対戦相手は未来の自分…?
理不尽な未来のパワーカードが程々に襲いかかる!
現代の汎用カード群を持って過去に飛んだら…をコンセプトに、
コンパクトなデュエルを書き殴りました。
ー2011年12月某日、とあるトレカショップのとあるフリースペースにて。
ここに、いくつかの課題を抱える悩める少年が一人…
「ORDER OF CHAOS」発売から数日。
新たに登場した強力なテーマ【甲虫装機】【ゼンマイ】が結果と実績を残し、公式大会からフリー環境まで、その名を聞かない日は無かった。
そんな大きな新参者達に対し、こちらが用意した対抗策。
伏せカードを多用し、堅実に攻めていくー
通称【メタビート】を制作。
したはいいのだが、まだまだ試作段階。
自信を持つには経験も知識も不足していた。
無論、足踏みしてては始まらない。
幸い、この悩みを解消するだけの時間はあった。
経験が足りなければ場数を、知識が足りなければ研究を重ねれば良いのだ。
故に、この課題はそう問題とならず解消されていく事だろう。
では、もう一つの課題の方であるがー
『俺の新しいデッキの実験相手になってもらおうか』
⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘
時は数分前に遡る。
構築に必要なカードを購入し、フリースペースの端のテーブルにて、少年はデッキの再構築を行っていた。
開店から間もなく入店した事もあってか、店内は驚くほど静かであった。
平日のこの時間帯は殆ど来店者はいない上、フリースペースはかなり広く、空調も整っているため、広々とした空間で一人で集中して作業することを好む彼にとって、まさに穴場とも言える環境であった。
『こんな朝早くからデッキ構築とは、精が出るな少年?』
心地の良い静寂を破る一言。
いつの間にやら、テーブルの向かいには何処かで見たような鏡の中で出会ったような。
自らを俯瞰的に見てみたかのような顔付きの青年が座っているではないか。
「はぁ、どうも。どちら様ですか?」
『俺かい?そうだな…俺はお前さんさ』
?
疑問符一つ。
「…説明をお願いしても?」
『約10年後の未来からやってきたお前さん自身さ』
???
疑問符は増えていく。
言葉の意味はわかるが、頭が理解を拒む。
言葉が頭に入って通り過ぎていく。
集中できてないこちらの落ち度だろうか。
「…何の為に」
『10年後のカードプールを以てすれば、平凡な自分でもキングオブデュエリストになれるのではないかと思ってね』
甘かった。しっかり聞いてみても、意味はわからない上、趣旨もわからなかった。
そもそもどうやって時間旅行したんだ。
『ちょっと前から見ていたが。
お前さん、自分のデッキ構築にあまり納得がいってないように見受けられるな。
練習や経験も兼ねて兄ちゃんと一戦どうだろうか?』
「兄ちゃんって…アンタ未来の…?…ぁぁ、俺だろう。それでいいのか」
とはいえ、この酔狂な男が言ってる事が真実であるなら、これは貴重な経験だ。
未来のカードと一足早く手合わせ願えるなど、フライングも良いとこだ。
ちょうど時間もあるし乗ってやるとした。
『…あ〜…』
「? どうした?」
『いや、ね。ここには急遽過去に飛ぶ機会を少しの間だけ得たが故に来たんよね。
でも出発までのタイムリミットがあるからと慌てて来たもんだから、肝心のデッキを忘れてしまったんだよね』
「お前何しに来たんだ」
『心配無用。強力な汎用カードが入ったストレージボックスだけはしっかり沢山持ってきた!これさえあれば解決、この時代ではやっていけるだろうさ。
今からデッキ組むからちょっと待っててな!』
嘘だろう俺の未来。
正しく時を経ていけば、将来自分はこんなアホになり果てるのか。
冗談きついぜ。信じられるものか。
そう思うとただ、戦慄した。
⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘
更に十数分後、未来人がデッキを組み上げ、ようやくデュエルが開始した。
『じゃあ先行貰うぞ。モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドだ。
俺のターンは終わりだ。さあ己のターンだ、かかってらっしゃい!!』
動きだけは勢いが良すぎる1ターン目。
「紛らわしいわ。…というかドローフェイズのドロー忘れてないか?」
『いや先行はドローできないんで』
「えっ」
『色々あるのさ。ドローどうぞ』
「あ、はい。ドローします」
余りのカードで組んだデッキとはいえ、未来から来たという割には大人しいスタートだ。
未来でも、今とはそれほど戦術には差は無いのだろうか。
なんにしてもこちらも引かねば進まないし、その真相もわからない。
「メインフェイズ。まずは《サイクロン》発動。対象は右側のセットカード」
『いいだろう。破壊されたのは《聖なるバリア-ミラーフォース-》』
