私と子羊の話
時刻は現在午前を中ほど消化した頃、佐々木の鎮守府の二階にある彼の執務室では、彼と秘書の愛宕に加えて、ここ最近着任したばかりの大淀が忙しなくそれぞれの業務に勤しんでいた。
佐々木の階級が上がった事に比例し、その仕事量もまた増えた。それはこの鎮守府の運営だけに限らず、この西南諸島領域に点在する鎮守府の統括業務もあるからだ。
元々一般人でしかなかった佐々木が、なぜそれほどの仕事を任されているかは、普通に考えれば不可解である。
そもそも軍の体質と言う物自体、情報の取り扱いに関してはデリケートなほどにデリケートであるのだから。
しかしそれには背に腹は代えられない事情が軍と言うより、世界的な状況によりあるのだ。
と言うのも妖精と艦娘に唯一命令が出来る特殊な存在である提督と呼ばれる人種は、この人類の存亡を掛けた戦線において非常に貴重であると言える。
しかし物量を持って押し寄せる深海棲艦の事を考えれば、素質のある人間が軍への門を叩き、その素質を開花させるまで待って居られるほどの時間的な余裕などは無い。
ゆえに自然発生的に現れる提督……その出現タイミングは様々ではあるが――それは例えば突如深海棲艦に襲われた漁村でだったり、或いは岸壁で海を眺めていた青年が、たまたま遠征任務で通りかかった艦娘とコミュニケーションが取れたりなど、ケースは様々だろうが。
とにかくそうして現れた人材を、軍は物資や設備を後押しする事で容易に運用する事ができるのだ。
それ故に正規軍と扱いは一緒にされず、与えられる階級もいわばその鎮守府の規模を示す符号の様な扱いとなっている。特に報酬を与える基準の様なものか。
しかし佐々木の鎮守府の様に功績があり、かつ一般的に見て過剰と言える戦力を抱えてしまった場合は例外的な措置が行われるのだ。
佐々木が大佐に任ぜられたタイミングで、政府の手により彼の鎮守府が大幅に拡大拡張されたなどがまさにそれである。
部屋は豪華に。ドックも拡張され、工廠などもより快適に作業が出来る様に最新鋭の機材などが配置された。
何故この過剰とも思えるテコ入れが入るか。
それはひとえに内戦の火種を前もって抑え込むためである。
国連の決議により、艦娘は対深海棲艦のみにしか運用出来ないとされている。
それは形骸化した国連の中で、唯一効力のある国際条約として成立していた。
艦娘とは有体に言えば、人型の万能兵器である。
大きさは人間のそれと変わらないが、その戦闘能力は現代兵器を凌ぐほどだ。
確かに彼女達は旧時代の兵器を日常的に用いている。
しかしそれは深海棲艦に有効なダメージを与える唯一の方法だからだ。
だからと言って彼女達が現代兵器を装備出来ないという事では無いのだ。
深夜の闇の中、音も立てず艦娘達が他国の海岸線に接近し、重要施設を攻撃したらどうなるだろうか。
或いは幸せそうな家族に扮して他国に入国し、要人に接近した後に艤装を呼びだしたなら?
つまり現在は深海棲艦に向いている彼女達の矛が、今度は人間に向かった時の脅威は想像するのは難しくないのだ。
実際の彼女達の思想がどうであれ、そういう想像に人々は恐怖するという事だ。
そうなると多数艦娘を保有する国は、かつての核兵器の様に威圧感を持つのと同義。
それを国単位に縮尺して見てみれば同様に、各鎮守府の矛が国に向かえばどうなるのかと言う問題になる訳だ。
その為、それなりの戦力と戦果を示した鎮守府は、大佐位に任ぜられた事を目安に正規軍へと組み込まれる。
当然報酬も多くはなるが、正規軍の命令系統に組み込まれる以上、大本営海軍部の意向に沿った作戦行動を行わなければならない。
ゆえに現在の佐々木は、己の鎮守府運営だけに留まらず、近隣の鎮守府の統括としての業務に携わる。
彼の今の肩書は海軍大佐と言うだけでなく、西南諸島方面司令官と言う物も加えられているのだ。
その業務は例えば、大規模作戦が計画された場合の前線本部としての拠点となったり、日常的で言えば各鎮守府の練度向上のための演習を行うための場の提供であったりと様々だ。
その為の改修なのだ。演習場や入渠ドックだけに限らず、様々な人間が出入りするための内装の変更であったりなどである。
本土のVIPが来ることもあるだろうし、体面と言う物も要求されるのだ。
大使館が他国内であるのにその国の領土と認められるのと同様に、各鎮守府もまたその扱いと同じなのだから。
佐々木は正規軍に組み込まれたタイミングで一度本土へと召還され、二か月と言う短い期間ながらも士官教育を受けて今に至る。
彼本来ののんびりとした性格からすると、自分の望まない周囲の状況の変化に内心辟易したものだが、元々は企業で働く企業戦士であった事と、本来の生真面目な性格と、そして現在の彼の内なる目的のためにこの状況を受け入れる事にしたのであった。
