あなたはウマ娘である。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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………ハロウィン? サイボーグ?





やはり皐月賞か、私も同行しよう!

 

 

「ミホ、右脚はどうだ?」

 

 

皐月賞直前、この世代の三強の内二人しか出走できなかったこのレース。その片割れであるミホシンザンは控室にてゆっくりとその時を待っていた。

 

爆弾と呼べるその足をさすりながら。

 

 

「……走れはする。けど全力だとたぶん壊れてしまう。そんな気がする。」

 

 

キャラ作りの一環として行っていた関西弁はなりを潜め、真剣な趣で彼女は紡ぐ。優先権を手に入れるために出走したスプリングステークス。朝日杯FSの勝者であるスクラムダイナにも勝利した彼女だったが……

 

 

「サザンフィーバーの故障、それを避けるときに痛めたか?」

 

 

レース中、最終コーナーの入り口にて、先頭を走っていたサザンフィーバーが故障。それを避けるために行った急なルート変更が足にダメージを与えてしまったのかもしれない。レース直後では違和感なんてなかったが、皐月賞の4日ほど前から違和感を感じ診断してもらったところ右足首の骨膜炎。

 

 

「トレーナー、私はどうすればいい?」

 

 

偉大なる神バ。シンザンを超えるその過程。敬愛するシンザン会長に追いつき、追い越すためにここまで来た。どんなにきついトレーニングだって耐えた。ホープフルで負けてから死に物狂いで追いかけた。

 

会長と同じ視点に並ぶために、セントライト、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ。5人目に私の名前を飾るために。

 

 

必死に、走り続けた。

 

 

 

……その三冠の初めから、私は落としそうになっている。

 

 

「トレーナー、私はどうしたらいいの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………普通なら、止める。足にケガを抱えているのを知って走らせるバカはいない。俺は止める。その後の人生を壊してしまう可能性もあるからだ。」

 

 

 

「………でも!」

 

 

 

「でも、だ。ミホがこれまで死ぬほど頑張って、ミホにとっての三冠が俺の思っているよりもずっと大きいのも知ってる。ずっとそばに見てきたから解る。………共犯者だな。」

 

 

「じゃあ!」

 

 

「今日は幸い霧が濃い。観客席からも報道席からもほとんど見えない。ミホが叩かれる心配はないし、もしそうなったとしても全部俺の責任だ。うまく隠しながらやるしかねぇ。」

 

 

「よく聞いてくれ。作戦としては……」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

ウィ~~ン。 飛行機ブ~~ン。

 

 

「……何してんの?」

 

 

見たら解るだろう。紙飛行機で遊んでいるのだ。

 

 

「いや、皐月賞だぞ。クラシック三冠の第一歩だぞ? なんで?」

 

 

……ゲート入りたくないから現実逃避。

 

 

「あぁ……うん。」

 

 

まさかURAから『今度ゲート前で駄々こねたら出走停止処分にしますね。』って言われるとは思わなかったんだもん! 入りたくないの! なんでゲートあるの! あとさっき来た職員さん無茶苦茶怖かった! 顔笑ってたけどお目目笑ってなかった!

 

 

「まぁ前回が前回だしな。……んで今回の作戦なんだが」

 

 

作戦?

 

 

「おう。知ってるとは思うが今日は霧が濃い。実際走ってみないと解らないとは思うが、周りの確認と足元の注意。それだけは忘れないようにしてくれ。今回お前さんが逃げるか追い込むかは知らないが、追い込むときは特に注意しろ。最悪大外をあえて選んで安全をキープしてもいい。お前さんのスタミナなら2000の大外ぐらい苦じゃないだろ。」

 

 

 ???

 

 

「ど、どした? そんな珍しいもの見るような目して?」

 

 

いや、ウチのトレーナーがちゃんとトレーナーらしくしてるの初めて見た気がして驚いた。

 

 

「おい、そりゃあないだろ! お前さんが全然練習に来ないし指示も聞かないからこうなってるんだぞ? 元々俺は有能なトレーナーだからこのぐらいお茶の子さいさいなんだよ!」

 

 

ふ、笑止! それならば有能トレーナーらしく部員を集めてくるがいい! 私以外いないのを忘れたのか!

