友人の【魔法適正】が最強クラスだったので、僕は大人しく支援に回ろうと思います。   作:にっぱち

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第一章第7話 【リゾマータ・ディアファニス】

 受付の女性の表情が曇った理由は結局分からず、僕らはそのまま冒険者へと登録する手続きへと移ることになった。

 

「お二人はこの世界の文字は書けますか?」

 

「いえ、書けません」

 

「分かりました。ではこちらで代筆させて頂きますので、お名前と年齢を教えて頂けますか?」

 

「僕は浦沢陽向、17歳です。でこっちが―――」

 

 僕が言った内容をサラサラと紙に書き込む女性。その紙を覗き込んでみるが、やっぱり読めない。話している言葉は日本語なのに記入している文字は別物なのってすっごい違和感があるな。

 文字の読み書きができないってかなり不便だし、あとでこの世界の言葉も覚えないと。

 

「……はい、ありがとうございます。こちらで必要事項の記入は終わりましたので、最後に魔法適正を測らせて頂きます」

 

「魔法適正……って、何ですか?」

 

「……あ、ああ失礼しました。

 魔法適正とは、文字通り魔法の適正値のことです。この世界の魔法は主に『地・水・火・風』の四つに分類されていて、その属性に対する適正がどのくらいあるのか、というのをこちらの魔道具を使って計測させていただきます。

 何らかの属性に対する適正が確認できた場合は、ギルドで開催している『流れ人向けの魔法講義』を受講することをお勧めします」

 

 女性が説明しながら僕らの前に大きな水晶玉のようなものを置く。見た目は普通の水晶玉だけど、これで計測ができるんだろうか。

 それに魔道具とは一体何だろう。また新しい言葉が出てきてそろそろ頭が痛くなってきた。

 

「まずは陽向さんからお願いします。こちらの水晶に手を触れて頂きますと、適性を測ることができますので」

 

 女性に言われるまま、僕は水晶に手を触れる。

 

「……適正無し。はい、ありがとうございます」

 

 水晶には特に何か変化が起こるといったことは無かった。女性は淡々と紙に何かを書き込み、僕に手を離すように促す。

 というか今、適性無しって言わなかったか? ってことは僕は魔法が使えないってこと?

 ……いや、冷静に考えればそれが普通なのか。日本にいて魔法なんて使ってる人見たことないし。

 

「それでは次に、灯火さんお願いします」

 

 僕と交代する形で、灯火が水晶に手を触れる。すると水晶は黄、青、赤、緑の四色に強く輝きを放った。

 

「四属性すべてに強い適正有り……と。はい、ありがとうございます」

 

 灯火はまさかの全属性に対する適正有り。しかもどうやら強い適正らしい。

 

「灯火、魔法使えたの?」

 

「使えるわけねーだろ。もし使えてたら高校なんて行かずに魔法使いとして一儲けしてるわ」

 

 灯火もこれは驚きだったらしい。そりゃあ10年来の親友が魔法使いでした、なんて言われてそうだったんだー! と受け入れ喜べるわけがない。

 

「恐らくお二人の故郷である()()()()にはこの世界に溢れている『マナ』が存在していないので、魔法が身近に無かったんだと思います」

 

 これ以上知らない単語を出すのは勘弁してほしい。今日一日で一体どれだけの情報を流し込まれるんだ。

 

「……あの、先ほど言っていた『魔道具』と『マナ』って何ですか?」

 

 それでも聞かないわけにはいかない。その情報を知らなかったせいで命を落としました、なんてことになったら洒落にならないからだ。

 

「『魔道具』とは魔法を使った特殊な製法で作られた道具のことで、マナを流し込むことでその魔道具に付与された効果を発揮することが出来ます。

 『マナ』とはこの世界に溢れる魔法の源のようなものです。普通は目では見えませんが、訓練を積めば目視することも出来るようになりますよ」

 

 魔道具もマナも、どちらもファンタジー味の溢れる内容だった。いや、だからってどうのって訳じゃないんだけど、結局説明を受けたところで何も分からなかった。

 

「……ありがとうございます」

 

「いえ。

 ではこれで、こちらでの手続きは以上となります。明日からですが、早速魔法に関する講義を始めることも出来ますが受講しますか?」

 

 女性は僕ではなく灯火の方を見ながら聞く。適性が無いから僕は講義を受けても意味が無いということなのだろう。別にこの女性に悪意は無いと思うが、ちょっと心にくるものがある。

 

「俺は受けます。陽向はどうする?」

 

「僕はいいや。灯火が講義を受けている間に、僕は色々と調べものをしておくよ」

 

 まあ、講義を受ける分の時間が丸々空いたと思えばいいだけのことだ。灯火が講義を受けている間、僕はこの世界に関する知識を深めて今後の生活基盤を整えるための準備をすればいい。

 

「分かりました。では灯火さんのみの受講と言うことで手続きを進めておきますね。

 講義を受けている期間中は、こちらからお二人に宿の手配と一日あたり銀貨一枚を支給させて頂きます」

 

 宿とお金を手配してくれるのは非常にありがたい。というか宿とかこの世界のお金とか、そこまで頭が回っていなかったから言われて思い出したくらいだ。

 

「銀貨一枚でどれくらいのものが買えるんですか?」

 

「そうですね……大体二人分の一日の食事代を多少節約すれば賄えるくらい、でしょうか」

 

 二人で節約して一日銀貨一枚の食事、ってことは別に節約しなくても銀貨二枚なら一日分の食事でお釣りがくるって計算で問題なさそうかな。無駄遣いするつもりはさらさらないけど、わざわざひもじい思いをしなきゃいけない理由もない。

 それに食事は身体を作ったり自分自身のメンタルを保つためにも大事なものだし、ちゃんと賄えるなら別に無理をすることもないだろう。

 

「分かりました、教えて頂いてありがとうございます」

 

「いえいえ。

 では以上で、冒険者登録は完了となります。こちらで手配した宿までの簡単な地図をお渡ししますので、後でそちらに向かってください」

 

 僕らに同じ絵が描かれた二枚の紙が手渡される。現代のものみたいに真っ白というわけではないが、黒のインクで描かれたここから宿までの簡易的な地図は問題なく読み取ることが出来る。

 

「今日はもう早速宿に行って、これからのことについての計画を立てよっか」

 

「そうだな。色々ありすぎて疲れたし、飯食って話し合って寝よう」

 

 思えばここまでとんでもない出来事ばかりだったなぁ。この世界に来てドラゴンや巨大熊を見て、この世界についての知識を沢山教えてもらって、冒険者として登録する。ここまでで一日も経っていないというのだから驚きだ。色々と起こりすぎだろう。

 

 僕らはギルドを後にすると、指定された宿に向かって真っすぐに歩き出した。

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