ある日、松葉杖をつきながら江連は北養区の山を登った。
目的地は、ホテル・フェントホープ・・・の近くにある建物。
当然、他の魔法少女に見られたが気にしなかった。
今はそれどころではないのだ。
彼はその廃墟を見つけると、中に入っていく。
やはり、地下へとつながる階段があった。
その階段を下っていこうとした瞬間のことだった。
「待って、兄さん」
時雨だった。
「さっき報告受けたんだ。兄さんが山を登ってるって」
「・・・」
「何か大事な用事があるなら邪魔できないけど、せめてお手伝いはしたいよ。
だって・・・その階段、今の兄さんにはちょっと・・・」
江連は人差し指を唇に当て、話を遮った。
「今から見ること、内緒にしておいてください。
まあ、僕と君は友達ではなくなるでしょうが」
「えっ・・・?」
彼は左足だったところに巻いていた包帯をはぎ取った。
すると、蒸気を放ちながら左足がむくむくと出てきた。
さらに、頭に巻いていた包帯も巻き取った。
当然、目が蒸気を放って復活した。
「しばらく、この廃墟に誰も近づけさせないようにしてください。
というか、早めに」
呆気に取られていた時雨は、こう叫んだ。
「ぼくは、まだ兄さんと友達だからね!」
江連は驚きに満ちた表情で時雨を見た。
彼女は怯えてなどいなかった。
ただ、それだけでも江連の心を暖めてくれた。
彼は階段を下りていった。そして、ドアの前に辿り着く。
そのドアには、頭にメスを刺し込んでいるという意匠のエンブレムが貼られていた。
ドアを開け、廊下をしばらく進むと、一人の青年が待っていた。
「四年ぶりだな、刈目阿殷」
「・・・会いたくなかったよ、頭進撃」
「本当は僕も会いたくありませんでしたがね、頭アダム」
戦端は開かれた。
最初に攻撃してきたのは阿殷からだった。
彼は一本の槍を投げてきた。
それはLootomy Corporationに登場するE.G.Oだった。
だが、それを江連は難なく壁を作って防いだ。
「・・・本当は錬金術とかじゃないのか?」
「戦槌の能力さえあれば、簡単なことですよ」
「・・・でもまあ、俺の能力の前には巨人の力も無意味だけどな」
「それで四年前、僕にボコボコにされたの忘れたんですか?」
「あの時はE.G.Oしか使っていなかったからな。
だが、新人類たちの力があれば、お前などひとひねりなんだよ!」
その瞬間、背後の廊下から叫び声が聞こえてきた。
それは人間の叫び声などでは決してなかった。
「幻想体こそ、この世界にふさわしい新人類だ!
喜べ!お前は彼らの最初の食事となるんだからな!」
「この頭アダム!世界観考えてくださいよ!!!」
「巨人化能力を持ったお前が言っても無意味だ、頭進撃」
だが、一瞬で静寂が戻った。
まるで、化け物たちなどいなかったかのように。
「・・・お二人とも、敵で間違いありませんよね?」
闇から現れたのは常盤ななかだった。
「・・・おい、頭進撃。まさか、俺の幻想体やられた?」
「ええ、そのようですね」
「アレ何?」
「魔法少女なんですよねえ・・・一応は」
「旧人類に、負けただと・・・?」
「お二人とも、おしゃべりはすみましたか?」
「「まだです」」
「もう待ちきれないので殺しますね?」
---〇---
「断末魔が聞こえた気がするわ。二人分くらい」
「ついに耳も悪くなったんですか、先輩?」
西洋料理店ウォールナッツでは平和な時間が流れていた。
胡桃まなかの幼馴染の栗山雷那(転生者)もゆったりとくつろいでいた。
そして、阿見莉愛が店を去ったのを見て、こう呟いた。
「結婚したい」
当然、まなかにも聞こえた。
「何度も言いますが先輩に劣情を抱くのはやめてください。気持ち悪いので」
こんな感じだが、雷那とまなかの関係は悪くないものだ。
今日も平和な時間が流れていく・・・。