「いきなり良いカードを割ったみたいだ。
続けて《魔導戦士ブレイカー》召喚」
ATK1600/DEF1000
『召喚も通すよ』
「ではそのまま《ブレイカー》の効果で残りのセットカードを破壊する」
『破壊された《ミラーフォース・ランチャー》の効果を発動。墓地のこのカードと《聖なるバリア-ミラーフォース-》を再セットする。この《ミラーフォース》はこのターン発動できる』
「えっ」
何が起こったのだろうか。
2度アクションを起こしたら、場が元に戻っているではないか。
『見るがいい』
差し出されたカードのテキストを見て、納得せざるをえなかった。
ああ確かにこうなるわ。
「マジかよ…2枚伏せてターンエンド」
『おや。殴らない。ではターン貰うよ。
ドローして…《強欲で謙虚な壺》発動。
デッキの上から3枚めくるよ』
「通すよ」
《強欲で謙虚な壺》
《死者蘇生》
《聖なるバリア-ミラーフォース-》
『そんな良い捲れ方じゃないなぁ。とりあえず《ミラフォ》でいいや』
「待って。《ミラーフォース》制限じゃないの!?2枚目だろそれ!?」
驚きは続く。しかも今度は既存のカードで。
『いや、無制限なので…』
「3枚目あるかもしれないの!?」
そういえば《ランチャー》には《ミラーフォース》をデッキ・墓地から量産する能力もあると書いてたな…
《ミラーフォース》も安くなったものだ
『残りはデッキに戻す。一枚伏せて終了。
ドローどうぞ』
「あ、はい。ドローします」
あからさまに罠。ノータイムでのカードセット。あれはミラーフォースの可能性が高い。
というかミラーフォースだ。ミラーフォース以外ありえない。手札シャッフルすらしてなかった。
2枚目だけど3枚目のミラーフォース。
吐き気がしそうだが仕方ない。
呪詛の様に唱えたところで状況は変わらないのだから。
「2枚目の《ブレイカー》を召喚。
召喚後、効果でさっきセットしたカードの右のセットを破壊する」
《聖なるバリア-ミラーフォース-》
『…効果を使わせたと捉えておこう』
「ではそのままバトル。《ブレイカー》でセットモンスターを攻撃」
『見えていたよな?《ミラーフォース》発動』
「見えているとも。チェーンして《スターライト・ロード》発動!」
『おおっとこれは手厳しい』
強力なカードでも、見えているならやりようはあるというものだ。
「《ミラーフォース》を無効にし、《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」
ATK2500/DEF2000
「攻撃は止まらない。そのまま《ブレイカー》は攻撃続行だ」
《黒き森のウィッチ》
パワーカードのオンパレード。
ついに禁止カードまで顔を出してきた。
「禁止カードでは…?」
『エラッタされて無制限になった』
「エラッタとかあるんだ…」
『名称ターン1でしか使えなくなったのと、エンドフェイズまでサーチしたカードの効果が発動できなくなった』
そう言ってカードを提示された。
ああ確かにテキスト変わってるわ…
未来では問題なく使えるし、効果も違うからこっちでも使っていいよねって考えなのだろうかこいつは。
《ミラーフォース》に至っては、まだこちらでも制限カードなのだが。
『…で、効果処理するけどいいかい?』
「通すよ」
『手札に加えるカードは…
守備力0のレベル7モンスター《ダイナレスラー・パンクラトプス》』
「ダイナレスラーパンクラトプス」
なんだあのカード。
二足歩行のトリケラトプスがファイティングポーズをとっている。
…いや、ふざけてはいない。本当にそうとしか説明できん。
『効果、見なくていいのかい?』
「効果ぁ…いや、後でいいや。サーチしたって事はすぐ出てくるだろう。そのまま《ブレイカー》と《スタダ》でダイレクトアタック」
『ぐぇっ』
-1600
-2500
LP8000→3900
「ターン終了」
『いい調子じゃあないか。ターン貰うよ』
黒き森のウィッチで手札に加えたカード。
驚きの連打による精神的疲弊とイラストのインパクトが邪魔をしてテキスト確認を怠ってしまったが、どういうカードかのおおよその予想は付く。
ライフと盤面共に劣勢のこの状況で、わざわざ高レベルのカードを劣勢時に持ってきた。
これから短期決戦になりそうなこの状況にて、わざわざ事故要因を手札に加える筈はない。
ということは即座に使うことが可能なカード。それも《ダーク・アームド・ドラゴン》のような除去効果を併せ持った特殊召喚モンスターではないか、と予想できる。
だが、こちらには破壊効果に牽制できる《スターダスト》がいる。
《ダーク・アームド》のような高い攻撃力で先に《スターダスト》を処理しようものなら、先にこの《奈落の落とし穴》で始末してやる。
『では手始めに…《強欲で貪欲な壺》を発動。デッキの上から10枚裏側表示で除外することで、2枚ドローする』
「豪快な発動条件と…裏側、除外…?
