あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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ボクがデジたんを引けないのは全部ゴルゴムの仕業だ!

あなたの奇行が酷くなるのもゴルゴムの仕業だ!

とりあえず全部ゴルゴムの仕業だ!



たぶんコイツ前世で同じことしたんとちゃうかな?

 

 

 

あなたはGⅠ出走ウマ娘である。

 

 

GⅠ出走と言えばとっても名誉なことであり、それだけで家族や友人に自慢できることであるが、人生を楽しむだけに走るあなたにとってそんなものどうでもいいのだ。

 

 

最近ずっとパクパクさんプレイをしていたせいで本性を表せなかったためか、とても前回から時間が過ぎているように感じるあなたであったがそんなことはどうでもいいのだ。

 

 

 

 

 

やっと、やっとである。

 

 

これまでずっとお嬢様らしく、行儀よくし続けたのだ。仲良くなったマルゼン姉貴から『だ、大丈夫? 熱でもあるんじゃない?』と心配されても、『絶対変なもの食べただろ』と地面に埋められたトレーナーにも、『うん、このままでいてくれよ、ホント。……あ、でもなんかやらかしそうで怖い……』と心の声がだだ漏れであるシンザン会長にも隠し続けていたのだ!

 

いつもなら近くに在るだけでイライラするゲートに対しても頑張って敬意を表したのだ!

 

 

 

あなたのストレスゲージは崩壊寸前にまで水の溜まったダムそのもの。これも全部計画のためとはいえあなたはもう限界である。とにかくふざけて暴れて無茶苦茶に、好き勝手に遊びたいのだ。

 

 

 

 

そんな不穏なことを考えながら現在パドック。いつものようにナイスなジョークを飛ばす関東出身のはずなのに関西弁をかますミホシンザン、謎ダンスをくるくる踊りまくってさっきから腕があなたの顔にぶつかりまくっているシリウスシンボリ。その他やる気に満ち溢れている出走者のウマ娘たち。

 

 

 

 

そしてとってもいい笑顔、もとい愉悦顔をしているあなた。

 

 

観客席から『あいつなんかやらかす気だ!』と気づいた沖野トレーナーを横目に、勝負服に身を包んだウマ娘たちを見やるあなた。口角が徐々に、徐々に上がっていく。微かな笑い声が口から洩れる。

 

 

 

 

場は整った。あなたの出番である。

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

『さぁ、ついにゲートインです!』

 

 

『来年度のクラシックを形作るかもしれない新星たち。どんなレースが繰り広げられるのか楽しみですね。』

 

 

『順にゲートに出走者たちが収まっていきますが……、あれ?』

 

 

 

 

古来より、【泣く】という行為はとても意味のあるものだ。

 

赤子は親に自分の状況を伝えるために泣き、

 

幼子は涙に悲しみや嬉しさをのせ、

 

大人になった人々はめったに泣かないからこそ、輝きがある。

 

 

 

総じてエネルギーを使う行為であるが、終わったときその心に平穏が訪れる。

 

 

 

全く今の話と関係ないが、あなたは作者が年を取るごとに若くなっている漫画。仮面とか柱とかスタンドとか出る漫画がお気に入りである。

 

 

 

 

「ヤ"ダ"ヤ"ダ"ヤ"ダ"ヤ"ダ"~~~!!! ゲ"ー"ト"は"い"る"の"ヤ"ダ"~~~~~~!!!!!」

 

 

 

 

『16番、何やらゲートの前で寝転び暴れているようですが、大丈夫でしょうか?』

 

 

 

 

 

溜まりに溜まったストレスの発散! それに効果的なのは! そう、ギャン泣きである!

 

みっともなく! ターフに寝転び! 自分の意思が反映されるまでギャン泣き! まるで幼子!

 

さっきまで考えていた仕込みなんてことはもう頭にない! ただ嫌だから泣く! ため込んだストレスと共に!

 

 

 

『え、え~~と。ゲート側によるとちょっとトラブルみたいでして……、はい。少々お待ちください。』

 

 

『ゲート嫌いな子はこれまでたくさんいましたが、あそこまでなのは初めて見ましたね。』

 

 

 

 

係員さんが慌てても気にしない! 周りの同じ出走者が動物園にいる変な生き物を見るような目を向けても気にしない! あなたのトレーナーさんが泡吹いてる気がするけど気にしない!

 

 

単に! あなたは! ゲートに入るのが嫌だ! だから泣いて拒否するのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっぐ、ひっぐ……、うぅ……、やだぁ。」

 

 

 

係員総出で地面から引き離され、やっとこさでゲートに収められたあなたはまだちょっと泣いていたが、心は晴れやかだった。

 

かの柱の男も言っていたのだ『ふぅ~~~、スッとしたぜぇ。』と。泣くとエネルギーを使うがスッキリするのだ。しかもあなたは長期にわたって仕掛け続けたギャップイタズラが成功しご満悦。

 

 

 

 

 

まぁそんな風にスッキリ&ご満悦で泣いているけどニッコニコなあなたは準備万端なわけで。

 

 

 

『今、スタートしました。 おっと! 前走、というかゲート前でわめいていた16番! とてもきれいなスタートを決めたぁ!』

 

 

 

もともと逃げが大得意なあなたからすれば、もう勝ち確なのだ。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

『強い強い! 16番速い! 後続のミホシンザン、シリウスシンボリも追いかけますが……、追いつけず今ゴールイン! 最初から最後まで素晴らしい大逃げ! 年末に新たな新星が登場しました!』

 

 

 

 

187:一般通過ファン

 

なあ、聞きたいんだけどさ

 

188:一般通過ファン

 

あぁ、俺もだ

 

189:一般通過ファン

 

あのこだれ?

 

190:一般通過ファン

 

デビューから2戦ともとんでもない出遅れかましたと思ったら追込で大勝ちして、ホープフル出ることになったらお嬢様プレイし始めたイカレ野郎。ちな3戦3勝、主な勝ちレースホープフルS。得意戦術は逃げだったらしい。

 

191:一般通過ファン

 

俺さ、……あのインタビューで惚れたんだよ。すっごくいい子がいるって……、お嬢様っぽくて、いいなぁ、って。初恋だったのに……

 

192:一般通過ファン

 

oh……

 

193:一般通過ファン

 

>191 災難だったな。初恋ニキは前レースの勝利インタビューまで見るべきだった。

 

194:一般通過ファン

 

そのお嬢様みたいな子がさ、ゲート前ですごいの

 

195:一般通過ファン

 

あれは伝説になりましたね

 

196:一般通過ファン

 

やろうと思って簡単にできることじゃない!

 

197:一般通過ファン

 

そこに痺れる憧れる! とはならんかった……

 

198:一般通過ファン

 

お前らレース後インタビューはちゃんと見たか? トンチキ過ぎて逆にファンになっちゃったよ俺

 

199:一般通過ファン

 

古のネタがあんなかわいい子の口から出るとは思わなんだ。

 

200:一般通過ファン

 

初恋、だったんだけどなぁ……

 

 

 

 






あなた

レース後インタビュー。

『GⅠ初勝利おめでとうございます! 今の感想を!』

「びっくりするほどユートピア!!!」


なお、ずっと口に出して言いたかったらしい。服は脱がなかったがちゃんと飛び跳ねながら言った。


そのインタビューを見ていた親御さんにこってり絞られた模様。




沖野トレーナー

URAから『ゲート前で暴れないようにちゃんと指導してください』と苦情を受けた。出来るんだったらとっくにしてるという言葉は何とか飲み込んだ。
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