友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第二章第11話 【情けは人の為ならず】

「……なんだあれ?」

 

 タラハットを出て今日で三日目。話すネタも大分尽き始め、景色の変わることの無い平原にそろそろ飽きてきた頃、僕らは街道の脇に人を発見した。

 遠くて顔や姿は見えないが、どうも3~4人くらいはいるっぽい。

 

「取り敢えず近づいてみる?」

 

 近寄ったらいきなり襲ってくる、なんていう可能性もゼロじゃない。でもこんなところで真昼間に留まっている理由となれば、かなり限られてくるだろう。もしかすると僕らが持ってるポーションが必要になる可能性もあるし。

 

「ヤバそうだったら逃げるで」

 

「うん、それで行こう」

 

 ピラマは日本のように治安がいいとはお世辞にも言えない。盗賊だって出るし、人は簡単に死ぬ。だからこそ、最大限に警戒するのは当然のことと言える。

 

 でも、それと親切心を忘れるというのはまた別の話。困っているなら助けて損は無いだろう。

 最悪逃げられるように灯火に風魔法の用意だけしておいてもらって、僕らは街道脇の人物の元へと歩み寄る。

 近づくにつれ、段々と街道脇の人たちの様子が明らかになっていく。

 

 彼らは、四人の男女グループだった。一人の男性を囲うように、三人が周囲を警戒しているようだった。その内の一人、澄んだ青い髪をポニーテールに纏めた女性が僕らに気づくと、向こうも警戒心を露わにして腰に携えた剣をこちらに向けてきた。

 

 反射的に両手を挙げてしまう僕だけど、こっちでもハンズアップって無抵抗の意味になってるのかな?

 

 対して灯火は、先ほどまでの警戒を解いて無防備な格好で四人の元へと歩み寄っていく。

 

「近づくな! それ以上来ると斬る!」

 

 剣を持った女性が、僕らの方を睨みつけながら怒鳴る。いきなり怒鳴られたから思わず身体が反応して肩がビクッ、となってしまった。ちなみに灯火は一切動じていない。

 

「落ち着け、俺らは冒険者だ」

 

 両手で落ち着くように促しながら、脚を止めることなく近づく。向こうは三人で陣形を組み、こちらに対して攻撃を仕掛けようとしている。さっきの青髪の女性と、もう一人青髪の男性剣士が二人、弓を携えた赤い髪の弓士が後ろに一人といった構成だ。

 

「だから落ち着けって、俺らに戦う意思はない。怪我してるならポーション持ってるし、渡そうとしてるだけだ」

 

 流石にこれ以上近づくと攻撃されると判断した僕たちは、一度足を止めて話し合いの姿勢に移ることにした。

 

「…………」

 

 依然として臨戦態勢を崩さない三人だが、仲間内で小さく何か話している様子だ。僕らと四人の距離は既に20メートルほどにまで近づいていて、襲い掛かろうと思えばできなくもない距離にいる。

 

「もし警戒してるなら、これで信じてくれるか?」

 

 そう言って、灯火は背中の剣を地面に置いた。その行動にぎょっとした三人は、ぽかんと口を開けて固まってしまった。

 

「で、そっち行っていいか?」

 

 お互いに固まった状態で5分くらいが経過して、痺れを切らした灯火がめんどくさそうに頭を搔きながら言った。向こうもその一言で我に返ったのか、慌てて武器をしまうと僕らに手招きをしてきた。

 

「けが人がいる。大したことは無いと思うが、立てない程痛いらしい」

 

 近寄ってみると、地面にうずくまっている黒髪の男性が一人、そこにはいた。足を抑え、歯を食いしばりながら痛みに耐えている様子だ。相当な痛みに襲われているのだろう、脂汗もひどい。

 

「陽向」

 

 灯火が僕に視線を送る。ここからは僕の出番だ。

 

「ちょっと手を失礼しますね」

 

 男性が抑えている手をどけると、そこには大きな穴が開いたふくらはぎがあった。焼き爛れた穴の側面は赤黒くなっている。不幸中の幸いだが、そのおかげで失血死するという事態を免れることが出来たんだろう。

 

「うぅぅ……」

 

 男性が小さく唸る。そのグロテスクな光景に今朝食べたものが喉元まで昇って来たけど、無理矢理吐き出すのを抑える。袋の中から濃い緑色のポーションと赤いポーションを二本取り出し、緑の方を男性の口元へと持っていく。

 

