「シャルロット…………」
黒乃が呟くのはかつての友の名。
これから敵対する相手の名前。
思い出すは約96000年前、初めての転生で、このISの世界にやって来た時のこと。
今思えば、黒乃は彼女が好きだった。
好きだからこそ、彼女を傷つけたくないが為に、黒乃は彼女を拒絶しようとした。
しかし、黒乃を理解しようとし、受け入れようとしてくれたのは、彼女が始めてだった。
だから、彼女が私を殺してしまい、とてつもなく大きな傷を受けてしまった筈だ。
だから次のIS世界に転生した時から、彼女には近づく事をせず、一人気ままに生きた。
今回はそうはいかない。
敵対しなくてはならない。
はっきり言って、彼女と勝負はしたくない。
「…………考えるのはやめよう。虚しくなる」
そう言って、黒乃はその場から移動し、ベッドへダイブする。
(……………………カタッ)
「ん?おいクロノ、何か落ちたぞ」
落ちた物を拾いながらスパロウは話しかける。
どうやらUSBのようだ。
「…………あぁ、それは私のIS【空亡】のデータ」
「データ?」
「私の心臓と、空亡のコアが融合しているのは前に話しただろう?融合していてもIS自体は徐々に消耗していくんだ」
「だからデータにして、消耗している箇所を調べるのか」
「まぁそんな感じ、それに今まで調べて来た情報とかも入ってるし、案外大事な物なんだ」
「…………成る程。なぁクロノ、ちょっとだけコレを貸してくれないか?」
「…………別に良いが。何に使うんだ?」
「お前の調べて来た情報の中に、効率良く掃除をする方法とかあるかもしれないからな」
「…………無いと思う。一応コピーもあるから、それはあげる。私のISのスペックを見て、驚くと良い」
クロノはドヤ顔をした後、布団に潜り込んだ。
「…………空亡のデータ、か。もしかしたらだけど、空亡という人格のデータもあるかもしれないな」
とある学園の屋上
「…………黒乃。君は今何処で、何をしているのかな」
男装の麗人が、ボソッと呟く。
呼んだ名前は、記憶の奥底にあった、とても大切な人の名前。
何故覚えているのかは分からない。
ただ一つ言えるのは、
彼女もどうやら、覚えている人物の一人のようだ。
とある研究所
「束様。話がしたい、と人が訪ねて来ました」
「ん〜?誰だか分からないけど、とりあえず通して」
ここにいるのは、篠ノ之束とその娘クロエ・クロニクルだけだ。
そもそもこの研究所は特殊なバリアが貼られており、普通なら近づくことも出来ない。
だから、此処まで来た人物に興味が湧いた。
「分かりました。それでは入ってください」
その言葉と共に、一人の男が入って来る。
束はその人物が誰なのか、直ぐには分からなかった。
何故なら、身体のほぼ全てが機械だったからだ。
いや、ちゃんと皮膚はある。
目の前にいるのは見た感じちゃんとした人間だ。
だが篠ノ之束は、見ただけでその人物の身体が機械である事が分かった。
「…………誰かな?私の知り合いに、君みたいなのは居ないんだけど」
「一応、あったことも話したこともあるんだけどな。まぁしょうがない、姿も形も変わっているからな」
そう言った後、男は懐からUSBを取り出す。
「…………クロノが持つ全ての情報がこの中に入っている」
「…………⁉︎」
「俺が調べた所、ほぼ全てのデータは閲覧出来たがある一つのデータだけ、見ることが出来なかった」
「…………そのデータのロックを解いて欲しい訳だね」
「ああ、俺は知りたいんだ。データは奴の転生人生、約96000年全てのデータが記されてあった。その中に、何度か自分のISに身体を乗っ取られる記述があった」
「…………」
「俺の予想が正しければこのデータは、クロノのISが持つ人格が書き込んだ物だ。何故身体を乗っ取ったりしたのか、それら全ての情報が、IS目線で打ち込まれている筈だ。俺はそれが知りたいんだ
おなじ、転生者として」
目の前の男は、財前黒乃を助けようとしているのだろうか。
いやそんな事はどうでも良い。
だが、束も知りたい。
約96000年の人生と、目の前の男は言った。
私が財前黒乃の事を覚えていることも、何か分かるのではないか。
「…………分かった。今すぐ解析を始めるよ」
束は男からUSBを受け取る。
「そういや、君。名前は?」
「俺の名はスパロウ。
その昔、織斑秋十として転生したこの世界には居ない筈の人間だ」
次の話は、前作「インフィニットストラトス・努力チート参ります‼︎」の最終章の内容に触れます。
知らなくても、覚えて居なくても大丈夫なように書くつもりですが、もしかしたら分からなくなるかもしれません。
その時は、素直に文句を言ってください。
コピーも取らずに削除した、作者が一番悪いのですから。
空亡が語るは古の記憶。
空亡の行動の意味とは、何故身体を乗っ取ったりしたのか。
何故束とシャルロットは黒乃の事を覚えているのか。
いま、この世界の真相が明らかになる。