時期は2月の頭ごろ。寒さはさらに厳しくなり、雪もよく降るようになる季節。
いつもなら、真っ赤なスポーツカーでお出かけするのが大好きなマルゼンスキーであったが、今日はちょっとばかし様子が違うみたい。レンタルしたのか大き目の白いバンに乗っているみたいですよ?
「え~と。確かこの辺にいるって聞いたのだけど……。」
雪の残る山道に車を走らせる彼女。この辺りは巷で人気のキャンプ場。
普通ならこんな雪景色でクソ寒い中キャンプするような頭おかしい人なんていないのだけれども、マルゼンスキーは誰かを探しているようである。
「あ! いたいた! ……ってホントに最低限ね。風邪ひいてないかしら?」
誰か? と聞かれればもちろんあなたである。
無事、あなたは沖野トレーナーから放牧期間を勝ち取り(ターフに埋めて無理やり)、ゆっくりできる時間の最後を楽しむため、山の奥地にて野宿を敢行しようとしていた。
あなたの持ち物としてはテント用の布一枚と棒切れ二本。明日の朝ごはんの缶詰だけである。もちろん缶切りはない。防寒具も持ってきてない。
まぁ、なんとかとバカとあなたは風邪をひかない、ということわざは有名であるが、たまたま近くを通りかかったそのキャンプ場の管理者の方が、雪の中ではしゃぎまくっているあなたを発見。装備の貧弱さに仰天した彼はそのままトレセン学園に連絡。
頭を抱えて腹痛を訴えだしたシンザン会長にちょうどその場にいたマルゼンスキーが『あ、なら私が迎えに行くわよ?』という経緯で彼女が派遣されたわけである。
あなたであれば、多分雪山で遭難しても何事もなかったかのように帰ってきそうなものであるが、今日の夜から明日の朝にかけて大雪の予報。さすがにマズいだろうという判断だ。
ほんと、お騒がせ者ですよあなた。
「お~い! おチビちゃん~~! 何してるの~!」
ジャージ一枚で一人雪合戦をしているあなたに話しかけてくるウマ娘。マルゼン姉貴だ!
「ひ、ひとり雪合戦ね……、楽しいのそれ?」
うん、とっても!
「そ、それは良かったの、かな? ……一応今日の夜から大雪みたいだし、危ないから迎えに来たのだけど……」
うん、大雪なのは知ってる。だからこそ! だって大雪で積もり積もった真っ白な銀世界にダイブしたいじゃん!
「あ~、確かにそれは解るかも。でも危ないから、ね?」
むぅ? でも銀世界ダイブ……
「ほら! 車の中にあったかいココアあるわよ。……好きでしょ?」
しゅき!
あなたとしては銀世界にダイブをしたくてたまらないけど、ココアには代えがたい。あなたはマルゼン姉貴の車に飛び乗ったのだった。
「あ、ちゃんと管理者の方と生徒会のみんなに謝りに行こうね。私も一緒に行ってあげるから。」
「………………」
「今度一緒にスイーツ食べに行ってあげるから、ね?」
はーい!
ーーーーーーーーー
「……私ねぇ……、鳥さんになりたいの……、空をぴゅーんって飛んでって、気持ちよさそうだなぁ……」
言わずと知れた、トレセン学園生徒会室。私たちの知る生徒会室の主はシンボリルドルフであるが、今はそのもっと前。シンザンが在籍していた時期である。
彼女もそろそろ、というか再来年度には卒業しなければならないので(たぶん)、そろそろ後任の育成やら引継ぎやらに精を出さなければならないし、それ以上に普段の業務もあるので大忙しなはずなのだが……
「……あ、ちょうちょ……」
絶賛現実逃避中だった。生徒会室の窓から外を眺める会長。シンザンを自身の母のように慕っているミホシンザンには絶対に見せられない顔をしている。
「か、会長! しっかりしてくださぃ~~!」
彼女はカブラヤオー。他人が怖すぎて仕方がない彼女。レースと同じように人間関係からも逃げてしまう彼女であったが、何故か生徒会で副会長をしている。なんでも「シンザン会長レースになるとめっちゃすごいけど日常生活だと色々ため込んでそうで……」と心配になって参加したらしい。
まぁもちろんなんで会長が現実逃避しているかというともちろんあなたである。
と、いうか問題起こすのはあなたぐらいである。
先日まで放牧という名の自由時間を満喫しているあなたであったが……、まぁ存在しているだけで問題を引っ張ってきそうなあなたである。もちろんいっぱいやらかした。
学園及び学園外の人々はとりあえずまぁ生徒会の方に連絡を入れるので、まぁ会長のお腹に直接ダメージが行く訳である。
「んんっ! すまないカブラヤオー。少しばかり放心していたようだ。もう一度内容を言ってくれるかい? ……あとそこに置いてる胃薬取って、おにゃかいたい……」
「あ、はい、どうぞ。 えっとですね。現在における学園一の問題児である彼女のことですが……、いろんな方面からのお声を頂いておりまして……、そのご意見を頂いた紙束がこちらになります。あ、あと怖いの我慢して、頑張ってたくさん人とお話してきたので引きこもっていいですか?」