「苦いですが、これを全部飲んで下さい。今から足にかけるポーションの効果を促進するものです。決して毒ではありません」

 

 ゆっくりでいいので全部飲み干すように指示する。痛みのせいで上手く呑み込めないのか、少し口から零れ出てはしまったけど大体は飲んでくれた。

 

「御免なさい、かなり沁みると思うのでより痛みが来るとは思いますが我慢してください。

 もし暴れるようであれば、皆さんで抑えてください」

 

 灯火を含め、四人にアイコンタクトを送る。赤いポーションは冒険者の間でもよく使われているものなので、他の三人も怪我をしている男性もその効果は知っているんだろう。皆覚悟を決めたような表情をしていた。

 

「それでは、いきますよ……」

 

「あああああああがあああああああ!!! いでぇえええええええええ!!!!!」

 

 ゆっくりと、傷口全体に染みわたるようにポーションを穴の内側にかける。液が傷口にかかる度に、男性が悲鳴にも似た絶叫を上げながらのたうち回ろうとするが、それを四人が全力で押さえる。

 均等にポーションがかかるように回しながらかけ、中身を全部かけ終わったところで傷口に変化が訪れる。

 

 男性が暴れながら絶叫してそれを四人が押さえつけているという構図は変わらないが、傷口の周りから肉がもりもりと湧きだし、あっという間に傷口を塞ぐ。見ようによっては傷よりこの光景の方が余程気持ち悪いかもしれないが、ポーションを学ぶ際にスローアさんに嫌という程見せられたので僕は慣れた。

 

 数分で傷は完全に塞がり、元通りの綺麗な足がそこにはあった。

 

「まだ痛みはあるかとは思いますので、暫くは安静にしていてください」

 

 医者でもないのに、そんなことを無意識に言った自分自身に笑いそうになる。このポーションという魔道具が、この世界に医者という職種が存在しない最大の理由だ。

 ある程度の傷なら一瞬で治し、直ぐに前線に復帰させることが出来る。それなのに副作用らしい副作用が無く、比較的簡単に入手することも出来る。

 

 人間よりも強い生物が当たり前に跋扈しているこの世界だからこそ、人類が生きるために開発したと言えば聞こえはいいが……

 

「だとしても、これは流石にチートだよなぁ……」

 

 ゲームじゃないんだし、HPがあるわけでもないのに、簡単に怪我が治る世界。そりゃあ無茶だってしやすくなるし、命だって軽くなる。

 

 ポーションが入っていた小瓶を袋に戻しながらこの世界の現実を憂いていると、

 

「あの、ありがとうございました。助けて頂いて……」

 

 後ろから声を掛けられた。振り返ると、先ほど僕らに向かって剣を向けていた一人の女性が申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。

 

「いえ。ポーションの持ち合わせが無かったんですか?」

 

「……お恥ずかしながら、初めて行く場所だったものでポーションの量を読み違えてしまい、帰りにフレアスライムに襲われてしまったせいで怪我を……」

 

 フレアスライム、確かこれもスライム系の魔物だったはずだ。なるほど、それで傷口があんなことになっていたのか。

 

「……あの、少しお聞きしたいんですが、皆さんはどちらに向かう予定で?」

 

「ゼストスです。私たちはそこを拠点にしているので」

 

 帰る途中だったと言っていたので、もしかしたらと思って聞いてみる。結果は見事にビンゴ、僕らの目的地と一緒だ。

 

「あの、提案なんですけど……僕らも同行してもいいですか? ここからゼストスまでだと恐らくあと二日は掛かると思いますし、その間にまた何者かに襲われたら大変ですし」

 

 僕が提案すると、女性は目を丸くしてこちらを見つめてきた。

 

「……私たちは寧ろありがたいですが、そちらにメリットが無いのでは?」

 

「夜に番を回すのが、二人だと結構きつくて……」

 

 恥ずかしそうに言うと、女性は「ああ、なるほど」と納得したように頷いた。

 

 ここまでで二回の夜を二人で過ごしたわけだけど、それがまあしんどい。睡眠なんて殆ど取れないし、朝は眠気で思考が纏まらない。魔道具師の勉強をしようにも、一切頭に入ってこない。

 

 だから、ここで仲間が出来るというのは僕らにもちゃんとメリットがあるということだ。

 

「……それなら、お願いしようかな。

 私はレイ、宜しく」

 

「僕は陽向です。宜しくお願いします」

 

 互いに固い握手を交わし、僕らは一時的にパーティを組むことになった。

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