士官教育の際、彼はこの世界に現れてから初めて帝国本土の地を踏んだ訳だが、それまでふわりとしていた認識をここできっちりと固めるきっかけとなった。
それは帝国の立地が、彼の知る日本とは全く別だったからだ。
地図上で見ると彼の以前の常識で見れば、帝都がある場所はかつての極東の大陸である。
そして日本国があった場所は、初めて艦娘が出現した象徴的な場所として存在している。
もちろん領土としては帝国なのだが、各都道府県にあたる場所の要所要所に主要鎮守府があり、その周囲は発展している物の、それ以外の地域はかつての自然を取り戻した様に手つかずにされている。
この世界の過去に何があったのかと佐々木は調べたが、どうやら彼が知っている国があり、それが何らかの歴史を経て現在に至ったという物では無く、昔からこのような国境配置のままだった事が分かった。
それはまさに彼が別世界に居るのだと証拠を突き付けられた様な物で、彼の中で元の世界への未練を本当の意味で断ち切る切っ掛けとなったようだ。
因みに彼が本土に居る間、とうとう彼は海軍部の連合艦隊長官である東郷との面会をはたしたのであるが、それはまた別の話。
さて司令室では佐々木を中心とした面々がそれぞれ忙しく業務に勤しんでいたのだが、ふと大淀が顔を上げると佐々木に言った。
「提督、現在の備蓄資源のリストですが、先週までの作戦により、特に燃料弾薬の備蓄が心元ありませんね。追加の遠征をしますが宜しいですか?」
「……そうだね。第二艦隊には悪いけれど、今週は演習を減らし、遠征を中心にやって貰おうか。五十鈴に連絡。輸送用ドラム缶と輸送船の準備をヒトゴマルマルまでに。それと午後に予定していた彼女たちの演習はキャンセル。代わりに第一艦隊をあてる。で、第二は遠征準備を終えた後休養に充てる事。遠征出発は明朝ゼロキュウマルマルとする」
「了解しました。書類を作成しますので後ほど決裁をよろしくお願いします。では愛宕、第二艦隊に通達をお願いします」
「はぁい。行ってくるわね。提督、間宮はどうします」
「許可する。支払いは私に」
「うふふ、みんな喜ぶわぁ。では行ってきまーす」
「頼むよ。愛宕、君も一服入れて来るといい。どうも午後は休憩が取れ無さそうだ。大淀、君もその書類が出来たらそうしなさい」
「ありがとうございます提督」
生真面目すぎるきらいのある大淀であるが、佐々木としても控えめながら自分の次の行動を予測し、それを嫌味にならない様な自然さで示唆をする彼女を信頼していた。愛宕もまた同様に。
そもそも彼の中では適材適所を実践している限り、物事は滞りなく進むのだと理解している。それは彼が生粋の軍人に非ず、一般企業での社会人経験がそうさせているのだ。
「……愛宕、少し待ってくれ」
「はぁい?」
第二艦隊への伝令へと向かうためにドアに手を掛けた愛宕を佐々木は呼び止める。
その声に彼女はしなやかな金色の長い髪を棚引かせながら優雅に振り向いた。
「あー……、今回は大和は待機だ。そして旗艦は曙に変更」
「あーら提督ぅ、相変わらず大和さん贔屓なんだから~」
旗艦変更を伝える佐々木の声に、愛宕の少し目じりの下がった瞳が猫の様に弧を描く。
そして彼と大和を揶揄する恒例の佐々木弄りを開始した。
もう随分とここの生活にも慣れた大淀も、顔を背けて肩を震わせている。
「勘弁してくれよ愛宕。確かに私は君たちのストレス発散の格好の的だと理解はしているが、今回はあれだぞ。ちゃんとした理由なんだからな」
「提督、大淀気になります。今後の艦隊指揮の為にその理由を聞かせてください」
「……大淀、君だけは彼女達に染まらないでいて欲しいと思っていたのだが。では聞かせてやろうじゃないか。演習で弾薬を過剰に減らしてどうするんだ。その為に遠征を増やそうとしているのに。コスト管理、つまりはそう言うことだよ」
ついには愛宕の悪乗りに便乗を決め込んだ大淀を呆れ顔で見る佐々木。
この鎮守府の提督として着任し既に五年。事あるごとに愛宕に弄られ続けた佐々木もついには学習したようだ。
語尾が若干怪しい物だが、からかいに付き合うつもりは無いと涼しい顔で言い返す。
だがしかし、女社会の中に男がただ一人。敵う訳などあろうはずもない。
「へぇ……ねえ大淀。今の聞いたかしら」
「ええ愛宕。提督は大和が大喰らい、そう言いたいのね」
「連合艦隊旗艦。全艦娘の華とも言える大和型戦艦大和。あの大和撫子と言う言葉をそのまま具現化した様な彼女が大喰らいと提督は思っていると。……これきっと大和は泣いてしまいますわね」
「ええ、そうね。でもやはり、ここは今後の艦隊指揮に関わりますので報告すべきでしょう」
「提督酷いわぁ」
「提督酷いです」
示し合わせたかのように二人は茶番を続け、意味ありげに佐々木を見ている。
佐々木は深い溜息をつくとニ、三度首を振り天を仰いだ。
「いい加減にしたまえ君たち。…………で、間宮のアイスでいいかね?」