タイムカプセルとかサイ・ガールのテキストでしか見た事のない表現だ…」
『ハハ、いい反応だ。とはいえ、こっちでも割と最近になってよく聞くようになった表現さ。まだまだ種類は少ないけどね。
…では、チェーンは無さそうなので10枚除外し、2枚ドローする』
「…」
デッキごっそり減ったな。
あんなもん未来では使われてんのか。あっぶねぇな。
『処理後…自分フィールドにモンスターが存在せず相手フィールドにのみモンスターが存在する為、手札から《TGストライカー》を特殊召喚』
ATK800/DEF0
「知ってるカードだ」
『この特殊召喚成功後、このモンスターはレベル2なので、さらに手札から《TGワーウルフ》を特殊召喚』
ATK1200/DEF0
「知ってるカードだ」
『そして《ダイナレスラー・パンクラトプス》を特殊召喚』
「知らないカードだ」
ATK2600/DEF0
『このカードは自分フィールドのモンスターの数が相手より少ない場合に手札から特殊召喚できる』
「《サイバー・ドラゴン》なんかより数倍簡単過ぎる召喚条件じゃねえか!!!」
『攻撃力は2600。そしてコイツは自分フィールドのダイナレスラーと名の付いたモンスターをリリースして、カードを一枚破壊できる効果がある。そしてこの効果はー』
「《スターダスト》より攻撃力高い上に、なんだそのふざけたオマケ効果は!!
使わせる前に始末する…!《奈落の落とし穴》発動!」
『ー相手ターンでも発動できる。
チェーンしてこのカードをリリース。《スターダスト》を破壊する』
「えっ」
『無効にしてもいいが、《スタロ》から出てきたモンスターだったよなぁ』
「……ッ」
迂闊だった。
効果の発動タイミングが、とかいう話ではない。
危機感が足りていなかった。
未知のカード群というインパクトにつられてテキストを確認しなかったこともそうだ。
読んでいたなら、《インヴェルズ ・ローチ》を呼び、対抗はできていた筈だ。
疎かにしたばっかりに、致命的な盤面が出来上がりつつある。
敗北が頭を過ぎる。
『さて、ここから呼び出せるカードは色々選択肢があるが…ここは場を掃除しつつライフゲームを制することを優先としよう。抵抗する術も場にはないみたいだしな。
このTG2体を使い、シンクロ召喚。
レベル5、シンクロチューナー《TGスター・ガーディアン》‼︎』
ATK100/DEF2200
「未知の…TGモンスター!!」
アニメで登場した未来人の使用したカテゴリを、目の前の未来人を名乗る人間が使用しているという粋な演出。
しかし感心している場合ではない。
その矛は、この瞬間自らに向いている。
『シンクロ召喚成功時、墓地の《TGワーウルフ》を手札に加える。
その後、《ガーディアン》の効果を発動。
今加えた《TGワーウルフ》を特殊召喚する』
「シンクロチューナーということはまさか…」
『そのまさかだよ。さらにこの2体でシンクロ召喚!
レベル8《B・F-降魔弓のハマ》‼︎』
ATK2800/DEF2000
「TGじゃないのか…」
少し残念
『何を落胆している?
今からその場は壊滅するんだ。
戦いに集中しなさいよ。
シンクロモンスターを素材としたこのカードは2回攻撃できる!バトルフェイズ!
《ハマ》で《ブレイカー》に攻撃!』
「くっ…2800の2回攻撃で合計2400ダメージか…」
『違うね。《ハマ》は戦闘ダメージを与えた場合、相手場のモンスター全ての攻撃力を1000下げる!つまり合計3400さ!
バトルを終了。メインフェイズ2、カードを一枚伏せてターン終了だ』
-1200
-2200
LP8000→4600
「手痛くやられたな…ドロー」
《激流葬》
テキストを確認する限り、《ハマ》に耐性は無い…
【B・F】がどういうテーマかは全くの未知数だが、あの手札枚数や墓地の状況では何かあるとも考えにくい…ならば…!
