「実質的に残ったのは心の傷だけ、体の傷は全部きれいさっぱりなくなったし、あの薬……………効き目良かったな」
「確かに、でも俺は何も出来なかった。助けに行こうと思ったら、直ぐに逃げられて、幾ら何でもこの結果は酷すぎる」
「まぁ、良かったじゃないか。さっきも言ったが実質怪我人はいないんだぞ?」
保健室の前で、話しているのは一夏と箒。
千冬達は事後処理がある為、この場にはいない。
「…………織斑、二人は無事なのか?」
「あっ、吹寄さん」
そんな二人の前に、花と果物を持った吹寄桜がいた。
「…………一応二人の為に買って来たが、不必要だったか?」
「いや、そんな事ないはずだ。二人もよろこぶと思う」
「…………そうか、それなら良かった。今回の事件の所為で、クラス代表戦は中止らしい。
……………フリーパス、欲しかったのだがな(ボソッ)」
「「?」」
最後の言葉が聞き取れなかった。
「…………あの時、吹寄は何をしていたんだ?アリーナには居なかったみたいだが」
「ああ…………それか、私は部屋で復習をしていたんだ。一緒に居るやつは居なかったから、目撃されては居ないだろうがな」
「そうか…………」
「それでは、私は二人にこれを渡してくる」
そう言って、桜は部屋の中へと入って行った。
「いい奴だな」「ああ、優しいからな。補修中は集中し過ぎて逆に怖いけどな…………」
そんな会話をした後、二人は部屋に戻った。
「……………………予想外でしたー。まさかークロノさんがー、乱入して来るなんてー」
『そうよね、私も驚いたわ。通信回線をジャックして、監視カメラ経由で見ていたら、いきなり現れるんですもの。驚き過ぎて、ティーカップを一つ割っちゃったわ」
「それってー、一つ何円ぐらいするんですかー?」
「たった数万円よ」
「………………………………金持ち発言頂きました‼︎」
「…………それより、スパロウの姿は見たの?」
「残念ながら、見ることは出来ませんでしたー」
スパロウの正体を知るのはクロノのみ。そもそもスパロウは亡霊企業の人間ではないので、何も情報が無いのだ。
『クロノの依頼人はMとオータムが調べてるわ。何だか、今回の依頼は嫌な予感がするのよね』
「嫌な予感ですかー」
『ええ、何か大変な事になりそうよ』
「…………私です、ハイ。星の樹を動かす為には鍵か必要みたいです。その鍵について、何か情報をお持ちではありませんか?」
『フッ、そうだな。一応持っては居るぞ。鍵とは人、鍵は選ばれし人の犠牲なのだ。つまり、ある特定の人物の死によって星の樹は稼働するのだ」
「…………成る程」
『まぁ良い。鍵については、こっちが見つけておこう。これぐらいは協力させてもらうぞ」
「はい、それでは切らせて頂きます」
電話を切り、クロノは一息つく。
本心を言うと、彼女が依頼を受けたのは星の樹を使う為だ。
依頼内容は、星の樹の発見から引き渡しまで、引き渡した瞬間に黄金の女を殺し、我が物にしようとしていた。
しかし、鍵の存在が計画を狂わせた。
鍵が誰なのかはわからない。だから、なんとかして見つけなければならない。
もうすぐあいつらがやってくる。
乱入も、少し難しく成るだろう。
「…………だがしかし、やらねば。
私の人生を終わらせる為にも」
そう決意する黒乃を、スパロウは扉の向こうから、悲しげな表情で見ていた。