友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第4話 【心優しき隣人】

「え、今、日本語?」

 

 急にやってきた、僕と灯火以外の声。しかもそれが日本語となれば、そりゃあ戸惑いもする。

 コミュ障が緊張しまくったときみたいな言語能力になってしまったけど、何とか言いたいことは伝えることが出来た。

 

「にほんご……ああ、貴方がたの扱う言語のことですかね。

 残念ながら私たちが話しているのはその『にほんご』というものではないですよ」

 

 僕らよりも20歳は上であろう男性が丁寧な口調で答える。男性は他の人と同じようにゴネルに似た服を着ているが、髪や髭が清潔に整えられている。それに言葉遣いが物凄く丁寧で物腰が柔らかい。

 

「えっと……じゃあなんで僕と貴方は会話を?」

 

 男性の言うように言語が違うと言うなら、何故僕は目の前の男性とコミュニケーションが取れているというのだろうか。

 まさかこの世界では『日本語』が別の言語として使われているとか? そんな都合のいいことあるんだろうか?

 

「ああ、確か『すきる』……だったかな? それのお陰で会話ができるとかいうことを、別の流れ人が言ってましたね」

 

「……スキル?」

 

「なんだそれ?」

 

 灯火と顔を見合わせてはてなマークを浮かべていると、男性は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「あ、ああ申し訳ありません。他の流れ人の方は皆一様にスキルがどうこう~みたいなお話をされていたので、てっきり流れ人の方々には共通の認識なのだとばかり」

 

「ああいえそんな、知らないこちらが悪いんですから謝らないでください」

 

 丁寧すぎる、というかそれを超えてもはや気持ち悪さすら感じる男性の態度に気持ち引きながらも僕らは会話を続ける。

 

「あの、幾つかお聞きしたいことがあるんですけど聞いても宜しいですか?」

 

「ええ、私に答えられることなら」

 

 笑顔で答える男性。当初は無理だと思われていたこの世界の人とのコミュニケーションを取れたおかげで、情報収集が大幅に楽になってくれた。これは嬉しすぎる誤算だ。

 

「ありがとうございます。

 早速なんですが、ここは何という名前の星ですか?」

 

「星……この世界のことですかね? それでしたら、ここは『ピラマ』という名前です」

 

「ピラマ……」

 

 やっぱり聞いたことの無い名前の星だ。灯火の方を見てみるが、灯火も聞き覚えが無いようで黙って首を横に振った。

 

「じゃあ、あの城塞都市の名前は?」

 

「あれは『タラハット』という街です。この辺りでは大きめの街で、結構ご飯が美味しいと有名なところなんですよ」

 

「タラハット……」

 

 こちらも同じように聞き覚えが無い。そうであるなら本格的に、この世界についての情報を一から集める必要があるのか。

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。次なんですけど、さっきから僕たちのことをずっと『流れ人』って仰ってましたけど、流れ人って何ですか?」

 

 場所については大方分かった……と言うより聞いてもあまり意味が無いことが分かったので、僕は次にこの男性との会話の中で出てきた『流れ人』という言葉について聞くことにした。もしこの言葉の意味が僕の考えと一致するなら、もしかすると地球に帰る方法は思ったよりも早く見つけられるかもしれない。

 

「ああ、流れ人とは貴方がたのように別のところから来る人のことを纏めてそう呼んでいるんです」

 

 もっと核心に近づくような答えが欲しかった僕は、更に質問を重ねる。

 

「その別のところって、何処かって聞いてたりしますか?」

 

「ええと、聞いたことがある気はするんですけど……なんて言ってたかな……」

 

 この時点で、僕の中ではほぼ確信めいたものがあった。頭の中に浮かんでいるその言葉を、男性に向かって発してみる。

 

「もしかしてですけど、それって『地球』じゃないですか?」

 

 僕がそういうと、男性は喉につかえた小骨が取れたかのようなスッキリとした顔で答える。

 

「ああそうだそれだ! 私が会った流れ人の方は皆そのちきゅう、から来たと仰っていましたね」

 

 やっぱり。この人は僕らを見てすぐに僕らが『流れ人』だと分かっていた。ってことはこの人が見てきた流れ人と僕らの見た目で一致する特徴があるはずだ。

 顔つきとか細かい違いはあるのかもしれないが、多分一番見て分かりやすい違いは『服装』だろう。この世界の人々の服装と僕らの服装は明らかに違い過ぎる。恐らく他の流れ人もこういった洋服を着ていることが多いはずだから、この人も僕たちが流れ人だと分かったのかもしれない。

 

「ってことは、他の流れ人に話を聞けば何か帰る為の手がかりが掴めるかもしれないな」

 

 灯火の顔が自然と綻ぶ。何も分からないところに突然飛ばされて、自分たちで色々と模索しながら不安だらけの道を進んできたところで初めての明確な進展。この世界の人とコミュニケーションが取れたことが大きすぎる。

 

 かと思ったら、急に何かに気づいたかのように表情を曇らせた。

 

「あ、でもそっか……」

 

「どうしたの? 灯火」

 

「いや、その流れ人を探せば手がかりを見つけられるかもしれないと思ったんだけど、そもそも探そうとしたら聞き込みをしたり移動をしたりしなきゃいけないだろ。

 今の俺たちにはこの世界の通貨を持っていないから、移動は自然と徒歩になる。あんなドラゴンとか巨大熊とかがいる世界で戦う術も無しに徒歩で旅って、無謀通り越して不可能だな、って思って」

 

「……うん。問題はそこなんだよね」

 

 それには僕も気づいてはいた。探すにしても僕らにはそれをするだけの『力』が無い。財力や戦力、それに旅をするなら野営するための能力だって必要になってくる。それら全てが欠けている僕らには、帰る方法を探しているような余裕が無い。

 知識の面だけで言えば進展したかもしれないけど、現状は何も進展してはいないんだ。

 

「え? お二人とも冒険者登録をするためにこの街に来たのではないんですか?」

 

「冒険者登録?」

 

 落胆する僕らを見て、またも男性が聞き覚えの無い言葉を口にする。さっきからこんなのばっかりだ。

 

「流れ人の方は大半が冒険者の登録をしていると聞きましたが……お二人ともその為にここに来たのでは?」

 

 どうも僕たちみたいに地球からここへとやってきた人たちはみんな『冒険者登録』というものをやっているらしい。ドラゴンに冒険者って、いよいよファンタジーじみてきたな。

 

「……申し訳ありません。僕たちこの世界に来てから殆ど時間が経っていない上に、この世界でコミュニケーションを取れたのは貴方が初めてなんです。なのでこの世界の仕組みについても何一つ分かっていなくて……」

 

 僕がそう言うと、男性は合点がいったようで納得したような顔になった。

 

「なるほど、そういうことでしたか。いやはやそれは気が利かずに申し訳ありません。

 何分今まで私が出会った流れ人と言えば、みんながみんな全てを分かっているように色々なことをこなしていたので、流れ人とはそういうものなのだとばかり」

 

「全てを、ですか……」

 

 もしかして、この世界に来る人間として僕たちはかなり異端な部類なのではないだろうか。他の流れ人がみんなこの世界についての事前知識を持って来ているんだとしたら、僕らは一体なんでこんなことになっているんだ?

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