「分かりました提督。この大淀、そこに最中を加える事で悔しいですが買収されましょう。今後の艦隊指揮のために」
「なあ大淀、君は艦隊指揮って言いたいだけじゃないのかい」
「提督ぅ。私、パフェも好きなの」
「ああもう好きにしてくれ。と言うか最初から甘味をねだれば可愛げもあるだろうに……。艦隊指揮より私の士気が下がるよ……」
結局の所、佐々木は甘味を奢らされると言う不幸に遭うのであった。
そう言えば扶桑型戦艦も来期にはここへ来ると言ってたな長官は、と現実逃避を開始しながら。
そんな佐々木以外はほのぼのとした雰囲気で、昨今の司令室の業務は進んでいくのであった。
艦娘とは言え戦い以外はただの女性に過ぎない。前線にさえ出ていなければ普段はこんなものだ。
それは佐々木も理解しているし、それでいいとも思っている。
多少出費はかさむとは言え、金などいくらあったって使う場所など無いのだから。
それ以上に大淀が加入し、作業の能率が上がった事の方が佐々木には有り難い事なのだ。
大淀が着任する以前は、日常の業務に加え作戦行動における計画立案などもこなさねばならず、定期的に本土へ戦果を報告するレポート作成など、事務的な業務が佐々木の仕事のほぼ九割を占めるため、現実的に愛宕と二人では限界が来ていた。
軍事行動はどんな些細な事でも責任者の決裁がいるのだ。それは作戦行動中に何か問題が起きた際、その責任の在所を事前に明らかにしておくためだ。だからこそ彼が扱う事務仕事の量は多い。
しかし大淀がその分野では非常に秀でていたため、司令室で行われる業務の中で書類作成は大淀、確認と決済は佐々木。そして司令室と艦娘の橋渡し役を愛宕が務めると言う役割分担が可能になった。
彼女がここへ来た当初は、元々彼女が任務を司る本土との連絡管と言う立場でここへ出入りしていたが、今回艦娘である大淀としてここへ着任の際に若干のしこりが生じた。
それはそうだろう。佐々木の動向や思想の類が東郷側へと筒抜けになっていた事実から、彼女が情報畑の人間であり、言ってしまえばスパイとしてここに来ていた事が明らかなのだから。
普段は温厚で底の見えない愛宕は佐々木の態度や言動からそれを見抜き、絆の深いこの鎮守府の面々にはどうしてもその情報は拡散していく。
そうなれば大淀が佐々木にに対し何か害を及ぼすのでは無いかと懸念し、彼女を過剰に警戒したのだ。
ましてこの鎮守府には今や、大っぴらに出来ない独自の機密がいくつかある。
しかし佐々木が本土の東郷との面会を果たし、彼との会話の中で互いの真意を確認したことで、大淀の出自が明らかとなった。その事でこのわだかまりは一応解消される事となった。
もちろん佐々木が胃薬を手に色々と働きかけた努力の結果があるにしても。
東郷に明かされた大淀の出自とは、彼女が東郷の実娘であり、かねてから彼の持つ研究部門で、妖精の手では無く人間の手によって艦娘を誕生させるというプロジェクトの被検者だと言う事だ。
東郷は元々無限とも言える勢いで発生する深海棲艦と言う存在に対し、艦娘をそれに当たらせるという構図に限界があると考えていた。
妖精の手によって産みだされる艦娘は、資源と条件さえ合えば、言うなればいくらでも建造する事が可能である。
しかし連合艦隊の作戦行動で、敵艦隊を駆逐した際に艦娘が現れる事も彼は実体験として知っている。
そうなると彼の中に疑念が生まれた。立ち位置が別と言うだけで、本質的な物は艦娘も深海棲艦も一緒なのではないかと。
現在の帝国議会上層部ではこの戦争が終わる事よりも、どこかある程度の被害水準を維持したままで恒久的にこの状況が続くことを暗に望む節がある。
それはシーレーンを確保するには艦娘を用いる必要があり、それがイコール世界経済を護る為の最後の砦となっているからだ。
もしこれが出来なくなれば直ぐに飢える国も多数生まれるだろう。
つまりは現在の状況の中で艦娘保有数が世界最大である帝国は、各国への発言権も最大と言えるのだ。
艦娘を持てない国もある。それは妖精が物理的に発生しない国があるからだ。
そしてそう言った国には何故か提督も出現しない。
艦娘を運用するにはそれに付随する施設も必要だ。
そうなればただその国へ艦娘を譲渡すれば済むという話では無くなる。
その為艦娘を持てない国は帝国へと海岸線の防衛を要請する必要があるのだ。
しかし帝国もおいそれとその国へ鎮守府を設立する事は難しい。
それは深海棲艦もまた泊地を各所に作り上げる事があるからだ。
そこには概ね姫級とカテゴライズされる強力な首魁がおり、小さな艦隊では歯が立たない。
ゆえに帝国も敵泊地を撃破するには相当のコストを掛ける事になる。
そこで帝国は考える。その国を救う”旨み”はあるのかと。
要は現在の情勢の中で、艦娘を保有できるという事は、即ち強力な外交カードを持つ事と同義である。