「《N・グランモール》召喚!
こいつでそのシンクロモンスターを吹き飛ばし、一旦体制を整える」
『なるほど。EXデッキから召喚されたモンスター群にとってその効果は天敵と言っていい。攻撃さえ通るなら、毎ターン《強制脱出装置》を使ってると言ってもいい強力な効果だ』
「そうさ。そしてそいつには攻撃を止める効果は備わっていない。そうだな?」
『ああその通りだ』
フィールドの公開情報を口に出しながら、緊張をほぐし、思考をまとめ予測する。
間違いなく奴は罠を貼っている…。
それでもここは攻めざるを得ない。
攻めるしかない。
「なんだよ。余裕って感じだな…もしかしてもうこいつは未来では脅威ではないのか?
…いや、話してても仕方ないし解決しないな…バトルフェイズ!
《グランモール》で《ハマ》を攻撃‼︎」
『いいやぁ?別にそういうわけではないさ。
対象を取らない効果故、並大抵のモンスターカードならそれ一枚で処理できる。
現環境でも強力な効果である事は間違いないよ。安心したまえよ』
「なら…」
『そいつはこっちでは無制限カードになっているんだよ。
攻撃しなければ、攻撃が通らなければ、召喚権を消費しなければ発動しない。
いくつ止める手段があると思う?
…ようはそいつも力不足なのさ。
攻撃宣言時、トラップ発動!!』
「(…!!3枚目の《ミラーフォース》か!?
だが、こちらには《禁じられた聖槍》がある。たとえ罠だったとしても1対1交換が成立し、この攻撃は通…
『《リビングデッドの呼び声》。
対象は《ダイナレスラー・パンクラトプス》』
ATK2600/DEF0
「………は?」
『何もなければ特殊召喚成功時、即座に《パンクラトプス》をリリースし効果発動。
《グランモール》を破壊す
「待て待て待て待て!!そいつ、蘇生できるのか!?特殊召喚モンスターじゃないのか!?」
未来人は不思議そうに首を傾げた。
嘘なんて言ってないが、みたいな。
まるで自分が頓珍漢な事を言ってしまったかのような。
無知は罪。知らぬのが悪。
対戦相手は何も悪くない。くぅ、ムカツク。
「《ダムド》とは違うということか…
メイン2。2枚伏せてターン終了」
『ではターンを貰う。スタンバイとメイン飛ばしてバトルフェイズ。
《ハマ》で1度目の攻撃だ』
「…ッ!ダメージステップ開始時、速攻魔法《禁じられた聖槍》発動!」
-2000
LP4600→2600
ーー2回攻撃
両方受けてしまうと敗北してしまう。
使わざるを得ない状況だった。
『間髪入れず、2回目の攻撃!』
「《聖槍》で魔法罠が受けない相手には何も無い
『ならバトルステップ‼︎手札の《ジュラゲド》の特殊能力発動!
このカードを特殊召喚し、1000ライフ回復する!!』
ATK1700/DEF1300
「こんな伏兵を…だがそいつの攻撃は通さない!特殊召喚成功時、トラップ発動《激流葬》!!この効力で場のモンスターカードを墓地へと直葬する!!」
《ハマ》に使いたかったが、やむを得ない
『それが最後の抵抗札か。ならこれで決着だ』
「どういう…」
『《激流葬》にチェーンし、《ジュラゲド》の効果発動!このカードをリリースし、自分フィールドのモンスター一体の攻撃力を次のターン終了時まで1000アップさせる‼︎』
「なッ…」
『終の一矢を放ち、これでこのゲームは幕を閉じる…攻撃続行だ…!!』
「………!!!」
-3000
ーー決着。
⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘
『いやぁ、残念でしたねぇ。
御粗末な構築で挑んでしまった事に関しては申し訳ないと思っているが、これはこれでいい駆け引きができて楽しかったよ、うん』
悪意は無さそうな表情で、未来人は先の対戦で使用し散らばったカード達を集め、後始末をしていた。
『使用していたカード群やら時代を見るに、結構強めのデッキを調整していたんだろう。
となれば、雑に組み上げたデッキでもこの時代ではやっていけるというわけだ』
「たかだか一戦で…」
こちらのプレイに粗が無かったかと言われれば、間違いなくあった。
未練のある戦いではあった。
ただ…
『へえ、ならどうする?』
ほら来た。
やはりこれは再戦を促す挑発だ。