 

 

「うぐっ! ……はいはいそっちも頑張りますって。とりあえずさっき言ったこと忘れんなよ。」

 

 

おkおk! まぁバブリー二世(自称)におまかせんしゃい! ゲートの直前までテンションアゲアゲで行くわよ!

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

そろそろこのご挨拶も飽きてきたところだろうか。

 

 

あなたは皐月賞出走ウマ娘である。

 

 

数少ない(二人)の友人であるシリウスは結局『家庭の用事』で出走を取り消さねばならなかったし、出走してるミホもなんだか調子が悪そうである。あなたはどこからどう見てもやばい奴であるが、友達は大事にする。二人のことが心配である。知人たちの胃が『もっと他の人たちも心配してもろて』という電波をキャッチした気がするが気にしないことにする。

 

 

と、言うわけでパドック。あなたとしては霧が濃いのによく来るなぁ、という感じだがホープフルの時よりも人が一杯。さすがクラシックということであろうか。

 

 

『さぁあいにくの霧模様でございますが一番人気の登場です!』

 

 

お! ご紹介に預かったようだ。早速何かパフォーマンスをしなければならないが、心配事が多かったせいでネタ切れである。とりあえずブレイクダンスでもしておこうか。今は亡き我が友シリウスにこのダンスを捧げよう!

 

 

『勝手に殺すな~!』

 

 

まぁとりあえずあなた的には友人のシリウスを出走させないおバカさんたちは粛清対象であるためこのレース後にシンボリ分家の方に遊びに行く予定である。楽しみですねぇ!

 

 

『二番人気はこのウマ娘! ミホシンザンです! スプリングステークスでは好走を見せてくれましたし、今日も大いに期待できそうです。』

 

 

『……あれ、なんでしょ? 何か違和感が? ……いえ気のせいですね。彼女のあこがれる三冠馬シンザンへの思いが彼女を大きく見せたのでしょう。』

 

 

う~ん。確かになんか調子悪そう。なんか無理やり歩いてる気がする? こんな時に脚フェチであるトレーナーが横に居れば突撃させて触診させるんだけどなぁ。モンスターをげっちゅするゲームみたいに『いけ! トレーナー!』みたいな感じで。まぁマジでやったらガチギレの上に関係途絶しそうだからやらんけど。………やらないよ?

 

 

 

 

じーーー

(万全とは言い難いけど! 簡単には負けないからね! むしろ勝つ!)

 

 

 

 

やらないよ! 絶対やんないからそんなにらみつけないでミホォ!

 

 

 

じーーーーーーー

(爆弾を抱えてたとしても負けない! 三冠への第一歩! こんなところで落とすわけにはいかないんだ!)

 

 

 

絶対やらない! 絶対やらないから! マルゼン姉貴とスイーツに誓うから!

 

 

 

じーーーーーーーーーーーーーーーー

(絶対絶対! 負けないんだから!)

 

 

 

ご、ごめんなさぁい!

 

 

 

 

『あれ、なんか逃げてますね?』

 

 

『今日も逃げてやるぞ、という意思が表れているのでしょうか? それにしては涙目ですし……、あ! ゲートですね! 聞いた話によると前回のように駄々をこねた場合出走停止にするという話がありますし、現実逃避の一環ではないでしょうか。』

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 

 

『さぁゲートインが始まっております。』

 

 

『6番の子も今日は大人しく入ってますね。とってもエライ!』

 

 

『まぁ係員の方に背中押してもらいながらですけど……、全員きれいに収まりました! 今日はあいにくの霧模様でして放送席から見えるのはスタート付近と最後の直線のみとなりました。非常に珍しいレースとなり、実況泣かせで今から何話せばいいか考えております。』

 

 

まぁ確かに実況する側はきつそうだよね。……え? なんで実況知ってるかって? 変な電波受信しまくってるしいまさらですよ? そんなことを考えながら背中を押されるあなた、平和ですねぇ。