国同士に真の意味での友好など無い。それは自分たちが飢えながら他国の腹を満たす意味が無いからだ。
そもそも何かの有事で隣国へ何かを施した後、自分たちの危機にその国が救いの手を差し伸べるかと言えば疑問だ。
つまり国同士の友好とはあくまでも方便であり、その実はそこに利があるかないかである。
これは帝国が傲慢であるという話では無く、どの国もそうであると言う話だ。
ただ現在帝国が持つ国で、それ以外が持たざる国であると言うだけである。
そんな帝国上層部の思惑の中で、現場主義を貫く東郷はそれを密かに問題視していた。
現場主義とは前線主義である。苛烈な前線の中で状況を打開するためには、上からの目線と下からの目線を兼ね備えねば難しいだろう。
机上の空論では無く、合理的かつ現実的。徹底的に希望的観測による皮算用を排除する。そうなると各戦端を優位にと言うよりは、つまるところ問題の元から断てという話になる。
コスト的にもその方がよほど合理的であると言えよう。もちろんそれは出来ればの話であるが。
確かに現状であれば東郷の思想は理想論でしかないと思われるだろう。
もちろんそれは彼自身も自覚しているし、だからこそそれを声高に主張する事も無かった。
しかし深海棲艦の謎めいた生態と、艦娘の生態には共通する部分が多数あり、それが何らかの意味があるとするならば、彼は地下でそれを追求しようと考えたのだ。
表では厳格な指揮官のそれを演じ、その事で築き上げた名声と地位を最大限有効利用し、コネクションを拡げていく。
そして自分に同調しそうな人間を吟味して仲間に引き入れるのだ。
その結果出来上がったのが彼の地下研究所であり、霊的因子と呼ばれる艦娘の素の発見だ。
その霊的因子は艦娘にも深海棲艦にも存在するという結果は、どちらも一緒なのだと言う歴史的発見でもある。
しかしその因子は誰にでも適合するわけでは無く、対象外に植え付けようとすれば自壊してしまう。
その様はまさに魂の結び付きとも言える不可思議な現象であるが、流石にそこまでは研究所でも証明には至っていない。
とにかくそうして、自身が持つ諜報機関に属していた自分の娘がその第一被検者として適合した。
彼は密かに葛藤するも、娘自身は毅然としてそれを受け入れた。
そうなれば彼も覚悟をせざるを得ない。今後、この間違った戦いの構図を覆すことで娘に報いると決意を新たにしたのだった。
そんな東郷が目をつけていた人材。それが佐々木だ。
彼は自分の目的と同じ方向を見ていると知った。
だからこそ目を掛けてきた。監視も常に置いておいた。
そしてその極め付けとして大淀となった娘を与えた。
最も佐々木自身がその思惑を完全に知る訳もない。
本土で漸く対面を果たした二人であるが、東郷は自分の思いが間違っていなかったと内心で満足し、翻って佐々木は東郷の底の読めなさに困惑を覚えた。
生粋の軍人と生粋の素人。青臭い理念と現実的で切実な理論。
一見混ざりあっている様に見えるがその実は誰にも分からない。
ただ佐々木自身、大淀が東郷の実子であると明かされた事には驚きと共に、少なくとも東郷は自分を信頼しているのだと言う思いは受け取った。
それは彼の真剣な視線の中に、微かな父親としての慕情を感じたからだ。
貴方の大事な娘を預からせて貰います。そう言う佐々木に彼は返事をしなかったが、別れの際に交わした握手の握りの強さをその返事と受け取った。
理屈では無いが信頼するには足るだろう。乱暴に言えば戦国時代の婚姻外交の様な物か。
娘への愛情を示しつつも敢えて大淀を佐々木に預ける。言ってしまえば人質だ。
電話での会話の中、何度も頼むと念を押してきた真意がその証拠だろう。
佐々木はそれを信じることにしたのだ。その上で実は東郷がそう言った姿を演じつつ、状況によっては娘を捨て駒にすることが出来る冷血漢だったのなら、その時は自分の見る目が無かったと諦めようと開き直った。
そんな経緯もあり、それに加えて大淀自身の努力もあり、今はここの艦娘として馴染んだのである。
佐々木は愛宕が部屋から退出して後、書類作成に没頭する大淀の横顔を眺めながらそれを思い出していた。
やる事も考えることも山ほどある。しかし少なくともこの鎮守府の誰も沈めはしないぞと思いを新たにしながら。
「提督? どうかなさいました?」
ふと視線を感じたのか大淀が顔をあげた。
首を傾げるその仕草は年若い少女のそれだ。
「いや別に何も無いよ。ただいつも助けられているなと感じただけさ」
「は、はぁ」
「まあいい。なあ大淀、手を出してくれ」
「手、ですか?」
要領を得ない佐々木の言葉に困惑気味の大淀。
しかし佐々木は微笑むと彼女の前に手を差し出した。
よく分からないまま手を差し出す大淀。
佐々木はその手を握り、数度上下に振った。
「これからもよろしく頼むよ、大淀。では時間を取らせて悪かった。仕事に戻ろう」
「あ、はぁ、はい提督。大淀、頑張りますね」
