友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。 作:にっぱち
それでもいいよ、という心優しい方はお読みいただけますと幸いです。
「……灯火、出来た?」
「……いやだめだ。」
太陽が顔を出してから少ししてのこと。まだお昼前だというのに、僕と灯火は現在外にも出ずに部屋の中にいる。
その理由は明白。互いにマナ操作の特訓をしているからだ。
灯火は属性魔法が扱えるため、僕よりも先に『体内に集めたマナをより早く循環させ、自分の属性に染色する』という特訓を行っている。
対する僕は、『マナを体内に閉じ込めておく』という内容の特訓。僕は属性魔法が扱えないから、マナを集めて体内に留めておく、という動作が自動化出来ない。だからこうして、集めるところから自力でやらなければいけない分灯火より進みが遅い。
だから今の時間は、僕が操るマナの様子を外から見て貰っている。
「まだ一部が身体から漏れ出てる。昨日よりは大分ましになったけど、まだ抑え込めてないな」
「そっか……」
「んじゃ次、俺行くぞ」
「おっけ」
続いて、灯火のマナ操作を僕が見る。眼に微量のマナを集めてマナを捉えられるようにし、灯火の身体へと視線を移す。
灯火が人差し指を立てると、空気中のマナが灯火の元へと集まっていく。徐々に徐々に増えるマナは灯火の身体で一つに纏まり、そして灯火の身体を流れていく。何周も、何周も。
やがて周っていくうち、灯火の身体の中でマナの色が紫から青に変わっていく。そしてそのマナは灯火の立てられた指先へと向かっていき、弾けた。
「はぁ、はぁ……どう?」
「体感前と変わってない。多分12秒くらい?」
「っか~! それじゃダメだな、全っ然だめだ!」
顔に滲んだ脂汗を雑に袖で拭い、藁のベッドに身体を投げ出す灯火。僕と同じように、灯火もダインさんから課題を貰っている。
灯火に課せられた課題は『魔法発動までの時間を、遅くても5秒以内に収めること』らしい。
この5秒とはとても重要な時間で、戦闘において盾役が一切の無理なく、そして咄嗟に言われて持ちこたえられる時間らしい。それ以上の時間を掛けるとその分パーティメンバーが全滅するリスクが上がっていくんだとか。
「先生も言ってたじゃん、『数撃って慣れるしかない』って」
「……だな。まだ始まって四日目だもんな」
そうして僕らは、また同じように互いに確認しあいながらマナ操作の研鑽を重ねていく。
特訓は、その日の夜まで続いた。
「俺もうベッドから起き上がれねーわ」
「同じく」
僕と灯火は、互いにベッドに全体重を預け、天井を仰ぎ見る姿勢であっぽん口を開けていた。
マナを操作するという作業は、予想以上に疲労感が溜まる。慣れない作業だからだろうか、かつ使ったことの無いような神経を使っているような気がして、朝から晩までぶっ通しでやった今日みたいな日にはもうその後は何もしたくなくなるくらいには疲労感に苛まれる。
「飯と湯浴みー……はいいや。今日は別に剣振ったわけでもねぇし。起き上がる気力がそもそも無ぇ」
「同じく……」
喉にご飯を通すことすらやりたくなるほどの倦怠感が僕たちを襲っている今、僕らに出来ることはこうして寝ることだけだ。
「陽向~」
「何~?」
「しりとり」
「……りんご」
唐突に始まった僕と灯火のしりとり大会。ここにはゲームのような娯楽がない為、遊ぼうとすると身体を使うか頭を使うかの二択になる。
そして僕らは今、その両方を使いたくない。そんな時に選ばれた遊びが、『しりとり』だった。
「……ねこ」
「こあら」
「ら、ら、……ランゲルハンス島」
「何それ」
「膵臓の内分泌腺」
「どこで覚えたんだよそんなん」
「何だっけ……確かテレビでやってた救命〇急24時だった気がする」
「へー」
「次『う』だよ」
「う、う、……うんこ」
「もっとマシなの無かったの?」
「うるせーな今頭の中空っぽなんだよ」
「僕だってそうだよ」
「頭空っぽな奴の語彙にランゲルハンス島があってたまるか」
「あります~」
余りにも他愛もなさすぎる会話。普段だったら絶対しないような会話だが、それだけ僕らの脳は疲れていた。
この後もどうでもよすぎるしりとり大会は続き、最終的には僕の『め』攻めに対応しきれなかった灯火がふて寝するという結果で幕を閉じた。