ミッションタイマー物語   作:ゆっくり霊沙

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彼女の名前はミッションタイマー

 ウマ娘……彼女達は走るために生まれてきた……時に数奇で、時に輝かしい歴史を持つ異世界の競走馬の名前と魂を受け継いで生まれてくる少女達

 

 ここにもそんなウマの耳と尻尾を持つ少女が一人

 

 その子の名前は小西杏子……後のミッションタイマーである

 

 

 

 

 

「よーいドン!!」

 

 100メートルほど離れた所に旗を立てそこに向かって少女は走る

 

 旗をぐるっと回って彼女は父親が待つゴールへと駆け抜ける

 

「おっ今回も最速タイムだな! 早くなってるぞ黒子!」

 

「パパもっと頑張る! 頑張って走ってアノキラキラしたお洋服着るの」

 

「勝負服か……それじゃあまずはトレセンに合格しないとな」

 

「うん! 頑張って合格する!!」

 

「はは! わかってるのか?」

 

 私はパパが休みの日にこうやって河川の土手で走るのが好きだ

 

 普通の友達は言葉数が少なくてできないけど、その代わりに私には掛け替えのない友達がいる

 

 白色のオーラを纏った白髪の子(白子)と真っ黒いオーラを纏った栗色の髪の毛をした子(黒子)だ

 

 どちらもお姉さんだが、走るのがとっても早いんだ

 

 パパが居ない日はこの2人に走り方を教わってる

 

 白色の子はとにかく逃げるのが強いと教えてくれ、黒子は追い込みが強いと教えてくれる

 

『とにかく走ろう……スタミナこそレースには大丈夫だ』

 

『いや、スピードだね』

 

『スタミナ!』

 

『トップスピード!!』

 

 この2人はいっつも喧嘩をするが私がやめてって言うとやめてくれる

 

 私そんな2人が好きだった

 

 いっつも口論をしながらも私を強くしようとしてくれるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本の総人口の5%の600万人がウマ娘とされ、ほとんどがトレセンに通う事無く普通の学校を卒業し、普通の会社へ就職し、普通の人と結婚して一生を終える

 

 昔は軍の偵察部隊や伝令兵、補給部隊として活躍し、更に古くはウマ娘による帝国も有ったほどだ

 

 日本にもウマ娘による国があり、武田の赤揃えはウマ娘部隊による強力な部隊だったと言う

 

 海外だと有名なのは帝政フランスによる欧州帝国やモンゴル帝国なんかが有名だろう

 

 それだけウマ娘は国家の主戦力として活躍してきた歴史がある

 

 現代ではその美しい容姿からアイドルとして人気があり、レースに勝つことで名声と賞金、栄誉が約束される

 

 レースはウマ娘中央競バ協会URAとウマ娘地方競バ全国協会UNARが厳格に管理をし、バ券による利益、グッツ利益、入場料、スポンサーによる広告料の4本柱で成り立っており、そこからトレセンの管理費、維持費、人件費、選手への賞金、トレーナーへの賞金が支払われる

 

 ただどちらの協会へ入るのも険しい道のりであり、そこから1勝するのでも凄い確率である

 

 ただ、小西杏子の母親の小西麻沙子(ミッションウオッチ)はオープン戦を勝ったウマ娘であり、その子である小西杏子は日本ウマ娘トレーニングセンター学園通称トレセン学園(生徒数2000人弱)に推薦入学できる立場であった

 

 それでも推薦試験を受けなければならず、父親の小西幸弘氏が仕事の休みの日は必ず杏子に走り方を教えているのはそういった理由がある

 

 

 

 

 

 

 幼稚園に入ると普通は仲良しな子ができるものである

 

「あ、あの遊ぼ

 

 ワーキャーと杏子の言葉は子供達の声で書き消され、友達が相変わらず全然できなかった

 

『そんなこともあるさ』

 

『そんなことより走ろう』

 

「うん」

 

 当時の私はイマジナリーフレンドとかしていた白子ちゃんと黒子ちゃん相手にグランドをグルグル走っていた

 

 お昼寝の時間以外は基本走っていたと思う

 

 ただ1回も白子ちゃんにも黒子ちゃんにも私は勝てなかった

 