既に佐々木の視線は手元の書類に落ちていた。
大淀は今まで握られていた掌を眺め、もう一度首を傾げると提督がよく分からないけれど満足そうだからいいかと自分も仕事に戻る。
そして「大淀の握手も力強い握りでしたよ長官」と密かに考える佐々木であった。
◇◆◆◇
この鎮守府の部屋割は割とおおざっぱな配置である。
現在の人員は設立当初から比べるとかなり人数を増したものだが、艦娘自身がそれでいいと希望するのだ。
かつて鎮守府が拡張された時にこの宿舎も同様に拡げられ、部屋数も相当に多くなった。具体的に言えば200人までの艦娘が不自由なく生活できる程の規模である。
しかし現在の部屋割は艦隊ごとに大部屋で過ごしている。
例えば第一艦隊は大和、霧島、加賀、龍驤、北上、木曾、島風。第二艦隊は五十鈴、暁、響、雷、電、曙がおり、第三艦隊伊号潜水艦の面々である伊58、伊19、伊8、伊168がいる。
そしてその配置のまま同じ部屋で過ごしているのだ。
これは元々大和が言いだした事なのだが、この街が深海棲艦に襲撃された例の事件。これは今後の為に教訓にしなければならないと、有事の際にすぐさま出撃出来る様に、艦隊は纏まっていた方が良いと主張した。それを佐々木は了承し、艦娘たちもそれでいいと受け入れた。
最も大和は言葉じりで「とは言え、本音は一人でいるよりも皆さんと一緒にいたいという私の我儘を通すための方便なのですが」と照れくさそうに笑ったものだ。
そんな経緯での部屋割りであるが、第二艦隊の部屋では現在、少しばかり喧騒が外へと漏れていた。
「曙ずるーい! 私も第一と演習がしたかったわ!」
「うるさいわね。あんたの場合、演習にかこつけてクソ提督と一緒にいたいだけじゃない」
「うっ……」
声の主は曙と雷だ。とは言え大声を出しているのは雷であり、曙は自分の荷物を纏める作業に忙しい。
曙は腰に手を当て勇まし気な格好で言い募る雷に面倒臭そうにそういうと、雷は図星を指されて黙ってしまった。
愛宕からの伝令を受け、今日の予定が変更となった第二艦隊の面々であるが、旗艦である五十鈴により遠征の為の準備を行うための割り振りは済んだ。
一人前のレディを自称する特Ⅲ型駆逐艦の長女である暁はまっさきにドラム缶のある倉庫へと走って行った。そうすれば佐々木に褒めて貰えると言う魂胆がそこに滲んでいるのだが、それを指摘するほど彼女の戦友たちは無粋では無い。
大和を公私ともに尊敬する五十鈴は旗艦を任されている責任感から、暁の次に倉庫へと向かい、燃料などを積み込む輸送船の準備を始めた。生真面目な響や電もその後に続く。しかし第一艦隊の島風と配置変えを指示された曙に雷が噛みついた。
とは言えそれはじゃれ合いの様な物で険悪な雰囲気という訳では無かったのだが。
急遽遠征を言い渡された第二艦隊であるが、元々は近隣の鎮守府との演習が組まれていた。
演習はここで行う物の、相手はそれなりの手間を掛けてここへやってくる関係上、自分たちの都合でその日になってからキャンセルなどは出来ない。
その為、基本的には重要なシーレーンに当たる海域で深海棲艦の目撃報告があった地点の安全を確保するための作戦行動についている第一艦隊がその代わりとなったのだ。
それは今日明日がタイミングが良く第一艦隊は静養日となっていたからだ。
しかしその能力から消費の激しい大和を演習に使うなど出来ない。そこで大和が旗艦を外れ、まだ練度や経験の浅い曙をそこに充てると言うのが佐々木の判断であった。
曙は東郷から託された訳在りの艦娘の一人であったが、彼女は元々壊滅した某鎮守府で建造されて間もない状態であった。
そこで管理のずさんなままの遠征要員として酷使されていた。要は最低限の補給はされる物の、まるで道具の様に繰り返し遠征に行かされると言う物だ。
運用コストの低い駆逐艦であるから、最前線の鎮守府では暗黙的に行われる行為でもあるのだが、曙は軍艦であった時の出来事や当時の酷使のされ方も相まって、上官に極度の不信感を持つ事となった。
そんな彼女が遠征から戻ってみれば鎮守府は深海棲艦の襲撃によって壊滅しており、現場を調査に来た海軍部の者により回収された。
その後捨て駒の様な例の作戦で前線に立ち、希望を失っていた彼女はそこで死のうと考えていた。
だが皮肉にも彼女は生き残り、東郷の手の者に保護され、そこの施設でリハビリを受けた後にここへとやってきた。
着任当初は酷いものであった。協調性の欠如していた島風とは別の次元で孤立したのだ。
とにかく曙は目に映る物全てが憎いとばかりにかみついた。
実際そう思っていたのかもしれないが、何せ口から出る言葉は辛辣な物ばかりであった。
しかし状況を理解している大和や五十鈴を筆頭に、佐々木の艦娘たちは気長に彼女を見守った。
それは佐々木から必要以上に踏み込むなと言い含められていたからだ。