表情にこそ悪意は見られないが、言葉の節々にこちらの気分を逆撫でさせるかのような要素がある。
未知のパワーカード群を何も知らないプレイヤーに使う都合上、多少なり後ろめたさみたいなものがあるのか知らないが、自らの口から再戦を言い出そうとしない。
こちらから言わせようとしている。
腹立たしい。
「いや納得行かんよ。もう一度戦え」
こう言えば満足か。
そういう感情を込めた視線でメッセージを返す。
『宜しい。ではもう一戦だ』
ああ、腹立たしい
奴が言っている事が全て真であるなら、俺がどういう返し方をするかわかっててこんな言葉を投げてきたのだろう。
あからさまに目が見開き、口の端が上がっているし…。
とりあえず、今はこの常に上から目線な上っ面だけ似せたような劣悪なドッペルゲンガーに敗北を味合わせることだけを考えるとする。
「絶対に こうはならん…」
⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘
対戦前のチープな会話を終え、2戦目が開始した。
コイントスの結果、再び先行は未来人からとなった。
『ではこちらのターン。ドローフェイズ、スタンバイ過ぎてメイン』
こちらのデッキは変わらず【メタビート】。
その戦法の都合上、できるだけ先に罠を貼っておきたかったのだが、生憎とコインに嫌われ後攻。
ターン1にして、早くも不利なのである。
対して未来人は、先程何やら店員と話して何かを購入、それらも加えて別のデッキを作った様子。
先程の雑な【グッドスタッフ】とは違うデッキになったと考えて差し支えない筈だが…さて…
『《成金忍者》召喚。手札の《生存境界》を捨て、効果発動』
ATK500/DEF1800
「チェーンして手札から《エフェクト・ヴェーラー》の効果。そのモンスターの効果を無効にする」
『へぇ…』
《成金忍者》…
罠一枚をコストにデッキから忍者を呼ぶモンスターだ。
あちらの時代ではわからないが、現時点の【忍者】において《忍者マスター HANZO》と共にデッキの起点となり得るカードだ。
もしあちらでも扱いが同じであるなら、ここで止めておくのは間違ってない筈だ。
これで相手場には低ステータスのモンスターが棒立ちとなる。
それより気がかりなのは墓地に送った《生存境界》の方だ。
テキストを読む限り、恐竜族をサポートするカードだが…
『《成金》は止められたが、ターンは続くぞ。カードを一枚伏せて終了だ』
「…ああ。ではこちらのターン。
ドローフェイズ…」
《強欲で謙虚な壺》
悪い引きではない。デッキ内容がいくらか割れてしまい、ターン中の特殊召喚件を放棄してしまうが、それでもデッキ回転率を大きく上げてくれるカードだ。
早速発動 と行きたいところではあるが、気がかりなのは伏せカード。
そして棒立ちの「忍者」の存在…
「《フォトン・スラッシャー》特殊召喚」
ATK2100/DEF0
起点は潰した…つもりだったが、すでにキーカードを握っていたケースを考えれば、ここは発動するべきではない。
先行を取られ、主導権まで握られればこちらに勝ち目は無いのだ。
『バトルフェイズ開始時、《成金忍者》と《フォトン・スラッシャー》を対象に永続罠《忍法-超変化の術》発動』
「(やはり来た…ッ!!)」
『効果処理。対象モンスターを墓地に送り、墓地に送ったモンスターのレベルの合計値以下のレベルのドラゴン・恐竜・海竜族モンスターを特殊召喚する。合計レベルは8。』
嫌な予感は当たるものだ。劣勢ではあるが、致命傷は避けられた。
墓地に送った《生存境界》の存在から、恐竜族モンスターの混在したデッキというのは読めていた。未来のカードにどんなものがあるのかわからない都合、何が出てくるのかはわからないが…
…ちょっと待て。恐竜族…?
『《ダイナレスラー・パンクラトプス》』
ATK2600/DEF0
「またお前か」
またこいつである
「だが、今度は対抗策がある。
メイン2、《地砕き》発動。
相手場の最も守備力の高いモンスターを破壊する。厄介なそいつはさっさと始末する。
これで振り出しに戻
『チェーンする。手札から《幻創のミセラサウルス》の効果発動!
このターン、恐竜族は相手の発動した効果を受けない』
「!! そんなカードが…!
