友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第6話 【城塞都市タラハット】

 タラハットの街の中は、昔旅行で行ったチェコやイタリアの街並みによく似ていた。

 

 石造りの街道の脇に建てられたレンガ造りの建物、壁の色は白や薄茶のものが多く、屋根はオレンジ色のものが殆ど。またその下には露店だろうか、テントを張って果物や野菜のようなものを売っている人達が見受けられる。

 道幅は人の往来に不自由しない程度には広く作られているが、それでもかなり往来が多いようでそんな道幅も狭く感じてしまう。

 人々の服装は、やはりチュニックのような服を身に着けている。この世界ではこの服が一般的な服装らしく、制服姿の僕らの格好はかなり浮いているように感じられた。

 

「まさに中世ヨーロッパ、って感じだね」

 

「でかい川が近くにあったら情緒的には完璧だな」

 

 都会に初めて上がってきた田舎者のようにきょろきょろと周りを見渡す。日本では絶対に見られない街並みに、僕の心も自然と踊ってしまう。

 

「……って、観光してる場合じゃなかった。冒険者ギルドに行かなきゃ」

 

 危うく観光気分になりかけていた頭を無理矢理切り替える。僕らはここに遊びに来たわけじゃないんだから、油なんて売ってる暇はない。

 

「検閲官の人の話だと、ここを真っすぐ行った先だよね」

 

「そう言ってたな。ただ、結構道が入り組んでるから、迷子になりそうで怖ぇ」

 

 目の前の道は真っすぐ一直線ではなく、多少斜めに曲がっている。取り敢えずはこの大通りに沿って進めば問題はなさそうだけど、灯火の言う通り迷子になりそうなのがちょっと怖い。

 

「行ってみようか」

 

 検閲官の人がわざわざ嘘を言う理由もないだろうし、その言葉を信じて僕たちは大通りを歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫く歩いていると、目の前に他の建物とは一回りほど大きさの違う平屋の建物が見えてきた。

 

「あれかな?」

 

 よく見ると、正面の看板と思しきものには盾に剣が交差して描かれた絵が見える。あれが検閲官の人が言っていた目印の看板なのだろう。

 その絵の上には、何やら模様のようなものが描かれている。

 

「あれなんだろうけど、上に描かれてるのなんだろ?」

 

「……順当に考えれば文字、か? でも見たことないから分からん。この世界独自の文字なのかもしれないけど」

 

「あー独自の文字、ありそう」

 

 楔形文字と言われれば何となくそんな雰囲気も無くは無いかもしれないが、あれが文字なのかどうかも正直分からない。

 

「まあ入ってみりゃ分かるだろ。今までの感じだと文字は読めなくても話は出来るみたいだし」

 

「この世界の言葉なんて触れたことも全くないのに、現地の人達とコミュニケーション取れるって言うのも物凄く変な話なんだけどね」

 

 僕たちは冒険者登録という目的を果たすために、冒険者ギルドの門戸を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドの中は、結構な人で賑わっていた。

 

 筋骨隆々なものもいれば、そんな体躯で戦えるのだろうかと疑問を抱きたくなるようなひょろりとしたもの、また体躯をすっぽりと覆い隠すようなローブに身を包んだものと様々な人がいる。

 しかし共通しているのが、皆が皆各々の獲物を携えているということ。あるものは自分の身長よりも長い大剣、あるものは腰に携えた片手直剣、またあるものは木でできたと思しき杖。先ほどまでの街並みから感じられた観光感とは打って変わり、ここはまさに『異世界』を感じさせる場所だった。

 

「地球じゃ絶対見られない光景だね」

 

「あ、ああ。ある程度想像はしていたけど、実際に見ると圧倒されるな、この光景」

 

 全員が全員、人間の命を簡単に刈り取れる武器を持っている空間。日本で生きていた僕たちからしたら恐怖でしかない。

 それでも、暫くはここで生きていくしかないんだから早くこの空間にも慣れなきゃいけない。

 

