戦場より電海へ、再会を望む便りを   作:来亜昌

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メカを書くのは難しいと頭を抱えつつ投稿させて頂きました。
誤字脱字などがありましたら、筆者に叩きつけて貰えると嬉しいです。



絶頂が過ぎ去ろうと

side【“tavola rotonda・un bras(ベティヴィエール)”】

 

体が、震えていた。

機体を掠める銃弾にでも、戦場に溶け込む歌にでも。暴威と化した味方にでもない。

肉体を超え、精神すらも支配せんとする、この震えの正体は。

 

「Foooooooo!!!」

 

歓喜(・・)であった。

 

「公式からの供給を生で拝めるのは、同じ前線に立てる家来の特権っ!!」

 

粒子照射砲斉射で、クトゥルンとは逆方向に吹かして回避した直後。foolが姫を抱えている姿を目撃した瞬間、俺のテンションはメーターを振り切った。

何故お姫様抱っこじゃないんだだとか、果たして当時姫は何と仰ったんだろうだとか。夜しか眠れぬぐらいに気になる所が沢山あるが、取り合えずこれだけは叫んでおこう。

 

「年の差主従cp最高っ!!」

「意味不明な事抜かす余裕はあるみたいでほっとしたよ!」

「ただの現実逃避だよ!」

 

気を取り直して現状確認。俺達前衛チームは、モノの右前脚が目と鼻の先にある位置にいる。しかし、ともなればモノの護衛も必然的に多くなる訳で…

 

「二人にこれはっ、戦力過多だろ!」

「しかも殴りがいが無いときたもんだ。スヴェル(陽光塞ぐ天蓋)の硬さが恋しくなる、ねぇ!」

「機動要塞の群れとか圧殺される未来しか浮かばねぇ…」

 

周りで待機する者も含めれば、三十は下らない敵の数は、現在進行形で生産されている故に更に増える。

同じく騎士の装いをし、されど我が“tavola rotonda・un bras”とは方向性が異なる機衣人。プレイヤーが構築した機体の中で、foolのと並び最大級のとある機体を、今戦っている敵全てと置換する。超重量級機衣人で視界が埋まる、どうあがいても絶望な光景に背筋が凍った俺は、幻の寒さを掻き消さんと穂先を熱を込め、粒子剣と交差するようにして敵を槍で突く。

 

「ちっ。キリがねぇ」

 

コアに風穴が開き、膝を突き倒れる敵を掴み、モノ本体から直々に送られてきた誘導ミサイルの肉盾にしながら打開策を考える。

どうする、使うか?いやしかし、使ってもこの状況を打開できないまま沼れば、最終局面でエネルギーが不足する可能性がある。傍らにいる味方の大槌もチャージ時間が確保できねぇし。滞空して待ち構えている敵もいるが、一か八か改良型噴脚と推進器を吹かして飛んでみるか…!

 

「っ!mine!!」

「ああ!!」

 

鉄板と見紛う程の、二本の重厚な大剣で豪快に敵を薙ぎ払うクトゥルンの呼びかけの真意を知る故に応え、後方から飛来した三発の砲弾が直撃し、吹っ飛んだ敵達がいた場所。包囲網の穴から、多少の損害は無視し他の機衣人を蹴散らして、二機ほぼ同時に突破する。

激しい戦闘に耐え切れず、二機に減ってしまったシールドピットにキレが戻り、支援攻撃が再開された。という事は、どうやら姫とfoolも上手くやったらしい。

 

「さぁて、無事援護も戻ってきたし、手間取った分、スムーズな脚登りと行こうじゃないか!」

「未経験者にも優しい脚だと良いんだがな、よっと」

 

今まで出会った全ての機衣人が比較対象にすらならない、ビルのような脚へと跳躍。空中で適度に推進器を吹かし、内部に格納していたらしき粒子砲とその台座へと着地しながら、砲口を向けるそれが発射するよりも早く槍で貫く。

噴脚やらの飛べる脚部とか、飛行機体じゃなくても一応いける親切設計ではあるらしいな。まぁ、叩き落されたら下手したら最初からとか言う心折設計の一面もあるが。

 

「一々飛び乗るなんて面倒だからね、アタシは文字通り駆け登らせてもらうよ!」

「声の届く範囲には注意しとけよな!」

「はいはい分かってるよ!」

 

