「戦ってください」
二年前のあの日、八雲みたまの背を押したのは幼馴染の青年だった。
その場にいた和泉十七夜はあっけにとられていた。
「勝てば生きることができます。負ければ死にます。
戦わなければ勝てないんですよ。戦うんです、戦ってください」
その言葉が、十七夜の説得を全て水の泡にしてしまった。
当時のみたまは、神浜市に復讐を誓った。
そのために、キュゥべえと契約を交わした・・・。
神浜を滅ぼす存在になりたい
---〇---
「・・・懐かしい夢ね」
目が覚めると、ミレナ座の天井。
二年後のみたまは調整屋として活躍していた。
今となっては復讐心もだいぶ収まってきた。
それでも、彼の・・・狩谷江連の言葉が今も頭に響く。
「戦え、戦わなければ勝てない・・・ね」
至極尤もで、当然の言葉にも聞こえる。
しかし同時に、みたまは何か恐ろしさを感じていた。
それが何なのかはわからなかったが。
「失礼します、みたまさん」
入ってきたのは夏目かこ。
左頬に切り傷がある魔法少女だ。
本来であれば、治せるはずだがなぜかそうしていない。
みたまも新聞で読んだことはある。自分の本屋を守ろうとした少女。
不幸にも火は止められなかったが、彼女の奮闘のおかげで犯人は捕まった。
その代償として、顔に切り傷がついてしまったのだが。
そんな彼女は常盤ななかの一派に属している。
他の魔法少女からの評判もいい・・・戦いのときを除いて。
連携も上手く取ってくれるのだが、やけに好戦的だというのだ。
そして、勝利にもこだわっているともいう。
「あら、かこちゃん。いらっしゃい。珍しいわね、ここに来るなんて」
かこは確かにベテランと比べると力量は劣る。
それでも、あくまでそれは比較にすぎない。
誰がそう呼んだのか?『読書好きの心優しき猛者』
そんな彼女は、まだ強さを求めるというのか?
「ええ、まだまだ強くなりたいので」
彼女はそう言って、ありったけのグリーフシードを寄越してきた。
彼女のもう一つの特徴が、ソウルジェムが濁らないことだ。
いや、濁ることには濁るのだが、いつの間にか元に戻っているらしいのだ。
まあ、かくいうみたまのソウルジェムも似たようなものだ。
ある時はすごく濁るし、ある時は不思議なほど濁らない。
「・・・そこまで強くなって、何を成し遂げたいのかしら?」
ふと、興味が湧いて、そう尋ねた。
すると、かこはどこかで聞いたことがある台詞で返した。
「戦わなきゃ、勝てないからです」
「・・・はあ」
みたまの脳裏にあの幼馴染の顔がよぎった。
絶対、犯人はあれしかいないに決まってる。
「ねえ、一つ聞きたいんだけど」
「何ですか?」
「放火魔捕まえる前、誰かに背中押してもらったでしょ?」
「はい・・・あの日、恐怖で動けなかった私の背後にある男性が現われたんです。
そして、止めるも止めないも自由だって言ってきたんですよ。
でも、同時にこうも言ってきました。戦わなければ勝てない。自由に選べって。
それで、身体がいつの間にか動いていました・・・火は止められませんでしたが。
ですが・・・どうして、それをみたまさんが知っているんですか?」
「知り合いにそんな奴がいるからよ」
みたまはそう言いながら、グリーフシードをしまう。
おそらく、魔法少女になったのも戦うためだったのだろう。
あの野郎、他の地区にも出没してやがったとみたまは呆れた。
---〇---
一方、あの野郎こと江連は常盤ななかといた。
「それにしても、こんな場所があったなんて」
「ええ、私も最近、見つけた場所なんです」
二人はとある廃墟の地下にいた。
不良にも見つかってないらしく、落書きもない。
さらに、心地よい風が地上から吹いていて心地よい。
「ところで、ななかさん」
「はい」
「どうして変身しているんですか?殺意をすごい感じますよ」
「ここがあなたの死に場所だからですよ。
誰も来ないので、安心して殺せますね」
「どうして僕が死ななくてはいけないんですか?」
「それはあなたが真の敵だからです。
私の能力では見極めれませんが、普段の言動から危険人物だとわかります」
「馬鹿野郎僕は勝ちますよ」
結局、この日も江連は死にかけたがなんとか助かった。
廃墟および地下は謎の爆発により消滅した。