友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第3話 【いつの時代の城塞都市】

 頭上を飛ぶドラゴンは、地上の僕たちに目もくれずにどこかへと飛び去ってしまった。

 

 そして降ってきた熊は、僕らが触ってもピクリとも動かなかったのでそのまま放置していくことにした。あんなもの、手ぶらの僕らにはどうしてみようもない。

 

 先へと進みながら、僕たちは一度自分たちの状況やこの世界について整理することになった。

 

「僕の意見では、多分ここは地球じゃない。そして太陽系に存在する惑星でもないと思う。

 まだ観測されていないような、地球によく似た星って言うのが僕の考えなんだけど……灯火はどう思う?」

 

「概ね同意。ただもしかしたらパラレルワールドって線もある」

 

「パラレルワールド……もしそうだとしても順当に時代が進んだ2021年の世界とは言えなくない?」

 

 ドラゴンや地球じゃ有り得ないサイズの熊、角の生えた兎なんかは過去にそういう生態系の変化があった世界と言われればまだ分からないこともない。

 でもそうだとして、科学の進歩が殆ど成されていなさそうなのはどうなんだろう? 少なくともビルのような建物は見当たらないし、あれだけ大きなドラゴンが空を飛び回っているのにそれに対して戦闘機が出てこないって言うのも引っかかる。

 

「……すまん、まだ地球っていう選択肢を放棄したくなかっただけだ」

 

「いや、いいよ灯火。僕だってここが地球だったら嬉しいって気持ちはまだ残ってるから」

 

 あからさまに落胆する灯火の肩を叩く。そりゃあここが地球だったらいいな、っていう気持ちは僕にだってあるさ。でも希望を持つのと現実を見るのはまた別の話だ。

 

「じゃあ灯火も、僕の考えに賛成?」

 

「ああ。俺たちはトラックに轢かれそうになった拍子に何か不思議な事が起こって、地球によく似た全く別の惑星に飛ばされた。そんな感じだと思う」

 

「改めて言葉にしてみると本当に現実味が無いね……」

 

「本にしたらウケるかもな」

 

「生きて帰れたらね」

 

 多少の冗談を交わしてはいるが、そうでもしないと受け止めきれない情報量で頭がパンクしてしまいそうになる。

 

「生きて帰れたら……か。そもそもそんな方法あるんだろうかね。俺たちってここに来た経緯とか、方法さえ一切知らないわけだし」

 

 灯火の疑問に、僕は目を伏せてしまう。来る方法があるんだから帰る方法だってあるのかもしれないが、それを探す術が現状の僕らには一切用意されていない。

 

「……まずはこの世界について知る必要があるのかもしれない。ここが地球じゃないとしても、この世界の人に会って話をして、この世界についての情報を集めることが第一だと思う」

 

「話って……ここ地球じゃないんだろ? コミュニケーション取れんの?」

 

「あ……」

 

 完全に失念していた。日本どころか地球ですらないなら、コミュニケーションなんて不可能だろう。そうなれば情報集めなんてできっこないし、結局この世界について知ることもできない。

 

「まあ、まずはこの森抜けちまおうぜ。あんな大熊やドラゴンがいるような場所に安全なんて期待するだけ無駄だろうし、開けた場所に出れば今後の方針も見えてくるだろ」

 

 僕の頭に手を置くと、ぐしゃぐしゃと乱雑に撫でまわす灯火。僕が落ち込んでいる時は、決まってこうして雑なスキンシップを取ってくる。今回は「一人で悩むな」って言ってくれているみたいで、何だか慰められた気持ちになった。

 

「うん、ありがとうね灯火」

 

 灯火のお陰で多少は気持ちも晴れた。僕らに後退するっていう選択肢はないんだし、とにかく進んでみるしかない。この先に何があるのかなんて想像も出来ないけど、何もせずに朽ちていくよりはマシなはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思って歩き続けて、結構な時間が経った。

 

 太陽は既に傾きかけている。正確な時間は分からないが、きっと午後になってからまあまあな時間が経ったんだろう。そんなころに、僕たちは漸く森を抜けることに成功した。

 

 そして、僕らの身長の数十倍はありそうな高さの壁に囲まれた街を発見した。

 

「城塞都市、かな?」

 

 森の中からもチラチラと見えてはいたが、こうして全貌を見るとその大きさが分かる。恐らく円形に作られた壁が、僕らの前に鎮座している。僕らを出迎えるかのように森に面する形で構えられた門には、街に入る為の許可を得るためのものであろう行列ができている。

 

「並んでみるか?」

 

「言葉はどうするのさ」

 

「ボディランゲージで何とかならないかな」

 

「えー……。無理だと思うけどな」

 

「でもこのまま外で生活するのは流石に無理だろ。ほら行こうぜ」

 

「ああちょっと灯火!」

 

 灯火に引っ張られる形で僕たちは列に並ぶ。同じく列に並んでいるこの世界の住人と思しき人たちは、僕らを見ると納得したように頷いてまた視線を前へと戻した。

 

「……?」

 

 僕たち以外の人たちは、皆動きやすさを重視したようなチュニックのような服にズボンといった格好で、色や装飾に違いはあれどTシャツやスーツ、僕たちみたいに制服を着ている人は誰一人としていなかった。

 まるで中世のヨーロッパで着られていた『ゴネル』や『ブラカエ』に似ている衣服を着用している。そう思った時に、ふと目の前の城壁に目が移った。

 

「中世以降の城壁ってこれくらい高いものが用いられることが多いんだっけ……?」

 

「ん? ああそういえばそんなこと世界史の中西先生が言ってたっけ。

 もしかして陽向、まだここが地球である可能性を捨てきれてないのか?」

 

 僕の独り言に反応した灯火が、同じように目の前の城壁を見ながら答える。

 

「いやそういう訳じゃなくて、ここまで来ると本当にファンタジーの中みたいだなって」

 

「中世に用いられたみたいな城壁……ああ、言われてみればこの人たちが着てる服ってゴネルか」

 

「見た目が似てるだけだと思うけど……」

 

「でも陽向の言う通り、本当にファンタジーの世界みたいだな。中世ヨーロッパみたいな世界観で、空にはドラゴン。熊や兎の見た目はしてるけど、明らかに違った部位が存在している生物か。

 ここまで来たら、いっそ魔法とかあるかもな」

 

「魔法って……まさかそんなこと」

 

「ありますよ」

 

 僕と灯火の話に割り込む形で、僕たちの前に並んでいる男性が()()()()話しかけてくる。

 

「魔法、ありますよ。流れ人のお二方」

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