佐々木は曙の心情を全て理解していた訳では無いが、少なくとも五十鈴の時と状況は似ていると考えた。
全ての事に絶望している相手に何を言えばいいのか。その答えは多分、何もないだろう。
誰かが曙を元気づけようとしたところで、深いところまで落ちてしまった彼女の心から見れば、どんな優しい言葉であっても自分を蔑んでいるか見くだしている様にしか聞こえないのだ。
だからこそ佐々木は最悪の結果にならない様にだけ注意し、曙が聞く耳を自分から持つまで受け身に徹した。
東郷の施設でリハビリを受けたとはいえ、当時はまだ戦闘を任せる程の状況にはなっていなかった。
そこで佐々木は彼女を愛宕の補佐として司令室付けにした。
周囲に当たり散らす彼女ではあったが、同時に責任感だけは強かった。
自分と言う物を失わないために、怠惰になる事で自分の評価を下げる事を嫌ったのだ。
被害妄想ではあるとはいえ、他者に見くだされる事が一番許せない事だったからだ。
佐々木はそれほど難しくはない書類の確認などを曙に任せた。
彼女はこの鎮守府の最高権力者である佐々木に対し、言葉汚く罵る。
しかし大淀も愛宕も軽くは窘める物の強くは言わない。
佐々木も真剣に曙の目から視線は逸らさぬ物の、決して懲罰など与えない。
悪態をつく曙は、無意識のうちに自分を罰してほしいと考えている。
或いはこの線よりこっちへ踏み込むなと、まるで繁殖期の獣の様に威嚇をしている。
しかし曙の言葉の刃は誰も傷つけなかった。
それはそうだろう。彼女がそのつもりなのは佐々木たちは理解していたし、その上でその刃を受け止めていたのだから。
そうなれば曙は困惑するしかない。そしてその困惑は自分の中に罪悪感として積み重なっていく。
曙の性根は酷く優しいのだろう。
望んで孤立しようとしていたのに、何故かそうする度に佐々木たちに申し訳ない気持ちばかりが増していくのだ。
そんなある時、きっかけは些細な物であったが、佐々木が書類に手を伸ばした時に曙の手に触れてしまった。
自分の思惑が何一つ望んだ結果とならず、いろんな意味で心が限界に来ていた曙は、その事で佐々木にかみついた。
酷い剣幕で罵り、目につくものを佐々木に投げつけた。
これには愛宕も制止に入ろうとしたのだが、佐々木は強い視線を彼女に飛ばしてそれを止めた。
このクソ提督、死ね、畜生、ふざけるな、アンタらは全員死んでしまえ――――
彼女は思いつく限りの罵詈雑言を咳き込む程の大声で叫び、手にしたインク瓶を投げつける。
儀礼用の白い礼装では無く、黒色の通常礼装なのでそれほど目立たないにしても、佐々木はそれを頭から被り顔は真っ黒に汚れた。
しかし佐々木は何も言わない。ただただ困った表情で曙を見るだけだ。
やがて言う言葉も無くなった曙は、今度はその場に立ち尽くしたまま天井を見上げ、子供の様に泣きじゃくった。
言葉にならない嗚咽は何とも痛ましい物であったが、そこに来て佐々木は彼女に歩み寄るとおもむろに抱きしめた。
触るなと激しく暴れる曙であったが佐々木はさらに強く抱きしめるだけだ。そもそも艤装を装備していない艦娘の力はただの少女と変わらない。
抱き留めたまま何も言わない佐々木は、ただ藍色の曙の髪を何度も何度も撫でた。
それはまるで幼子にする様にだ。
五分、或いは十分は経った頃だろうか。
泣き疲れた曙はそのまま眠ってしまった。
目じりから続く白い跡は涙が結晶化した物だろうか。
佐々木はそんな曙を抱き上げると、司令室に繋がっている己の寝室に寝かせた。
「こうして眠っている顔を見れば年頃の娘にしか見えないよな……」
インクで汚れた顔のまま、曙が眠る寝具の横に座ると佐々木はそう呟く。
実際背中に艤装を背負っていない曙の姿は、セーラー服を纏った女子中学生の様だ。
「提督、後はお願いしますね。ふふっ、可愛いからって襲っちゃダメよ?」
戸口で静かに様子を見守っていた愛宕は軽口を叩くが、佐々木は軽く手をあげて返事をしたのみ。
そして愛宕は静かにドアを閉めた。
ブラインドを下ろしてある佐々木の部屋が薄暗さに包まれる。
やがて二時間も経った頃だろうか。
目を覚ましぼんやりと目を開いた曙は左手の妙な暖かさに気付いた。
「…………ソ提督」
暖かったのは己の手を握る佐々木の掌の温もりだった。
そんな佐々木は布団の横に胡坐をかいたまま、曙の手を握った姿勢で眠りこけていた。
その表情は何とも無防備な物で、余りの太平楽な様子に曙は呆れた。
そしてどうしてこの男はこんなにも自分を気にするのだろうと考えてみた。
曙は自分たち艦娘と言う存在をただの兵器だと考えていた。
それは彼女の中に存在する遠い昔の記憶に由来する。
駆逐艦と言う船はその火力は低く装甲も薄いが、その分機動性隠密性に長けており、大型巡洋艦では運用の難しい魚雷を搭載出来る。
そんな特色から艦隊に配置されると旗艦の護衛を担当する事になる。
