友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第二章第4話 【明日の旅路】

「……待って!」

 

 草原だったはずの眼前の風景が、見慣れた天井になった。

 

「夢……だったのかな」

 

 思い返せば、幻想的な光景ではあった。霧に包まれた草原、そこにいる僕と謎の女の子。

 

「……草原?」

 

 そういえば、僕らが初めてこの世界に来たのも草原だった。灯火によると、僕らがいた草原はあの森の中には無いらしい。それなら僕らがいた草原は何なのという話にはなるけど、実際に僕も灯火と一緒に森に入って隅々まで歩いたけど見つけられなかったので、無いものは無いんだろう。

 

 でも、僕たちが居た場所は草原、夢で居た場所も草原とあれば、少なからずの関係を考えてしまいたくなる。

 

「……ちょっと待てって!」

 

 夢の内容について僕が考えていると、隣で寝ていた灯火が手を伸ばしながら大声を上げて飛び起きた。

 

「……灯火?」

 

「え? あ……夢か」

 

 どうやら灯火も夢を見ていたらしい。でも今「待て」って言ってたけど、もしかして……?

 

「ねえ灯火、もしかして灯火が今見てた夢って、霧がかかった草原で女の子が泣いてなかった?」

 

「……何でわかるんだよ」

 

 訝しそうな目で僕を見る灯火。もしかしなくても、灯火引いてるな。

 

「僕が見た夢がそれだったんだよ」

 

「陽向も同じ夢を見たのか?

 ……偶然、で片づけていいのか悩むな」

 

「偶然は無理あると思うけど……」

 

 

 

 

 

 念のため灯火が見た夢について尋ねてみたが、やっぱり僕が見たものと全く同じ内容だった。

 

「あの夢、僕らに何を伝えたかったんだろ……」

 

 僕らが同じタイミングで、同じ夢を見たということはきっとあの夢には()()がある。あの女の子が言っていた言葉を、僕らはもう一度思い出してみることにした。

 

「確か、女の子は草原の真ん中で泣いていた。痛い痛いって言いながら、うずくまって」

 

「うん。だから僕は、お母さんのところに行こうって提案してみたんだ。そしたら女の子が急に立ち上がって、人が変わったみたいに頑なにそれを拒否した」

 

「ああ。んで最後に言った言葉が……」

 

 

 

 騙されないで。嘘に、偽りに

 

 

 

「騙されないで、ってまあそりゃあ嘘偽りには騙されない方がいいのは事実ではある。が」

 

「状況的にもっと深い意味がありそうだよね」

 

 一体誰が僕らにメッセージを伝えたいのか分からないけど、これが言いたいだけなら直に会って言えばいい。それでもわざわざ夢という伝達方法を取ってきたってことは、そうしなければいけない理由があったということだ。

 

「現実的に僕らと会えない状況にある……とか?」

 

「囚われの身で、俺たちがまだ知らない何らかの方法、あるいは魔法を使って俺たちにメッセージを伝えたと。

 普通にありそうな話なのが困るんだよな……」

 

 半年近くピラマで暮らして尚、この世界は謎が多い。僕らにとっては未知の技術や生物が、この世界にはごまんと存在している。だから今回の出来事について考える時も、僕らが持っている『常識』という枠組みを一度取り払わなければいけない。

 

「何に騙されるなって言うんだよ……てかそもそもあの女の子は誰なんだ? あの子の言葉を素直に信じていいのか?」

 

「それは……」

 

 灯火に言われて、あの女の子が僕らに何か危害を加えようとしている可能性もあるんだということに漸く気づいた。確かに、あの子の言葉が100パーセント信用できるものであるっていう証拠は無い。

 

「……これは流石に、判断材料が足りなさすぎる。あの女の子の言葉が抽象的過ぎて一体何を指しているのかも分からないし、そもそもあの女の子の言葉が信用できるものなのかどうかも怪しい。

 メッセージをくれた人には申し訳ないけど、一旦は頭の片隅に置いておく程度にしておくしかないと思う」

 

「実際に会ってもいない人間に申し訳がる必要は無いと思うけど、俺も陽向の意見に同意だ。現状じゃどうしてみようもない」

 

 議論の結果、あの夢に関しては一度保留にして、僕らは僕らのやるべきことをやっていこうということで話は纏まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 翌日、僕がいつもと同じようにスローアさんのお店に行って手伝いをしていると、見たことのないお客さんがやってきた。

 全身を黒のローブで包み込み、嘴の尖ったマスクを身に着けている。顔も全身像も一切見えてこない不思議な人物だ。

 

 というかペストマスクだよな、あれ。細部のデザインに違いはあるものの、あれは間違いなくペストマスクだ。何であれがピラマに?

 

 そんなことを考えていると、ペストマスクのお客さんは足音一つ立てることなく僕の目の前へとやってくる。

 

「ウラサワヒナタさん、ロイハ局長がお待ちです。これから冒険者ギルドへと来ていただけますでしょうか」

 

 特に特徴的というわけでもない、普通の成人男性の声でお客さんはそう言った。ロイハ局長といえば、このタラハットの冒険者ギルドのトップを務める女性のはず。そんな人が冒険者ですらない僕を何故呼び出したんだろう?

 

「あの……今店番中なので一度スローアさんに確認を取ってきてもいいですか?」

 

「どうぞ」

 

 いきなりの事態に動転しつつも奥に潜ってスローアさんに事情を話すと、スローアさんは二つ返事で僕が店を空けることを了承してくれた。スローアさんの許可も取れたので、これから行く旨をペストマスクの男性へと伝える。

 

「畏まりました、お待ちしております」

 

 そう一言言うと、ペストマスクの男性は来た時と同じように一切の足音を立てることなくお店から出ていった。

 何事なのかさっぱり見当もつかないが、取り敢えず行くって言ったし行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 ギルドに入ると直ぐに、受付嬢の一人が僕を見つけてロイハ局長の執務室へと案内してくれる。

 

「ロイハ局長、ヒナタさんをお連れしました」

 

「ありがとう、通して。」

 

 木製の扉越しにロイハ局長の声が聞こえる。受付嬢の人がドアを開けてくれたので、軽く頭を下げて部屋へと入る。

 部屋にはロイハ局長の他に先ほどのペストマスクの男性、そして灯火もいた。

 

「あれ、灯火も呼ばれたの?」

 

 灯火は僕の方に一瞬視線を送ると、直ぐにロイハ局長へと視線を向ける。

 

「俺ら二人を呼びつけたってことは、流れ人関連ですか?」

 

 ロイハ局長は手元の資料から僕らへと視線を移し、再び手元の資料へと視線を戻す。

 

「お前ら、故郷に帰る方法を探してるんだったか?」

 

「え? ええまあ、そうですけど……」

 

「ほら」

 

 そう言って、ロイハ局長は今しがた読んでいた資料を僕らへと差し出す。その動作の意味をいきなり理解することが出来ず、僕と灯火は互いに顔を見合わせた。

 

「あの、これは……?」

 

「多分お前らが欲しいであろう情報だ」

 

 くい、と資料を振るロイハ局長。横に立つペストマスクの男性へと視線を送るが、男性は微動だにしない上にマスクのせいで表情も読み取れない。受け取っていいってことだろうか……?

 

 恐る恐るロイハ局長の元まで歩き、おずおずと資料を受け取って目を通してみる。そこにはピラマの言葉で

 

『キシワダケイゴを名乗る人物、王都付近で確認』

 

 と書かれてた。

 

「きしわだ、けいご……?」

 

「ああ、その男はこの世界、ピラマに初めて訪れた流れ人だ」

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