…っ、やむを得ない。モンスターとカードを一枚ずつ伏せて終了だ」
『エンドには破壊効果は撃たない。
そのままターンを貰う、ドローフェイズ』
非常に困る場面だ。
下手な除去を撃てば、チェーンして逃げられ、否応無しに2:1交換になってしまう。
早くも枯渇したこの手札枚数でそれは極力避けたい。
何より困るのは墓地の《生存境界》。
罠カードであるあのカードは、好きなタイミングで発動し、恐竜族を道連れにこちらの場のカードを一枚抜き去ってしまう。
この存在から、奴が恐竜族をコントロールし続けている限り、ゲームの主導権を握られ続ける事になる。あのカード2枚がある限り、現状俺に勝ち目は無い。
『スタンバイ過ぎてメイン。
墓地の《ミセラサウルス》の効果を発動。
このカードのみを除外し、デッキからレベル1の恐竜を特殊召喚…チェーンは』
「無い(そんな効果もあるのか…)」
『ではチューナーモンスター《ジュラック・アウロ》を特殊召喚』
ATK200/DEF200
「…何も、無い」
チューナー…嫌な予感がする
『シンクロ召喚レベル8』
「なッ!?シンクロだと!?」
『《ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット》』
ATK3000/DEF0
「あれほどまでに強い《パンクラトプス》を…ああ…そいつもダイナレスラーなのか…」
まだ2枚しか見れていないが、個々の性能がこれほどまでに高いポテンシャル。
ここまで多用しているのを見るに、推測であるが【ダイナレスラー】は向こうでの環境デッキの一つなのかもしれない。
「ダイナレスラー…強力なテーマだな…」
…? おい、なんだその微妙そうな顔は。
『召喚時には何も無さそうだな?
では第一の効果!1ターンに一度、相手のモンスター一体を破壊する!対象はセットモンスター!!』
「《魂を削る死霊》が…破壊される」
『いいカードを葬った。戦闘によっては破壊されないそのカードは、時間稼ぎに優れた一枚だからな。デュエルが頓着する前に早めに倒せて少々ホッとしているよ…
ではバトルフェイズ!
やれ!《ギガ・スピノサバット》!!
プレイヤーにダイレクトアタック!!』
「なら
『この瞬間、第二の効果!
このカードが戦闘する場合、ダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動できない!!』
「!?」
-3000
LP8000→5000
『今の一瞬の反応を見るに、それは攻撃反応カードだったのかな?』
「…」
『答える必要は無い、か。そりゃそうだな。このままバトル終了、メイン2、一枚伏せてターン終了だ』
これはまたとんでもないカードが出てきたものだ。よくよく見れば効果には続きがある。
自身が破壊される際に自軍の他のカードを身代わりにできるということらしい。
相手場には役割を終えた《超変化》が一枚。
そして墓地にはフリーチェーンで発動できる《生存境界》…
頭が痛くなりそうだ
「ターンを、貰う。ドロー」
……
「《強欲で謙虚な壺》発動」
『…チェーンは無いよ』
《N・グランモール》
《カオス・ソルジャー-開闢の使者-》
《ライオウ》
『古き良きカード群って感じだ。とくに《開闢》なんて随分と久方ぶりだ』
「使われないのか?」
『そんな事はない。が、こっちでは無制限カードになってるんだよ。
採用率も激減してるし…ようは切り札と言うには少々力不足なのさ』
こっちでは先日漸く使用解禁されたばかりなのだが。
「…《開闢》を選択する。そのままターン終了だ」
『(開闢…)』
警戒している…無理もない。
こちらのライフは残り5000…
場にカードが無い状況で、特殊召喚権を放棄してまで手札に加えたカードが特殊召喚モンスターなのだから。
その上、場にはカードを追加しなかった。
よほど残った一枚に信頼が持てるのか、ブラフなのか。確信を持てない以上、警戒するに越したことはない…という事だろう。
『ではドローフェイズ…スタンバイ過ぎてメインフェイズ』
カードを引いた瞬間、未来人の口端が一瞬ピクついたのが見えた。
「(何を引いた…)」
『このままバトルフェイズ!
《ギガ・スピノサバット》でダイレクトアタック!!』
「対抗札は…無い」
『ではバトルステップ、永続罠発動《竜魂の幻泉》!対象は《成金忍者》!
