友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第2話 【恐らく地球ではない何処かで】

 気が付いたら、そこは何もない草原の上でした。

 登校時に持っていた鞄はいつの間にか無くなっていて、ポケットに入っていたスマホも消えていた。この身と服だけで訳の分からないところで僕たちは目を覚ましました。

 

 そんなこと、あり得る? 実際にあり得るんだからしょうがないでしょ。

 

「はぁ……」

 

 トラックに轢かれそうになったかと思ったらそんな超常的な現象に見舞われた僕たちは、灯火の提案でここが何処なのかを探る為に、森の中に入っていくことになった。

 

 僕たちは今、目覚めた原っぱから太陽があった方向に向かって進んでいる。どこに行くかという話になったときに、

 

「取り敢えず戻る時の指標があった方が何かあったときにも帰りやすいかな」

 

という灯火の考えで、太陽を自分たちの道しるべにして歩くことにした。森の中に入ることでかなり太陽が見え辛くはなってしまったけど、それでも完全に木々で隠れるってことは無いし今のところは大丈夫そうだ。

 

 

 

 

 問題は、そもそも迷うという前提自体が間違っている可能性があるってことだけど。

 

「生えてる木々は広葉樹なんだよね……だからまだここが日本の可能性も十分にある」

 

「その割には腑に落ちてなさそうな顔してんな」

 

 周りの木々を見ながら呟く僕の顔を覗き込んで灯火が話す。口に出しておいてなんだけど、僕はここが日本だとは思っていない。

 

「さっきの草原、動物の足跡らしきものが無かったのに草がぼうぼうになってなかったじゃん? あれって誰かが手入れしている証拠だと思うんだ。

 それにこの道。ここも明らかに人の手が加わった道なんだけど、整備の仕方が現代のものより甘い気がすると思わない? 灯火よくキャンプ行くって言ってたし、そことの違いとか感じない?」

 

 足元の道を見ながら灯火が唸る。僕たちが今歩いている道は、ただ土を踏み固めただけの簡素な道だ。日本によくあるような、木で囲ったり石で脇を固めて道を分かりやすくしたりといった配慮が一切ない。

 勿論日本の森にもこんな風に踏み固めただけの道なんて探せばいくらでもあるだろうけど、それにしては綺麗に固められている。それこそRPGゲームの中に出てくる森の中の道みたいだ。

 

「自然そのままって感じがしない、かと言って現代日本の舗装にしちゃ簡素過ぎる。この森の持ち主がそれを望んでやってるならまだしも、これはちょっと違和感があるな」

 

「だよね」

 

 予想通りの返答が灯火から帰ってくる。スマホが無いから連絡手段がなく、財布が無いからお金を両替して公衆電話みたいなものを使うことも出来ない。

 だから僕たちに残された手段は、現地の人に事情を説明して親なり警察なり誰かしらに連絡を取ることだ。

 

「太陽の位置的にまだ午前中だと思うけど、早いとこ森を抜けちまおう。日が暮れ始めたら完全にアウトだ」

 

 どの国の森かも分からない場所で夜に火もなしで野宿なんて、餌として食べてくださいって言ってるようなものだ。灯火の言う通り、早く森を抜けて人を探した方がいい。

 

「そうだね、急ごう」

 

 

 

 

 

 

 それから僕たちは、自分たちの体力に気を配りながらできるだけ早く森の中を歩き続けた。

 途中、野兎や野鳥みたいな無害そうな生物には出会ったけど、幸いなことに獰猛な生物には出会っていない。

 

 ただ……

 

「ねえ灯火、僕の見間違いじゃなければさっきの兎、角みたいなの生えてなかった?」

 

「……生えてたな。額にドリルみたいな角が。」

 

 僕たちの目の前に現れた兎は、僕たちを見るなり驚いて草むらの方へと逃げていった。それは良いんだけど、その見た目が少なくとも僕が見たことのあるような兎とは少し違っていた。

 額の部分からドリルのような形状をした小さな角が生えている、ゲームの中でしか見たことが無いような変異種のような兎だった。

 

「……地球上にあんな兎いるんだな、知らなかったわ」

 

「……ま、まあ、地球上には未発見種が何百万種もいるらしいから」

 

 とは言ってみたものの、僕も灯火も薄々感じていることがあった。

 

 

 

 

 

 もしかしたらここは、地球ではないんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

「……いやいや、まさか」

 

「そんな漫画みたいな展開あるわけないよな」

 

 互いの頭に浮かんだ考えを自分自身で否定する。だって地球じゃないなら、ここは一体どこだって言うんだ。

 太陽があって木々があるってことは、地球とかなりよく似た気候状況の土地ってことになる。そんな星は、太陽系には存在しない。

 

「「あ、あはははは……」」

 

 灯火の顔は、今までに見たことが無いほどに引きつっていた。

 恐らく僕の顔もこんな感じになっているんだろうな。

 

「いや、変な考えは止そう。誰かしらに会ってその人から話を聞ければ、ここが何処かってのもはっきりするんだから」

 

「そうだよね」

 

 嫌な予想を頭の中から振り払って先に進もうとした直後、

 

 

 

 

 

 目の前に、巨大な熊が()()()()()

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

 轟音と共に背中から地面に着地した大熊は、そのまま起き上がることなく地面にだらりと四肢を投げ出している。傍目から見たら死んでいるようにも見えるその恰好に、僕たちの思考はショートしかけていた。

 

「熊って、降ってくるもんだっけ?」

 

「んなわけないだろ」

 

「だよね……」

 

 灯火と現実逃避気味にそんな話をしていると、突然僕らの周りに影が差した。太陽が雲にでも隠れたのかと思って空を見上げてみると、そこには

 

「……嘘でしょ」

 

 目の前の熊とは比較にならないほど巨大な飛行体が、僕らの頭上を飛んでいた。

 

 太陽の影になっているせいでシルエットしか見えなかったが、刺々しいフォルムや不規則に動く尻尾が頭上の飛行体が飛行機や戦闘機の類ではなく生き物であることを証明していた。

 

「灯火。多分だけどさ、あれってドラゴンだよね?」

 

 僕と同じように空を見上げている灯火は、こめかみのあたりに手を添えて頭を大きく横に振った。

 

「勘弁してくれよ陽向、ドラゴンなんている訳ないだろ?

 ……あ、分かった。これきっと夢だわ。じゃないとこんなの説明がつかない」

 

 完全に現実逃避をし始めた灯火の頬をつねる。しっかりと痛みを感じたのか、灯火は「いてぇなぁ……」と遠い目になってしまった。

 

 さすがにここまで来たら認めるしかないだろう。

 

「地球、じゃないんだ。ここ」

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