「お前ら、流れ人か?」

 

 出入口のところで突っ立っていた僕たちに、背中に剣を携えた男性が横から声を掛けてくる。男性の顔には右目の辺りから顎にかけて大きな切り傷があり、いきなり声を掛けられたこととその傷に驚いてしまった僕は一瞬男性から後ずさってしまう。

 

「え!? あ、あの、え、あ、はい、そうです……」

 

 驚く僕とは対照的に、灯火は平然とした顔で受け答えをする。

 

「すいません。俺たち今日この世界に来たばっかりで右も左も分からない状態なもので」

 

「……そうか。流れ人なら門を通る時に紹介状を貰っているだろう。受け付けはあそこだ、一番右の緑の頭巾を被った受付嬢にその紙を持っていけ」

 

 男性が指をさした先―――ちょうど入口を入って左側の奥に市役所のような木造のカウンターが設置されている。

 カウンターには、頭巾を被りワンピースのような服を着た4人の女性が横に並んで座っている。色によって対応するものが違うのだろうか、それぞれが色の違う衣服を身に着けていて、別の冒険者の方たちの対応をしている最中だった。

 

「ありがとうございます」

 

「あ、ありがとございます……」

 

 灯火と僕がそれぞれ男性冒険者にお礼を言って、教えてもらった受付嬢の列に並ぶ。

 

「陽向お前、なんでそんなにビビってんだ?」

 

 ケロッとした顔で灯火が言う。こいつ、さっきまで圧倒されるとか言ってたはずなのになんでこんなに平然としていられるんだ。

 

「そりゃあビビりもするでしょ。あんなごっつい大剣担いだ男の人にいきなり話しかけられたら」

 

「そうか? 寧ろガチ感が出てワクワクしね?」

 

「灯火さっきからそればっかり……。ほんと頼むよ? 僕がさっき言ったこと、覚えてる?」

 

「分かってるよ。これは現実なんだからそんな夢見心地でいるなよ、って言いたいんだろ」

 

「……分かってるならいいけど」

 

 さっきから妙にソワソワしている灯火が心配になる。やっぱり格闘技をやっているからこういった戦闘シーンが多くなるシチュエーションが来ると()()()()んだろうか。僕には分からない感覚だけど。

 

「ほれ、俺らの番だぞ」

 

 灯火が顎で前に視線を送るようにサインする。見ると受付嬢が手を挙げて「次の方、こちらへどうぞー!」と元気よく僕たちを呼んでいた。

 

「……はあ」

 

 僕の心配なんてどこ吹く風、と目を輝かせる灯火を見て溜息が口から零れ出る。こうなってしまったらもう何を言っても無駄だろう。せめて最悪の事態が起こらないように僕がカバーしていく他ない。

 僕たちはさっき検閲官から貰った紹介状を取り出し、受付嬢の元へと持って行った。

 

「あの、僕たち流れ人です。冒険者登録をしたいんですが」

 

「はい、冒険者登録ですね。それではまずは紹介状をお預かりいたします」

 

 紹介状には、この建物に書かれていた文字のようなものと似たものがびっしりと書かれていた。やっぱりこれが、この世界の言語であり文字なのだろう。

 受付嬢は紹介状を受け取ると、それぞれに目を通し始める。

 

 

 

 

 

「……はい、ありがとうございます。

 確認ですが、お二人はどちらからここに?」

 

「……門の向こうにある森です。そこにある原っぱから」

 

「え、森の原っぱ、ですか……?」

 

 僕が答えると、女性は怪訝な顔をした。

 来た場所を答えただけでこんな反応をされると、何かまずいことを言ったのではないかと不安になってくる。

 

「……あの、何か問題がありましたか?」

 

「ああいえ、もしかしたら私の記憶違いかもしれませんし大丈夫です。

 ではこれから、冒険者登録の為の手続きに移らせて頂きますね」

 

 不安感に耐え切れず僕が聞くと、女性は即座に否定し先ほどと同じ笑顔に戻った。

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