 だけど着々と私のレーススタイルはこの時期に確立できていたと思う

 

 

 

 

 

 

 

「よーいドン!!」

 

 運動会のウマ娘競争で400メートル走って初めて勝った

 

 逃げに逃げて最後スタミナ切れでバテバテになっていたが勝利は勝利

 

 その光景を今でも覚えている……とても気持ちよかった

 

 この時からだろう……私はキラキラしたお洋服を着たいからどんな手を使ってでも勝ちたいと思うようになったのは……

 

 

 

 

 そんなある日の事だった

 

 私はウマ娘用の道を走っていると暴走した車に突っ込まれ数十メートル引きずられる事故に有った

 

 皮膚がべろべろに捲れ、右耳が擦りきれ、最終的に切ることになる

 

 命に関わる怪我ではなかったが不揃いになった耳を見て他のウマ娘達にバカにされ虐められるようになった

 

 更に私は黒子ちゃんと白子ちゃんに傾倒していくこととなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、杏子の才能はどうなの?」

 

「事故でも怪我をしない頑丈な体ではあるが、足は凄い内股で骨が事故の時撮ってもらったレントゲンで変形していることがわかった……優秀なトレーナーが付かない限り勝っても未勝利だろう」

 

「そんな……」

 

「俺もそこまで良いトレーナーでは無かったからこれ以上はしてやれない……悲願の重賞制覇は難しいだろう」

 

「……杏子の娘がG3を勝ってくれることを願うようにするわ」

 

「とりあえずトレセンに行く前に出きることをしよう」

 

「お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小学生になってからも私の虐めは続いた

 

 私がまっすぐ立つと膝と膝がくっつくのだ

 

 良いウマ娘は膝がまっすぐかやや内側になっているのが良いとされ、私みたいに極端に内側になっているのは走らないとされた

 

 あとは片耳もバカにされた

 

 普段は布で作った耳当てを付けることで隠しているが、虐めっ子達によく後ろから取られるのだ

 

「やーい! 片耳」

 

「不細工!」

 

 罵倒され、机に落書きされたりもした

 

 この時私は我慢して我慢して我慢して……

 

「絶対に見返してやる」

 

 凄まじく恨みを募らせた

 

 私はどうやら1度恨むと一生覚えているらしい

 

 大人になった今でもその時虐めた子達の名前が言える

 

 厚かましく活躍してからサインをねだられた事も有ったが、拒絶した

 

 

 

 

 

 

 そんな私だったが皆よりも優れていた事がある

 

 肺活量というより肺が強い

 

 ペットボトル割りを知ってるだろうか

 

 空気を入れて割るやつ

 

 私は口で空気を入れて割っていた

 

 ウマ娘ならできなくもないのだが、一人ぼっちの私は暇な時拾ってきたペットボトルを洗ってよくやっていた

 

 これが後の無尽蔵のスタミナに繋がるのだからわからないものだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 人がとウマ娘一緒の小学生という苦行を乗り越えた私は女子校であり、レースに出れるトレセン学園に推薦入学した

 

 試験では学問とレースがあり、ぼっちの私は友達に教わるなんて事ができず、真面目に授業を聞いて勉強するしか方法が無かったが、無事学問の試験は突破

 

 選考レースでは後にライバル……ライバルと私は思っている……いや、敵だな……私の敵のエアエンジェル、デーモンコア、スカーレットリボー、メジロファンタジーと偶々一緒になった

 

 エアエンジェルは当時から100年に1人の美少女って言われていたし、名門エア家から出てきたご令嬢でもある

 

 スカーレット家のスカーレットリボーやメジロ家のメジロファンタジーもご令嬢だし、デーモンコアは小学生ウマ娘陸上競技会で全国1位になった凄腕の選手だった

 

 だから選考レースなのに観客がいっぱい(トレーナー達です)居たし彼女らは注目されていた

 

 選考レースは私は逃げ戦法で勝とうとしたが、1000メートルでバテてしまい残り400メートルで皆に抜かされ10着最下位だった

 

 それでも基準タイムを超えていたのでトレセン合格は勝ち取った

 

 ……そこから地獄と栄光を反復横跳びする生活になるとは思ってもいなかった

 

 思ってもいなかったのだ……

 

 


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