友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章 僕じゃなくて親友が最強でした
第一章第1話 【その時不思議なことが起こった】


「…………ん?」

 

 目を開くと、そこは緑が溢れる草原の上だった。

 

 僕たちは確か、学校に向かう途中の道を歩いていたはずで、危ない子どもを助けようとしてトラックに轢かれたはずだ。

 

 ……ということは、ここは天国?

 

 死後の世界なんて当然僕は知らないから、これが天国だと誰かに言われたら認めるしかない。

 

 でも……

 

「妙に、リアル……」

 

 自分が今座っている草の感触や、照り付ける太陽の眩しさ、暑さ、そして草木の香り。肌を撫でる風の感覚が、死んだにしては妙にリアルなものだった。

 

「あれ、灯火?」

 

 辺りを見回すと、僕の隣に灯火が寝ていることに気づく。恐る恐る灯火に触れてみると、僕の手は灯火の身体を透けることなくしっかりと触ることに成功した。

 その時に感じた灯火の体温も、とても死んでいるとは思えなかった。

 

「灯火、灯火起きて」

 

 隣で眠る灯火を揺すって無理矢理起こす。灯火は鬱陶しそうに瞼を強く閉じて抵抗するが、僕はその抵抗を受け入れずに更に強く灯火を揺する。

 

「灯火起きてって、大変なんだよ!」

 

 ぱしぱしと灯火の頬を叩くと、漸く灯火は諦めたように目を開いた。

 

「灯火、僕のこと分かる?」

 

 念のため、灯火に自分のことを覚えているかの確認を取る。灯火は僕の顔を見ると諦めたようにため息を吐いた。

 

「陽向、お前死んでる?」

 

「……多分生きてる」

 

 いつから起きていたのかは分からないが、どうやら灯火も僕と同じ結論に至ったらしい。

 

 

 

 

 僕たちは恐らく死んでいない。そして僕たちのよく知る通学路から、何処かも分からない地に突然飛ばされた。という結論に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

「ねえ灯火、この状況どう思う?」

 

 僕らが今いるのは、周りを木々に囲まれた草原。広さは学校のグラウンドくらいで、草原と木以外に見えるものは空と太陽くらい、そんな場所だ。

 

「俺の記憶が正しかったら、俺たちはトラックに轢かれた……はずだ。轢かれた感覚は一切ないけど」

 

「僕もそう。最後に覚えてるのは、僕と灯火2人ともがトラックに轢かれるところだ」

 

「ってなると、ここは普通に考えれば死後の世界ってのが妥当な考えだと思うんだが……」

 

 灯火は自分の胸に手を当て、目を閉じる。

 

「……流石に死後の世界で心臓が動いてます、なんてのはあり得ないだろ」

 

「だよね……」

 

 僕と灯火の心臓は、間違いなく鼓動を打っている。それがこの世界が死後の世界であるということの、一番の否定になるだろう。

 

「じゃあここは何だ? トラックに轢かれそうになって、次に目を開けたら知らない場所でしたーって、それはそれであり得ないだろ」

 

「それは同感する」

 

 僕たちの身に何が起こったのか、そもそもここが何処なのか。ただの木々に囲まれた原っぱの上にいる僕たちには判断材料が足りなさすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ陽向。取り敢えずこの草原、抜けてみないか?」

 

 暫く2人で考え込んでいると、不意に灯火がそんな提案をしてきた。

 

「抜けるって、目の前の木々を?」

 

「ああ。多分ここって森の中だと思うんだけど、いつまでもここにいたって俺たちの身の安全が保障されるわけでもないだろ?

 生きていると分かった以上、ここで原因ばっかり考えてても仕方ないと思うんだ」

 

 確かに、灯火の言うことには一理ある。ここが何処かも分からない以上、この草原が必ずしも安全だという保障はない。それに家も食料もないのにここで何かわかるまで過ごすのはほぼ不可能だろう。

 

「ここにいるよりも一旦動いてみる方がいい、ってこと?」

 

「それに森を抜けた先に、新しい発見だってあるかもしれない。

 ここが何処なのかとか、俺たちがなんでこんなところにいるのかとか」

 

 勿論、森の中に入ることの危険性は多分にある。僕たちは今制服にスニーカーと、とても森を歩くような服装じゃない。

 それに森の中にはどんな動物がいるかも分からない。うっかり熊や毒蛇みたいな獰猛な生物に会って殺されました、何てことだってあり得る。

 

「でも、ここにいるよりはまし、か」

 

 この草原に危険性がないという保障は何処にもない。なら灯火が言うように、何か手がかりを探しに一歩踏み出すことも大事かもしれない。

 

「行こう、灯火。灯火の言う通り、ここでうだうだしてても何も分からない」

 

 僕たちは決意を固め、新たな一歩を踏み出すことにした。

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