片方の大剣を背へと収め、重力游脚でホバー移動する敵を踏み台に、モノの脚部左側面へとクトゥルンが飛び移る。

 

「凹凸はぁ…大丈夫そうだね」

 

壁を蹴り、後ろ斜め上に跳ねて、腰部の推進器と背部の大型推進器を一瞬吹かし、また壁へ。この動作を高速で繰り返し、“transcendere・confine”が側面を走る。

やっぱ台座に飛び乗って行くよりかは、壁蹴って行った方が速いか。

 

「なら、こっちも温めてたやつを使うとしようか!」

 

事前に決めていた工程通り、背部のバックパックにエネルギーを注入し、変形させる。

おっと?おあつらえ向きに突っ込んでくる敵機確認。しかも不幸にも一体。

 

「わざわざ接待しに来てもらったのに悪いが、残念ながらこの台座は一機用なんでな。お帰り願う!」

「!?」

 

肩に乗せたバズーカの狙いを俺に定め、発射しようとする瞬間。敵機衣人の右上半身を巨大な左手(・・・・・)が握り潰す。

円卓随一の贅力を持つ、隻腕の騎士。べディヴィエールをイメージして構築した、この機体のメイン武装である巨大左腕。一人で十数機を操る姫や、雷の槌を振るうクトゥルン。数多の武装をマウントしたfoolの機体と比べるとインパクトでは劣るが、そんなものはいらない。必要なのは。

 

「利便性とぉ、殺傷能力ぅ!」

 

片方でも十分だが、この巨大左腕は、両方を兼ね備えた武装だ。

殴って良し、武器を持たせても良し、装甲が厚いから盾にしても良し。割と何でもこなせる器用な巨大左腕は、もっと言えば、機体名に恥じない怪力を保有している。

 

「そぉれ受け取れ!」

 

耐久力自体はそこまでないのも影響して、一撃で粉砕できた機衣人を別の機衣人へと投げつけ、怯んだ隙に掌に埋め込んだ粒子砲を二発撃ち込む。

 

「そっちは大丈夫そうかい?」

「心配はいらねぇよ。それより、そっちに一機行ってるぞ!」

「問題ないよ!」

 

レーダー上の自機の左にある青い点に迫る赤い点を発見し、警戒を促す。しかし、それこそ心配いらないと一際強くモノの左脚を蹴って、クトゥルンが空に飛び出た。

 

「だって、そろそろだからねぇ!!」

 

巨大左腕で二個上の台座を掴み、上に持ち上げる反動と改良型噴脚の噴射で更に上の台座に乗りつつ、ちらりと横を向く。するとそこには、頭部と右肩部にシールドピットの突撃を食らい、ぐらつく機衣人に大剣の腹を叩きつけて、ホームラン!とご機嫌に笑いながら振り切り、放物線を描かせるアマゾネスの姿があった。

ああ、そういやオート操作にもなってたから、シールドピットのエネルギーはそろそろ限界だったな…ん?というか、プロットCはPVの映像からして、距離的にシールドピットによる防御支援は難しいと姫が仰ってたよな。攻撃だって同等以上の難度だろうし…まさか戦いの中で成長を?

姫の能力は化け物のそれではないかと、薄々感じていた疑問が信憑性を帯びていくのに恐怖を覚える。だが、実質狂人の集まりを一言で統率する荘厳な立ち姿を思い出し、寧ろそうでなければおかしいのかと一人納得して、落ちていくシールドピットを尻目に、上へ上へと駆け上がっていく。

 

「あっはっは!よく飛んだ、って、うん?」

「どうした?」

「…あ~成程ねぇ。確かにそうすりゃ、色々便利か。mine、こっからは気ぃ引き締めて行くよ」

「だから、何がどうしたんだって」

「来るよ!構えな!!」

「主語を付けっ!?」

 

何度も何度も姫に主語を飛ばすなと叱られているのに、懲りずに主語を飛ばすクトゥルンの言葉に困惑している途中で、第六感が警鐘を喧しく鳴らした。

両手じゃ効かない程に命を救われている俺は、即座に恩人ならぬ恩覚を信じて機体後方を巨大左腕で薙ぎ、何かを打ち払った感触を感じる。

 

