友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第二章第12話 【OD】

「……ところで、あれは大丈夫なのか?」

 

 レイさんが後ろを指差しながら僕に問いかける。視線をそっちに移すと、ひとしきり叫び疲れたのか先ほどの怪我を負った男性が眠っていた。

 

「ああ、あれは多分さっきまで痛みに耐えていた分の疲れが出て眠っているんだと思います。足の方は徐々に治っているところなので、起きた時に違和感が無ければ大丈夫だと思います」

 

 多分レイさんはあの男性が死んでしまったのではないかと勘違いしたのだろう。まあそりゃパーティーメンバーが命の危機に陥って、さっきまで泣き叫んでいたのにポーションを飲んだ途端に静かに眠ったら心配にもなるよな。

 

「そうか……改めて、危ないところを助けて頂き本当にありがとう。

 実は私たちが持っているポーションをすべて試してみたんだが、一向に効く気配がなく、それどころか飲んだポーションを吐き出してしまって……」

 

「えっ!?」

 

 レイさんの話を聞き、急いで男性の元へと駆け寄る。眠った男性の介護をしている二人の男女を引き剥がし、男性の腹部の辺りに手をかざしてマナを集中させる。

 

「……ヒナタさん?」

 

「すまん、ちょっと黙ってて」

 

「え?」

 

 僕に話しかけようとするレイさんを、灯火が静止する。ありがと灯火。

 

 掌に意識を向け、『分離』の魔法の準備をする。同時に男性の身体を巡るマナの中から僕が飲ませたポーションと、それ以外に残存するポーションを見極める。

 

「……これだ」

 

 僕が飲ませたポーション以外のポーションの成分を男性の体内で『分離』させる。そして分離させたポーションの素材をさらに『分離』、それをさらに『分離』、さらに『分離』……

 

 

 

 

 

 真上にあった太陽が傾きかけたころに、漸く男性の体内にあるポーションの成分の完全分離に成功した。

 

「危なかった……」

 

 極度の緊張状態から解放された僕は、そのまま仰向けに倒れこむ。額には大量の汗が滲んでいて、目に入ってきたせいでそれが沁みる。

 きっと外科医の人とかは、毎日これ以上の緊張状態の中で難しい手術を沢山成功させているんだろうな、なんてふと思った。

 

「おい、お前ダグラスに何をした?」

 

 寝転ぶ僕を見下ろす形で、腰に片手用の直剣を携えた青髪の青年が僕を厳しい目で睨みつけていた。

 

「助けてやったんだよ、二度も。それなのにその態度は無いんじゃないのか?」

 

 そんな青年に突っかかるように、灯火が睨みつける。青年も灯火の方へと視線を向けると、険しい顔で言い返す。

 

「そんなこと、分からないじゃないか。俺たちにはこいつが何をやったか分からない。さっき飲ませたものだって、ポーションじゃなくて毒なのかもしれないだろ」

 

「……あぁ?」

 

 まずい、これ以上は非常にまずい。

 

 僕は慌てて起き上がると、青年と灯火の間に入って一触即発の空気を断ち切ろうと試みる。

 

「ストップ! これに関しては説明も無しに行動に移った僕が悪いから、ね灯火!」

 

 灯火に目で『ここは抑えてくれ』と訴えかける。僕の意図を汲み取ってくれた灯火は、不承不承と言った形でそっぽを向いてしまった。

 取り敢えず灯火の方はこれでよし。後は皆に対する説明をしなきゃいけない。

 

「先ほどは突き飛ばしてしまって申し訳ありませんでした。一刻を争う事態だと勝手に判断してしまったため、あのような強引な方法を取ってしまいました」

 

 まずは謝罪。相手の溜飲を下げないことには聞いてもらえる話も聞いてもらえない。

 

「……あんた、あれは何をやってたんだよ」

 

「さっき僕がやっていたのは、『体内のポーションの効果を分解して無力化させる』というものです。

 まず、何故そう言ったことをしなければいけなかったのか、ということから説明させてもらいます」

 

 この世界のポーションは、RPGに出てくるようなものほど万能ではない。基本的には地球にある薬と同じようなもので、用法と容量が存在する。一日の容量を超える量を摂取すれば体調に支障をきたす可能性があるし、一度に大量のポーションを飲めばオーバードーズの原因にもなる。

