方を見ると、灯火は目を閉じ何かに集中している様子だった。この無視できない痛みと身体を勝手に変えられている感覚の中で別のことに集中できるって、流石は灯火だなぁ。

 

「陽向君、少し目を閉じて貰ってもいいですか?」

 

「え? あ、はい」

 

 先生に言われるまま瞼を閉じる。すると僕の手から先生の手の感触が無くなり、代わりに瞼に何かが添えられる感覚があった。タイミング的に先生の手だろう。

 少しして、目にぴりっとした痛みを感じる。目にもマナの通り道を作ったんだろうか。

 

「……はい、オッケーです。二人とも目を開けてください」

 

 先生に言われて、ゆっくりと目を開く。

 

 

 

 

「うわぁ……!」

 

 

 

 僕の目の前に広がった光景は、紫色の光の粒がそこかしこに浮かぶ神秘的な世界だった。

 灯火も僕と同じように、目の前に広がる光景に唖然としている。

 

「二人とも見えているようですね。その紫色の光が『マナ』と呼ばれるものです。これをこうやって体に取り込んでイメージをすることで……」

 

 宙に浮かぶマナが先生の元へと引き寄せられるように集まっていく。マナは先生の身体に取り込まれ、体中を巡り、色を紫から赤へと変えながら一本だけ立てられた右手の人差し指の先へと集まっていく。

 

 そして、先生の指先に小さな火が灯った。

 

「このように、魔法を発現させることができます。

 今見えていたと思いますが、マナは魔法を使おうとすると一度私たちの身体に取り込まれます。そして身体を駆け巡るうちにその人のイメージに沿った『属性』へと色を変え、発現させたい場所へと集まっていきます。

 この身体を巡る際に、適性の無い属性にマナは変化しません。つまり水属性の適性が無い人間が魔法で水を出そうとしても、身体の中でマナに水属性を付与する能力が無いために失敗してしまいます」

 

 昨日の疑問が思わぬ形で改善された。

 

 つまり、マナはマナのままでは効果を発揮することが出来ず、『属性』という味付けをすることで初めて魔法の源としての効果を発揮する、ということなのだろう。

 

 ということを理解して、僕の中で別の疑問が浮かび上がった。

 

「あの先生、一つ質問良いですか?」

 

「はい、何ですか?」

 

「それなら、付与魔法はどういった原理になっているんでしょうか?」

 

 属性魔法の原理は理解できた。属性という概念が存在する意味も理解できた。では、付与魔法はどういった原理になっているんだろうか?

 属性魔法と同じような考え方をするなら、『付与』という味付けが存在してそれをマナに与えるということになるのかもしれないが……。

 

「付与魔法をはじめとした魔道具製作に使われている魔法も、基本的には属性魔法とは仕組みは変わりません。自身の持つ適正でマナに力を与え、その効果を道具に与えるのです」

 

 先生の答えは概ね予想通りのものではあった。

 

 でも、なんか引っかかるんだよな……。この世界に来てまだ3日しか経っていないけど、魔道具を作るのがそんな簡単なことには思えない。特に『付与』って、恐らく道具に自分が望む効果を加えることだと思うけど、それが属性魔法と同じようにできるって言うのは、ちょっとどうなんだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、私は付与魔法にはそこまで詳しくないので、もしそっち方面のことでしたら実際に魔道具を製作している方に聞くのがいいと思いますよ」

 

 僕が難しい顔をして悩んでいることで察したのか、先生が苦い顔でアドバイスをくれた。気を遣わせてしまったことが申し訳なくなり、僕は慌てて頭を下げる。

 

「ああ、すいませんそんなつもりじゃ……」

 

「大丈夫ですよ。

 それでは続きですが―――」

 

 そこからは、マナの起源が謎であるという話をされた後にマナを本格的に操作する練習の時間になった。

 

 魔法を使おうとして集まってくるマナを自分の身体で循環させてその色に染めるという作業をしなければいけないんだが、この身体の中を循環させるのが非常に難しい。

 マナ自体は魔法を使おうとすれば勝手に集まってくるが、それを身体の中で巡らせるという動作は自分の意思で行わなければいけない。今まで生きてきて感じたことの無い感覚や、使ったことの無い意識の使い方を強いられる為、僕も灯火もこれには大分苦戦してしまった。

 

「……っと、今日はもう時間ですね。

 二人とも、明日もマナ操作の訓練をしますので今日はここまでにしましょう」

 

 太陽が真上に昇りきった頃、先生の号令で今日の授業はお開きとなった。

 

 ちなみに僕は属性魔法を一切使えず、付与魔法も教えて貰っていない為、今日は先生からマナを僕の身体に送ってもらって、それを循環させる練習をした。

 ……他人を経由してマナの供給が可能なのって、何かに使えそうな気がする。一応覚えとこ。

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