 

 

 

『今、スタートです。』

 

 

あ、またやっちった。出遅れデース☆

 

 

『おっと! やっぱりまた出遅れましたね。6番を最後に全ウマ娘が霧の中に消えました。約1分半ほどの空白時間。こちらからは見えませんがどんな苛烈なレースが繰り広げられるのでしょうか!』

 

 

 

う~ん。さすがにちょっと出遅れ癖が酷いかもしれない。ゲート練習は死んでもしないが、ちょっとは考えた方がいいかもしれにゃいです。あなたはこころのメモに記入した。

 

ま、そろそろレースに集中するあなた。今回6番で競技中のあなただが、出遅れのせいで今日も最後尾。取れる作戦も追い込みになってくる。

 

レース前に伝えられた作戦として足元と周りをよく見ること、だったが……、いつの間にかかなり後ろの位置まで下がってきているミホ。

 

たぶんコーナー曲がるときに減速してるのかな? それとも脚のケガでコーナーがきついとか?

 

 

……うん。たぶんこのままだと私が前に上がるにはミホの後ろを通っていくルートが一番近道。

 

でもこの濃霧の中で間と間をすり抜けていくような走り方は結構危ない。それに一度隙間から抜かされると間を詰めようとするのが普通。たぶんぶつかる。

 

 

あ~、なら大外ですかね? 言われたとおりにするのは癪だけどまぁやりますか。

 

 

うし! そろそろ最終コーナー入ったあたりだろうし! イクゾー!

 

 

 

 

 

 

 

『あ! 見えてきました見えてきました! 先頭はミホシンザン! ミホシンザンです。 最終コーナーを抜けたあたりで先頭に立っているのはミホシンザン。』

 

 

 

ぐるーって回っていきますよ~

 

 

『大外から回ってきました6番! 大外からやってきたのは出遅れ娘!』

 

 

 

 

「ッ! 負けるかァ!!!」

 

 

 

『ミホシンザン先頭! ミホシンザン先頭! 後ろから6番、差は3馬身、2馬身、どんどん迫っていく!』

 

 

『迫る迫る! 追いつくか! 追いつくか! 並んだ並んだ!』

 

 

 

「あぁぁあああああああああああああああ!!!!!」

 

 

うん。私も負けないから。

 

 

 

『抜いた! 抜かした! 6番前に出た! そのままゴールイン! 一着となりましたのは6番! ホープフルに続き皐月賞も制しました!』

 

 

 

 







あなた

最初期はこの霧のレースを他が見えにくいのをいいことに飛鳥文化アタックで疾走するあなたの姿があった。「おっと……! うっすらとですが先頭が見えてきたって、浮いてるぅ!? 空中に浮かびながら高速回転しているぅ!? どうやって浮いているのか! どうやって進んでいるのか! そもそもあいつはウマ娘なのか!?」みたいな実況してもらう予定だったけど単なるUMAになってしまうのでやめた。やるならJWC(ジャパンワールドカップ)でしよう。出走登録しておきますね~。


ミホシンザン

史実かなしい。次回は彼女視点の皐月賞とその後で行きましょうか。……あなた? いつも通りはっちゃけますけど? それとwikiだと霧出てたって書いてるけど実際の映像だとそうでもないのね。ウチでは濃霧の中のレース、ってことにいたしました。1996バイオレットステークスみたいな感じです。お許しください。


シリウスシンボリ

「そしたら“あなた”のアネキが一人でその場所に行ってなァ。 ロケットランチャーぶっぱなしてその建物を木端みじんにしてもうたんじゃ。」



最近あとがきに駆り出されるウインディちゃんなのだ。ハムタロじゃないのだ。最近ネタ切れで真面目になって申し訳ないのだ。頑張って絞り出すのだ。あと関係ないけど感想もいっぱい欲しいのだ。強欲なのだ。

次回はミホ先輩視点の皐月賞とあの問題児先輩のおふざけなのだ。ダービーはその次なのだ。

それまでもうちょっとだけ待ってほしいのだ。

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