 スローアさんの話によれば、今までにもポーションの多量摂取で人が死んだ例は幾つかあるらしい。でもそれがポーションが原因であると分かったのはかなり最近のことだと言う。一人の流れ人が、それを発見したのだとか。

 

 つまり、今回寝込んでいる男性もそのオーバードーズで死んでしまう可能性があった。だから体内の自浄作用に任せるのではなく、僕の力で無理矢理ポーションの成分を細かく分離して無効化させる必要があったのだ。

 

「この話は、まだ世間的に広く認知されていません。なのでここで覚えてください、ポーションの過剰摂取は危険だと」

 

「……でもよ、その容量ってのはどれくらいなんだよ?」

 

「それは……すいません、まだ分かっていません。ただ過去の例から、一日に10本以上のポーションを飲むか一度に5本以上のポーションを飲むと体に害が出る可能性があるとは言われています」

 

「……曖昧だな」

 

「そこは、ごめんなさい。僕たち魔道具師の力不足としか言えません」

 

「なら、お前が飲ませたポーションはどうなんだ? あれだって、ダグラスを危険に晒す可能性があったんじゃ―――」

 

「陽向、もう行こう」

 

 僕と青年の話を遮るように、灯火が割って入ってくる。灯火の顔は、明らかに怒っていた。

 

「……灯火?」

 

「受けた恩義を素直に受け取らないどころか、疑ってかかる奴らに俺はこれ以上構いたくない」

 

「……でも、彼らだって知らなかったんだから仕方が無いと思うし、僕の行動だって傍から見たら大分怪しかったと、思う」

 

「だとしてもだ。命の危機から仲間を二度も救ったのに、お礼の一つも出ないような奴を俺は信用できない」

 

「灯火……」

 

 僕はよく知っている。普段は僕の意見を極力聞いてくれる灯火も、こうなってしまってはどうしようも無いことを。

 でも、ここは灯火に矛を収めて貰わなければならない。ここでこの人たちとのパーティーを解散すれば、ゼストスまでの道のりは何とかなってもゼストス内での生活で苦労する場面が出てくるかもしれない。敵はなるべく作らず、味方は出来るだけ作っておいたほうがいい。

 

「灯火、今回は―――」

 

「いい加減にしろユース!」

 

 灯火を何とか宥めようとしていた時に、レイさんの怒号が響く。驚いてレイさんの方を見ると、レイさんは青年を物凄い形相で睨んでいた。

 

「命の恩人に対して何だその態度は!」

 

「でも姉さん! こいつらが嘘を言っている可能性も」

 

「こいつらではない! 言葉遣いに気を付けろ!」

 

 どうやら、レイさんと青年は姉弟の関係にあるらしい。腰に手を当て、なおも青年を叱るレイさん。

 

「お前の方こそ、何を根拠にヒナタさんたちが嘘を言っていると思っている?」

 

「……だって、ダグラスが目を覚まさないから」

 

「それについての説明は先ほどヒナタさんがしてくれたはずだ」

 

「だから、それが嘘の可能性も」

 

「その根拠は何だと聞いている」

 

 有無を言わさぬ口調で青年を捻じ伏せるレイさん。どの世界でも、姉は強いと言ったところなのだろうか。

 

「…………」

 

 暫く口での攻防が続いてたが、初めから勝負は決まっていたも同然だっただろう。涙目の青年が僕と灯火のところへと歩み寄り

 

「……変に疑って、すいませんでした」

 

 と謝ってくれた。

 

「私からも済まない。命の恩人だと言うのに、弟のユースが疑ってかかるような真似をしてしまって」

 

「いえ、こちらこそ疑われるような行動をしてしまったのが原因ですし……」

 

「それもこれも、我々の知識不足が故だ。本当に申し訳ない」

 

 ユースさんの頭を押さえつけ、レイさん共々再び頭を下げられる。

 

「灯火?」

 

「……わーったよ。陽向がいいなら、俺はそれでいい」

 

 一度怒ってしまった手前引き下がれないのか、僕を理由にする灯火。

 

「僕は仲直りしてくれるならそれでいいよ」

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