友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第二章第10話 【はじめのいっぽ】

 久しぶりに出たタラハットの外。見た目的な違いは殆ど無いはずなのに……この世界に慣れたからだろうか、半年前とはどこか違って見えた。

 

「よし、それじゃあ行こうか」

 

 一旦の目的地に据えたゼストスまでは、徒歩で約5日かかる。僕はこの半年間、タラハットから一歩も外に出ていないからここら辺の土地勘が一切ない。その為、ゼストスまでの道のりがどんなものなのかも知らない。

 

「灯火はゼストスって行ったことある?」

 

 地図を確認し、目的地の方向に向かって歩きながら灯火に聞いてみる。灯火は依頼でタラハットを出ることも多く、長い時はひと月近く帰ってこないこともあった。だからもしかしたら、ゼストスにも行ったことが無いかと思って聞いてみたけど、

 

「俺はそっちの方は一度も行ったことが無いんだ。俺たちが遠征に行くのは専ら『厄災の降る地』がある方向だったからなぁ」

 

 結果は残念ながら、知らないとのことだった。それよりも気になる単語が聞こえたな?

 

「厄災の降る地? 何その名前だけでもヤバそうな場所は」

 

「ああ、何か厄災龍? とか呼ばれるドラゴンが住んでる土地なんだと。そっちの方にはタラハットみたいな大きな街が無く、冒険者なんてのも当然いないからタラハットの冒険者がちょくちょくそっちの方に住んでる人たちの依頼をこなしに行くんだ」

 

「へえ、それで」

 

 ドラゴンと言えば、半年前に僕らが見たのもドラゴンだった。もしかしてあれが厄災龍というやつなんだろうか? だとしたら、襲われることもなくこうして生きている僕らは運が良かったのかな……?

 

「そっか、行ったことないならゼストスまでのもろもろの概算も出来ないけど……まあ水とかは節約気味に行けば問題ないかな。僕そんなに喉乾かないし」

 

「戦闘職の俺に遠慮して飲まないとかはやめろよ。最悪水魔法使えば水くらい生成出来るんだし」

 

「でも飲み水くらいの量に調整するの、めっちゃ大変なんでしょ?」

 

 灯火は戦闘に適した威力の高い魔法を扱うことには非常に長けているが、飲み水とかそよ風とか火起こしとか、そういった『ちょっとあればいい』くらいの魔法の扱いが下手だ。最近『ゲイルブーツ』とかいう新技をやっと扱えるようになったらしいけど、それでもやっぱり生活で使うと考えると魔法の威力は高い。

 

「……俺の実力不足を叩くなよ」

 

「叩いてないよ。ただ戦闘までして大変なのにそれ以上の負担を強いたくないだけ。何のためにお金出して水買ったと思ってんの」

 

「うぐ……」

 

 渋い顔をする灯火。別に僕も責めているつもりはなく、事実を言っているだけなんだから仕方ない。

 

「ほら、いつまでもダメージ受けてないで早く行こ。ただでさえ寝坊したせいで時間がないんだから」

 

「へい……」

 

「そんなに落ち込むならこの旅の間で練習すればいいじゃん。僕だって移動中とかはマナ操作の練習してるし、夜は本読みながら魔道具師としての修業をするつもりだし」

 

 初めの頃は止まって集中しながらじゃないと出来なかったマナ操作も、今では呼吸のように無意識に行うことが出来るようになった。灯火と違い、僕はほぼ毎日このマナ操作を行わなければいけない環境にいた為、これだけは灯火よりも上手くできる自信がある。

 

「……分かってるよ、俺だってそのつもりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから僕らは、通学路を歩いている時のように他愛もない雑談をしながら道を歩き続けた。勿論無警戒という訳ではなく、周囲にしっかりと警戒しながら。

 とは言っても、ここら辺は見通しもよく森の中のように障害物になるようなものも全く無い平原だ。カメレオンのように保護色を持って襲ってくるような生物がいるならまだしも、灯火の知り合いから貰った情報によるとそういった動物や魔物はここら辺には生息していないらしい。

 

「……拍子抜けするくらい平和だね」

 

「陽向は修羅の道がお好みか?」

 

 灯火が茶化してくるので、僕は灯火の意見を訂正する。

 

「いや、勿論楽なのがいいのは当たり前なんだけど……一応、たくさんの魔物に襲われる覚悟くらいはしてたから、その覚悟が無駄になりそうだと思うと、なんか……」

 

「実際のところ、命を脅かす魔物ってのはこんな見晴らしのいい場所にはあんまり出てこないらしいぞ。魔物だって馬鹿じゃないから、自分の住処は人目につかないところに作るし、自分よりも強い敵に無理に挑みに行ったりはしないんだ」

 

「そこら辺は、普通の動物と似てるんだね」

 

「まあ実際に戦った時の強さが動物とは桁違いだけどな」

 

 旅のお供にと、灯火が苦笑いを浮かべながら今までに戦ってきた魔物について僕に語ってくれる。灯火の話によると、ピラマで言う魔物はゲームの中に出てくるようなファンタジー味溢れるものが多いらしいが、その生態は限りなくリアルなんだそうだ。

 特にスライム系の生物は、身体が半透明なものが多く中で消化中の生物がしっかりと見えてしまう為、それはそれは精神的にしんどいらしい。

 

「会いたくないなぁ、スライム」

 

 ゲームの中だとあんなに愛らしい見た目なのに、現実は非常だ。

 

「こっちの方にも出るのかね? そもそも魔物自体が出るか怪しいとこだけど」

 

 陽が沈みかけている現在、僕らは今日野宿する場所を探しながら歩いているところだけど見渡す限り平野で危険らしい危険が微塵も存在していない。だから野宿の場所は選び放題、という訳だ。

 

「完全に暗くなる前に火を起こしておきたいよね」

 

「任せとけ」

 

「魔道具持ってきたから大丈夫です」

 

 背中の麻袋から一つの魔道具を取り出す。ステッキ状のそれは、マナを通すことで小さな火を発生させることができる、簡易版のバーナのようなものだ。

 

「この辺でいいか」

 

「だな」

 

 適当な場所に荷物を下ろして、野宿の準備をする。と言っても準備することといえば焚火の用意と夕食の準備をすることくらいなので、手分けして準備を進めていくことにする。

 灯火に薪の調達をお願いして、僕は食材の下ごしらえを。まだそんなに歩いてないし、今日は節約気味にスープとパンにしようかな。

 

 

 

 

 

 その後僕らは夕食を食べ、互いに火の番を交代しながら眠ることになった。起きている間、ずっと魔道具師の鍛錬をしていたのはまあ言うまでもない。

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