「なんだ!?レーダーには映ってなかったんだが!?」

「こっちを見な、mine」

「一体何が…うわぁちょうちょ(飛行機体)がいっぱい」

「どうやら、ジャミングも装備してるらしいね。全く小賢しいちょうちょだよ」

 

取って付けたような機械翼と飛行補助推進器は、恐らく本当に取って付けたものなのだろう。左を向けば、翼人型によく似た敵の中に、モノの機体下部に幾つもあるハッチへえっちらおっちらと味方を担いで輸送する、噴脚の機衣人がいた。しかも、輸送する味方が、機能を失っていようがお構いなしに。

いっそ無視したくなるまでの改造、再利用アピールに赤い涙が零れそうだよ畜生。毎回イベントの最終任務の最高難易度は凝ってる上に面倒だが、今回は特に気合入れすぎだろ運営さん。

良いぞ、もっとやれ。(虚勢)

 

「ちっ。こいつら、他より」

「強いねぇ。動きもボス並みとはいかないが、CPUにしては上出来だ」

 

噴脚系の脚部を装着する機衣人は、確かに空中もいける。ただそれは、どちらかと言えば戦闘が可能、という意味の「いける」だ。空中戦を想定し構築された敵は以ての外として、飛行用のユニットを装備した相手との空中戦も、普通に分が悪い。空中で移動しようとすればエネルギーの消費量も一気に激しくなるし、俺達に任せられた役割もある。なので、相手の得意な戦場に付き合い一機ずつ仕留めるなどはせず、不安定且つ、限られた足場を掴み、踏みしめて憎い面を拝もうと登る他選択肢はない。

とまぁ、そんな考えには至っても、先ほどまで戦っていたそこそこできるCPUよりも機敏な動作で、近接武器での一撃離脱やビームちゅんちゅんをされれば、仏の顔もシステムを起動してあったまるというもので。

 

「目の前にサンドバックが欲しいねぇ!」

「俺は机が欲しいぜ…っ!」

 

数えるのも面倒な程の、機械仕掛けの天使が放つ光弾。巨大左腕をフル活用し、猿の如く変則的に登って避け、避けられない光弾は巨大左腕でなるべく受ける。が、数の暴力は飽きれるまでに強く、次第に機体を掠め、焼いていく弾が、ちらほらと表れ始めた時、視界の端の敵が爆発した。

 

「最高だ、親友(fool)!!」

 

その爆発を皮切りに、煙の尾を引いて突貫する誘導型ミサイルや、大型ライフル弾。直撃すれば空中でナパームをまき散らす焼夷弾や、AP弾と榴弾が、後方から敵に向けて降り注ぐ。立場が逆転して、姫に守られている、射撃に全力で臨める状態なのもあるが、弾の命中率は、実はγ出身かと偶に疑う域だ。

信じられるか。これ、全部一人でやってるんだぜ…?惜しいなぁ。魔弾の射手の二つ名が他のプレイヤーに使われてなけりゃ、foolが名乗れただろうに。

 

「はっはぁ!!速攻で残り半分も速攻で行くぜ!!」

 

次々と墜落する敵など気にも留めず、背中は任せて最高速で登攀する。

鉄線車は腰に掛け、左手に槍を持たせて右手を溝に突っ込み、機体を持ち上げ、今度は巨大左腕で粒子砲を破壊した台座を掴み、また機体を持ち上げる。台座の位置がまばらなのと、所々細かく溝が作られているのもあり、登りやすい脚は、何故か俺の気分を高揚させていった。

やべぇなんかテンション上がってきたぁ!いやテンションは元から高かったが、ランナーズ・ハイみたいな何かがテンションを底上げして上登が止まんねぇ!人生楽しい!!推しの絡みを特等席で眺める人生クッソ楽しい!!

 

「…ne!」

「我が人生は七色に輝いてるぜはっはっはぁ!!」

「mine!!」

「どうしたクトゥルン!もうばてたか!?」

「馬鹿言ってないで避けなっ!!」

「あ?ってうおっ!!?」

 

最早油断を通り越し、もぬけの殻のような注意を易々と搔い潜ったモノの右腕。クトゥルンの声と、影の動きで漸くその存在が間近に迫ろうとしているのを認識した俺は、瞬時に巨大左腕など目じゃない規模の手中から逃れるべく、台座を離れ、空中へと機体を躍らせる。

 

「くっ!」

 