対象モンスターを幻竜族に変更し、特殊召喚する』
「(このタイミングで…?)」
てか幻竜族ってなんだ。
『《成金忍者》は守備表示…そのままダメージ計算!』
-3000
LP5000→2000
「《激流葬》あたりの召喚反応カードを警戒しての攻撃中の特殊召喚なんだろ今の。
《ギガ・スピノサバット》の第4の効果で、攻撃誘導もできるんだし《成金忍者》は攻撃させないのか?」
軽い揺さぶりをかける
『ハハ、その手には乗らんよ。そのカードは攻撃反応だと俺は読んでるんだ。そもそもこのカードは守備表示で特殊召喚するカードなんでね』
「…」
ごもっともだ。そもそも打点要員として蘇生していないというのは最初からわかっていた。打点が欲しいならそもそも前のターンに《パンクラトプス》の蘇生を。それこそ《激流葬》のような召喚反応罠を警戒するなら《強欲で謙虚な壺》にチェーンすればよかっただけのことなのだ。《サイクロン》を警戒していたのかは知らないが…
軽い補足説明を受けて、予測は確信に変わった。となれば今の行動は…
『メイン2。一枚伏せてターン終了』
あのカードは間違いなく「忍法」カード…それも《超変化》だ。
《開闢》を始末する為の札だ。
《生存境界》を温存しつつ、こちらの切り札を詰みの一手を仕掛けてきたわけだ。
「あからさますぎるんだよ…」
『んん?何か見えたのかな?返せるのかな?』
「ドローフェイズ、スタンバイ、メインフェイズ…では、返させてもらう…!!
手札から魔法カード《大嵐》発動!
お互いの場の魔法・罠を全て破壊する!!」
『あっ…!』
表側表示《忍法 超変化の術》
表側表示《竜魂の幻泉》
《忍法 超変化の術》
自分場《次元幽閉》 破壊
永続罠デメリット《成金忍者》 自壊
「やはりセットは《超変化》か。
これで…2:4交換が成立したわけだが…無論それだけじゃないのわかってるよな?」
『……』
場には《ギガ・スピノサバット》のみ。
つまり、あのモンスターには自らを破壊から守る身代わりの盾が全て剥がされたことになる。
「続行する。墓地の《フォトン・スラッシャー》と《魂を削る死霊》を除外、《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》を特殊召喚!
そのまま効果発動!!《ギガ・スピノサバット》を除外する!!」
ATK3000/DEF2500
『黙って消されるわけにはいかない。道連れにする!墓地の《生存境界》の効果!
このカードを除外し、自軍の恐竜族と相手場の《開闢》を選択し、破壊する!
これでリソースの数は並んでしまったか…やるじゃないか』
「追撃する。《死者蘇生》発動!
対象は《ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット》…!!」
『!!』
目には目を、だ。
「バトルフェイズ、《ギガ・スピノサバット》でダイレクトアタック!!」
-3000
LP8000→5000
「ターン、終了」
『ドローフェイズ、スタンバイメイン。
してやられたよ。まさか本当にここまで徹底的に返されるとは思わなかったよ。
だが、まだまだ。
メイン開始時、《強欲で金満な壺》を発動。
発動コストでエクストラデッキのカードをランダムに6枚、裏側表示で除外する。除外した枚数3枚につき1枚ドローする』
また《強欲な壺》のパチモノである。
しかもこれも裏側表示で除外している。
さっきのナントカの壺といい、未来の連中は表側で見えていないカードを何だと思っているのか。
『モンスターをセットし、カードを一枚伏せてターン終了』
「ドローフェイズ、スタンバイメイン。
未来のパワーカードの力、使わせてもらう。
《ギガ・スピノサバット》の効果発動!
対象はセットモンスター!!」
『破壊されたのは…《プチラノドン》
効果で破壊された為、効果発動!
デッキからレベル4以上の恐竜族を一体特殊召喚する』
「……」
『《ダイナレスラー・パンクラトプス》』
ATK2600/DEF0
「やっぱりお前か」
もう慣れてきた。慣れたくなんて無かったんだけどさ。
「構うものかッ!バトルフェイズ!《ギガ・スピノサバット》で…」
『させん!スタートステップに《パンクラトプス》をリリースし、効果を発動!
過ぎた玩具だ。そいつは返してもらう』
「強力な効果だ…」
『そうだろう。こっちでは準制限のカードなんだからな。近々制限カード指定を受けるがな』
「ああ違う違う。そいつは間違いなくパワーカードさ。だけど今回言ってるのはそいつじゃなくてさ…」
《サイクロン》
「対象はセットカード…
たしかこうすれば場のカード…《サイクロン》を破壊の盾にできるんだったよな?」
『!!』
「効果を逆順処理。チェーン2でセットカードを破壊。チェーン1で《サイクロン》を身代わりに破壊…そいつは無駄死にとなる」
効果処理が終了し、相手の墓地には2枚のカードが送られていく。
まず《ダイナレスラー・パンクラトプス》。
そして《ミラーフォース・ランチャー》…
……あ?
