『さぁ今年も熱き皐月賞の季節がやって来ました。実況はわたくし赤坂と』
『解説の安田でお送りします』
『安田さん、今年は無敗のウマ娘がなんと2人も居ますよ』
『エアエンジェルとデーモンコアですねどちらも先行策が得意なウマ娘です』
『他にも注目と言えば京都ジュニアステークス、シンザン記念勝ちウマのスカーレットリボーとスプリングステークス勝ちウマのメジロファンタジーでしょう』
『スカーレット一族のスカーレットリボーとメジロ一族のメジロファンタジー……両者も由緒正しきご令嬢です』
『他にも注目なのが京成杯勝ちウマのワクチンときさらぎ賞勝ちウマのシンボリウオッチですね』
『今年はシンボリのご令嬢までいます……どの子が勝ってもおかしく有りません』
『4強が勝つのか……それとも他の子が主役となるのか期待です』
『パドックが始まります』
『1枠1番サムライスピード』
「イエーイピースピース!!」
『元気いっぱいの子ですね! 逃げを打ってペースを掴みたいところ』
『1枠2番ミッションタイマー』
(……白子ちゃんと黒子ちゃんも出るんだ……今回は私が勝つよ)
「あ、あの……頑張りますので応援してください」
「なに言ってるかわかんねーぞ!!」
「エアエンジェルのレースぶっ壊すなよ」
「2000走りきれよまた1800で壊滅か?」
「すみません……邪魔しないように走ります」
『この子も逃げが得意ですから先頭を行きたいところ頑張ってほしいですね』
解説の人からも事務的な事を言われた
大丈夫……白子ちゃんに黒子ちゃんが一緒に走ってくれるんだもん……今度こそ1着を……
『2枠3番スカーレットリボー!』
「ふん!」
真っ赤な長い髪を靡かせクルっと回る
「キャースカーレット様!!」
「頑張ってくださいまし!!」
『彼女がこのパフォーマンスをするということは気合いが入ってますね4強の1角です。好走を期待したい』
『2枠4番オリエンタル』
「頑張りマッスル!!」
『発達した筋肉から繰り出される鋭い末脚は期待できます』
『3枠5番ラッキーセブン』
「マジやば!! G1勝っちゃうよー」
『伏兵として怖いのはこの子でしょう9番人気です』
『3枠6番メジロファンタジー!』
「「「せーのファンタジー!!」」」
メジロファンタジーは声援に向かって手を振った
「「「キャー!!」」」
『まさにイケメンウマ娘ですね! 観客席の皆さんもメロメロです』
『彼女の実力はエアエンジェルと並ぶ物を持っています! 2000メートルは彼女にとって短いでしょうが十分勝つ要素は多数有りますよ! 4強の1人です』
『4枠7番ワクチン』
「ワクワクドキドキハラハラさせるゼ~!!」
『4強に食らい付くのは私だーエンターテイナーワクチン!!』
『4枠8番シンボリウオッチ』
「見ていてくれ僕の走りを」
「見てるぞ頑張れー!!」
「あぁトレーナー!! 頑張るよ」
『トレーナーも気合いが入ってますねシンボリ家のご令嬢のシンボリウオッチです』
『例年なら間違いなくこの子が本命でしたでしょう。強力なライバル達にどう食らい付くか見物です』
『5枠9番タダノエスプレス』
「応援ありがとー」
「タダノちゃん頑張れー」
「追い込み期待してるぞ」
『最後尾からのまくりあげる競バは見ていて楽しいものがあります! 今回も見せてくれるか』
『5枠10番……エアエンジェル!!』
「「「キャー」」」
「エンジェル様!!」
「こっち向いて!!」
一歩一歩が気品に満ち溢れていて無敗の重圧に全く負けない彼女の姿があった
『おお、いつ見ても美しいですね』
『このレースの主役はまさに彼女ですね天は二物を与えずという言葉は彼女には通用しない100年に1人の美少女ウマ娘が三冠の第一関門皐月賞に挑みます』
『6枠11番デーモンコア!!』
「デーモンコアさん!!」
「勝てよデーモン!!」
『もう一人の主役の登場です』
『2歳王者のデーモンコア、こちら無敗で三冠の第一関門皐月賞に挑みます』
『6枠12番スピアーノ』
「絶対勝つ!!」
『気合いが入ってます調子も良さそうです』
『7枠13番ダノンピアノ』
「ダノンの名において」
『ダノンの令嬢勝利に向けていま走ります』
『7枠14番マチカネソーマ』
「シラオキ様!!」
『マチカネフクキタルの娘です瞬間最大風速になれるか』
『8枠15番エイシンサレンダ』
「真面目に計算的に」
『先行策で周囲にプレッシャーを与えられるか』
『8枠16番スイープミドリ』
「……頑張る」
『サイボーグと呼ばれる彼女皐月賞まで長かった11戦目になります』
『頑丈さが売りの彼女がいかに上位に食らい付くか』
『9枠17番メイショウサザエ』
「張り切ってこう!!」
『今までの勝ちはすべてマイル以下距離は長いが大丈夫か』
『9枠18番ディープバズーカ』
「バクシンバクシンバクシンバク神様の教えを!!」
『ディープインパクトの親族ですこの子も全力で逃げるでしょう』
『以上フルゲート18人の出走になりますファンファーレの開始です』