遊びすぎたと悔みつつ、何もない場所で如何にして足場へと戻るかを考えるが、先ほどまでいた場所は腕で覆われており、元の位置への帰還は絶望的。覆われていない上方は、到達するまでに改良型噴脚が焼けつく。下方へならいけるが、その場合再度此処まで来るのに時間がかかってしまう。

迷う時間すら惜しい。俺はクトゥルンと離れる事を許容し、前へと推進器と改良型噴脚を吹かして、灼熱の槍をモノの腕に突き刺し、姿勢を固定する。

 

「すまん、俺はこっちから向かう!何とか登ってきてくれ!!」

「はいはい、先行ってな!」

 

楽しくなると周りが見えなくなる癖は直せ。と姫に叱られていたのを思い出し、他人をどうこう思う立場じゃなかったなと心中では自嘲しながらも、機体は槍を支柱に、腰部の推進器を補助目的で気休め程度に使い、広げられる腕ににしがみつく。

普通の槍なら補助いらないだろうが、この槍は高熱化機能も保有している故に、耐久は平均以下。最悪巨大左腕さえあればいいが、最悪が起こるのは、今では早すぎる。

 

「…高所恐怖症の人は卒倒もんだな」

 

並のマップであれば引っ掛かる筈の、高度限界は存在しない。闘争を繰り広げる姫とfoolが、点としか認識できない地上は遥か遠くにある。

ゲームだと頭で理解していても、足が竦むプレイヤーはきっといるだろう。仮想現実と謳われるだけの迫力を、リアリティを。俺は今、身を以って体感している。

 

「はぁ」

 

所詮は仮想(・・)だなと、憂いながら。

風が機体を撫でる涼しさはある。鉄の匂いを運ぶ潮風には及ばないが。

手に槍を握る感触はある。いくら力を込めて握っても、潰したくなる肉刺はできやしないが。

敵意を向けられる感覚はある。口が癒着するような、息苦しくなる殺意には劣るが。

槍で敵を貫く悦びはある。皮膚を破り、骨をすり抜け、軟い臓器に刃が沈む快感には勝らないが。

傷つけられる屈辱はある。脳を蝕む蛆虫が、頭蓋骨の中身を伽藍堂にするまでには至らないが。

鋼鉄の肉体では、実感できないものもあるだろう。しかし、肉体の差異はなどは関係ない。大切なのは、俺が居る(要る)という実感。二つの世界からの肯定だ。その内の一つの世界の肯定が、他よりはマシなこの世界でも、故郷と比較すれば、希薄も同然なのだ。

 

「…ないものねだりをする歳じゃねぇ、か」

 

満たす度に、一段と容量を増し続けた欲が何をしても埋まらないように。今亡き世界は、三十を過ぎた男があれこれ駄々を捏ねた所で帰ってこない。

ならば、完全に満たされない今をどう生きるか?空欄を埋める答は、既出済みだ。

 

その場のノリで生きる(・・・・・・・・・・)しかないよな」

 

適度に弁えつつ、後悔も一種の刺激として受け止めて、過去に熱を冷まされないよう、刹那に生き、常に感情を更新する。そうすれば、最高の時間は味わえないだろうが、楽しい一時ぐらいは享受できる。親友の笑顔に釣られて、笑う事すらできなくなった訳ではないのだから。

 

「んじゃまぁ、頭空っぽにして、人生楽しくやって行こうかぁ!?」

 

何度繰り返したかも忘れてしまった自問自答はさっさと終わらせて、照射の構えを取ろうとし、地に向けて傾くモノの腕から槍を引き抜く。

当然、支えがない機体は重力に従い落下するが、改良型噴脚と腰部の推進器で腕の正面へと位置を調整し、巨大左腕を向ける。

 

「発射!!」

 

巨大左腕の甲に装備した武装。自機捲揚機から射出された錨状の弾がモノの上腕部に引っ掛かり、機体が高速で巻き上がる。

あ~ああ~はぁいそこどいてねぇ、必殺ターザンキック!!ピットにも平等にターザンキック!!

 

「我こそは密林から遣わされた円卓の機衣人なるぞ!そこをどけぇい!!」

 

接近してくる敵は蹴落とし、光線は身を捩り回避して、アンカーが外れる角度ギリギリで漸く足が着く。もう一度ターバンやりたいと叫ぶ童心を抑え、急斜面を滑るように駆け上がる。

 

『残存エネルギー、五十%』

「報告せんきゅー!!」

 

星を掻く、交差する破滅の光を尻目に、天辺まで辿り着いた俺は、着地時を考慮して改良型噴脚を休め、推進器だけで中心へと前進する。

お、あれか!あれがバリアか!よーしおじちゃん張り切って壊しちゃうぞーおらどけターザンキーック!!