「……お願いだからひとりにしないでぇ……、あぁ。ありがとう。気は進まないが、見させてもらうことにしよう。」
内容は、以下のとおりである。
〇トレセン学園 備品課
『ゲートがまた壊されました。直してください。出来ればあいつが壊せないような強度のゲートも開発してほしいです。』
〇近所の主婦さん
『なんか気が付いたらウチの子供あやしてくれてたみたいで、ありがとうございます。お名前を聞く前にどこかに行ってしまったので学園の方に連絡させていただきました。』
〇山岳保全委員の皆様
『深夜に奇声あげながら山道を登っていくトレセン学園の生徒を見たのですが……』
〇トレセン最寄りの駅員さん
『お願いですので駅前でゲート破壊運動なる署名活動をしないでください。』
〇美浦寮 寮長
『寮内で服を着ることを教えても聞いてくれません。どうしたらいいですか?』
〇ファンの方
『一張羅にサイン書いてくれてありがとうございます! 初恋でしたけどファンになりました!』
〇走り屋さん
『あの峠を生身で走る奴が姉御以外にいるとは……、今度は負けんぞ。』
「お、怒るのは確定だけど、なんだかちょっとだけいいこともしてる……、怒っても絶対いうこと聞かないし、褒めれば調子乗るし……、救いはないのですか……」
〇マルゼンスキー
『チョベリグね! あ、あとあの子が外に出るときは時間がある時だけだけど、私が見張ってるから安心して大丈夫よ。』
「マ、マルゼンスキー! ……こんど何かお礼しなくちゃ……」
ーーーーーーーーー
あなたは友達が増えたウマ娘である。
先日のホープフルSから数日後、『なんかこれから色々勝負しそう』と思い至りミホシンザン及びシリウスシンボリ両名の元に突撃。二人とも非常に良い子であったため無事友人になってもらえたためあなたは上機嫌である。嬉しくなりすぎて思わずゲートを破壊しちゃったぐらいである。……いつものことか。
まぁそんな友人が増えてから数か月後。それ以降2人から動く兆しのない友人数であったが、今日はその友人であるミホシンザンと昼食を取っているのだ。
「なぁ、それ……、なんでそんなもん食ってんの?」
? 何がとはなんだろう? 見た通りの昼食であるが?
「……え? もしかして私がおかしいの?」
《今日のあなたの昼食》
〇ライス(量多し)
〇ライス(量多し)
〇ライス(量多し)
〇ライス(量多し)
〇ライス(量多し)
〇ライス(量多し)
う~ん。ライスとライスとライスでライスがかぶってしまったかもしれない
……なるほど、この店はライスとライスで大丈夫なんだな!
「いや、ここ食堂やけどな。」
「はふ、はふ」
うん、うまい
「ずそそそそっ!」
「なんでご飯でそんな音出るの!」
うん、このライスは正解だった。
ライスぐあいもちょうどいい。ライス尽くしのこの中ですっごく健やかな昼食だ。
「いや、あんたは色々規格外だと知ってたつもりだったけど……、はぁ。シンザン先輩にこの前抱き締められて頭撫でながら言われたもん。『ミホは何も問題を起こさなくて偉いね。』って。私ホントに何言われてるんだろうってびっくりしたんだから。」
関西弁忘れてるよ。
「……ま、まぁ? ウチの爆笑トークで先輩元気づけてあげたからもう万全やけどな! あと忘れてへんで!」
まぁあの会長はミホのこと大好きだから色々とお話ししに行ってあげた方がいいと思うよ。
「え! 先輩が私のこと大好き……、うわめっちゃくちゃうれしいんだけど……。」
基本的にあなたのイタズラでお腹イタイイタイだと思うから、アニマルセラピーならぬミホセラピー、愛娘セラピーである。きっと効果は抜群だ。
「いや、あんたのせい、かい!」
うん。その通りだ、怖かろう。まぁ最近はマルゼンの姉貴に言われたようにいいこともしているのでたぶん大丈夫なり。好き勝手し過ぎたら嫌われる、あなた、オボエタ。
まぁそれはそれとしてミホ?
「うん? どうしたん?」
ちょっとご飯だけでしんどいからその漬物もらってもいい?
「あぁ、やっぱしんどかったんやなソレ……、ええで。」
あなた
イタズラの量はそのままに、ちょっとだけいいことをする+後処理をオボエタ! でもよく忘れるので被害は変わらない。基本的にマルゼン姉貴の言うこと“は”聞く、でも譲れないものも多くある。
次回は新学年+葦毛参上ですかねぇ……。
シンザン会長
ミホシンザン大好き委員会会長。最近ミホを抱き締めてギュっとするとストレスが解消されることに気が付いた。
カブラヤオー副会長
たくさんの人にお話を聞きに行ったので怖かった。なのであの後引き籠った。シンザン会長の仕事が増えた。
ライス
「え!? ライス食べられちゃうの!?」