全力で逃げつつ大逃げに見せてスローペースに持ち込んで足を残す……無謀かもしれないけどこれくらいしないと彼女達には勝てない
4強と呼ばれるお嬢様方
誰もが彼女達に注目し、その誰かが勝つと思っている
それを砕こうじゃないか
見せてやる……黒子ちゃん、白子ちゃん……私に力を
『ゲートに全員収まりました』
ガッゴン
『スタートしました』
『おおっとディープバズーカ、サムライスピードの逃げの2人が大きく出遅れた!!』
『ペースメーカーは!! ミッションタイマー大逃げです! 先頭をグングン離していく一人旅だ!!』
『2番手にエイシンサレンダがペースを作ります。すぐ後ろにダノンピアノ、エアエンジェルはここ4番手、横にぴったりと張り付くメジロファンタジー、その後ろにはデーモンコア、1バ身離れてスカーレットリボー4強は固まっております』
『その後ろからメイショウサザエ、スイープミドリ、シンボリウオッチ、ワクチンと続きます。マチカネソーマと続いて2バ身離れてスピアーノ、更に1バ身離れてタダノエスプレス今日はやや前か』
『オリエンタルとラッキーセブンがその後ろ、ディープバズーカとサムライスピードはここから巻き返しなるか』
『第一コーナーを回って坂を下り直線に先頭のミッションタイマーが入ります後続とは7バ身か今1000メートルを通過しましたタイムは59秒9! 後続は1分01秒ペース』
『完全にペースを騙しています。コース取りも上手いですね』
『このままやられる4強ではないギアを1段階上げてきた』
『しかし4人とも牽制しています』
『現在ミッションタイマーとの差は10バ身!! セーフティリードとなるか』
『最終コーナーにミッションタイマーは入ったエアエンジェル、デーモンコア、メジロファンタジーがバ群から抜け出し猛追を開始スカーレットリボーはバ群に沈んでいく』
『ミッションタイマー最後の直線に入った!! 中山の直線は短いぞ』
『心臓破りの坂があります普通なら失速しますが』
『スローペースが生きた生きた!! まだまだ脚は残っている猛追する3人からまだ5バ身!!』
『エアエンジェル抜け出した!! 驚異の末脚!! まるで空を飛んでいるかのようだ!! 1人だけエンジンが違う』
『粘る粘るミッションタイマー残り100メートル!』
『エアエンジェル差しきるか残り3バ身、2バ身、1バ身届かないか!! 今ゴールイン』
『エアエンジェル届きませんでした! 皐月賞を勝ったのは伏兵ミッションタイマー10番人気!! 誰が予想したか彼女が勝つのを!!』
『3着メジロファンタジー、4着デーモンコア、5着ワクチンとなります』
『皆素晴らしい走りでした大きな拍手をお願いします』
解説の安田さんが皆に拍手をお願いするが拍手をするのは少数で、皆ざわついていた
「残念ながら2着に破れたエアエンジェルさんにインタビューをしたいと思いますエアエンジェルさん何か一言お願いします」
「……まず勝者を讃えるべきです。私は敗者、今の主役は私では無くミッションタイマーです。順番があるでしょう」
「し、失礼しました」
全く……失礼な記者だ……しかし今年は私を含めメジロファンタジーかデーモンコア、スカーレットリボーの誰かが勝つとバチバチにライバル宣言して結果彼女の逃げに追い付けなかったか……視野が狭まっていたな
反省反省
……だがダービーは勝たせてもらうぞミッションタイマー
「ミッションタイマー?」
「ミッションタイマーさん勝利おめでとうございます……ミッションタイマーさん?」
明らかに様子がおかしい
勝ったのに負けたように落ち込んでいるし、涎をダラダラとたらし泣いている
目の焦点も有っていない様だ
「ミッションタイマーさん大丈夫ですか? ミッションタイマーさん」
「私は3着でしたよね……前に二人いましたもん」
「はい?」
「先にゴールした子が二人居ましたよね!!」
「あなたが勝者ですよ」
「嘘だ!!」
「私には見えるんだ白子ちゃんと黒子ちゃんが勝ったのを私はまた敗者なんだ……」
ヤバいなこの人危ない人だ
「タイマー!!」
アグネスデジタルが飛んできた
「タイマー大丈夫かい!! タイマーしっかりするんだ」
いつもはジュルリラとか言ってウマ娘のストーカーをすることで有名なアグネスデジタルトレーナーが真剣にミッションタイマーに呼び掛ける
「デジタルさんごめんなさい負けちゃった」
「君は勝ったんだよ何で泣いてるのさ」
「違う、勝ったのは黒子か白子のどっちかだ」
鼻血まで出てきた
「トリップしてる……幻覚を見ているのか……」
「白子ちゃん! 黒子ちゃんおめでとう……ほら、デジタルさんも勝者に挨拶してくださいよ……私の大切な友達なんです」
「もういい、落ち着くんだ。そこには誰も居ないんだ」
異常な光景だった
記者達は絶句しながらその光景をただ見ていることしかできなかった
ミッションタイマーはウイニングライブを辞退
勝者不在のウイニングライブだったがエアエンジェルがセンターだったため盛り上がった
盛り上がってしまった
「やっぱり私は勝者ではないんだ」
翌日トレセン近くの総合病院の精神病棟へミッションタイマーは緊急搬送された