 

「HEYモノちゃん!ちょっとバリア解いてそこの補給所でお話しし硬ぇ!?ナンパ拒否世界チャンピオンかよ!?」

 

挨拶代わりに放った黄色の粒子砲は、菱形のコアを守るように展開された淡い薄紫の障壁に着弾し、傷一つ付ける事無く、泡沫よりも儚く霧散する。

全身にくまなく配置された動力ラインらしきものが、コアに向かうにつれ収束していく辺り、コアの破壊=撃破の線が濃厚。というのが、ストーリー中の伏線なりを念頭に置いた姫の推測だが、当たりだろうな。というか、この規模の敵とまともにやって勝てる気しねぇし。

 

「おーおーわらわらと来やがったな雑兵ども!だが、残念ながら俺にはモノちゃんを口説くという使命があるからな、あばよ!!」

 

着地、跳躍、推進器点火、着地。と機衣人流ステップを刻んで走る、第一関節の先には、モノの中心部から生産されたてほやほやの羽根付きが数体。クトゥルンがそろそろ着く頃合いと予想して、雑魚は相手にせず、元の角度に直そうと傾いていく腕から中心部へ、斜めに火花を散らしてずり落ちる。

 

「I CAN FLLLLLLLLLLLLY!!はっはぁ!!!」

 

火花が途切れ、浮遊感に包まれている身の奥底で懲役から解放された童心の赴くままに、天に粒子弾を放った巨大左腕からアンカーを発射する。

ヒュー!この爽快感堪んねぇ!可愛い(砲口)でこっちに熱い視線を送る(粒子砲や誘導ミサイルを撃つ)ガールズさえいなりゃ、もう十回ぐらいやりたいんだがなぁ!!

 

「へいへい、メアド配りは後でなぁ!いやー持てる男はつら」

 

数こそ多いが、敵方のロックが緩く、ミサイルの誘導力も低いともなれば、振り子軌道で被弾せずに押し通るのは難しくない。付近を通過していくだけの攻撃を前に、思考は既に胴部に着陸した後の行動を模索していた。

——―ある機衣人を、モニターに収めるまでは。

 

「い…?」

 

極薄の頭部に、阿修羅を上回る八本の腕。その全てが持つ箱に大口径マズルとグリップが溶接された、と表す他ない奇形な銃。

間違いない。間違う筈がない。ネフェリムホロウに登場する機衣人で、あんな変態(直球)構築をした奴は一体しかいない。

 

「なんでお前がっ!?」

 

奇形のツインアイが俺を捉え、武装のトリガーを引く。瞬間、散弾。ライフル弾。ミサイル。誘導ミサイル。粒子弾。粒子拡散弾。規格はおろか、弾そのものの性質まで異なる六種の弾で形成された、暴力的な弾幕が襲来する。

自機捲揚機をパージする事で無理やりアンカーを外し、巨大左腕で前面を防護しつつ改良型噴脚も稼働させ、左に自機を吹っ飛ばす。爾後、固定砲台のロック性能とは桁違いの精度で繰り出された粒子弾が、紙一重で彼方へと飛んでいった。

ふざけた外観とは裏腹に、第三次宇宙文明侵攻で数多の命を屠った、モノ・ズゥミウルギアと同列の存在。“十二の天災”の一席に座する、最も謎深き武装の担い手。

 

「“ヘキサ・モイラ(六の運命)”がここにいるんだよっ!!?」

 

俺の問いに、ヘキサは発砲で撃滅の意思を返した。




「巨大左腕」

武装として存在はしておらず、大型機衣人用で肉弾戦向きの腕部に自作した装甲や武装を着せて構築した、mineがそう名付けただけの腕。
機能させなければエネルギーの消費は重量分だけになる仕様を利用し、普段はバックパックに変形、必要になったら展開をしている。
装甲の厚さを過信して盾に使っていた所を、早暁の女王の超絶技巧で滑るように回り込まれて武士の恥を刻まれたことがあったりなかったり…
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