「……………………」
黒乃は黒いペンを持ち、カレンダーにキュッと×を書く。
計画の実行は明後日に迫っていた。計画の失敗は許されない。
だが、余程のイレギュラーが起きない限り失敗はしないだろう。
黒乃には失敗しない自信がある。
一つ気掛かりなのは、最近スパロウがよく出掛ける事だ。
裏切り行為ではないとしても、何をしているのか気になる。
いや、そんな事はどうでもいい。
ただ…………
「寂しいなぁ…………」
やはり、一人は寂しい。
寂しさを紛らわせる為に、黒乃は布団に入り、眠る。
場所は変わりとある喫茶店。
物静かな雰囲気を醸し出すその喫茶店の一角に、異様なスピードで皿が積まれていくテーブルがあった。
「…………さ、桜さん。どれだけ食べる気なんだよ」
「…………まぁ、数十人前ぐらいかな」
その言葉を聞き顔を強張らせるスパロウと、上品ではあるが人外じみたスピードで料理を食べる吹寄桜。
「…周りの客の視線が痛い。だが、それよりもこいつの食べるスピードより早く料理を作る料理人が人外じみてる…………」
さっきから厨房から奇声に近い唸り声が聞こえてくる。
恐らくその顔は鬼神の如く強張り、調理するスピードが早すぎて阿修羅みたいな残像が見えている事だろう。
「…………さて、本題に入るぞスパロウ。私に全てが視えていることは知っているな」
「ああ、知っているぞ」
「だが、一つだけ分からないことがある。何故お前が、何の関係もない筈の黒乃の為にそんなに必死になっているのか…だ」
桜の問いかけに、スパロウは表情を一切変えず、軽い笑みを浮かべたまま答える。
「確かに他人からしてみたら、変に見えるかもしれない」
「…………」
「だが、俺は思い出した。何故転生することになったのか、その理由を…………な」
「…………理由か」
「ああ、転生直後は何故かハーレムを目指していたが、本当は違う。本当の目的は、黒乃によって培養液に入れられている時に思い出した」
「…………俺と黒乃は、切っても切れない関係なんだよ。簡単に言えば、俺はあいつを助ける為に転生したといっていい。
なぜなら俺と黒乃は…………」
スパロウの口から語られたのは、信じがたいことであった。
「成る程、それなら納得がいく。しかし、それを黒乃本人に言わなくていいのか?」
「この事は、もし俺に何かがあった時に桜さんの口からあいつに伝えてくれ」
「…………私は別にいいが、黒乃が納得するかどうか」
「…………あいつはそんなに弱くないさ。大丈夫だろう」
「…………そうか」
「ただ、一つ気になるのはあの事件だな」
「集団殺人事件か」
「あの事件は、嫌な予感がするんだよ」
「…………確かに」
顔をしかめながらも、二人は席を立ち、会計へ向かう。
「お会計は155250円です」
「えっ、マジ⁉︎」
「では、私はここで失礼する」
「おいっ‼︎待てよ‼︎…………………すみません、カード払い出来ますか?」
「無理ですね」
「…………ちょっと銀行行って来ていいですか? 身分証は置いておきますから」
スパロウは、メロスの気持ちが始めて分かった気がした。
次の日。
黒乃は買い出しのために、買い物に来ていた。
「…………さて、今日の晩御飯は何にするかn(ドンッ)あっ、すみまぜっ⁉︎」
「こちらこそ申し訳あり…………ま」
黒乃がぶつかったのは、金髪の美少女…………そうシャルロット・デュノア。
言い換えれば、元カップルが偶然鉢合わせた。
まさに青天の霹靂である。
口調が心配やね。