『効果発動。デッキと墓地からそれぞれ2枚を場に再セットする』
「してやられた…が、こいつは攻撃中に魔法罠を封じるんだったよなぁ?
バトル続行だ。やれ!《ギガ・スピノサバット》!!プレイヤーにダイレクトアタック!!」
-3000
LP5000→2000
『…上手いこと…使いこなすじゃないか』
「このまま押し切らせてもらう。ターンエンドだ」
『さて…ここいらが正念場だな…ドロー!』
カードを使い切り、お互いのライフは2000に並び、頼れる札は相手から奪ったモンスターが一体…
かなり心許ない盤面だが、できることはやった。あとは出方次第だ。
『フィールド魔法《ロストワールド》発動。
恐竜族以外のモンスターの攻守を500下げる。
そして場の通常モンスターが破壊される場合、代わりに手札・デッキから恐竜族を破壊することができる』
「未来の…恐竜族専用フィールドか。
《ジュラシックワールド》とはエラい変わり様だ」
『《魂喰いオヴィラプター》召喚。
召喚成功時、デッキから恐竜族一体を手札に加えるか墓地に送る』
ATK1800/DEF500
『同タイミングで《ロストワールド》のもう一つの効果。相手フィールドにレベル1攻守0の《ジュラエッグトークン》を守備表示で特殊召喚する』
「恐竜族を手札に…」
『自分フィールドのモンスターが相手より少ない為、今加えたこのカードを手札から特殊召喚する』
「……」
『《ダイナレスラー・パンクラトプス》』
「ダイナレスラーパンクラトプス」
ATK2600/DEF0
今の時代ではそのカードがまだ存在しない故、アレに制限にかかってないのを良い事に、3枚フル投入してやがった。
…今更な発言だけど、それズルくなぁい?
『《オヴィラプター》の効果。フィールドのレベル4以下の恐竜族を破壊する。
その後、墓地の恐竜族一体を選んで守備表示で特殊召喚できる』
「恐竜族…おいまさか…」
『《ロストワールド》の効果で特殊召喚された《ジュラエッグトークン》を破壊。
そして墓地から恐竜族を特殊召喚。
《ダイナレスラー・パンクラトプス》』
「ダイナレスラーパンクラトプス」
ATK2600/DEF0
もはや嫌がらせの域である。
『守備表示の《パンクラトプス》をリリース。《ギガ・スピノサバット》を破壊する』
「……」
抵抗する術は無い。決着の時か…
『フィニッシュホールドをキめてやるよ。
何か言い残す事はあるかい?』
「せめてそっちの制限は守れやァァァ!!!!」
『バトル!《ダイナレスラー・パンクラトプス》でプレイヤーにダイレクトアタック‼︎』
-2600
ーー決着。
俺は、理不尽な未来に敗北した。
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後で思い返してみたが、『あれ』は俺の未来の姿ではなかったのではないか。
おかしいとは思っていた。
何しろ、本当に『あれ』が未来の自分であるならこちらの動向やデッキ内容等が。
それこそデュエルの結果ですら既に経験済みの事柄であるはずだ。
ならばその情報を以って、適切な解答を出すことができている筈なのである。
よって、あの生々しい反応は全て演技ではなく、素だったことになる。
重ねて、彼が俺に関する情報は何一つ知り得ていなかったが故の推理結果だ。
つまり『あれ』は、俺に似てるだけの他人だったということだ。
だがしかし、後々に《グランモール》と《開闢》や《ミラーフォース》が本当に無制限カードになってしまったせいで『あれ』が未来人であることを否定しきることはできなくなってしまった。
もはや出会う事、手段が無くなった現状、確認する術は何一つ無いのだけれども。
それでも、奴が使った未知のカードが一枚でも刷られたが最後、いよいよ未来の存在であったことを認めざるを得ないのだから、最後の最後まで嫌な男だった。
デュエルの結果に満足したのか『ちょっと近所のショップでデュエルキングになってくるわ』と、またしてもどこまで本気かわからない目と口でこちらに主張し、俺の前から姿を消していった。
わざわざ俺TUEEEEしてゲームの優勝者になろうという馬鹿げた目的の為に未来から来るあたり、熱意は本物なのだろうが、王様になるのは無理だろう。
それもその筈。
当たり前の事だが、未来の誰も知らない、データベースには無いカードは使えないのだ。
パワーはあるが秩序は無い。
『あれ』が王様になるのは、10年よりもっと先。さらに未来の出来事となるのだろう。
それはそれとして。
やっぱりこの負け方、色々と納得いかないなぁ。
〜fin〜
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