ミッションタイマー物語   作:ゆっくり霊沙

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菊花賞前 敵視点

 菊花賞が始まるだいぶ前

 

 それこそ札幌記念が行われた頃から菊花賞に向け各陣営が調整を続けていた

 

 チームスピカのメジロファンタジーもそうであった

 

「京都芝3000上り坂の途中からスタートだファンタ! 注意すべきは何だ!」

 

「2周目の第三コーナーでいかに内側有利の状況に持ち込むかです!」

 

「そうだ! だがそれではミッションタイマーには負ける!」

 

「タイマーですか……でも札幌記念を見るとマークすべきはエアエンジェルでは?」

 

「確かにエアエンジェルは強い。きっと未知の距離と言われるクラシッククラスの3000メートルにも適応してくるだろう……だが三冠に王手をかけているミッションタイマーの方が注意すべきだ」

 

「確かに私の何時も前に居ますが3000ではスタミナが持たないのでは?」

 

「甘い甘い! 学食のニンジンシュークリームよりも甘い考えだファンタ!! そんなんだから皐月賞もダービーも3着なんだ! だから」

 

 バンとホワイトボードを沖野トレーナーはひっくり返し

 

『常識外れの走りをしろ』

 

 と書かれていた

 

「常識外れですか? 第三コーナーでスパートでもすれば?」

 

「そうだ! お前のスタミナならそれが可能だ! 甘さを捨てろファンタ! 今日からスタミナ強化として坂を倍走って貰う! いいな!」

 

「は、はい! トレーナー!!」

 

「それとダイエットだ! 食事制限もかける! 甘い物を制限するぞ」

 

「ひぇぇぇ!! それはご勘弁を!!」

 

「駄目だ! 勝つために俺も心を鬼にする」

 

「そんなぁぁぁ!!」

 

 メジロファンタジーは甘い物に関してはオグリキャップ並みに食べると有名である

 

 メジロのお嬢様はどこか壊れてるのだろうか? 

 

 極度の恥ずかしがり屋で上がり症だったり(ドーベル)、筋肉だったり(ライアン)、パクパクですわだったり(マックイーン)、爆逃げにハマったり(パーマ)

 

 なお今年はメジロはメジロでも一番の異端児が入学してたりもするがそれは別の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッ」

 

 カチっとストップウォッチを止める

 

「エンジェル中々のタイムだが気合いが入りすぎだ」

 

「トレーナーそれじゃ勝てないアイツには勝てない」

 

「オーバートレーニングだそれじゃトレーニングメニューを組んでいる意味がなくなってしまうじゃないか」

 

 東条ハナは心配していた

 

 シンボリルドルフやディープインパクト、アーモンドアイをも超えうる逸材がこのエアエンジェルだ

 

 ジュニアクラス……いや弥生賞までは良かった……ホープフルステークスを勝ち、弥生賞も勝って順調に三冠を目指して突き進んでいた

 

 それが私の眼中にもなかった骸骨の様な少女がエンジェルの栄冠をかっさらっていく

 

 なぜだ? なぜなのだ? 

 

 皐月賞は確かに誰もマークしていなかった

 

 何時ものように破滅逃げを行いズルズルと沈んでいくだろうと思っていた

 

 それがバテないで逃げきってしまった

 

 エアエンジェルの末脚は素晴らしい物だったがあと一歩届かなかった

 

 ダービーではミッションタイマーは見るからに絶不調だった

 

 入院もしているし、誰が見ても彼女の勝利は無いとマークを外した

 

 1400メートルでスパートを始め見事彼女は1着を取った

 

 私達はなめていた

 

 彼女……ミッションタイマーは強い

 

 鋭い末脚は無い

 

 彼女に有るのはスタミナだ

 

 それも超人的なスタミナだろう

 

 でなければ常識外れの1400メートルでスパートなんかするハズ無い

 

 だから徹底的に調べあげた

 

 彼女のデータ入っている

 

 だがそれを超えてくる気がする

 

 私もエンジェルもそれを感じているんだろう

 

 だが私はエンジェルを壊すトレーニングはできない

 

 私にやれることをやろう

 

 エンジェルに最後の栄冠を与えるために

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はエアエンジェル様を勝たせたいのです! あの骸骨が勝つ姿何て見たく有りません」

 

 メーデーメーデーは熱狂的なエアエンジェルのファンであった

 

 エアエンジェルが勝ったホープフルステークスを私は最前列で眺めていた

 

「あぁこんな綺麗なウマ娘が居るんだ」

 

 綺麗な黄金の髪に白い肌、整った容姿にキレッキレのダンス

 

 ただただ美しかった……芸術作品のようだった

 

 私の目標は彼女を最高の舞台で1着にすることに変わっていた

 

 ルームメートのブルーライトバードは歪んだ愛だの狂ってるだの言うけれど芸術品を最高の舞台に立たせるのは歪んでいることなのか? 

 

 答えは否である

 

 ダービーは賞金が足りずに出れなかった

 

 だけど菊花賞は出れる

 

 三冠最後の最も強いウマ娘が勝つレース

 

 彼女にこそ相応しい

 

「その為にはミッションタイマーが邪魔……あの骸骨エアエンジェル様を2度も邪魔しやがって……処すべし!! 断じて処すべし!!」

 

 なに簡単な事だ逃げれば競り合ってスタミナを削らせ、追い込みなら進路を妨害してやれば良い

 

 真剣勝負の不運な出来事だ

 

 私が失格になるだけですむ

 

 フフフ邪魔者は要らないただエアエンジェル様の為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度こそワクチン様の時代やで!」

 

「サイタマー!!」

 

「なんでサイタマやねん」

 

「菊花賞京都芝3000メートル最も強いウマ娘が勝つと言われている三冠バのディープインパクト先輩やオルフェーヴル先輩先輩、コントレイル先輩は無論キタサンブラック先輩にサトノダイヤモンド先輩、フィエールマン先輩や過去を遡れば多数のG1複勝の方々がズラリと並ぶ」

 

「急に饒舌になるなや!」

 

「サイタマー」

 

「からのいきなりIQ落とすな」

 

「でも実際問題私は3000は長すぎるから毎日王冠から天皇賞(秋)を目指す……ワクチン同チームとして言っておく見るべきはミッションタイマーだ」

 

「得意の分析か?」

 

「恐らく今年の菊花賞は逃げるミッションタイマーをいかに周りが潰せるかが焦点になる。ワクチンはその潰し合いには参加せず疲弊したところを差せば良い」

 

「菊花賞の前にワクチンは古バ相手のオールカマーが待ってるんだが?」

 

「……やっちまえ!」

 

「ハルヒネタとかわかる人おらんやろ! あぁもうやったるわ!!」

 

 後日ワクチンはオールカマーを勝つのでした


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