曙はかつて参加した作戦の中で護衛対象艦を護れず沈め、被弾は弾除けとして動かなかったとされ、さらには作戦行動が失敗した要因であると言う評価を受けた。
それは冷静に戦局分析をしたのなら正当性の無い評価であり、戦争末期の混乱の中でいわばスケープゴートとなった様な物であった。
何か問題があれば全て曙が悪いと言う極論すればそう言う流れであったのだ。
そんな歴史を持つ駆逐艦・曙が、何の因果か艦娘として再誕する事となった。
軍艦としての力を持つ物の、人間の少女でもあると言う側面を持つ艦娘は、すぐさま彼女自身に葛藤を抱かせた。
何も考えずに戦ってれば良い軍艦であればいいのに、なぜわざわざ人間の心を持つ歪な存在にしたのだと。
敵国から国を護る為に生み出された曙と言う駆逐艦は、今度は深海棲艦と言う新たな敵から国を護るために駆逐級艦娘・曙として生み出された。
だが所属する鎮守府の司令は、ある時は兵器として扱い、ある時は人間のように扱う。
兵装はあるにしても人の身であれば消耗する。だから曙は休息が欲しいと要請する。
しかし司令官は言うのだ。お前は兵器だろう、と。なら補給をすれば問題無いと。
着任当初、遠征に出すための最低限の訓練として彼女は旗艦にされ、その為短い間であるが秘書を務めた。
司令官の傍で慣れない書類仕事をする曙。ある時彼は彼女に言った。それは他愛もない軽口であるし、ストレスの溜まりやすい立場の彼のちょっとした愚痴の様なつもりだった。
女性である曙に対しての冗談ではあるが、それを彼女は真に受けてしまい、業務中であるのに不真面目であるとこれまた生真面目に返してしまった。
すると司令官は曙を罵った。上官に対して何たる口の利き方かと。お前は人であるのに優しさと言う物が無いのかと黙る曙を追い込んだ。
それ以降彼女の扱いはお世辞にも良いものとは言えない待遇へと変わった。
曙からすれば生まれたばかりで世俗に疎いのだから、そもそも司令官の言う言葉の裏までは理解など出来なかっただろう。
しかし結果として彼女の待遇は酷い物になってしまった。
そうなると彼女のある種トラウマとも言える、自分への理不尽な評価で苦しむ事となった。
曙は考える。なら私は誰にも期待なんかしないと。
自分は兵器でいいのだ。感情なんて異物でしかないと何度も心へ刷り込む。
彼女にとって不幸だったのは、配置された艦隊に自分を理解してくれる艦娘がいなかった事だろう。
それはそうだ。彼女が配置された艦隊の人員もまた、冷遇されていると感じているのだから。
周囲に気を配る余裕などそもそも無いのだ。ただ終わりのないルーチンワークの中で、かろうじて自分を見失わない様に必死になるか無関心になる事だけが自衛手段だったのだ。
だがこの司令官はどうか。
どんな理由があるにせよ、自分はこの男をまるで親の敵のように接した。
だのにこの男は怯むでも無く、それでいて目を逸らす訳でも無く。
何も言わないがずっと自分を見ようとする。
それは彼女自身、到底理解できる物では無かった。
それに加え、彼の部下たちもまた同様に曙を見守るのみだ。
そこにこの佐々木と言う不可思議な人間への信頼が垣間見える。
気に入らないと思えど、心の底では理解できない感情もまた沸き立つのを曙は感じる。
だから曙はその感情の正体を知りたいと、間抜けな顔で依然眠りこける佐々木を見る。
それは無意識な物で、あれだけ邪険に扱った男が未だに己の手を握っている事に気付かない。
「……んぅ。寝てしまったか。お、曙、起きたみたいだな」
どれだけの時間、曙は佐々木を眺めていたであろうか。
とは言え特に変化もなく、寝息を立てたまま彼の顔が上下するだけの時間が過ぎただけだったが。
そんな佐々木はふと目を覚まし、そして相変わらず儉の無い視線を曙に向ける。
不意打ちにびくりと身体を揺らした曙だったが、佐々木は彼女の様子など気にせず言葉を続ける。
「泣いたらさ、少しはすっきりするだろう? 私もよく泣くんだ。大の男が年若い女に囲まれながらさ。情けないって思うかい? でも私は泣いてしまう。私はお前さんが何を考えているか知らないし、どんな事が今まであったかなんてそれこそ知る由も無い。でもな曙、私は知りたいんだ。お前さんが何を考えているかをね」
佐々木は曙にそう言うと、また穏やかな表情で彼女を見たまま黙った。
言うべきことは言った。後は君次第だよと言う所だろう。
そんな佐々木を吃とした視線で見返す曙。
沈黙が続く部屋。壁にかかっている時計の秒針が進む音だけが響く。
そして、やがて――――
「ぷっ……くっ、あはははっ。何を知った風に言うわけ? あんたはカッコいい事言ったつもりかもしれないけれど、残念ね。そんな墨だらけの顔じゃカッコ付かないって……あはははは!」
彼女は思いっきり吹きだした。
今まで張り詰めてきた心の糸がふいに撓んだ反動か、彼女は大いに笑った。
佐々木はなんともしまらない顔で頭を掻くだけだ。
そして何となく自分の頬を撫でてみる。
なるほど肌が不自然につるつるとしている。
そんな彼をひとしきり笑った曙は、むくりと身体を起こすとわざとらしく佐々木の手を振りはらい、そして言った。
「じゃあアンタに聞かせてやるわ。なんで私がこんなにも機嫌が悪いかをね! 言えって言ったのはアンタなんだからね。最後まで聞かないと承知しないわよ……このクソ提督!」
佐々木にはそんな悪態をつく曙の表情が、どことなく晴れやかに見えた。
◇◆◆◇
「うるさいわね、アンタはアンタの仕事があるんだからさっさと行きなさいよ」
「うう……」
曙は雷を睨みつけるとそう言い放った。
そしてふっと表情を緩めると今度は意地の悪そうな笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。
「私だってクソ提督の側に居たいんだから変わるわけないでしょ。じゃあね遠征頑張って行ってきなさい。怪我なんかしたら許さないからね」
そして曙の言葉に呆気にとられ立ち尽くす雷を余所に、彼女は笑顔で部屋を後にした。
「え? ええっ?! あの曙があんな事言うの? えっ、司令官の側にいたい……だ、ダメよそんなこと! 曙ー! あけぼのーー!!」
言葉の意味を理解した雷は慌てて曙に追い縋ろうとするも、その相手は既に見えなくなっていた。
「……ま、いっか。って早く準備しなきゃ!」
暫く誰もいない廊下の先を眺めていた雷であったが、我に返ると慌てて倉庫に向かって走りだした。
佐々木と言う司令官とは、ここの艦娘にとって父親であり恋人であり弟の様な物だ。
それぞれがそれぞれの想いを抱き絆を求めている。
それはいつ沈んでしまうかも分からない綱渡りの日常の中で、唯一彼が戦いを忘れさせてくれる存在だからだ。
佐々木は彼女達を愛しつつも戦いの場に送ると言うジレンマを抱えつつ、それでも出来るだけ無事でいられるようにと強く願う。
しかしそれは彼女たちも一緒なのだ。誰もが抱える漠然とした恐怖や不安。
それを慈しみあう彼と彼女達の関係は、関係の無い他人からすればただの依存に見えるやも知れ無い。
だがしかし結局のところ、何かを護るのだと言う強い気持ちの起源とは、誰かを愛しいと感じる心なのだ。
日常を護る為に非日常を繰り返すこの鎮守府の面々は、そうして今日も生きている。
それぞれがそれぞれの愛しさを護る為に。
「綾波型八番艦・曙! 第一艦隊へと合流します。……見ててよね、このクソ提督!」
二章を始める前に、色々と一章の補足的な話と、日常的な話を挟みたいと思います。
と言うのも現実的な私の仕事が忙しく、中々重たい話を書きづらいと言う裏事情もありますが、それよりも一章の最後にあまりに唐突に艦娘が増殖したことがあり、かと言って物語で言うと転・結にあたる二章の中でその経緯を描写するには遅すぎると判断しました。
それに加えこの作品自体の設定が、かなりの独自設定をしいているため、その部分を明確にしたいと言う思いもあります。
いい訳染みてもいますが、始まりは暁と言う艦娘からスタートしたにも関わらず、物語を動かすためにキャラ個人の描写を疎かにしている自覚もありまして、本来であれば提督と艦娘との日常の触れ合いをもっと入れる予定でしたが、ストーリーを展開する事だけを重視した結果、自分では満足できない流れとなってしまいました。
そこで補足的な話と、本来挟むべきだった日常回を適度に断章としてしばらくやりたいと思います。
今回は曙さんが中心でしたが、今後は暁たち第六の話や、鹵獲した深海棲艦の話をやっていく予定です。
……この話もそうですが、投稿を急いだせいで推敲が間に合ってないため、そっちも空いた時間で修正したいとも考えています。
こんな事情で申し訳ありませんがお付き合いいただけたら幸いです。
※※※
念願のビスマルク建造を果たし、正月休みの間に一気にドライまでやりました。
実質二日位で完了しましたかね。
その後大和型と大鳳を狙い溶鉱炉をやり、結果全滅。
大量のあきつ丸とまるゆが出来上がりましたとさ。
やったね!カ号が増えるよ!やかましいわ。
もうすぐ冬イベきますね。
嬉しいね。備蓄しなきゃ……。
アニメは録画しながら見ています。
賛否両論が凄まじいですね。
ただ私的には現状満足しています。
四話の金剛型姉妹の茶番は長すぎてうんざりしましたが、他はまあおおむね満足。
如月さん轟沈で非難轟々吹き荒れてますが、中破進撃轟沈しないや旗艦は轟沈しないなどはゲームのシステム上の話でしかないと考えているので、まあ仕方ないなと思っていますね。
私的には頭からっぽで見ればいいんじゃないかなと思います。
エンディングを迎えてもいない段階で色々と考察するのもナンセンスですし、今後の展開で面白くなるかもしれませんし。
とりあえずは動く嫁たちが見れて満足ですかね。
それではさようなら。